食事と水分の記録|量の書き方を決めて統一する
目次
食事と水分の記録は、書いている量と、実際に使われている度合いがいちばん釣り合っていない記録です。毎食ごとに割合を書いているのに、誰も合計していない。水分の欄はあるのに、1日どれだけ飲めたかが分からない。
この記事では、食事と水分の記録に何を残すのか、量をどう書けば人によってぶれないのか、そして脱水と低栄養に気づくためにどう使うのかを整理します。
結論:食事は割合、水分はミリリットルで書く
食事・水分摂取記録とは、1日に食べた量と飲んだ量を記録したもののことです。
書き方の基本は2つです。食事は割合で、水分は量で書きます。食事は「主食8割・副食10割」、水分は「150ミリリットル」。単位が違うのは、必要な判断が違うからです。
ポイントはここです。水分は合計が意味を持ちます。1日にどれだけ飲めたかが分からないと、脱水に気づけません。だから、ミリリットルで書いて、その日の合計が出る形にしておく必要があります。
食事のほうは、合計よりも推移が意味を持ちます。1食だけ少なくても心配は要りませんが、3日続いたら別の話になります。今週に入って主食が5割に落ちている、副食だけ残すようになった。ここに気づくのが目的になります。
食事の量をどう書くか
いちばんぶれるのが、食事の割合です。同じ食事を見ても、人によって「7割」と「8割」に分かれます。
そろえる方法は2つです。1つ目が、段階を粗くすること。10割・8割・5割・3割・0といった5段階にすれば、迷いが減ります。細かくするほどぶれます。
2つ目が、主食と副食を分けること。まとめて「7割」と書くと、何を残したかが分かりません。ごはんは全部食べたが、おかずを残しているのか。逆なのか。この2つでは、打つ手がまったく違います。
どちらを残すかには意味があります。主食を残す方は量そのものが多いことが多く、副食を残す方は形態や味の問題であることが多くあります。分けて書くだけで、原因の見当がつきます。
副食をさらに分けている事業所もあります。主菜と副菜。肉や魚を残すのか、野菜を残すのか。たんぱく質が摂れているかを見たい場合は、ここまで分けると使えます。ただし書く手間が増えるので、全員に適用する必要はありません。
書き方の例を挙げます。
> 昼食:主食10、主菜8、副菜3。副菜(ほうれん草のおひたし)を残される。「かたい」とのお話あり。
残した理由が分かる1行があると、次の食事で対応できます。刻みの大きさを変える、代わりのものを出す。記録が調理側に届くと、食事の内容そのものが変わります。
水分の量をどう書くか
水分は、合計が出せる形にすることがすべてです。
容器ごとの量を先に決めておきます。湯のみ1杯は150ミリリットル、コップ1杯は200ミリリットル、お茶碗の汁物は120ミリリットル。これを一覧にして貼っておけば、毎回測る必要がありません。
汁物やお茶の量も、器で決めておきます。毎回測るのは現実的ではないので、器の種類ごとの目安を決めてしまうのがいちばん確実です。
食事に含まれる水分も入れるかどうかを決めます。みそ汁、お茶、牛乳は数えるのが一般的です。おかゆやゼリーをどう扱うかは、事業所で決めて統一します。決めていないと、書く人によって合計が変わります。
書いた量は、その日のうちに合計します。合計の欄を用紙の右端に置いておけば、足し算はその場で終わります。夕方の時点で合計が足りていなければ、まだ手が打てます。翌日に集計しても、遅れた分は戻せません。
水分は、足りない日に気づけるかどうかがすべてです。翌朝に集計しても、その日の分は戻せません。
目標量は人によって違います。医師や看護職員が決めた量があるなら、記録の様式にその数字を書いておきます。目標が目に入る形になっていると、足りていないことにその場で気づけます。
書く手間を減らす
毎食ごとに全員ぶんを書くので、ここも量が多い記録です。減らす工夫を3つ挙げます。
1つ目が、一覧の形にすること。利用者を縦、朝昼夕を横に並べた1枚にすると、配膳を下げながら順に書けます。1人1枚だと、その都度めくることになります。
2つ目が、数字だけで書けるようにすること。「主食10/主菜8/副菜3」と数字を並べるだけの欄にすれば、文を書く必要がありません。特記だけ自由記述にします。
3つ目が、水分は都度ではなく容器で数えること。配った容器の数を数える形にすれば、飲むたびに測る必要がありません。「湯のみ2杯=300」と後から計算できます。
書く場所は下膳の動線に置きます。食堂から事務所へ戻ってから書く形だと、記憶で書くことになり、細かい残し方が落ちます。
