保育のアレルギー対応|誤食を防ぐ手順と記録
目次
アレルギー対応は、保育のなかで間違いが即座に命に関わる数少ない場面です。誤食は、注意していても起きます。だからこそ、注意ではなく手順で防ぐ形が求められます。
この記事では、把握から提供までの流れ、誤食が起きやすい場面、そして記録に何を残すのかを整理します。人が変わっても同じ手順が回る形にすることを軸に書きます。
結論:アレルギー対応は「把握・共有・確認」の3段で組む
保育所でのアレルギー対応は、大きく3つの段でできています。
1段目が把握。誰が、何に、どの程度のアレルギーがあるかを確かめます。2段目が共有。その日その場にいる職員全員に届いていることが条件になります。その情報を全職員と厨房に届けます。3段目が確認。提供の直前に、目の前の食事が合っているかを確かめます。
ポイントはここです。事故は3段目で起きます。把握も共有もできていたのに、配膳のその瞬間に取り違える。だから、確認の手順をどれだけ具体的に決めてあるかが分かれ目になります。
把握と共有は準備の段階で、確認は毎日その場で行うものです。
一般には、医師の診断にもとづく生活管理指導表などの書面をもとに対応を決める形が取られています。保護者の口頭の申し出だけで判断しないのが基本になります。
把握のときに確かめること
入園時と、年度ごとの更新時に確かめます。ここが曖昧なまま始まると、あとの手順が全部ぶれます。
書面と面談の両方で確かめます。確かめるのは5つです。原因となる食物、症状の出方(どの程度で、どんな症状が出るか)、除去の範囲(完全に除去か、加熱していれば可か)、過去に起きたこと、緊急時の対応(薬の有無、かかりつけ医)。
症状の出方も確かめておきます。皮膚に出るだけなのか、呼吸に及ぶことがあるのか。緊急時の構えが変わります。
3つ目の除去の範囲が、いちばん間違いが起きる部分です。「卵アレルギー」と一言で言っても、完全除去なのか、加熱卵なら食べられるのかで対応がまったく違います。書面で範囲がはっきりしていることを確かめます。
書面は毎年更新してもらいます。前年のものを使い回すと、状態の変化に気づけません。提出をお願いする時期を、年度の初めの手続きに組み込んでおきます。
園でできる対応の範囲も決めておきます。細かく段階を分けた対応は、それだけ間違いが増えます。完全除去か、提供するかの二択にしている園が多くあります。安全側に寄せる判断です。
年度ごとの更新も必要です。子どもの状態は変わります。食べられるようになっていることもあれば、新しく出ることもあります。
共有のしかた
把握した情報が、その日その場にいる職員に届いていなければ意味がありません。
把握した情報は、届いてはじめて意味を持ちます。
共有する先は3つです。担任と補助の職員、厨房、そして全職員。行事や合同保育で、普段関わらない職員が配膳することがあります。
ファイルにしまってある情報は、その瞬間には見られません。
見える形にしておくのが要点です。一覧表を厨房と保育室に貼る、その子の食器やトレーの色を変える、名札を付ける。紙に書いてファイルに入れてあるだけでは、その瞬間には見られません。
見える化は、間違いを減らすいちばん確実な方法です。
色や形で区別する方法は、間違いにくい反面、本人や他の子に違いが目立つという面もあります。年齢が上がると気にする子も出てきます。安全を優先しつつ、やり方は年齢に応じて考えます。
新しく入った職員には、初日に伝えます。アレルギーのある子がいることは、入職初日に知っておくべき情報です。
提供の直前に確認する
事故が起きるのはここなので、いちばん具体的に決めます。
ここだけは、手間を惜しまない部分になります。
実務で使われている形は、複数の目で、声に出して確かめるというものです。厨房から受け取るとき、配膳するとき。それぞれで、名前と除去内容を声に出して読み上げ、もう1人が確認します。
この2段階を飛ばさないことが、いちばん確実な防ぎ方になります。
声に出すのが大事です。目で見るだけだと、見たつもりで通ります。声に出すと、自分の耳でも確かめられますし、周りの職員も気づけます。
席の位置も決めます。固定しておけば、代わりに入った職員でも分かります。アレルギーのある子の席を固定し、近くに職員が座ります。他の子の食事が混ざらないよう、距離を取る配慮もあります。
食事中も見守ります。配膳が正しくても、隣の子の食事に手が伸びることがあります。年齢が低いほど起きやすい場面です。落とした食べ物を拾って口に入れることもあります。配膳が正しくても、隣の子の食事に手が伸びることがあります。年齢が低いほど起きやすい場面です。
