介護の記録やり方2026.04.01 公開KK-04

入浴記録の書き方|拒否と皮膚の観察を残す

目次

入浴記録は、「入浴した・しなかった」だけで終わっていることが多い記録です。ところが入浴の場面は、全身を見られる数少ない機会でもあります。ここで気づいたことを残しておくかどうかで、あとの対応が変わります。

この記事では、入浴記録に何を残すのか、拒否があったときにどう書くのか、そして皮膚の観察をどう記録につなげるのかを整理します。

記録全体の書き方の型から確かめたい方は、基礎のほうが先です。→ 介護記録の書き方

結論:入浴記録は「実施の可否」「体調」「皮膚の状態」の3つ

入浴記録とは、入浴や清拭を行った状況を記録したもののことです。

残すのは3つです。実施したか(入浴・シャワー浴・清拭・中止)、そのときの体調(バイタル、訴え)、皮膚の状態。ここに、介助の内容を足すと、次に入る職員が同じ介助を再現できます。

ポイントはここです。入浴記録の価値は、皮膚の観察にあります。服を脱いでいる場面は、1日のうち入浴のときだけです。背中、臀部、足の指の間。ここを見られるのがこの時間なので、見たことを残す欄が要ります。

入浴はふだん見えないところが見える皮膚の状態あざや傷関節の動き痛みの訴え入浴の場面
入浴が全身を観察できる機会であることを示した図

実施の形を分けて書く

「入浴」とだけ書くと、実際に何をしたかが分かりません。形を分けて選べるようにします。

用紙では選択式にしておきます。分けるのは5つです。一般浴(浴槽につかる)、シャワー浴機械浴(リフト浴・ストレッチャー浴)、部分浴(足浴・手浴)、清拭

入浴の形ごとに見るところ記録で見るところ一般浴浴槽をまたげたか機械浴移乗と姿勢の様子シャワー浴座位を保てた時間清拭選んだ理由を書く
入浴の形と、それぞれ記録で見るところを並べた表

形が変わったときは、その理由も書きます。「体調不良のため清拭に変更」「本人の希望によりシャワー浴」。形が変わっていることに気づけるのは、記録が残っているときだけです。

入浴の形は、その日の体調で変わって当然のものです。変わったこと自体は問題になりません。

中止した場合も記録します。中止の理由と、代わりに何をしたか。「発熱のため中止。清拭のみ実施」。何もしなかった場合も「入浴・清拭ともに実施せず」と書きます。空欄にすると、忘れたのか判断して見送ったのかが分かりません。

拒否があったときの書き方

いちばん書き方に差が出るのが、拒否の場面です。

「拒否」の一言で終わらせないのが要点です。どう拒否されたのか、こちらが何を試したのか、最終的にどうなったのか。この3つがあると、次に入る職員が同じ苦労を繰り返さずに済みます。

拒否は、そのあとまで書く一言で終わる入浴拒否次の人に何も残らない翌日も同じところで止まる試したことまで残す「寒い」と言われた時間を午後にずらした足浴だけ行った次の人が続きから試せる
拒否の一言で終わる記録と、試したことまで残す記録の違い

書き方の例を挙げます。

> 14時、入浴の声かけに対し「今日はいい」とのお話あり。時間をおいて15時に再度声かけ、「寒いから」とのこと。脱衣室の暖房を入れてから誘導したところ、応じられた。シャワー浴にて実施。

理由が分かると、対策が立ちます。寒いのが理由なら、脱衣室を温めておけば次は最初から応じられるかもしれません。「拒否あり」だけでは、この情報が残りません。

同じ方でも、日によって理由が違うことがあります。体調、気分、担当した職員、時間帯。理由を書き続けていると、パターンが見えてきます。

拒否が続く場合は、回数と期間を追います。「今週3回のうち2回拒否」。ここまで来たら、体調の変化か、環境か、職員との関係かを検討する場面になります。カンファレンスの材料として使えます。