全員ぶんを同じ精度で書くのは、人数が増えるほど難しくなります。
利用者が多い事業所では、気をつけて見る人だけ詳しく書くという割り切りも要ります。全員を同じ精度で書こうとすると、全員が雑になります。低栄養や脱水のリスクがある方を決めて、その方だけ特記まで残す形にします。
脱水に気づく
水分の記録がいちばん力を発揮するのが、脱水に気づく場面です。高齢の方は喉の渇きを感じにくく、自分からは飲まないことがあります。
見るのは3つです。1日の合計(目標に届いているか)、数日の推移(減ってきていないか)、他の記録との組み合わせ(尿の回数が減っていないか、皮膚の張りはどうか)。
合計を見る人も決めておきます。書く人と見る人が同じだと、忙しい日に飛びます。夕方の勤務者が全員ぶんの合計を確認するという形にしている事業所があります。
気温の高い時期は、合計を見る頻度を上げます。夏場は同じ量を飲んでいても足りなくなります。事業所によって「7月から9月は毎日夕方に確認」といった運用を置いています。
飲めていないと分かったら、打つ手は決まっています。声かけの回数を増やす、好みの飲み物に変える、一度の量を減らして回数を増やす、ゼリーなど食べやすい形にする。どれを試したかも記録に残すと、何が効いたかが分かります。
医療的な判断は看護職員や医師が行います。介護職に求められるのは、数字で気づいて、つなぐことです。「あまり飲んでいない気がする」ではなく「昨日は600、今日は450です」と言えると、判断が早くなります。
好みと習慣を残しておく
量の記録だけでは、その人がなぜ食べないのかは分かりません。好みと習慣を別に残しておくと、打つ手が増えます。
残したいのは4つです。好きなもの・苦手なもの、食べる速さと順番(汁物から手をつける、など)、環境の好み(静かな席がよい、人と話しながらのほうが進む)、時間帯(朝は食が細いが夕は進む)。
これは毎日書くものではありません。入所時や利用開始時に聞き取って、変化があったときに直す形で足ります。1枚の用紙にまとめて、記録の綴りの先頭に置いておきます。
効くのは、食べなくなったときです。「もともと魚は苦手だった」と分かっていれば、体調の変化ではなく献立の問題だと判断できます。逆に、好物を残すようになったなら、それは体調を疑う材料になります。
家族から聞ける情報も多くあります。在宅でどう食べていたか、何を好んでいたか。入所時に聞いておかないと、あとから聞く機会がありません。
低栄養に気づく
食事のほうは、体重と組み合わせて見ます。
食事量が落ちていても、数日なら体調の波であることがあります。続いているかどうかと、体重が減っているかどうかの2つで判断します。
体重を測る日も決めておきます。「毎月第1火曜日の入浴時」のように場面に紐づけると、測り忘れが減ります。測っていない月があると、推移が追えなくなります。
体重は、月に1度は測って記録します。1か月で数パーセント減っている場合は、看護職員へつなぐ目安として置いている事業所があります。目安の数字は事業所で決めて、紙に書いておきます。
体重の測り方もそろえます。着衣のまま測るのか、いつ測るのか。条件が毎回違うと、増減が本当かどうか分かりません。
食事量が落ちる原因は、体調だけではありません。口の中の状態(歯、義歯の合い方、口内炎)、食事の形態(かたい、飲み込みにくい)、環境(席の位置、周りの音)、気分。記録の特記欄に、気づいたことを1行書いておくと、原因にたどり着きやすくなります。
記録を厨房と共有する
食事の記録がいちばんもったいない使われ方をするのは、介護職の中だけで完結してしまうときです。厨房に届くと、食事そのものが変わります。
届けたいのは3つです。よく残されるもの(献立の傾向)、残す理由(かたい、味が濃い、量が多い)、形態を変えたほうがよさそうな方。
やり方は難しくありません。月に1度、残食の多かった献立を厨房に伝えるだけです。「ほうれん草のおひたしは毎回残りが多い」「煮魚は食べが良い」。これだけで、次の献立に反映できます。
委託の厨房であっても同じです。むしろ委託先は、現場の反応が分からないまま作っていることが多いので、情報が届くと歓迎されます。
個別の形態の変更も、記録があると話が早くなります。「先月から主菜の残しが増えている。かたいとの訴えあり」。感覚ではなく記録で伝えると、変更の判断がしやすくなります。
逆に、厨房から情報をもらう場面もあります。「今日は行事食で量が多め」と分かっていれば、残しが多くても体調の変化ではないと判断できます。
