介護記録の書き方|客観的に書く型と主語の置き方
目次
介護記録は、毎日書いているのに「これでいいのか」が分からないまま続いている書類です。書く時間が足りず、夜勤の終わりにまとめて書く。書いたものが誰にも読まれていない気がする。この2つが重なると、記録は形だけになっていきます。
この記事では、介護記録に何を書くのか、客観的に書くとはどういうことか、そして書く時間を減らしながら中身を濃くする方法を整理します。
結論:介護記録は「見たこと」と「したこと」を分けて書く
介護記録とは、利用者に提供したサービスの内容と、その際の状態を記録したもののことです。
一般には、各サービスの運営基準の中で、提供した具体的なサービスの内容等を記録することが求められているとされています。書くこと自体が義務になっている書類です。
ポイントはここです。書く内容は2つしかありません。見たこと(利用者の状態)と、したこと(提供したケア)。この2つを分けて書くと、記録は急に読みやすくなります。
分けずに書くと、「食事介助を行い、全量摂取された」のように、したこととその結果が1文に混ざります。悪くはありませんが、状態の変化を追いたいときに探しにくくなります。
主語を置く
いちばん多い問題が、主語が無いことです。「入浴。拒否あり。」では、誰が拒否したのかが書かれていません。
利用者の状態を書くときは利用者を主語に、提供したケアを書くときは職員を主語にします。「◯◯様は入浴を拒否された」「職員2名で誘導した」。これだけで、読んだ人が場面を思い浮かべられます。
記録の末尾に記入者の氏名を入れるのも同じ理由です。誰が書いたかが分かれば、あとから確かめる相手が分かります。
省略しがちなのは、複数の職員が関わったときです。「2名で移乗」と書いてあっても、誰と誰かが分かりません。氏名まで書く運用にしておくと、あとで状況を確かめるときに聞ける相手が分かります。
客観的に書くとはどういうことか
「客観的に書く」とよく言われますが、何をどうすればよいのかが伝わりにくい言葉です。具体的には3つです。
1つ目が、見たことと、思ったことを分けること。「元気がなかった」は思ったこと。「朝食を3割残され、声かけへの返答が少なかった」が見たことです。
2つ目が、数字で書けるものは数字で書くこと。「たくさん飲まれた」ではなく「200ミリリットル」。「何回か」ではなく「3回」。
3つ目が、言われたことはそのまま書くこと。「不満そうだった」ではなく「『もう帰りたい』とお話しされた」。
思ったことを書いてはいけない、という意味ではありません。気づきは大事な情報です。ただ、事実と分けて書きます。「朝食を3割残された。普段は全量のため、体調を確認した」。前半が事実、後半が判断です。
書き出しの型を3つ持つ
毎回ゼロから文を考えると時間がかかります。書き出しの型を3つ持っておくと、手が止まりません。
1つ目は状態から入る型。「◯◯様は、朝食時に主菜を3割残された。」利用者の状態が主題のときに使います。
2つ目はケアから入る型。「10時、職員2名で入浴介助を実施。」提供したことが主題のときに使います。
3つ目は出来事から入る型。「14時20分、リビングで他の利用者と口論になられた。」いつもと違うことが起きたときに使います。
型が決まっていると、書くのが速くなるだけでなく、読むのも速くなります。同じ順番で書かれた記録は、目が慣れて必要な部分をすぐ見つけられます。
新しく入った職員には、この3つを見本つきで渡します。「客観的に書きなさい」と言うより、型を3つ示すほうが伝わります。
何を書くかは「変化」で決める
毎日同じことを書いていると、書くほうも読むほうも意味を感じなくなります。書く量を絞る基準は、いつもと違うかです。
いつもどおりの日は短くて構いません。逆に、いつもと違うことがあった日は、そこを詳しく書きます。「変化があったかどうか」を判断の軸にすると、何を書くかで迷わなくなります。
8つ全部を毎日書く必要はありません。その方にとって見るべき項目が決まっているはずなので、様式にその欄を作っておきます。人によって見る項目が違うのは自然なことです。
変化として拾いたいのは、食事の量、水分の量、排泄の回数と性状、睡眠、皮膚の状態、言動、痛みの訴え、活動への参加。この8つを見る癖をつけておくと、変化に気づきやすくなります。
記録を書く相手は、明日の自分と、次に入る職員です。そう考えると、書く量の目安が決まります。
変化が無い日でも、「変化なし」で終わらせず、確認した項目が分かる形にしておきます。選択式の欄があれば、チェックだけで済みます。