おかわりのときも同じ確認をします。量が少ないからと省くと、そこで起きます。おかわりは手順が飛ばされやすいので、ここを明記しておきます。
厨房との連携
園で調理している場合も、委託の場合も、厨房との連携が事故を防ぐ要になります。
どちらの形でも、決めておくことは同じです。決めておくのは4つです。献立を事前に確認する仕組み(アレルギーのある子の分を、月の献立が出た時点で確かめる)、代替食の内容の共有、受け渡しの方法、連絡の経路。
1つ目が特に効きます。月の献立が出た時点で確かめれば、当日に慌てることがありません。原材料まで確かめるのは手間ですが、加工品に含まれる原材料が見落としの原因になりやすい部分です。
受け渡しの方法は、物理的に分けるのが確実です。別のトレー、別の色の食器、ラップに名前を書く。見ただけで違いが分かる形にしておきます。
委託の厨房では、担当者が変わることがあります。引き継ぎのときに、アレルギー対応の情報が確実に渡っているかを園の側でも確かめます。委託先に任せきりにしない部分です。
献立が急に変わる場面もあります。食材が届かなかった、行事が変更になった。変更があったときの連絡の経路を決めておかないと、代替食だけ元のままということが起きます。
誤食が起きやすい場面
決まった場面があります。先に知っておくと、そこに手をかけられます。
1つ目が、いつもと違う日です。行事食、お誕生日会、遠足のお弁当。普段の献立と違うと、確認の手順も普段どおりに動きません。
2つ目が、担任が不在の日です。代わりに入った職員が、その子のことを知らない。だから全職員への共有が要ります。
3つ目が、食事以外の場面です。制作でつかう小麦粘土、牛乳パックを使った工作、食材を使った遊び。食べるつもりがない場面なので、警戒が緩みます。
4つ目が、おかわりと片付けの時間です。残った食事を下げる場面で、他の子の食器に触れることがあります。配膳のときは確認したのに、そのあとが手薄になります。
どれも、普段の流れから外れる場面です。手順が飛ぶのは、いつもと違う日と覚えておきます。
これらの場面には、あらかじめ手順を追加しておきます。行事の前に献立を確認する、代替職員への引き継ぎ書を作る、制作の材料を事前に確かめる。
起きてしまったときの対応
起きないのがいちばんですが、起きたときに動けることが要ります。
あわてる場面なので、順番を紙にしておきます。
1段目、食べるのをやめさせて、口の中のものを出します。無理に吐かせるかどうかは、症状と指示によります。
2段目、症状を見ます。時刻も記録します。あとで必ず聞かれます。皮膚、呼吸、意識、嘔吐。どこにどんな症状が出ているかを確かめます。
3段目、指示された対応を行います。薬を預かっている場合、その使用について事前に医師と保護者と取り決めた内容に従います。その場で判断するものではなく、事前に決めてあることを実行します。
4段目、救急と保護者への連絡です。判断に迷う状態なら呼びます。呼んで何もなかったほうが、はるかに良い結果です。呼吸の症状があるなど重い場合は、迷わず救急を呼びます。
この流れは、紙にして厨房と保育室に貼っておきます。そして年に1度は実際に動いてみます。読んだだけでは、その場で動けません。
起きた場合は、自治体への報告の対象になることがあります。範囲は保育の事故報告にまとめました。
訓練と研修
手順が紙にあっても、実際に動けるかは別です。年に1度は動いてみます。
やるのは2つです。誤食が起きた想定の訓練と、手順の見直し。
訓練は、短くて構いません。「◯◯ちゃんが誤って卵入りのパンを口にした」という想定で、その場にいる職員が動いてみます。誰が子どもを見て、誰が連絡して、誰が他の子を見るか。役割を口に出すだけでも、当日の動きが変わります。
薬を預かっている場合は、使い方を全職員が知っておく必要があります。使ったことがない人がその場にいるかもしれません。研修で実物か練習用のものに触れておくと、いざというときに手が動きます。
訓練のあとは、気づいたことを1つ手順に足します。やって終わりにしないのが要点です。
見直しは、1年のあいだに起きたヒヤリハットを材料にします。「危なかった」場面が、次に塞ぐべき穴を教えてくれます。実際に起きなくても、手順の弱いところは見えます。
新しく入った職員には、入職時に必ず伝えます。アレルギー対応は、慣れてから覚えるものではありません。初日から配膳に入ることがあります。
記録に残すこと
