排泄記録の書き方|何を残すと次の人が動けるか
目次
排泄記録は、介護の記録のなかでいちばん枚数が多く、いちばん形だけになりやすい記録です。チェックを付けるだけで1日が終わり、誰も見返さない。そういう状態になっている事業所は少なくありません。
この記事では、排泄記録に何を残すのか、書いた記録をどう使うのか、そして次の勤務の人が動けるようにするための書き方を整理します。
結論:排泄記録は「時刻・方法・量と性状」の3つで足りる
排泄記録とは、利用者の排泄の状況を記録したもののことです。介護記録の一部として、日々残されます。
残すのは3つです。いつ(時刻)、どこでどうやって(トイレ、ポータブル、おむつ)、どうだったか(量と性状)。この3つがそろっていれば、記録としては足ります。
ポイントはここです。排泄記録の価値は、1回ぶんではなく並べたときに出ます。1日の回数、間隔、時間帯の偏り。ここが見えると、トイレ誘導のタイミングを決められます。だから、あとで並べられる形で書くことがいちばん大事になります。
時刻を丸めない
いちばん多い問題が、時刻が丸まっていることです。「午前」「午後」「夜間」では、間隔が分かりません。
分まで書くのが理想ですが、せめて時間単位では残します。「10時ごろ」でも、「午前」よりはるかに使えます。排泄の間隔が3時間なのか5時間なのかで、誘導の計画がまったく変わります。
夜間は特に丸まりがちです。巡視の時刻が決まっているなら、その時刻を基準に書くだけでも精度が上がります。
おむつ交換の場合、排泄した時刻と交換した時刻は違います。交換のときに初めて気づくので、正確な排泄時刻は分かりません。この場合は交換の時刻を書き、「前回交換時から」という形で幅が分かるようにしておきます。
自立している方の場合、職員が把握できない回数があります。分かる範囲で構いません。「把握できた分」であることが分かる形にしておけば、記録として問題になりません。
量と性状をどう書くか
ここが人によってばらつきます。基準をそろえておかないと、並べても意味が読めません。
量は3段階か4段階に決めます。「少量・中等量・多量」あるいは「1・2・3」。何をもって中等量とするかを、事業所で1度決めて紙に書いておきます。人によって「多い」の感覚が違うからです。
性状は、便の場合は形状で分けます。水様、泥状、軟便、普通便、硬便。色や血液の混入があれば、そこも書きます。尿の場合は色と混濁の有無です。
基準を決めたら、新しく入った職員にも同じ表で説明します。判断の基準が人によって違うと、並べたときの数字が意味を持ちません。同じ方の記録なのに、書いた人によって量の段階が変わってしまいます。
基準をそろえる方法として、写真や図を使った表を掲示している事業所があります。言葉だけだと伝わりにくいので、便の形状を図で示した表を貼っておくと、判断がそろいます。
書き方の例を挙げます。
> 10時15分、トイレにて排便。中等量、軟便。血液の混入なし。自立にて実施、声かけのみ。
次の人が動ける情報を1つ足す
3つの基本項目に加えて、次の勤務の人が動けるための1行があると、記録の価値が上がります。
書きたいのは3つのどれかです。訴えがあったか(「おなかが張る」「出きっていない感じがする」)、いつもと違ったか(普段より間隔が短い、量が少ない)、介助の状況が変わったか(普段は自立だが今日は誘導が必要だった)。
この1行が、申し送りの材料になります。「3日排便がない」「昨日から水様便が続いている」。ここに気づけるのは、記録を書いている人だからです。
逆に、この欄に毎回同じことが書かれていると、読まれなくなります。何も無い日は空欄で構いません。空欄であること自体が「いつもどおり」の情報になります。
書く場所と書く量を減らす
排泄記録は回数が多いので、1回あたりの手間がそのまま総量になります。ここを減らすのが続けるこつです。
チェック式にできるものは全部チェックにします。方法(トイレ・Pトイレ・おむつ・尿器)、量(3段階)、性状(5段階)。ここまで選択式にすれば、書くのは時刻と特記だけになります。
書く場所をトイレの近くに置きます。エプロンのポケットに入る小さなメモを持ち、あとで表に転記する形にしている事業所もあります。転記の手間はありますが、その場の時刻が正確に残ります。居室から事務所まで戻って書く形だと、その間に他の用事が入ります。フロアごとに用紙を置くだけで、書き漏れが減ります。
1人1枚の表にするか、全員を1枚に並べるかも、使い方で変わります。1人1枚は、その方の推移を追いやすい形です。全員を1枚に並べる形は、フロア全体の状況が一目で分かり、誘導の優先順位を決めやすくなります。
