保育の記録と安全書き方2026.09.17 公開HK-60

不審者対応訓練|合言葉と動線を決めておく

目次

避難訓練は毎月やっている。ところが不審者への対応は、年に1回あるかどうか。しかも内容は「こういう人が来たら気をつけましょう」という話で終わり、実際に動いたことがない園も多くあります。

この記事では、不審者対応訓練を、何を決めておくか・訓練のやり方・記録の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の手順を組める状態を目指します。

園外保育の安全から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 園外保育の安全

結論:伝え方と、逃げる先を先に決める

不審者対応訓練とは、園内や園の周りに危険な人が入ってきた場合を想定して、動き方を確かめる訓練のことです。

火災や地震の避難訓練とは、動き方が逆になる場面があります。火災は外へ逃げますが、不審者の場合は室内に留まって施錠することがあります。

火災の避難とは動きが違う火災の避難外へ出る声を出して誘導する外が安全不審者対応中に隠れることもある静かに動く外が安全とは限らない
火災の避難と不審者対応で、動き方が違うことを並べた比較の図

ポイントはここです。子どもを怖がらせずに伝える方法と、逃げる先を先に決めておきます。

「不審者が来ました」と放送すると、子どもが混乱します。合言葉を決めておくのが、多くの園で取られている形です。

決めておくこと

事前に決めるのは6つです。

1つ目は、合言葉です。職員には意味が分かり、子どもには分からない言葉。

2つ目は、伝える手段です。放送、笛、電話、メッセージアプリ。複数持ちます。

3つ目は、集まる場所です。施錠できる部屋。窓から見えない場所が望ましい形です。

4つ目は、役割です。誰が通報するか、誰が対応するか、誰が子どもを守るか。

5つ目は、通報の基準です。どういう状態で110番するか。

6つ目は、防犯の用具の場所です。さすまた、ネットランチャーなど。

主な決めごと決めること要点合言葉子どもに意味を教えない逃げる先部屋ごとに決める通報する人役割で決める判断する人不在のときの次の人も
主な決めごとと、それぞれの要点を並べた表

1つ目と3つ目が要点です。合言葉が決まっていないと、伝えた瞬間に混乱します。集まる場所が決まっていないと、職員ごとに違う場所へ向かいます。

合言葉の決め方

合言葉は、条件が3つあります。

1つ目は、日常で使わない言葉であることです。「○○先生、△△までお越しください」といった形。実在しない先生の名前を使う園があります。

2つ目は、職員全員が知っていることです。新しく入った職員にも、初日に伝えます。

3つ目は、場所も伝えられることです。どこに来ているかが分かる形にします。

合言葉の3つの条件日常で出ない普段使わない言葉に聞き取れる短くはっきりした音職員が覚える年に1回だけ変える
合言葉の3つの条件を並べた層の図

保護者には伝えるかどうかを決めます。伝えておくと、保護者も動けます。一方で、広く知られると意味が薄れます。

定期的に変える形を取っている園もあります。変えたら、全員に周知します。

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実際に使える様式が必要な方へ

避難訓練の記録のExcelの様式が、商い屋の保育向けのページにあります。この記事は不審者への対応の話です。

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訓練のやり方

実際に動いてみる訓練にします。流れは5段です。

1つ目は、想定の設定です。どこから、どんな人が入ってきたか。時間帯。

2つ目は、発見と合言葉です。気づいた職員が、決めた手段で伝えます。

3つ目は、子どもの誘導です。決めた場所へ移動し、施錠します。

4つ目は、対応と通報です。対応する職員が向かい、別の職員が通報します。

5つ目は、安全の確認です。人数を数え、解除を伝えます。

訓練の4段1想定場所と時間帯を変える2伝達合言葉と通3誘導子どもを逃がす4確認人数を数えて締める
想定・伝達・誘導・確認という4段のフロー

3つ目で時間がかかります。実際にやってみると、鍵が見つからない、移動に時間がかかる、といったことが分かります。

警察に相談すると、協力してもらえることがあります。実際に不審者役をしてもらう形の訓練を行っている園もあります。

子どもへの伝え方

子どもを怖がらせずに伝える工夫が3つあります。

1つ目は、日ごろから「先生の言うとおりに動く」練習をすることです。不審者に限らず、緊急のときに動ける形をつくります。

2つ目は、訓練の目的を年齢に合わせて伝えることです。「知らない人が入ってきたときの練習」。怖い話にしすぎない。

3つ目は、訓練の後に不安を聞くことです。怖がった子には、個別に声をかけます。

子どもへの3つやること伝え方日ごろの練習合言葉で集まるだけ伝え方理由は言わない訓練後のケア不安が出た子に個別に
日ごろの練習・伝え方・訓練後のケアという3つを並べた表