無理に入れないという判断も記録に残します。入浴は本人の意向が尊重される部分なので、応じられないことをそのまま書いて構いません。本人の意向を尊重して見送った、という記録があると、ケアを怠ったのではないことが示せます。

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実際に使える様式が必要な方へ

入浴記録や排泄・食事の記録のExcel様式は、商い屋の介護向けのページにそろっています。この記事は書き方の側です。

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皮膚の観察をどう残すか

入浴記録でいちばん価値が高いのがここです。見るところを決めておくと、気づきが増えます。

見るのは5か所です。仙骨部・臀部(いちばん褥瘡ができやすい)、背中足の指の間陰部。加えて、新しい傷やあざがないかを全身で見ます。

皮膚を見る5か所入浴時の皮膚観察仙骨部赤み・褥瘡かかと硬くなる・赤み背中自分で見えない陰部かぶれ・湿疹手足あざ・かき傷見た日と場所を書く大きさはcmで
皮膚を見る5か所と、それぞれ起きやすいことを並べた図

書き方は、部位と状態を分けて書きます。「仙骨部に発赤あり、直径2センチ程度。押しても白くならない」。大きさと、押したときの反応まで書けると、程度が伝わります。

見る順番も決めておくと抜けません。上から下へ、前から後ろへ。順番が決まっていると、忙しい日でも同じところを見られます。

変化が無い日は「変化なし」で構いません。ただし、見た事実が分かる形にします。チェック式の欄に「確認済み」のチェックが入っていれば足ります。

新しいあざを見つけたときは、必ず記録して報告します。転倒に気づいていなかった可能性がありますし、虐待が疑われる場面でもあります。部位、大きさ、色。写真を残す運用にしている事業所もあります。判断は組織で行うので、見つけた人は記録して上げるところまでを担います。

褥瘡に早く気づく

皮膚の観察でいちばん大事なのが、褥瘡の兆候です。早い段階で見つかれば、深くならずに済みます。

最初のサインは発赤です。皮膚が赤くなり、押しても白くならない状態。この段階で気づいて手を打てば、多くは進まずに済みます。逆に、皮膚が破れてからでは治るのに時間がかかります。

書くときは、押したときの反応まで書きます。「押すと白くなる」なら一時的な圧迫の可能性があり、「押しても白くならない」なら褥瘡の初期を疑います。この一言があるかどうかで、看護職員の判断が変わります。

同じ部位を追えるようにしておきます。前回いつ発赤があったか、大きさは変わっているか。記録の様式に体の図を入れて、位置に印を付けられる形にすると、部位の伝達が正確になります。

発赤を見つけた日は、体位交換や除圧の状況も一緒に確かめます。同じ姿勢が続いていないか、クッションが適切に入っているか。原因のほうに手が届きます。

リスクの高い方は、入浴の日以外も見る必要があります。おむつ交換のときや体位交換のときに見る形にして、その記録も残します。入浴記録だけでは、週2回しか見ないことになります。

見つけたら、看護職員へつなぎます。介護職の役割は、見て、書いて、つなぐところまでです。処置の判断は看護職員や医師が行います。

体調の確認を記録に残す

入浴は体に負担がかかるので、前後の体調を確認します。

入浴の前後は、体への負担が大きい場面です。

入浴前は、バイタルを測ります。体温、血圧、脈拍。事業所で「この数値を超えたら中止」という目安を決めておきます。目安があると、判断が人によってぶれません。

入浴後は、ふらつきや気分の変化を見ます。水分を摂っていただいたかも記録に残すと、脱水の予防につながります。入浴の前後は汗をかくため、水分の記録と組み合わせて見る価値があります。長く湯につかったあとは血圧が下がることがあります。入浴後に休んでいただく時間も、記録の欄に入れておくと運用として定着します。