どちらが正しいというものではなく、見る場面が多いほうに合わせます。誘導の判断に毎日使うなら一覧、モニタリングで使うなら個人別です。
実務では、その場は全員の一覧に書き、月ごとに個人別に集計する形が扱いやすくなります。書くときは楽で、見るときは個人で追えます。
並べて何を見るのか
書いた記録は、並べて見てはじめて使えます。見るのは4つです。
1つ目が、1日の回数。増えているか減っているかを追います。2つ目が、間隔。何時間ごとに来るかが分かれば、誘導のタイミングが決まります。
3つ目が、時間帯の偏り。朝に集中する方、夜間に多い方。夜間に多い方は、日中の水分の摂り方を見直す材料になります。4つ目が、排便の間隔。何日出ていないかを追います。
排便の間隔は、表の欄外に「最終排便日」を書いておくと追いやすくなります。日数が自動で出る形にしておけば、報告の目安を超えたことにその場で気づけます。毎回さかのぼって数えるのは手間なので、前回の日付が目に入る形にしておきます。
4つとも、1日の記録では見えません。1週間から1か月を並べてはじめて分かるものなので、見る単位を決めておきます。
見る場面を決めておきます。申し送りのとき、週に1度のカンファレンス、月に1度のまとめ。見る場面が無いと、書く意味が伝わりません。
便秘と下痢に気づく
排泄記録がいちばん力を発揮するのが、体調の変化に気づく場面です。ここは生命に関わることがあります。
排便が数日ない状態が続くと、腹部の張りや食欲の低下につながります。何日出ていないかを記録から追えるようにしておきます。事業所によって「3日で報告」「4日で看護師へ」といった目安を決めています。
水様便が続く場合は、感染症の可能性を考える場面になります。同じ時期に複数の利用者に同じ症状が出ていないかを、記録を並べて確かめます。1人だけでは気づけないことが、並べると見えます。
血液の混入は、見つけた時点で報告します。量の多少にかかわらず、記録に残して看護職員へつなぎます。
こうした判断の目安は、事業所で決めて紙に書いておきます。「何日で報告するか」が人によって違うと、気づくのが遅れます。判断を個人の経験に委ねないのが要点です。
医療的な判断そのものは、看護職員や医師が行います。介護職に求められるのは、気づいて、つなぐことです。記録は、そのための材料になります。
トイレ誘導につなげる
記録がいちばん役に立つのが、誘導のタイミングを決める場面です。
誘導の時刻を決めるときは、排泄の時刻そのものではなく、その30分前を目安にします。出そうになってから声をかけても間に合いません。
やり方は単純です。1週間ぶんの記録を並べて、排泄の時刻に印を付けます。すると、だいたい決まった時間帯に集中していることが見えてきます。その少し前に声をかける形にすると、間に合う回数が増えます。
間に合った回数が増えると、本人の負担が減り、おむつの使用量も減ります。職員の介助の手間も変わります。記録を取ることが、そのまま成果につながる数少ない場面になります。
誘導の時刻を決めたら、それも記録に残します。「10時に誘導、間に合った」「14時に誘導、既に失禁あり」。決めた時刻が合っているかを、また記録で確かめるという循環になります。
水分の記録とあわせて見る
排泄だけを見ていても、原因までは届きません。水分の記録とセットで見ると、打てる手が出てきます。
排泄の記録と水分の記録は、原因と結果の関係にあることが多くあります。
尿の回数が減っているとき、まず水分の摂取量を見ます。飲めていないなら、排泄の問題ではなく水分の問題です。声かけの回数を増やす、好みの飲み物に変える、といった手が先になります。
夜間の排尿が多いときは、日中と夕方以降の水分の配分を見ます。夕方に多く摂っていれば、日中に寄せる調整ができます。ただし、全体量を減らす方向には安易に動かないのが要点です。脱水のほうが危険な場面があります。
便が硬いときも、水分と食事の両方を見ます。水分量、食物繊維、活動量。排泄記録だけでは分からないことが、他の記録と並べると見えてきます。
そのため、排泄・食事・水分の記録は同じ紙に並んでいるほうが使えます。別々の表に分かれていると、突き合わせる作業が発生して、結局見られなくなります。食事と水分の記録は食事・水分摂取記録の書き方にまとめました。
判断そのものは看護職員や医師が行います。介護職は、並べて気づいて、つなぐところまでを担います。
尊厳に関わる記録であること
