健康観察記録の書き方|登園時に見る3点
目次
健康観察は、保育のなかでもっとも短い時間で行われる確認です。登園してきた子を受け入れる数十秒。そこで見たことが、その日1日の判断を左右します。
この記事では、登園時に何を見るのか、記録に何を残すのか、そして受け入れを見合わせる線をどこに引くかを整理します。感染症が広がりかけたときの使い方まで書きます。
結論:登園時に見るのは「顔色」「機嫌」「体温」の3点
健康観察記録とは、子どもの体調を確かめてその内容を記録したもののことです。登園時と、日中の変化があったときに残します。
見る項目は多くありません。登園時に見るのは3つです。顔色、機嫌と様子、体温。ここに、保護者からの申し送りを足すと、その日の見方が決まります。
ポイントはここです。3点のうち、いちばん早く変化が出るのは機嫌です。熱が上がる前に、ぐずる、活気がない、いつもより甘える。数字より先に見えるものがあります。
保護者からの申し送りを必ず聞く
いちばん大事な情報源が、朝の保護者です。家庭での様子は園では分かりません。
短いやり取りですが、ここで得られる情報の量がいちばん多くなります。
聞きたいのは4つです。前夜の睡眠、朝の食事、排便、気になること(咳、鼻水、発疹、薬を飲んだか)。
連絡帳に書いてあっても、口頭で一言確かめます。書く時間がなくて口頭だけ、という保護者もいます。逆に、書いてあっても読む時間が無いまま受け入れてしまうこともあります。
朝は保護者も急いでいます。長く聞こうとせず、1つだけ具体的に聞くほうが、結果的に情報が出てきます。
「変わりありません」だけで終わらせないのがこつです。「昨夜はよく眠れましたか」と具体的に聞くと、「少し咳をしていました」と出てくることがあります。
その場で書けないときは、キーワードだけメモしておきます。受け入れが一段落してから整えます。
聞いたことは記録に残します。あとで体調が変わったとき、朝の情報が判断の材料になります。
体温の測り方と扱い
体温は、園で測る場合と家庭で測ってきてもらう場合があります。園の方針で決めます。
体温の扱いは、園によって運用が分かれる部分です。
園で測る場合は、測る場所と時刻をそろえます。登園直後は外気の影響で高く出たり低く出たりすることがあるので、少し落ち着いてから測るほうが安定します。
家庭で測ってきてもらう場合は、連絡帳に書いてもらいます。ただし、測っていない日や、数字が正確でない場合があります。気になる様子があれば、園でも測ります。
平熱は子どもによって違います。入園してしばらく測って、その子の普段の値を知っておくと判断が確かになります。
受け入れを見合わせる線は、園で決めておきます。多くの園が37.5度を目安にしていますが、数字だけで決めないのが要点です。37.3度でも活気が無く顔色が悪いなら、家庭に連絡する判断になります。逆に、平熱が高めの子で元気なら、様子を見ることもあります。
線は紙に書いて、全職員が同じ判断をできるようにします。新しく入った職員が迷わないことが目的です。
見る目をそろえる
同じ子を見ても、職員によって「元気」の判断が違うことがあります。そろえる工夫を3つ挙げます。
1つ目が、段階を決めること。顔色も機嫌も、良・普通・不良の3段階にします。細かくするほどぶれます。
2つ目が、「不良」の例を具体的に書くこと。「顔色不良:青白い、唇の色が薄い」「機嫌不良:抱っこを求め続ける、遊びに入らない」。言葉だけだと人によって違うので、具体例を紙にします。
3つ目が、朝の受け入れを複数の目で見ること。担任だけでなく、フリーの職員も一緒に受け入れると、気づきが増えます。
いちばん効くのは2つ目です。新しく入った職員は、何をもって「不良」とするかが分かりません。例が書いてあれば、初日から同じ基準で判断できます。
そのうえで、判断に迷ったら必ず誰かに相談するという前提を共有します。1人で「大丈夫だろう」と決めないことが、見落としを減らします。
日中の変化をどう拾うか
朝は元気でも、日中に変わることがあります。拾うきっかけを決めておきます。
1日のなかで、変化が見えやすい場面は決まっています。
見る場面は3つです。食事のとき(食べる量、飲み込み方)、午睡の前後(寝つき、目覚めたときの様子)、遊びの様子(座り込んでいる、いつもの遊びをしない)。
「いつもと違う」が唯一の手がかりです。その子の普段を知っていないと気づけないので、担任が見るのがいちばん確実になります。担任以外が見る日は、朝の申し送りで普段の様子を共有しておきます。
