介護の書類の保存期間|2年と5年の分かれ方
目次
介護の書類の保存期間は、「2年」と覚えている人が多いのですが、実際には市町村によって5年とされていることがあります。同じ書類なのに、隣の市の事業所とは持つ年数が違う。ここを知らずに2年で捨てると、指導で問題になります。
この記事では、なぜ年数が分かれるのか、どの書類が何年なのか、そして自事業所の年数をどう確かめるのかを整理します。棚を整理する順番まで書きます。
結論:国の基準は2年。ただし市町村の条例で5年のことがある
介護保険の指定基準では、完結の日から2年間保存することが求められているのが基本の形とされています。
ところが、基準の多くは市町村や都道府県が条例で定める仕組みになっており、その際に5年としている自治体があります。理由としては、介護報酬の返還を求められる期間との兼ね合いが挙げられることが多くあります。
ポイントはここです。自事業所が何年なのかは、指定を受けている自治体に確かめないと分かりません。全国一律ではないので、書籍やインターネットの記事に書いてある年数をそのまま当てると外れます。
年数が違う理由を知っておくと、社内で説明しやすくなります。介護報酬の返還を求められる期間との兼ね合いで、長めに設定している自治体がある、という説明で足ります。
複数の市町村から指定を受けている事業所では、いちばん長い年数に合わせておくのが安全です。書類ごと、利用者ごとに年数を変えるのは現実的ではありません。
「完結の日」とはいつか
年数と同じくらい間違えやすいのが、起算日です。「完結の日から2年」の完結の日がいつを指すのかで、1年以上ずれます。
一般には、その利用者へのサービス提供が終わった日を指すと考えられています。つまり、在籍している間はずっと持ち続けることになります。
書いた日から2年ではありません。5年入所している方の1年目の記録は、退所するまで捨てられません。退所した日から数え始めて、そこから2年または5年になります。
ここを取り違えると、まだ持つべき記録を捨てることになります。「2年前の記録だから」と年度で機械的に整理している事業所は、一度確かめる価値があります。
在籍が長い方ほど、この違いが効いてきます。10年入所された方なら、10年分の記録を退所まで持ち続けることになります。
契約が終了した日なのか、最後にサービスを提供した日なのか、亡くなられた日なのか。細かい部分は自治体の考え方によることがあるので、あわせて確かめておきます。
書類ごとの年数
根拠になる法律が違えば、年数も違います。年数が書類によって違う場合もあります。主なものを整理します。
介護記録、個別援助計画、サービス提供の記録は、指定基準にもとづく2年(または条例で5年)が基本です。身体拘束の記録、事故の記録、苦情の記録も同じ枠で扱われるのが一般的です。
一方、別の法律にもとづく書類は、年数が変わります。労働に関する重要な書類は労働基準法にもとづく年数、帳簿や領収書は税に関する年数。同じ事務所の棚に、根拠の違う書類が並んでいます。
どの法律にもとづく書類かは、様式の隅に小さく書いておくだけでも効きます。「介護保険法」「労働基準法」。整理する人が根拠を見て判断できます。
まとめて「2年で外す」とすると、別の枠の書類まで消えます。書類の種類ごとに、どの法律にもとづくものかを分けておくのが要点になります。
自治体への確かめ方
電話で聞くのがいちばん早いのですが、何を聞けばよいかが分かっていないと、あいまいな答えで終わります。
聞くのは4つです。保存期間は何年か、起算日の「完結の日」をどう解釈しているか、電磁的記録での保存は認められるか、根拠になる条例の名前と条項。
4つ目を聞いておくのが効きます。条例の名前が分かれば、あとから自分で条文を確かめられます。担当者が変わっても、根拠が残ります。
担当課の名前も控えておきます。組織改編で変わることがあり、翌年に電話したらつながらないことがあります。
聞いた内容は記録に残します。いつ、どの部署の誰に、何を聞いて、どう答えられたか。保存期間の一覧の表に、この4行を添えておきます。
自治体のサイトに掲載されていることもあります。「指定基準条例」「運営基準」で探すと見つかることがあります。ただし改正されていることがあるので、掲載日を確かめます。
年に1度は、変わっていないかを確かめる日を作ります。制度改正で年数が変わることがあります。
一覧を1枚作る
年数を覚えるのは無理なので、表にします。列は4つで足ります。
書類の名前、保存期間、起算日、置き場所。