入浴の前後で見る項目場面見ること入浴前体温・血圧・脈入浴中顔色・ふらつき・訴え入浴後水分をとったか中止の目安発熱・血圧の大きな変化
入浴前後で見る項目と、中止の目安を並べた表

数値の目安は、個々の状態によって変わります。普段から血圧が高い方に一律の基準を当てると、毎回中止になります。その方ごとの目安を、看護職員と相談して決めておきます。

事故が起きやすい場面を記録から潰す

入浴の場面は、転倒と溺水のリスクが高い時間帯です。ヒヤリハットの記録と組み合わせると、危ない場所が見えてきます。

転倒が起きやすいのは、脱衣室と浴室の出入り口です。床が濡れている、段差がある、つかまる場所がない。ヒヤリハットが同じ場所で続いているなら、環境の問題です。

浴槽の出入りも多い場面です。立ち上がるときにふらつく、またぐときに足が上がらない。ここは介助の方法と用具で変えられます。記録に「ふらつきあり」が続いているなら、手すりや台の追加を検討します。

湯温の確認も記録に残す価値があります。やけどは、起きたときの影響が大きい事故です。入浴前に湯温を測って記録する運用にしておくと、確認が習慣になります。

一人で入浴される方の場合、声かけの間隔を決めておきます。「5分おきに声をかける」といった形にして、実施した記録を残します。何かあったときに、放置していなかったことが示せます。

浴室は、事故が起きると重くなりやすい場所です。環境で防げるものは、環境で防ぐのがいちばん確実になります。

こうした情報は、ヒヤリハットの様式と入浴記録の両方に散らばりがちです。月に1度、入浴に関するヒヤリハットだけを抜き出して見ると、対策が具体的になります。

介助の内容も残す

同じ方でも、職員によって介助のやり方が違うことがあります。記録に残しておくと、そろえられます。

残したいのは4つです。移動の方法(歩行・車いす・リフト)、洗身の介助の範囲(自分で洗える部分はどこか)、注意すること(麻痺側、痛みのある部位)、使っている用具(シャワーチェア、滑り止め)。

介助の内容は4つに分けて残す移動浴室までどう行ったか洗身どこを自分で洗えたか浴槽またぎと出入りの支え整容着替え・爪・髪
介助の内容を4つに分けて残す図

状態が変わったのに更新されていないと、古い情報のまま介助が続きます。見直す場面を決めておくのが確実です。

これは毎回書くものではありません。入所時や状態が変わったときに更新する1枚として、記録の綴りの先頭に置いておきます。

自分で洗える部分を残しておくのが大事です。全部介助してしまうと、できていたことができなくなります。「背中以外は自分で洗われる」と分かっていれば、職員が変わっても同じ関わりができます。

入浴の順番と時間も記録から見直せる

記録がたまると、運用そのものを見直す材料になります。

入浴の順番は、たいてい前例のまま続いています。記録を並べると、いつも最後になる方の拒否が多い、午前の方は体調不良での中止が少ない、といったことが見えてきます。

時間帯も同じです。食事の直後は避ける、睡眠の直後は血圧が安定しない。記録に中止の理由が残っていれば、時間帯に偏りがあるかを確かめられます。

所要時間を残しておくと、人の配置の検討にも使えます。機械浴に40分かかる方が3人続くと、その時間帯に人手が集中します。順番を組み替えるだけで、負担がならせることがあります。

こうした見直しは、四半期に1度でじゅうぶんです。毎月やる必要はありませんが、一度もやらないと前例のまま何年も続きます。

見直しの材料は、すでに毎日の記録の中にあります。新しく測る必要はありません。

見直したら、変えた内容と理由を残します。「◯月から◯◯様を午前の1番に変更。拒否が続いていたため」。変えた効果も、そのあとの記録で確かめられます。

通所と訪問での入浴記録

施設と違い、通所や訪問では入浴が主目的になることがあります。記録の重みも変わります。

通所の入浴は、家族にとって大きな意味を持ちます。在宅で入浴させるのが難しいから通っている、という方が多いためです。実施できたかどうかが、そのまま家族への報告になります。