無理に遊びを続けさせず、静かに過ごせる場所で様子を見ます。
気づいたら、その場で体温を測ります。測った結果が正常でも、気づいたこと自体を記録に残します。あとで体調が崩れたとき、いつから兆候があったかが分かります。
保護者に連絡するタイミング
いちばん判断に迷うのが、いつ家庭に連絡するかです。早すぎると「そのくらいで」と思われ、遅すぎると「なぜもっと早く」になります。
決め方は2段階にします。1段階目が「お知らせ」で、様子を伝えるだけの連絡です。「少し熱っぽいので様子を見ています」。この時点では迎えを求めません。
2段階目が「お迎えのお願い」です。基準を超えた、または様子が明らかに悪い場合です。
1段階目があると、保護者は心の準備ができます。仕事の調整も早く始められます。いきなり「迎えに来てください」と言われるより、受け止め方がまったく違います。
迷ったときは1段階目を選びます。早めに一言入れておくほうが、あとの説明が短く済みます。
連絡の基準は園で決めて、入園時に保護者へも伝えておきます。「37.5度を超えたらお迎えをお願いします」と先に共有しておけば、その場での説明が短く済みます。
連絡がつかない場合に備えて、緊急連絡先の順番を確かめておきます。年に1度は更新します。登録が古いまま使われていないことがあります。
記録に何を残すか
様式に持たせる欄を整理します。書くのは4つです。登園時の状態(顔色・機嫌・体温)、保護者からの申し送り、日中の変化、保護者へ連絡した内容。
全員ぶんを毎日書くので、様式の作りがそのまま続くかどうかを決めます。
登園時の欄は、チェック式にします。顔色(良・普通・不良)、機嫌(良・普通・不良)、体温(数字)。毎日全員ぶんを書くので、選択式でないと続きません。
書く場所は、受け入れをする玄関やクラスの入口に置きます。事務室まで戻ると、その間に次の子が来ます。
申し送りと変化の欄だけ自由記述にします。ここに書くことが無い日は空欄で構いません。空欄であること自体が「いつもどおり」の情報になります。
保護者へ連絡した場合は、時刻と伝えた内容、相手の返答まで書きます。「11時20分、母へ連絡。37.8度で活気なし。13時にお迎えとのこと」。
薬を預かるときの記録
保育所で薬を扱うのは慎重を要する場面です。記録の形も決めておきます。
一般には、医師の処方による薬に限り、保護者からの依頼書をもとに預かる形が取られています。市販薬は扱わない園が多くあります。
誤薬は重大な事故につながるため、記録の項目も多めになります。
残すのは5つです。薬の名前、預かった日時と受け取った職員、飲ませる時刻と量、実際に飲ませた時刻と職員、残薬の返却。
依頼書は毎回もらいます。「前と同じ」で済ませると、量や時刻が変わっていたときに事故になります。処方の内容が分かる書面を添えてもらう園もあります。
飲ませる前に2人で確認する運用にしている園が多くあります。名前、薬、時刻、量。誤薬は重大な事故につながるので、ここは手間をかける価値があります。
飲ませたら、その場で記録します。あとで書こうとすると、飲ませたかどうかが分からなくなります。
残った薬は、その日のうちに返します。園に置いたままにすると、翌日に誤って使うおそれがあります。
薬の保管場所も決めます。子どもの手が届かない場所で、冷蔵が必要なものは分けて保管します。
感染症が疑われるときの使い方
健康観察の記録がいちばん力を発揮するのが、感染症が広がりかけている場面です。
1人の発熱では分かりません。同じ時期に複数の子に同じ症状が出ているかどうかが、判断の分かれ目になります。そのため、クラス全員を一覧で見られる形にしておく必要があります。
数だけでなく、症状が出た日付を並べると、広がる速さも見えます。
一覧にすると、クラスをまたいだ広がりも見えます。同じきょうだいがいるクラス、合同で遊んだ日。どこで接点があったかが分かると、対応の範囲が決まります。
発熱以外の症状も記録します。嘔吐、下痢、発疹、目の充血。感染症の種類によって出方が違うので、症状の組み合わせが分かる形にしておきます。
症状が出た子の席、遊んだ場所、きょうだい関係。接点が分かると、広がり方の見当がつきます。
こうした一覧は、平常時から作っておきます。流行してから作り始めると、比べる相手がありません。普段の欠席や発熱の数が分かっていてはじめて、「いつもより多い」が判断できます。
判断と対応は、嘱託医や保健所、自治体が行います。園に求められるのは、測って、並べて、気づいて、つなぐことです。