3列目の起算日を入れるのが要点です。年数だけの表にすると、完結の日から数えるものと、作成した日から数えるものが混ざります。ここが分かれていないと、結局判断できません。
4列目の置き場所も効きます。年数が分かっていても、どこにあるか分からなければ出せません。「事務所2番棚」「鍵付きキャビネット」まで書いておきます。
年に1度は見直します。新しく作った書類が表に載っていないことがよくあります。書類を増やしたときに1行足す運用にしておくと、表が実態と合ったまま残ります。
この表は、事務所の棚のそばに貼ります。整理する場面で手元にあるかどうかが、使われるかどうかを決めます。
電子で保存してよいか
紙の量が多いので、電子化を考える場面が出てきます。
介護の記録については、電磁的記録による保存が認められる方向で整理が進んでいるとされています。ただし、対象になる書類の範囲や、満たすべき条件は自治体によって運用が異なることがあります。
実務で要るのは3つです。後から書き換えられない形にすること、求められたときにすぐ出せること、控えを別の場所に持つこと。
3つ目が見落とされます。1台のパソコンの中だけに置いていると、その1台が壊れた時点で全部が消えます。紙なら火事でなければ残りますが、データは違います。
紙と電子が混在する期間も出てきます。どの時期までが紙で、どこから電子かを表に書いておかないと、探す場所が分からなくなります。
システムを使っている場合は、契約が終わったあとにデータを取り出せるかを、契約する前に確かめます。保存期間の途中で乗り換えると、ここで詰まります。
退所した方の記録をどう扱うか
いちばん整理が必要なのが、退所された方の記録です。ここが在籍中の方の記録と混ざっていると、年数の管理ができません。
やることは3つです。退所の手続きをした日に、記録を別のファイルへ移す。表紙に退所日と処分してよい年月を書く。利用者ごとにまとめる。
退所の当日にやるのが要点です。日が経つほど忘れます。退所の手続きの手順書に「記録の移動」を1行足しておくと、自然に回ります。
表紙に書くのは2つの日付です。「2026年3月31日 退所」「2031年4月以降 処分可」。5年の自治体ならこの形になります。計算した結果を書いておくので、あとで誰も数え直さずに済みます。
利用者ごとにまとめておくと、開示を求められたときにもすぐ出せます。介護記録、個別援助計画、モニタリング、事故の記録。1人ぶんが1つの束になっているのが、いちばん扱いやすい形です。
亡くなられた方の記録も同じ扱いです。ご家族から開示を求められることがあるため、保存期間内は確実に残しておきます。
捨てるときの手順
期間が過ぎた書類を外すときの話です。ここも決まった動きにしておきます。
1つ目に、外す候補を年単位で拾います。背表紙に処分してよい年月を書いてあれば、棚を見るだけで済みます。
2つ目に、まだ持つべきものが混ざっていないか確かめます。在籍中の方の記録、事故があって別に抜いてあるもの、根拠の違う書類。ここで1度立ち止まります。
処分してよいと判断したものは、その場でまとめて別の場所に移します。棚に戻すと、翌年また同じ判断をすることになります。
3つ目に、処分の方法を決めておきます。介護の記録は個人情報の塊です。溶かすか細かく裁断するかの処理をします。外部に委託する場合は、処理が終わったことの証明を受け取っておきます。
4つ目に、何をいつ外したかを1行残します。「2027年5月8日 2024年度退所分 介護記録 処分」。この1行があると、もともと無いのか、期間が過ぎて外したのかが区別できます。
事故があった方の記録は別に抜く
保存期間を守っていても、いちばん必要になる場面で手元に無いことがあります。事故があった方の記録です。
事故に関する請求や相談は、時間が経ってから出てくることがあります。そのとき、通常の保存期間を過ぎて処分していると、経過を説明できません。
やり方は簡単です。事故が起きたら、その方の事故の前後数か月ぶんを複写して別のファイルに入れます。介護記録、バイタル、事故報告書、家族への連絡の記録。量はわずかで済みます。
このファイルは年数で外しません。1枚目に事故の日付と概要を書いておき、いつまで持つかは別に判断します。
全部を長く持つと棚が足りなくなりますが、事故は毎日起きるわけではないので、抜き出す分はごくわずかです。いちばん必要になる可能性が高い記録だけが手元に残るという、費用対効果の高いやり方になります。
苦情があった方の記録も、同じ扱いにしておくと安全です。