そのため、中止したときの理由は特に丁寧に書きます。「体調不良のため中止」だけだと、家族には伝わりません。「入浴前の検温で37.8度あり、看護職員と相談のうえ清拭に変更しました」。判断の過程まで書くと、納得が得られます。

訪問入浴では、複数の職員とスタッフで動きます。役割分担と、その日の状態の共有が記録の目的になります。前回からの変化を書いておくと、次の回の準備が変わります。

在宅の場合、家族が記録を読むことが前提になります。専門用語を避け、見たことを具体的に書きます。皮膚の状態を伝えると、家族が日々のケアで気をつけられるようになります。

家族にとっては、入浴できたかどうかがその日の報告の中心になります。

連絡帳の形で記録を渡している事業所も多くあります。渡すものと、事業所に残すものを分けるか、同じにするかを決めておきます。同じにする場合は、書く言葉を家族向けにそろえる必要があります。

まとめ

入浴記録は、実施の形、体調、皮膚の状態の3つを残します。拒否があったときは、理由と試したことまで書くと、次の職員が同じ苦労をしません。皮膚は見る5か所を決めておくと、気づきが増えます。

まず手を付けるなら、皮膚の観察の欄を作って、見る部位をチェック式にするところからです。次に、拒否の欄を「有無」ではなく「何を試したか」が書ける形にすると、記録が申し送りで使えるようになります。

入浴の時間は、介助としては重いのですが、その人の全身を見られる唯一の機会でもあります。見たことを残す欄が1つあるだけで、記録の価値が変わります。

なお、入浴の可否の判断や、中止する数値の目安は、個々の状態によって変わります。最終的な判断は、かかりつけの医師や看護職員にご確認ください。

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実際に使える様式が必要な方へ

入浴記録のExcel様式は、商い屋の介護向けのページにあります。皮膚の観察の欄を作るときの下敷きにも使えます。

この様式をひらく

入浴記録は、書く量を増やさなくても価値を上げられます。皮膚の欄をチェック式で作る。それだけで、週2回の全身観察が記録として残ります。

よくある質問

入浴記録には何を書くのですか。

実施の形(一般浴・シャワー浴・機械浴・部分浴・清拭)、そのときの体調、皮膚の状態の3つが基本です。介助の内容を別に残しておくと、職員が変わっても同じ関わりができます。

拒否されたときはどう書きますか。

「拒否あり」だけでは次につながりません。どう拒否されたか、何を試したか、最終的にどうなったかの3つを書きます。

介助の内容はどこに残しますか。

毎回書くものではなく、入所時や状態が変わったときに更新する1枚として、記録の綴りの先頭に置いておきます。自分で洗える部分を残しておくのが特に大事です。

入浴しなかった日も書くのですか。

書きます。理由と、代わりに何をしたかを残します。空欄にすると、忘れたのか判断して見送ったのかが分かりません。

入浴の順番は見直せますか。

記録を並べると、いつも最後になる方の拒否が多い、といったことが見えてきます。四半期に1度見直すだけでも、前例のまま続く状態を避けられます。

皮膚はどこを見ればよいですか。

仙骨部・臀部、踵、背中、足の指の間、陰部が挙げられます。加えて、新しい傷やあざがないかを全身で見ます。

新しいあざを見つけたらどうしますか。

記録して報告します。転倒に気づいていなかった可能性もあり、判断は組織で行います。見つけた人は記録して上げるところまでを担います。

褥瘡はどの段階で気づけますか。

押しても白くならない発赤の段階で気づければ、多くは進まずに済みます。押したときの反応まで書いておくと、看護職員の判断が早くなります。

中止の目安はどう決めるのですか。

体温や血圧の目安を事業所で決めておくと、判断がぶれません。ただし個々の状態によって変わるため、看護職員と相談してその方ごとに決めます。