登園を控えてもらう場面
感染症では、治るまで登園を控えてもらう場面があります。ここは保護者との関係に直結します。
一般には、学校保健安全法にもとづく出席停止の考え方が保育所でも参考にされているとされています。インフルエンザ、麻しん、水痘など、病気ごとに目安が示されています。
園が独自に決めるものではありません。嘱託医や自治体の指示、そして医師の判断にもとづきます。園が「まだ来ないでください」と勝手に決めると、保護者との関係が壊れます。
登園届や意見書を求める仕組みがある場合があります。どの病気でどちらが必要かは自治体によって運用が違うので、一覧にして入園時に配っておきます。あとから伝えると、揉める原因になります。
保護者にとっては、仕事を休むかどうかの話になります。基準が事前に共有されていることが、いちばんの摩擦の予防になります。
基準を先に共有しておくと、その場で説明する時間も要りません。
流行しているときは、園だよりや掲示で早めに知らせます。「クラスで◯◯が出ています」と分かっていれば、家庭でも注意できます。個人が特定できない形にします。
記録を翌日以降に生かす
健康観察の記録は、その日だけのものではありません。並べると見えることがあります。
並べる作業そのものは、月末に数えるだけで済みます。
1人の子について並べると、体調を崩しやすい時期や曜日が見えます。週明けに崩れやすい、行事の翌日に熱が出る。分かっていれば、その時期に気をつけられます。
クラス全体で並べると、欠席の多い時期が見えます。季節の変わり目、流行の時期。翌年の同じ時期に備えられます。
個人面談の材料にもなります。「今年は大きく体調を崩すことが減りました」と数字で言えると、保護者にも伝わります。
並べるのは、月に1度で足ります。毎日見る必要はありません。月末に欠席と発熱の数を数えるだけで、傾向はつかめます。
進級のときには、次の担任に引き継ぎます。体調を崩しやすい時期、かかりやすい病気、家庭の事情。記録があれば、口頭の引き継ぎより正確に伝わります。
まとめ
健康観察は、登園時に顔色・機嫌・体温の3点を見て、保護者からの申し送りを足します。体温の数字だけで判断せず、様子とあわせて見るのが要点です。
まず手を付けるなら、登園時の欄をチェック式にして、全員ぶんが1枚で見られる形にするところからです。次に、受け入れを見合わせる線を紙に書いて貼ると、職員による判断の差が減ります。
朝の受け入れは、保育のなかでいちばん短い確認です。そこで気づけるかどうかが、その日の安全を決めます。
なお、受け入れの基準や、感染症が出たときの対応は、自治体や嘱託医の指示によって変わります。最終的な判断は、所在地の自治体の保育担当課や嘱託医にご確認ください。
健康観察は、朝の数十秒で決まる仕事です。顔色・機嫌・体温の3点と、保護者への一言。これが習慣になっていれば、その日の判断はだいたい間に合います。
よくある質問
登園時に何を見ればよいですか。
顔色、機嫌と様子、体温の3点です。加えて、保護者から前夜の睡眠、朝の食事、排便、気になることを聞きます。
体温は園で測るのですか。
園の方針によります。家庭で測ってきてもらう場合も、気になる様子があれば園でも測ります。登園直後は外気の影響を受けるため、少し落ち着いてから測るほうが安定します。
受け入れを見合わせる線はどこですか。
37.5度を目安にしている園が多くありますが、数字だけでは決めません。活気や顔色とあわせて判断します。線は紙に書いて全職員で共有します。
職員によって判断が違います。
顔色と機嫌を3段階にして、「不良」の具体例を紙に書いておくとそろいます。言葉だけだと人によって違うため、例を示すのがいちばん効きます。
日中の変化はどこで気づきますか。
食事のとき、午睡の前後、遊びの様子の3場面です。「いつもと違う」が手がかりなので、その子の普段を知っていることが前提になります。
薬は預かれますか。
医師の処方による薬に限り、保護者からの依頼書をもとに預かる形が一般的です。依頼書は毎回もらい、飲ませる前に2人で確認する運用にしている園が多くあります。
測った結果が正常なら記録は不要ですか。
気づいたこと自体を残します。あとで体調が崩れたとき、いつから兆候があったかが分かります。
感染症にはどう気づきますか。
クラス全員を一覧で見られる形にしておき、同じ時期に複数の子に同じ症状が出ていないかを確かめます。平常時から一覧を作っておかないと、比べる相手がありません。