排泄は、本人にとってもっとも見られたくない部分です。記録の扱いにも配慮が要ります。
記録そのものを減らすことはできませんが、扱い方で本人の受け取り方は変わります。
書く言葉に気をつけます。「失禁」「汚染」といった言葉は事務的に使われますが、家族が読むと受け取り方が変わります。「トイレに間に合わなかった」「衣類の交換を行った」といった書き方に置き換えられる場面があります。
掲示や共有の仕方にも配慮が要ります。排泄の一覧表を誰でも見える場所に貼っている事業所がありますが、面会の家族や他の利用者の目に触れます。置き場所を見直す価値があります。
記録は必要ですが、その人の尊厳を損なわない形で残すという視点は持っておきます。ここは虐待防止の考え方ともつながる部分です。
おむつからトイレへ戻すときの記録
排泄の記録がもっとも生きるのが、おむつを使っている方をトイレでの排泄に戻していく場面です。
ここでは、記録の取り方を少し変えます。普段の3項目に加えて、「誘導したか」「間に合ったか」「本人の反応」の3つを残します。
間に合った回数を数えられる形にしておくと、進んでいるかどうかが数字で分かります。「今週は10回中6回間に合った。先週は4回だった」。この数字があると、本人にも家族にも説明できます。
週ごとに数えるのが手軽です。毎日の増減に一喜一憂すると続きません。
うまくいかない日が続くと、現場は諦めかけます。そのときに数字が残っていれば、少しずつ良くなっていることが見えます。感覚だけだと、失敗した日の印象が強く残ります。
本人の反応も残します。「トイレで排泄されたあと、表情が明るかった」。こうした記録が、続ける理由になります。排泄の自立は、本人の生活の質に直接つながる部分なので、ここに手をかける価値は大きくなります。
逆に、負担が大きすぎて本人がつらそうな場合も、記録から見えます。無理に進めないという判断も、記録があってこそできます。
まとめ
排泄記録は、時刻・方法・量と性状の3つで足ります。そこに、次の勤務の人が動ける1行を足すと、記録の価値が上がります。時刻を丸めず、量と性状の基準を事業所でそろえるのが要点です。
まず手を付けるなら、量の段階の基準を紙に書いて貼るところからです。次に、1週間ぶんを並べて誘導のタイミングを決めてみると、記録が役に立つ実感が現場に伝わります。
排泄の記録は、書くのが目的ではなく、その人がトイレで排泄できる回数を増やすための材料です。そこにつながらない記録は、量を減らしても構いません。
なお、記録として求められる内容や保存の年数は、サービスの種類や保険者によって運用が異なります。最終的な判断は、所在地の市区町村の介護保険担当課にご確認ください。
排泄記録は、書く量が多いぶん、様式の作りがそのまま続くかどうかを決めます。選択式にして、トイレの近くに置く。この2つだけで、記録はかなり残るようになります。
よくある質問
排泄記録には何を書くのですか。
時刻、方法(トイレ・ポータブル・おむつ)、量と性状の3つが基本です。そこに、訴えやいつもと違う点を1行足すと、次の勤務の人が動けます。
時刻はどこまで正確に書くのですか。
分まで書けるなら書きます。おむつ交換で正確な時刻が分からない場合は、交換の時刻を書いて「前回交換時から」と幅が分かる形にします。
量の基準はどう決めるのですか。
3段階か4段階に決めて、何をもって中等量とするかを事業所で1度決め、紙に書いて貼ります。人によって感覚が違うためです。
書く量が多くて続きません。
選択式にできる項目を全部チェック式にすると、書くのは時刻と特記だけになります。用紙をトイレの近くに置くのもあわせて効きます。
自立している方の記録はどうしますか。
分かる範囲で構いません。「把握できた分」であることが分かる形にしておけば問題ありません。
便秘や下痢にはどう気づきますか。
最終排便日を表に出しておき、事業所で「何日で報告するか」を決めておきます。水様便が続く場合は、同じ時期に他の利用者にも出ていないかを並べて確かめます。
記録は何に使うのですか。
回数、間隔、時間帯の偏り、排便の間隔を追います。並べるとトイレ誘導のタイミングが決まり、間に合う回数が増えます。
おむつからトイレに戻せますか。
記録を取りながら進める形が取られています。誘導の有無、間に合ったか、本人の反応を追加で残すと、進んでいるかが数字で分かり、現場も続けやすくなります。
家族が読むことはありますか。
開示を求められることがあります。「失禁」「汚染」といった言葉は、置き換えられる場面があるので、様式の言葉を一度見直す価値があります。