保護者にも、訓練を行うことを伝えておきます。子どもが家で話したときに、保護者が受け止められます。

入口の管理

訓練だけでなく、日常の管理も対策のうちです。確かめるのは4つです。

1つ目は、施錠です。門、玄関、裏口。開けっ放しになっていないか。

2つ目は、来訪者の確認です。受付、名札、記録。

3つ目は、死角です。外から見えない場所、監視カメラの範囲。

4つ目は、送迎の時間帯です。人の出入りが多く、施錠が緩む時間帯。

入口の4つの管理管理する点やること施錠開ける時間帯と閉める人来訪者名簿と名札死角子どもだけにしない送迎の時間開いている時間が長い
施錠・来訪者・死角・送迎という4つの管理の点を並べた表

4つ目がいちばん緩みます。保護者の出入りに紛れて入られる形があります。誰が見ているかを決めておきます。

来訪者の記録は、いつ、誰が、何のために来たかを残します。訪問販売や、業者の出入りも含めます。

記録に残すこと

訓練の記録に残すのは7つです。

実施した日時。想定。参加した職員と子どもの人数。実施の内容。要した時間。気づいたこと。次への改善。

要した時間と気づいたことが抜けやすいところです。「実施した」だけでは、次に生かせません。

気づいたことは、できなかったことを書きます。「鍵を探すのに1分かかった」「合言葉を知らない職員がいた」。できなかったことが、いちばん価値のある記録です。

記録は、避難訓練の記録と同じつづりにまとめておくと、年間の訓練の状況が一覧で見られます。

警察や地域との連携

園だけでは対応に限りがあります。連携の形を作っておきます。

1つ目は、警察への相談です。訓練への協力、防犯の助言。地域の交番と関係を作っておきます。

2つ目は、近隣との連携です。近くの施設や商店と、いざというときの協力の取り決め。

3つ目は、自治体の窓口です。防犯の補助や、情報の提供。

警察に相談すると、園の状況に合わせた助言がもらえます。入口の位置、死角、対応の方法。年に1回、来てもらう形にしている園もあります。

地域の不審者の情報も、自治体や警察から入ります。受け取る経路を作っておきます。

想定を毎回変える

不審者対応の訓練は、同じ想定を繰り返すと動きが型になります。実際は型どおりに来ません。

変えるのは4つです。

1つ目は、入ってくる場所です。正門、裏口、駐車場、園庭の柵。

2つ目は、時間帯です。登園の時間、午睡の時間、夕方の延長の時間。人が少ない時間帯を一度は試します。

3つ目は、子どもの居る場所です。保育室、園庭、ホール。

4つ目は、対応する人です。園長が不在の想定を必ず入れます。

4つ目がいちばん大事です。判断する人がいないときに動けるかどうかで、訓練の意味が変わります。次に判断する人を決めておきます。

通報と連絡の形

訓練では、通報の練習まで含めます。動きだけを練習して、通報が抜けている園があります。

決めるのは4つです。

1つ目は、誰がかけるかです。手が空いている人ではなく、役割で決めます。

2つ目は、何を伝えるかです。園の名前、住所、状況、子どもの人数。紙にして電話のそばに貼ります。

3つ目は、園内にどう知らせるかです。合言葉を放送する、非常ベルを鳴らす。

4つ目は、保護者への連絡です。収まったあとに、状況を伝えます。

2つ目は必ず紙にします。焦ると住所が出てきません。実際にあった話です。

入口と園庭の備え

訓練とあわせて、入りにくい形にしておきます。

見るのは4つです。

1つ目は、門の施錠です。開いている時間帯と、閉める人を決めます。

2つ目は、来訪者の確認です。名簿に書いてもらう、名札を渡す。顔を知らない人が園内にいる状態を作らないことです。

3つ目は、死角です。外から見えにくい場所は、子どもだけにしません。

4つ目は、さすまたや防犯ブザーの置き場所です。置いてあっても、場所を知らなければ使えません。訓練で実際に取りに行きます。

4つは、警察に相談すると助言をもらえることがあります。所轄の警察署の生活安全課に相談してください。

子どもへの伝え方と配慮

子どもへの伝え方は、怖がらせないことが前提です。

伝え方は4つです。

1つ目は、合言葉の意味を教えないことです。「この言葉が聞こえたら、先生の所に集まる」。理由は伝えません。

2つ目は、短くすることです。訓練の時間そのものを短くします。

3つ目は、できたことをほめることです。静かにできた、集まれた。

4つ目は、不安が出た子に個別に関わることです。訓練のあとに様子を見ます。

保護者にも、訓練を行うことを事前に伝えておきます。子どもが家で話したときに、保護者が驚かないためです。伝えていない訓練は、不安だけが伝わります。

地域とのつながりを作る

不審者への備えは、園の中だけでは完結しません。周りとつながっておきます。

つながり先は4つです。

1つ目は、警察です。所轄の警察署の生活安全課。訓練の相談だけでなく、地域の状況も教えてもらえます。

2つ目は、近くの園や学校です。不審な人の情報は、地域で共有されます。連絡の取り方を決めておきます。

3つ目は、市町村です。情報の配信の仕組みがある自治体があります。登録しておきます。

4つ目は、近所のお店や住民です。「何かあったら声をかけてください」と伝えておくだけで違います。

4つのうち、2つ目がいちばん早く情報が来ます。同じ地域の子どもに関わる場所どうしなので、連絡が具体的です。年度の初めに、担当者の名前と連絡先を交換しておいてください。

