介護の記録やり方2026.05.13 公開KK-05

バイタル記録の書き方|基準値と報告の線引き

目次

バイタル記録は、測って書くところまではできていても、その数字をどう扱うかが決まっていない事業所が多くあります。体温37.4度は報告するのか。血圧が普段より20高いのは。判断が人によって違うと、気づける日と気づけない日が出ます。

この記事では、バイタル記録に何を残すのか、いつ測るのか、そしてどこから報告するかの線をどう決めるのかを整理します。

記録全体の書き方の型から確かめたい方は、基礎のほうが先です。→ 介護記録の書き方

結論:バイタルは「数字」と「いつもとの差」をセットで見る

バイタル記録とは、体温、脈拍、血圧、呼吸、酸素飽和度といった生命の徴候を記録したもののことです。

ポイントはここです。数字そのものより、その人のいつもとの差が大事になります。普段から血圧が150の方の150と、普段110の方の150は、意味がまったく違います。一律の基準だけで判断すると、気づくべきときに気づけません。

普段の値は、入所後しばらく測ってから決めます。数日の平均が、その方の基準になります。

そのため、記録の様式にはその方の普段の値を書いておく欄を作ります。目に入る形にしておけば、測ったその場で差に気づけます。

一律の線と、その人の普段の値一律の基準37.5度以上は発熱誰にでも当てはめられる平熱が低い方を見落とすその人の普段の値平熱は36.0度37.0度でも1度高い平常時を先に測っておく
一律の基準と、その人の普段の値の両方で見る図

何を測るのか

測る項目は、その方の状態によって変わります。全員に全部を測る必要はありません。

体温は、ほぼ全員で測ります。感染症の兆候がいちばん早く出るためです。血圧と脈拍は、循環器の疾患がある方、降圧剤を飲んでいる方では必須になります。

酸素飽和度は、呼吸器の疾患がある方や、誤嚥のリスクがある方で測ります。呼吸数は測っている事業所と測っていない事業所が分かれますが、状態の変化が出やすい項目でもあります。

測る項目と、必要になる方項目とくに要る方体温全員。毎日の基本血圧降圧剤を飲んでいる方脈拍不整脈のある方酸素飽和度呼吸器の持病がある方
測る項目と、どういう方で必要になるかを並べた表

測る項目が増えるほど、1人あたりの時間が伸びます。人数が多い事業所では、ここが日々の負担に直結します。

誰に何を測るかは、看護職員と相談して決めます。「全員に全部」にすると時間が足りず、結局測らない日が出ます。必要な方に必要な項目を確実に測るほうが、記録として働きます。

いつ測るのか

測る場面を決めておかないと、日によってばらつきます。

測る場面は、多くの事業所で決まっています。

一般的なのは、朝の起床時入浴の前体調の変化があったときの3つです。加えて、医師の指示がある方は指示された時刻に測ります。

測る場面は3つ決まった時刻毎日そろえて測る入浴や外出の前負担がかかる前に見る変化のときふだんと様子が違う
決まった時刻・入浴前・変化があったとき、の3つの場面を並べた図

測る場面を勤務の流れに組み込んでおくと、忘れません。「起床介助のあと」「配膳の前」のように、既にある動きに紐づけます。

時刻をそろえるのが大事です。朝に測る日と昼に測る日が混ざると、推移が読めなくなります。体温は1日の中でも変動しますし、血圧は起床直後と食後で違います。

測った時刻を必ず書きます。「37.2度」だけでは、いつの数字か分かりません。入浴後に測った37.2度と、起床時の37.2度では意味が違います。

報告の線を決めておく

いちばん決めておきたいのがここです。どこから看護職員へつなぐのかを、数字で決めます。

事業所によく置かれているのは、次のような形です。体温が37.5度以上収縮期血圧が一定の値を超えるか下回る脈拍が一定の範囲を外れる酸素飽和度が一定の値を下回る

数字の線と、数字によらない線数字で決めておく体温37.5度以上収縮期180以上か90未満酸素飽和度93%未満迷わず報告できる数字によらないいつもと様子が違う本人が苦しいと言う数字が正常でも報告する
数字で決めた報告の線と、それとは別に報告する場面を並べた図

数字だけで決めないのが要点です。基準の中に収まっていても、いつもと様子が違う、本人が「しんどい」と言っている、という場合は報告します。数字は報告する理由の1つであって、唯一の理由ではありません。

線の数字は、看護職員と相談して決めます。医師から指示が出ている方は、その指示が優先されます。指示書の内容を記録の様式に写しておくと、その場で確かめられます。そして紙に書いて貼ります。頭の中にあるだけだと、人によって違う判断になります。夜勤帯に1人でいるときほど、この紙が効きます。

その方ごとに別の線を置く場合もあります。普段から血圧が高い方に一律の基準を当てると、毎日報告することになります。個別の目安を記録の様式に書いておくと、その場で判断できます。