書く時間を減らす
記録が形だけになるいちばんの原因は、時間が足りないことです。減らす手は3つあります。
1つ目が、選択式を増やすこと。食事の量、排泄の有無と性状、入浴の可否。毎日同じ項目は、選ぶだけの形にします。自由記述を残すのは「特記」だけにします。
2つ目が、その場で書くこと。まとめて書くと、思い出す時間がかかり、内容も丸まります。居室やフロアに書ける場所を作ると、その場で数十秒で済みます。
3つ目が、二重に書かないこと。同じことを介護記録とチェック表の両方に書いている場面があります。どちらかに寄せます。
3つ目は意外と多くあります。一度、1日ぶんの記録を全部並べて、同じ情報が2か所に書かれていないかを見てみると分かります。排泄の記録を専用の表に書いて、さらに介護記録にも書いている。表があるなら、介護記録には特記だけでよいことにします。
読まれる記録にする
書いたものが読まれていないと、書く意味が感じられなくなります。読まれる仕組みを作ります。
申し送りで使うのがいちばん簡単です。口頭だけで申し送っている事業所では、記録を開く場面がありません。開く理由を作るのが先になります。前の勤務帯の記録を見ながら申し送りをする形にすれば、必ず読まれます。読まれると分かれば、書く側も内容を選ぶようになります。
カンファレンスで引用するのも効きます。「◯月◯日の記録に、夜間の起き上がりが増えていると書かれています」。自分の書いたものが検討の材料になったと分かると、次から書き方が変わります。
読む側の負担も考えます。1人1日で書く量が多すぎると、読み切れません。変化のある日だけ詳しく書く形にしておくと、読む側も重要な日が分かります。
避けたい書き方
読み返したときに困る書き方が決まっています。4つ挙げます。
1つ目が、評価の言葉だけで終わること。「機嫌が悪い」「協力的でない」「困った様子」。何を見てそう思ったのかが残らず、次に読む人が判断できません。
2つ目が、否定形で人を表すこと。「できない」「わからない」「理解力が低い」。状態ではなく人の評価になっており、家族が読んだときに問題になります。「声かけを3回行い、2回目で立ち上がられた」のように、事実で書きます。
3つ目が、時刻の丸めです。「午前中」「夕方」。変化を追うときに使えません。分まで書けるなら書きます。
4つ目が、他の利用者の氏名です。同室者や関わった方の名前を書くと、別の方の個人情報になります。「同席の方」と書きます。
あわせて、訂正の仕方も決めておきます。書き間違えたときに塗りつぶすと、何を消したかが分からなくなります。二重線を引いて訂正印を押す形が一般的です。電子の場合は、修正の履歴が残る仕組みにしておきます。
ケアプランとつなげる
記録が単なる日誌で終わってしまうのは、計画とつながっていないからです。ここをつなぐと、書く意味がはっきりします。
ケアプランには、その方の目標が書かれています。「トイレでの排泄を続けられる」「食事を自分で摂れる」。記録は、その目標に対してどうだったかを残す場所でもあります。
つなげ方は簡単で、記録の様式に目標に関する欄を1つ作ります。その方の目標に関わることを、毎日1行書く。「トイレでの排泄3回、うち1回は声かけのみで移動できた」。
こうしておくと、モニタリングの時期にまとめて振り返る作業が要らなくなります。毎日の記録がそのまま評価の材料になります。
目標が変われば、書く欄も変わります。ケアプランを見直したときに、記録の様式も見直す。この2つを一緒に動かすと、記録が古い目標を追い続けることがなくなります。
夜勤帯の記録をどうするか
いちばん書きにくいのが夜勤帯です。1人で複数のフロアを見ていて、書く時間が取れません。
工夫は3つあります。1つ目が、巡視のたびにメモを取ること。全部を文にせず、時刻と気づきだけ。「2:10 302号室 起き上がりあり 声かけで臥床」。あとで清書する形でも、時刻が正確に残ります。
2つ目が、変化のあった人だけ詳しく書くこと。全員について同じ量を書こうとすると終わりません。いつもどおりの方はチェックだけにします。
3つ目が、朝の申し送りの前に書き切ること。申し送りが終わってから書こうとすると、質問に答えているうちに記憶が混ざります。
夜勤の記録は、日中の判断の材料になります。夜間の起き上がりが増えている、排泄の回数が変わっている。ここに気づけるのは夜勤者だけなので、短くても残す価値があります。
書く時間を勤務時間の中に見込んでおくことも大事です。「手が空いたら書く」では、手は空きません。巡視と巡視の間に書く時間を組み込んでおきます。
記録が使われる場面