実地指導で求められる形
保存していても、出せなければ意味がありません。求められ方を知っておくと、並べ方が決まります。
求められるのは、利用者ごとであることが多くあります。「◯◯様の直近1年の記録一式」。だから、利用者ごとに追える形になっていないと、その場で出せません。
日々の記録は日付順に綴じるのが基本ですが、利用者ごとの索引を1枚付けておくと、両方から引けます。退所した方の分は、利用者ごとにまとめて別のファイルに移しておくと確実です。
探す時間がかかること自体が、管理の状態を示す材料として見られます。
あわせて、関連する書類が同じ場所にあるかも見られます。介護記録、個別援助計画、モニタリング、事故の記録。1人の方について、必要な書類がそろって出せる形にしておきます。
棚が足りなくなったときの考え方
年数を守っていても、置き場所が足りなくなる場面があります。長く在籍される方が多い事業所では、記録が何年分もたまります。
減らす手は4つあります。1つ目が、直近と過去で置き場所を分けること。手元の棚には直近1年ぶん、それ以前は箱に入れて別の場所へ。求められるのはたいてい直近なので、これで実務は回ります。
2つ目が、両面で印刷すること。単純ですが、量は半分になります。
3つ目が、様式を見直すこと。1日1枚使っている記録を、1週間で1枚に収まる形にできないか。書く項目を減らすのではなく、並べ方を変えるだけで減ることがあります。
4つ目が、電子に移すこと。場所の問題は根本的に解決しますが、前の節に書いた手当てが要ります。
いちばん先にやるべきなのは1つ目です。費用も手間もかからず、効果がすぐ出ます。事務所の見た目が変わるだけでなく、探す時間も短くなります。
やってはいけないのが、期間内の書類を先に捨てることです。場所が足りないのは施設の事情であって、保存の義務が軽くなる理由にはなりません。
まとめ
介護の書類の保存期間は、国の基準では完結の日から2年ですが、市町村の条例で5年とされていることがあります。自事業所の年数は、指定を受けている自治体に確かめないと分かりません。起算日は「完結の日」で、書いた日からではありません。
まず手を付けるなら、自治体に電話して年数を確かめるところからです。次に、書類の名前・年数・起算日・置き場所の4列の表を作って棚のそばに貼ると、整理の判断が記憶から外れます。
保存の話は地味ですが、間違えたときに取り返しがつきません。捨ててしまったものは戻せません。迷ったら、もう1年置いておくほうが安全側の判断になります。
なお、保存期間、起算日の考え方、電子保存の可否は、指定を受けている自治体によって運用が異なります。最終的な判断は、所在地の市区町村の介護保険担当課や都道府県の指導監査部門にご確認ください。
保存期間は、覚えるものというより棚の形にしてしまうものです。背表紙に処分してよい年月が書いてあれば、年数を知らない人でも判断を間違えません。
よくある質問
介護の書類は何年保存するのですか。
国の基準では完結の日から2年ですが、市町村の条例で5年とされていることがあります。指定を受けている自治体に確かめます。
年数は全国で同じですか。
同じではありません。国の基準は2年ですが、条例で5年としている自治体があります。書籍やインターネットの記事の年数をそのまま当てると外れることがあります。
「完結の日」とはいつですか。
その利用者へのサービス提供が終わった日を指すと考えられています。在籍中はずっと持ち続けることになり、書いた日から数えるのではありません。
複数の市町村から指定を受けています。
いちばん長い年数に合わせておくのが安全です。書類ごと、利用者ごとに年数を変えるのは現実的ではありません。
電子で保存してもよいですか。
認められる方向で整理が進んでいるとされていますが、対象の範囲や条件は自治体によって運用が異なります。後から書き換えられない形と、控えを別の場所に持つことが実務上は必要です。
捨てるときはどうすればよいですか。
個人情報が含まれるため、溶かすか細かく裁断します。外部に委託する場合は処理の証明を受け取り、何をいつ外したかを1行残します。
事故があった方の記録はどうしますか。
事故の前後数か月ぶんを複写して別のファイルに入れておく形が効きます。請求や相談は時間が経ってから出てくることがあり、通常の保存期間を過ぎていると説明できません。
労働関係の書類も2年ですか。
別の法律にもとづくため年数が変わります。同じ棚に根拠の違う書類が並ぶので、種類ごとに分けておかないとまとめて捨てる事故が起きます。