記録は、日々のものと年度ごとのものに分かれます。
日々残すのは3つです。提供した内容、確認した職員、変わったことがあれば特記。
確認した職員の欄を作るのが要点です。誰が確認したかが残っていないと、手順が実際に回っていたかを確かめられません。名前を書く欄があること自体が、確認を促します。
年度ごとの書面(生活管理指導表など)は、別に綴じて保管します。日々の記録に混ざると、最新のものがどれか分からなくなります。更新したら、古いものと差し替え、古いほうにも更新日を書いて残します。
日々の記録は、1行で足ります。長く書く必要はありません。
保護者とのやり取りも記録します。面談の内容、確認した事項、伝えたこと。認識の食い違いがいちばん怖い部分なので、書面で残して双方で確かめます。
保護者との取り決め
アレルギー対応は、園だけでは完結しません。保護者との取り決めが前提になります。
決めておくのは4つです。書面の提出と更新の時期、園でできる対応の範囲、緊急時の対応(薬の預かり、連絡の順番)、行事のときの扱い。
2つ目を先に伝えるのが大事です。園でできることには限りがあります。細かい段階分けはできない、この食材は完全に除去する。入園の前に伝えておかないと、あとで食い違います。
4つ目も忘れられがちです。遠足のお弁当は家庭から、お誕生日会のおやつはどうするか、行事で食材を扱う制作をするか。普段と違う日の扱いを、年度の初めに決めておきます。
面談の内容は、書面にして双方で持ちます。口頭の合意だけだと、認識がずれます。年度ごとに更新するときも、前年の書面を見ながら変わった点を確かめます。
保護者から「少しなら大丈夫」と言われることがあります。そのときも書面にもとづいて判断します。園としての基準を説明し、変更が必要なら医師の書面をお願いします。ここで例外を作ると、手順そのものが崩れます。
まとめ
アレルギー対応は、把握・共有・確認の3段で組みます。事故は3段目の確認で起きるため、声に出して複数の目で確かめる手順をどれだけ具体的に決めてあるかが分かれ目になります。
まず手を付けるなら、提供の直前の確認を「声に出して2人で」と決めて紙にするところからです。次に、行事・担任不在・食事以外の3場面に手順を足すと、起きやすいところが塞がります。
誤食は、気をつけていても起きます。起きにくい形をどれだけ作れているかが、園としてできることのすべてになります。
なお、除去の範囲や緊急時の対応は、医師の診断と指示にもとづきます。最終的な判断は、かかりつけの医師、嘱託医、所在地の自治体の保育担当課にご確認ください。
アレルギー対応は、注意深さではなく手順で防ぐ種類の仕事です。人が変わっても同じ確認が回る形にできているかが、そのまま安全の水準になります。
よくある質問
年度ごとに書面を更新するのですか。
更新します。子どもの状態は変わり、食べられるようになっていることも、新しく出ることもあります。前年のものを使い回すと変化に気づけません。
保護者の口頭の申し出だけで対応してよいですか。
医師の診断にもとづく書面をもとに対応を決めるのが基本とされています。生活管理指導表などの提出をお願いします。
訓練はやったほうがよいですか。
年に1度は、誤食が起きた想定で動いてみます。誰が子どもを見て、誰が連絡して、誰が他の子を見るか。役割を口に出すだけでも、当日の動きが変わります。
除去の範囲はどう決めるのですか。
書面で範囲がはっきりしていることを確かめます。細かく段階を分けると間違いが増えるため、完全除去か提供するかの二択にしている園が多くあります。
確認はどうやるのですか。
厨房から受け取るときと配膳するときの2段階で、名前と除去内容を声に出して読み上げ、もう1人が確認します。目で見るだけだと見たつもりで通ります。
誤食が起きやすいのはどんなときですか。
行事食など普段と違う日、担任が不在の日、制作など食事以外の場面、そしておかわりと片付けの時間です。
起きてしまったらどうしますか。
食べるのをやめさせ、症状を見て、事前に取り決めた対応を行います。呼吸の症状があるなど重い場合は迷わず救急を呼びます。その場で判断せず、決めてあることを実行します。
厨房とはどう連携しますか。
月の献立が出た時点で、アレルギーのある子の分を確かめる仕組みを作ります。受け渡しは別のトレーや色の違う食器で物理的に分け、見ただけで違いが分かる形にします。
記録には何を残しますか。
提供した内容、確認した職員、特記の3つです。確認した職員の欄があること自体が、手順が回っていた証拠になります。