まとめ

不審者対応訓練は、火災の避難と動き方が逆になる場面があります。火災は外へ、不審者は室内に留まって施錠することがあります。

決めておくのは6つ。合言葉、伝える手段、集まる場所、役割、通報の基準、防犯の用具の場所。合言葉と集まる場所が要点です。

訓練は、実際に動いてみる形にします。鍵が見つからない、移動に時間がかかるといったことは、やってみないと分かりません。

記録には、要した時間気づいたことを書きます。「できなかったこと」がいちばん価値のある記録です。警察に相談すると、園の状況に合わせた助言がもらえます。

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実際に使える様式が必要な方へ

避難訓練の記録のExcelの様式が、商い屋の保育向けのページにあります。不審者対応の訓練にも使えます。

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よくある質問

Q. 年に何回やればよいですか。 A. 火災や地震の避難訓練のような回数の定めが無い場合もあります。年に1回から2回行っている園が多くあります。自治体から回数の案内がある場合は、それに従います。

Q. 合言葉は何がよいですか。 A. 日常で使わない言葉で、職員に意味が伝わり、子どもには分からないもの。実在しない先生の名前を使う形があります。場所も伝えられる形にしておくと、動きが早くなります。

Q. 子どもが怖がりませんか。 A. 伝え方によります。「知らない人が入ってきたときの練習」といった形で、年齢に合わせて伝えます。訓練の後に不安を聞き、怖がった子には個別に声をかけます。保護者にも事前に伝えておきます。

Q. さすまたは必要ですか。 A. 備えている園があります。ただし、使い方を知らないと役に立ちません。置いてあるだけでなく、訓練で触ってみる時間を取ります。警察に使い方を教えてもらう形もあります。

Q. 通報の基準はどう決めますか。 A. 迷ったら通報する側に倒します。結果的に何もなくても問題になりません。基準を決めておくと、その場で迷いません。警察に相談して、どういう場合に呼んでよいかを聞いておきます。

Q. 送迎の時間帯はどう管理しますか。 A. 人の出入りが多く、施錠が緩む時間帯です。誰が見ているかを決めておきます。保護者の顔を職員が把握しているか、初めての人が来たときに声をかけられるかを確かめます。

Q. 来訪者の記録は必要ですか。 A. 残しておくと、後から確かめられます。いつ、誰が、何のために来たか。業者や訪問販売も含めます。名札を渡す形を取っている園もあります。

Q. 警察に訓練を頼めますか。 A. 相談すると協力してもらえることがあります。不審者役をしてもらう訓練を行っている園もあります。地域の交番と日ごろから関係を作っておくと、相談しやすくなります。

Q. 園外保育中に不審者に出会ったら。 A. 園内とは動き方が変わります。その場を離れる、人の多い場所へ移動する、通報する。園外保育の計画にも、この場合の動きを書いておきます。

Q. 記録は避難訓練と分けますか。 A. 同じつづりにまとめておくと、年間の訓練の状況が一覧で見られます。ただし、訓練の種類が分かる形にしておきます。想定が違うので、記録の内容も変わります。

Q. 不審者対応の訓練は、年に何回行いますか。 A. 回数の定めは自治体の指導によって違います。避難訓練の一部として行う形もあります。所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。回数より、想定を変えて続けることが大事です。

Q. 合言葉はどのくらいの頻度で変えますか。 A. 年に1回、年度の初めに変える園が多くあります。変えたら全職員に伝え、知っている人の範囲を絞ります。保護者には伝えないのが一般的です。

Q. 警察に訓練へ来てもらえますか。 A. 所轄の警察署の生活安全課に相談すると、助言や立ち会いをしてもらえることがあります。実際の動きを見てもらうと、園では気づけない点が出ます。

Q. さすまたは使いこなせません。 A. 使う道具より、距離を取って時間を稼ぐことが目的です。訓練では、持ち方より立つ位置と声の出し方を練習してください。1人で向き合わない形も決めておきます。

Q. 訓練の記録には何を書きますか。 A. 日時、想定、参加者、流れ、気づいたこと、次に直すこと。最後の2つがいちばん大事です。実施したことだけの記録では、次の訓練が同じ内容になります。

Q. 訓練で子どもが泣いてしまいました。続けてよいですか。 A. その場は短く切り上げて構いません。訓練を続けることより、その子への関わりを優先します。あとで保護者にも伝えておきます。次の訓練では、その子への伝え方を変えます。

Q. パートや短時間の職員も訓練に参加させますか。 A. 参加させます。人の少ない時間帯に入っている職員ほど、判断を求められます。シフトの都合で参加できない場合は、別の日に短い形で行い、記録に残してください。

Q. 訓練の様子を写真に撮ってもよいですか。 A. 撮る場合は、記録として園の中だけで使う前提にします。保護者に配る園だよりに載せるなら、どんな訓練かが分かる程度にとどめてください。合言葉や動線が分かるものは載せません。