サービス提供記録とは?報酬の根拠になる書き方
目次
サービス提供記録は毎日書いている。ところが「これで報酬の根拠になるのか」と聞かれると、自信がない。実地指導で返還を求められたという話を聞くと、なおさら不安になります。
この記事では、サービス提供記録を、何のための記録か・書く項目・返還につながる形の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の様式を確かめられる状態を目指します。
結論:サービスを提供した事実を示す記録
サービス提供記録とは、いつ、誰に、どんなサービスを提供したかを残す記録のことです。介護保険の運営基準で、記録の整備が求められています。
この記録が、介護報酬を請求する根拠になります。記録が無いサービスは、提供したことを示せません。
ポイントはここです。記録が無い、あるいは不備があると、報酬の返還を求められることがあります。実地指導や監査で見られるのは、まずここです。
日々の記録が「業務日誌」の位置づけで終わっていると、根拠としては弱くなります。個別のサービスごとに、提供した事実が分かる形にします。
書く項目
サービスの種類によって変わりますが、共通して必要になるのは6つです。
提供した年月日。
提供した時間。開始と終了の時刻。「午前中」では足りません。
提供したサービスの内容。計画に書かれた項目に沿って。
提供した職員の氏名。
利用者の状況。その日の様子、変化。
特記事項。いつもと違ったこと、家族への連絡など。
抜けやすいのは、時間と職員の氏名です。時間が書かれていないと、算定した区分と合っているかが確かめられません。
訪問系のサービスでは、利用者の確認の署名を求められる形があります。サービスの種類ごとに、何が必要かを確かめます。
計画に沿っているか
記録が計画と食い違っていると、問題になります。よくある食い違いが3つあります。
1つ目は、計画に無いサービスを提供している形です。本人や家族から頼まれて、計画外のことをしている。
2つ目は、計画にあるサービスを提供していない形です。記録に毎回書かれていない項目がある。
3つ目は、時間が合っていない形です。計画では60分だが、記録は30分。
どれも、計画を見直せば解決します。実態に合わせて計画を変えるか、計画どおりに提供するか。放置すると、返還の対象になります。
計画外のことを頼まれたときは、その場で断るのではなく、ケアマネジャーに相談する流れにしておきます。
加算を算定している場合
加算を取っている場合、その加算に固有の記録が要ることがあります。
個別機能訓練加算なら、計画と実施の記録。
口腔・栄養に関する加算なら、評価と計画の記録。
看取りに関する加算なら、説明と同意、経過の記録。
加算の要件は、記録の要件でもあります。算定しているのに記録が無いと、その分の返還を求められます。
自社が算定している加算を一覧にして、それぞれ何の記録が必要かを書いておきます。加算を新しく取るときに、記録の様式も同時に用意します。
返還につながる形
実地指導や監査で指摘されやすい形を、5つ挙げます。
1つ目は、記録が無いことです。提供したが書いていない。
2つ目は、時間が書かれていないことです。区分と合っているか確かめられません。
3つ目は、計画と食い違っていることです。
4つ目は、まとめ書きです。1週間分を後からまとめて書いている。筆跡や記載の様子から分かります。
5つ目は、加算の記録が無いことです。
4つ目は、意図していなくても起きます。忙しくて後回しにした結果、まとめて書くことになります。その日のうちに書ける形にしておくことが、いちばんの備えになります。
その日のうちに書ける形にする
まとめ書きを防ぐには、書く時間と場所を作ります。工夫が4つあります。
1つ目は、その場で書くことです。訪問系なら訪問先で、施設なら居室や廊下で。持ち運べる様式か、端末を使います。
2つ目は、選択式を増やすことです。毎回同じことを書く項目は、丸を付ける形にします。
3つ目は、書く時間を業務に入れることです。記録の時間が勤務時間に見込まれていないと、後回しになります。
4つ目は、様式を短くすることです。書く量が多いほど、後回しになります。
2つ目と4つ目は、今日から変えられます。様式を見直すだけで、書く時間が半分になることがあります。
利用者や家族への開示
記録は、本人や家族から開示を求められることがあります。運営基準でも、申出があった場合に提供することが求められる形があります。
備えておくのは3つです。
1つ目は、見せられる書き方をすることです。推測や評価を断定的に書かない。他の利用者の情報を書かない。