介護記録は、日々の申し送り以外にも使われます。使い道が分かっていると、書く内容が変わります。
1つ目が、ケアプランの見直しです。目標に対してどうだったかを、記録から見ます。2つ目が、家族への説明です。日々の様子を伝える材料になります。3つ目が、事故が起きたときの説明。事故の前の状態が記録に残っていることが、施設を守ります。
4つ目が、実地指導です。計画に沿ったサービスが提供されているかを、記録から確かめられます。計画に無いことばかり書いてあると、計画のほうが実態と合っていないことになります。計画に沿ったサービスが提供されているかを、記録から確かめられます。
5つ目が、引き継ぎです。担当が変わったとき、新しい職員がその方を知る入口は記録しかありません。何年も前の記録が、いまの担当を助けることがあります。
5つとも、書いた本人以外が読みます。身内にしか通じない略語や、主観を含む言い方が使えないのは、そのためです。
紙と電子のどちらを選ぶか
記録の量が多いので、電子化を考える場面が出てきます。どちらにも向き不向きがあります。
紙の利点は、その場で書けることです。居室でもフロアでも、用紙があれば数十秒で済みます。図や絵で残すこともできます。欠点は、集計と検索が手作業になることです。
電子の利点は、あとから探せることです。「先月の食事量の推移」をすぐ出せます。書き換えの履歴も残ります。欠点は、端末が手元に無いと書けないことと、入力に慣れるまで時間がかかることです。
判断の目安としては、利用者が20人を超えて、集計に毎月半日以上かかっているなら電子が効きます。それ以下なら、紙のままで困らないことが多くあります。
途中の形もあります。バイタルや食事量など数字のものだけ電子にして、様子の記録は紙で残す。数字は集計に使い、様子は読むもの、と性質が違うので、分けても不自然になりません。
どちらにしても、後から書き換えられない形にしておくことが要ります。紙なら鉛筆を使わない、電子なら修正の履歴が残る。記録の信頼はここで決まります。
まとめ
介護記録は、見たことと、したことを分けて書くのが基本です。主語を置き、思ったことと事実を分け、数字で書けるものは数字で書きます。書く量は「いつもと違うか」で決めると迷いません。
まず手を付けるなら、毎日同じことを書いている項目を選択式に変えるところからです。次に、前の勤務帯の記録を見ながら申し送りをする形にすると、書いたものが読まれるようになります。
記録の質は、書く人の文章力ではなく様式で決まります。選択式を増やして、特記だけ自由に書く。この形にすれば、誰が書いても一定の記録になります。
なお、記録として求められる内容や保存の年数は、サービスの種類や保険者によって運用が異なります。最終的な判断は、所在地の市区町村の介護保険担当課にご確認ください。
介護記録は、うまく書こうとするほど時間がかかります。見たことと、したことを分ける。この1つを守るだけで、読める記録になります。
よくある質問
介護記録には何を書くのですか。
提供したサービスの内容と、その際の利用者の状態です。見たことと、したことを分けて書くと読みやすくなります。
「客観的に書く」とは具体的にどうすることですか。
思ったことと見たことを分け、数字で書けるものは数字で書き、言われたことはそのまま書くことです。
書くのが速い人と遅い人で差が出ます。
文章力の差ではなく、型を持っているかどうかの差であることが多くあります。書き出しの型を3つ配るだけで、差はかなり縮まります。
毎日同じ内容になってしまいます。
書く量は「いつもと違うか」で決めます。いつもどおりの日は短くて構いません。選択式の欄を増やせば、変化のない日はチェックだけで済みます。
まとめて書いてもよいですか。
思い出す時間がかかり、内容も丸まります。その場で書ける場所を作るほうが、短い時間で濃い記録になります。
訂正はどうすればよいですか。
塗りつぶすと何を消したか分からなくなります。二重線と訂正印が一般的です。電子の場合は修正の履歴が残る仕組みにしておきます。
思ったことは書いてはいけませんか。
書いて構いませんが、事実と分けます。前半に見たこと、後半に判断や気づきを置く形にすると、読んだ人が区別できます。
夜勤帯はいつ書けばよいですか。
巡視のたびに時刻と気づきをメモしておき、朝の申し送りの前に書き切る形が現実的です。書く時間を勤務時間の中に見込んでおかないと、手は空きません。
保存は何年ですか。
サービスの完結の日から2年とされていますが、市町村の条例で5年とされている場合があります。自施設の保険者に確かめます。