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実際に使える様式が必要な方へ

バイタル記録や介護記録のExcel様式は、商い屋の介護向けのページにそろっています。この記事は書き方の側です。

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測り方をそろえる

同じ人を測っても、測り方が違うと数字が変わります。ここをそろえておかないと、推移が意味を持ちません。

測り方がそろっていないと、推移が本物かどうか分かりません。

体温は、測る部位をそろえます。腋窩か、耳か。腋窩なら、汗を拭いてから、正しい角度で挟んで、時間まで待つ。急いで途中で抜くと低く出ます。

血圧は、測る腕と姿勢をそろえます。麻痺がある方は健側で測ります。座位か臥位か、カフの位置が心臓の高さにあるか。測る前に数分安静にすることも、数字を安定させます。

そろえておきたい測り方項目そろえる条件体温同じ側の脇で測る体温入浴や食事の直後は避ける血圧座って少し休んでから血圧同じ腕・同じ時間帯
体温・血圧で、そろえておきたい測り方の条件を並べた表

脈拍は、測る時間を決めます。15秒測って4倍するのか、30秒測って2倍するのか。不整脈がある方は、短く測ると誤差が大きくなります。

測り直したときは、そのことも書きます。1回目が異常に高く、測り直したら正常だった。この場合、両方の数字と、測り直した理由を残します。低いほうだけ書くと、記録として不正確になります。

血圧計のカフのサイズも、腕の太さに合っていないと正しく測れません。細い腕に大きいカフを使うと低く出ます。事業所に何種類か置いてあるかを確かめておきます。

機器の管理も要ります。電池が弱っている体温計は低く出ます。定期的に確認する日を決めておきます。

数字以外に見ること

バイタルを測る場面は、その人と向き合う数分間でもあります。数字だけ取って離れるのは、もったいない時間です。

一緒に見たいのは4つです。顔色と表情受け答えの様子(いつもより反応が遅くないか)、皮膚の状態(冷たい、汗ばんでいる)、訴え(どこか痛むか、気分はどうか)。

数字が正常でも、この4つに変化があれば報告の対象になります。高齢の方は、感染症があっても熱が上がらないことがあります。数字だけを見ていると、この場合に気づけません。

この4つは、数字より先に変化が出ることがあります。

記録の様子欄に、1行書けるようにしておきます。「顔色やや不良。『だるい』とのお話あり」。数字の横にこの1行があると、あとで見返したときに状況が分かります。

「特変なし」だけで済ませないのが要点です。何を見て特変なしと判断したのかが残らないと、次に読む人が確かめようがありません。

数字を並べて見る

1回の数字では、変化は分かりません。並べてはじめて見えます。

数字が並んでいると、単発では気にならなかった変化が見えてきます。

体温は、微熱が続いていないかを見ます。37度台前半が数日続くのは、ただちに高くはなくても変化のサインです。血圧は、下がってきていないかを見ます。上がるより、下がるほうが急な変化を示すことがあります。

1回の数字では分からないこと血圧基準の線2週間前今日1回ずつは基準内でも、並べると上がり続けている
1回の数字と、数日並べたときに見えることの違いを示した図

酸素飽和度は、下がり始めると急なことがあります。普段の値を知っておくと、少しの低下にも気づけます。

グラフにできるなら、そのほうが早く気づけます。数字の列より、線のほうが傾きが見えます。電子化している事業所では、自動でグラフになる形にしておくと、毎日の確認が数秒で終わります。

グラフにするなら、目盛りを固定しておきます。日によって目盛りが変わると、傾きの見え方が変わってしまいます。

紙の場合も、1人1枚の表にして日付を横に並べると、推移が見えます。日ごとの記録に散らばっていると、追うのに時間がかかります。

感染症が疑われるときの記録

体温の記録がいちばん重要になるのが、感染症が広がりかけている場面です。ここは個人の記録を超えて、施設全体の話になります。

1人の発熱では分かりません。同じ時期に複数の方に発熱が出ているかどうかが、判断の分かれ目になります。そのため、全員の体温を一覧で見られる形にしておく必要があります。

一覧にすると、フロアごとの偏りも見えます。同じフロアに集中しているなら、そこで何かが起きている可能性があります。居室の位置関係まで見ると、さらに絞り込めます。

発熱以外の症状も、あわせて記録します。嘔吐、下痢、咳。感染症の種類によって出方が違うので、症状の組み合わせが分かる形にしておきます。

症状が出た方の居室と、行動範囲も記録しておきます。食堂の席、入浴の順番。どこで接点があったかが分かると、広がり方の見当がつきます。

こうした一覧は、平常時から作っておくのがこつです。流行してから作り始めると、比較する平常時のデータがありません。普段の体温の分布が分かっていてはじめて、「いつもより多い」が判断できます。

判断と対応は、看護職員や協力医療機関、保健所が行います。介護職に求められるのは、測って、並べて、気づいて、つなぐことです。

記録が使われる場面

バイタル記録は、いくつかの場面で読まれます。使い道が分かっていると、書く精度が上がります。

1つ目が、受診のときです。医師に「ここ1週間の体温です」と見せられると、診断の材料になります。2つ目が、看護職員の判断。数字の推移から、往診を頼むかどうかを決めます。