2つ目は、開示の手順を決めることです。誰に申し出るか、いつまでに、どの範囲を。
3つ目は、費用の扱いです。写しを渡す場合の実費。重要事項説明書に書いておく形があります。
「見せられない記録」は、そもそも書き方に問題があります。見せる前提で書くと、記録の質も上がります。
保存と管理
保存の期間は、介護保険の記録として、完結の日から2年が国の基準です。条例で5年としている自治体があります。
利用者ごとにまとめておくと、開示のときも実地指導のときもすぐ出せます。
電子で記録している場合は、印刷して出せる状態か、画面で見せられる状態かを確かめます。システムの契約が切れたときにデータが取り出せるかも、確かめておきます。
紙とデータが混ざっている場合は、どちらが正本かを決めておきます。両方に書いて食い違うのが、いちばん困る形です。
手書きと電子のどちらにするか
サービス提供記録は、手書きでも電子でも構いません。選ぶ基準は、その日のうちに書き終わるかどうかです。
比べるところは4つあります。
1つ目は、書くまでの距離です。手書きは紙のあるところまで戻ります。電子は端末の台数で決まります。台数が足りないと、かえって遅くなります。
2つ目は、探しやすさです。あとから「先月のこの人の入浴の回数」を数えるなら、電子のほうが速く終わります。実地指導の準備の時間がここで変わります。
3つ目は、直したときの跡です。電子は誰がいつ直したかが残る仕組みのものを選びます。手書きは二重線と訂正印で残します。修正液で消さないことは、どちらでも同じです。
4つ目は、止まったときの備えです。電子は端末や通信が止まると書けません。紙の予備の様式を置いておきます。
どちらでもよいのですが、途中で混ぜないことです。同じ月の記録が紙と電子に分かれていると、揃えるだけで手間がかかります。切り替えるなら月の初めにします。
実地指導で見られる並べ方
記録は、あることよりもすぐ出せることで見られます。並べ方を先に決めておきます。
決めることは3つあります。
1つ目は、綴じる単位です。利用者ごとに綴じるか、日ごとに綴じるか。利用者ごとのほうが、実地指導では出しやすくなります。「この方の記録を見せてください」と言われるからです。
2つ目は、一緒に綴じるものです。ケアプラン、アセスメント、モニタリング、サービス提供記録。この4つを同じファイルに、この順番で入れておくと、つながりをその場で示せます。
3つ目は、加算の根拠を別に抜くかどうかです。個別機能訓練加算や口腔衛生管理加算を算定しているなら、その根拠となる記録だけを別のファイルにも写しで入れておく形があります。探す時間が短くなります。
並べ方は毎年変えないことです。担当者が替わるたびに並びが変わると、去年の記録が探せなくなります。
書けなかった日をどう扱うか
記録は、抜ける日が必ず出ます。抜けたときの扱いを決めておくことが、抜けないようにすることよりも大事です。
扱い方は3つです。
1つ目は、気づいた時点で書くことです。後から書くこと自体は問題になりません。いつ書いたかを残します。「9月3日分、9月5日記入」と書きます。
2つ目は、実際にあったことだけを書くことです。思い出せない部分は空けます。埋めるために推測を書くと、記録全体の信頼が落ちます。
3つ目は、抜けが続く時間帯を見ることです。同じ時間帯で抜けるなら、人の配置か様式に原因があります。個人の注意では直りません。
日付をさかのぼって書いたように見せる形は、いちばんやってはいけないことです。加算の返還だけでなく、記録そのものが疑われます。遅れて書いたと分かる形で残すほうが、はるかに安全です。
まとめ
サービス提供記録は、いつ、誰に、どんなサービスを提供したかを残す記録で、介護報酬を請求する根拠になります。
書く項目は6つ。抜けやすいのは、時間と職員の氏名です。時間が無いと、算定した区分と合っているかを確かめられません。
計画との食い違いが、返還につながります。計画に無いことをしている、計画にあることをしていない、時間が合っていない。どれも計画を見直せば解決します。
指摘されやすいのは、記録が無い・時間が無い・計画と食い違う・まとめ書き・加算の記録が無い、の5つです。その日のうちに書ける形にしておくのが備えになります。保存の期間は、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 記録は手書きでないといけませんか。 A. 手書きである必要はありません。電子で記録している事業所も多くあります。求められたときに出力できること、改ざんされていないことが確かめられる形にしておきます。システムを変えるときのデータの移行も考えておきます。