誤嚥の兆候も記録に出る
食事の記録は、誤嚥のリスクに気づく場面でもあります。ここは生命に関わります。
どれも、毎食その場にいる人にしか気づけないことです。
拾いたいのは4つです。むせ(何回、何を食べたときか)、口の中に食べ物が残る、食事に時間がかかるようになった、声が変わる(食後にがらがら声になる)。
むせは「あり」だけで終わらせません。「汁物で2回むせ込み」と書けば、水分でむせているのか固形物でむせているのかが分かります。対応が変わる部分です。
むせが増えている方は、食事の姿勢も一緒に見ます。椅子の高さ、背もたれの角度、テーブルとの距離。記録の特記欄に姿勢のことが書けると、原因の切り分けが進みます。
食形態を変えた場合は、変えた日を記録に残します。あとで事故が起きたとき、いつから何を出していたかが問われます。変更の履歴は、事故報告書でも必ず聞かれる項目になります。
判断と対応は、看護職員や言語聴覚士、医師が行います。記録は、その判断の材料になります。
通所と訪問での書き方
施設と違い、通所や訪問では1日のうち一部しか見られません。記録の意味も少し変わります。
通所では、その日の昼食だけを見ることになります。1食ぶんでは推移が追えないので、利用日ごとの比較で見ます。「前回の利用時より主食の残しが増えている」。週2回の利用でも、数か月並べれば傾向は出ます。
水分は、滞在中に飲んだ量を書きます。在宅での分は分からないので、そこを含めた合計を出すことはできません。「通所中に450ミリリットル」と、範囲が分かる書き方にしておきます。
訪問では、訪問時に見た分だけです。冷蔵庫の中や、置いてある飲み物の減り方から推測できることもありますが、推測は推測として書きます。「前回置いていったお茶が半分ほど残っていた」。
通所や訪問の記録は、家族やケアマネジャーに渡ることが前提になります。在宅の生活全体を見ているのはそちらなので、こちらが見た範囲を正確に伝えるほうが役に立ちます。分からないことを分からないと書くのが、この場面では特に大事になります。
まとめ
食事は割合で、水分はミリリットルで書きます。食事は主食と副食を分け、段階は粗くして人によるぶれを減らします。水分は容器ごとの目安量を決めて貼り、その日のうちに合計します。
まず手を付けるなら、容器ごとの目安量の一覧を作って貼るところからです。次に、水分の合計を夕方に確認する運用にすると、足りない日にその日のうちに手が打てます。
食事と水分は、体調の変化がいちばん早く出る場所です。数字で書いておけば、感覚より先に気づけます。
なお、目標とする水分量や、体重の減少に関する判断の目安は、個々の状態によって変わります。最終的な判断は、かかりつけの医師や看護職員、所在地の市区町村の介護保険担当課にご確認ください。
食事と水分の記録は、書く量のわりに使われていないことが多い記録です。水分の合計をその日のうちに見る。この1つを始めるだけで、記録が働き始めます。
よくある質問
通所では在宅の分が分かりません。
分かる範囲で書きます。「通所中に450ミリリットル」と、どこまでを見た数字かが分かる形にしておけば、家族やケアマネジャーが全体を組み立てられます。
食事の量はどう書けばよいですか。
割合で書きます。10割・8割・5割・3割・0の5段階程度に粗くすると、人によるぶれが減ります。主食と副食は分けて書きます。
水分はどう書けばよいですか。
ミリリットルで書きます。容器ごとの目安量を一覧にして貼っておけば、毎回測る必要がありません。合計が出る形にしておきます。
食事に含まれる水分は数えますか。
みそ汁やお茶は数えるのが一般的です。おかゆやゼリーをどう扱うかは事業所で決めて統一します。決めていないと、書く人によって合計が変わります。
記録を厨房に伝えたほうがよいですか。
残しの多い献立や、残す理由が届くと、次の献立や形態に反映されます。委託の厨房ほど現場の反応が分からないため、月1回でも伝える価値があります。
1日の目標量はどう決めるのですか。
個々の状態によって変わるため、医師や看護職員が決めた量があればそれを使います。記録の様式にその数字を書いておくと、足りていないことに気づけます。
むせはどう書きますか。
「あり」だけでなく、何回、何を食べたときかまで書きます。水分でむせているのか固形物でむせているのかで、対応が変わります。
食形態を変えたら記録しますか。
変えた日を残します。事故が起きたとき、いつから何を出していたかが必ず問われる項目になります。