3つ目が、事故や急変があったときです。事故報告書にもバイタルの欄があるため、普段から記録があると転記で済みます。その前の数日の数字が残っていることが、経過を説明する材料になります。4つ目が、家族への説明です。

5つ目が、ケアプランの見直しです。状態が変わっているかどうかの裏付けとして使えます。

5つとも、書いた本人以外が読みます。だから、時刻と測り方の条件が書かれていることが大事になります。

急変に気づいたときの動き方

数字の異常に気づいたあと、何をするかを決めておきます。ここが決まっていないと、気づいても動けません。

流れは4段です。1段目、もう一度測る。機器の不具合や測り方の問題を除きます。2段目、他のバイタルも測る。体温が高いなら脈拍と血圧も、酸素飽和度が測れるなら合わせて測ります。

3段目、様子を見る。意識、呼吸、顔色、訴え。数字と合わせて状態を把握します。4段目、報告する。看護職員へ、数字と様子の両方を伝えます。

報告するときは、数字を先に言います。「◯◯様、体温38.2度、脈拍98、血圧140の80です。顔色不良で、だるいとのお話があります」。この順番だと、聞いた側がすぐ判断に入れます。

慌てている場面ほど、言う順番が乱れます。紙に順番を書いておけば、読み上げるだけで済みます。

夜間で看護職員がいない事業所では、誰に連絡するかを決めておきます。オンコールの看護職員、協力医療機関、救急。どの状態でどこへ連絡するかを紙にして、電話のそばに貼っておきます。

連絡した記録も残します。いつ、誰に、何を伝え、どう指示されたか。指示された内容は、その場で復唱して書き取ります。あとで「そうは言っていない」となる場面を防げます。

測る負担を減らす

測る人数が多いと、それだけで時間が取られます。減らす工夫を3つ挙げます。

1つ目が、測る項目を絞ること。前に書いたとおり、全員に全部は要りません。看護職員と相談して、方ごとに必要な項目を決めます。

2つ目が、機器を使い分けること。耳で測る体温計は数秒で済みます。人数が多い時間帯に向いています。腋窩で測る体温計は時間がかかりますが、より安定した値が出ます。場面で使い分けると、全体の時間が短くなります。

3つ目が、測る順番を動線に合わせること。居室の並び順に回れば、行き来が減ります。当たり前のようで、担当を人で分けていると動線が交差していることがあります。

測った直後に書くのが原則です。何人かまとめて覚えてから書くと、数字が入れ替わります。持ち運べる記録用紙か端末を使います。

電子化している事業所では、機器から自動で取り込めるものもあります。転記の手間と書き間違いが同時に減ります。ただし、機器が対応していない項目は結局手で書くので、混在する形になることは想定しておきます。

まとめ

バイタル記録は、数字とその人のいつもとの差をセットで見ます。測る項目と時刻をそろえ、報告の線を数字で決めて紙に貼ると、判断が人によってぶれなくなります。

まず手を付けるなら、記録の様式にその方の普段の値を書く欄を作るところからです。次に、報告の線を看護職員と決めて掲示すると、夜勤帯の判断が早くなります。

バイタルは、測るだけなら誰でもできます。差に気づけるかどうかが、この記録の価値を決めます。そのために要るのは、普段の値が目に入る様式と、紙に書いた報告の線の2つだけです。

なお、報告の目安となる数値や、測る項目は、個々の状態によって変わります。最終的な判断は、かかりつけの医師や看護職員にご確認ください。

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実際に使える様式が必要な方へ

バイタル記録のExcel様式は、商い屋の介護向けのページにあります。普段の値や報告の線を書き込める形にしてあります。

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バイタルは、測ることより線を決めておくことのほうが難しい記録です。数字を紙に書いて貼る。それだけで、夜勤帯の判断が変わります。

よくある質問

バイタルは全員に全部測るのですか。

その方の状態によって変わります。体温はほぼ全員、血圧と脈拍は循環器の疾患がある方で必須になります。誰に何を測るかは看護職員と相談して決めます。

どこから報告すればよいですか。

数字の線を看護職員と決めて紙に貼ります。ただし基準の中でも、いつもと様子が違う場合や本人の訴えがある場合は報告します。

感染症にはどう気づきますか。

1人の発熱では分かりません。全員の体温を一覧で見られる形にしておき、同じ時期に複数の方に出ていないか、フロアに偏りがないかを確かめます。

測り直したときはどう書きますか。

両方の数字と、測り直した理由を残します。低いほうだけ書くと、記録として不正確になります。

時刻は書かないといけませんか。

書きます。入浴後の37.2度と起床時の37.2度では意味が違います。測った条件が分かる形にしておきます。

数字が正常なら報告しなくてよいですか。

数字は報告する理由の1つであって、唯一の理由ではありません。顔色、受け答え、皮膚の状態、訴えに変化があれば、基準の中でも報告します。

普段から血圧が高い方はどうしますか。

一律の基準を当てると毎日報告することになります。その方ごとの目安を記録の様式に書いておくと、その場で判断できます。

数字はどう並べて見ますか。

1人1枚の表にして日付を横に並べると推移が見えます。グラフにできるなら、傾きが目で分かるので早く気づけます。