Q. 利用者の署名は必ず要りますか。 A. サービスの種類によって求められる場合があります。訪問系では求められることが多くあります。署名が難しい方の場合の扱いも決めておきます。所管の自治体に、自社のサービスで何が必要かを確かめます。
Q. まとめ書きは、どこまでが許されますか。 A. その日のうちに書くのが原則です。やむを得ず翌日になる場合も、いつ書いたかが分かる形にします。1週間分をまとめて書く形は、提供した事実の記録として弱くなります。指摘の対象になりやすいところです。
Q. 計画に無いことを頼まれたら、断りますか。 A. その場で断るより、ケアマネジャーに相談する流れにしておきます。必要なサービスなら計画に入れてもらいます。計画外のまま続けると、記録と計画が食い違い、返還の対象になることがあります。
Q. 訪問した時間と、記録の時間が少しずれています。 A. 実際の時間を書きます。計画の時間と実際が常にずれているなら、計画のほうを見直します。記録を計画に合わせて書くのは、事実と違う記録になります。
Q. 加算の記録は、日々の記録と分けますか。 A. 分けている事業所も、同じ様式に欄を作っている事業所もあります。大事なのは、加算の要件を満たしていることが記録から分かることです。算定している加算の一覧と、必要な記録の対応表を作っておくと確かめやすくなります。
Q. 記録の開示を求められたら、すべて見せますか。 A. 本人に関する部分を見せます。他の利用者の情報が含まれている場合は、その部分を除きます。手順と費用をあらかじめ決めて、重要事項説明書に書いておくと、求められたときに慌てません。
Q. 職員が記録を書く時間がありません。 A. 様式を短くする、選択式を増やす、その場で書ける形にする。この3つで、かなり短くなります。記録の時間を勤務時間に見込んでいない場合は、そこから見直します。書けない量の様式は、書かれない様式です。
Q. 誤って書いた場合、どう直しますか。 A. 修正液で消さず、二重線を引いて訂正し、訂正した人と日付が分かる形にします。電子の場合は、訂正の履歴が残る仕組みにします。消してしまうと、改ざんを疑われます。
Q. サービス提供記録と介護記録は違いますか。 A. 呼び方は事業所によって変わります。報酬の根拠になる記録と、日々の様子を書く記録を分けている事業所もあれば、1つにしている事業所もあります。分ける場合は、両方の要件を満たしているかを確かめます。
Q. 記録は誰が書きますか。 A. 実際にサービスを提供した人が書きます。まとめて1人が清書する形にすると、提供していない人の名前が並ぶことになります。清書するなら、元になった各自のメモも残しておきます。
Q. 利用者や家族から記録の開示を求められたら、応じる義務がありますか。 A. 応じる扱いが基本とされていますが、範囲や手続きは事業所の規程と条例によります。重要事項説明書に開示の手続きを書いてあるかを確かめ、判断に迷うものは所轄の市町村に確かめてください。
Q. 記録の保存期間は何年ですか。 A. 完結の日から2年とする扱いが基本ですが、市町村の条例で5年としている例があります。長いほうに合わせるのが安全です。所轄の市町村に確かめてください。
Q. 記録に略語を使ってもいいですか。 A. 事業所の中で意味が1つに決まっているなら使えます。ただし一覧を作って、新しく入った人に渡します。一覧の無い略語は、書いた人以外には読めません。
Q. 押印の欄は必要ですか。 A. 押印を求めない扱いが広がっています。誰が書いたかが分かればよいので、氏名の記載で足りる場合が多くあります。加算の様式で扱いが違うことがあるので、所轄の市町村に確かめてください。
Q. 訪問系のサービスで、控えを利用者宅に置く形は続けてよいですか。 A. 続けて構いません。利用者に提供の内容を確かめてもらう意味があります。ただし事業所側にも同じ内容が残っている必要があります。宅に置いた控えだけしか無い状態にはしないでください。
Q. 記録の様式を途中で変えると、前の分と揃わなくなりませんか。 A. 揃わなくて構いません。変えた日を記録に残し、その日から新しい様式に切り替えます。前の分をさかのぼって書き直すほうが、かえって不自然な記録になります。
Q. 同じ時間に2人以上で介助した場合、両方の名前を書きますか。 A. 書きます。人数が必要だった場面は、あとで人の配置を考えるときの材料になります。加算の要件で人数が定められているものは、名前が無いと要件を満たしたことを示せません。