水遊びの安全|監視専任を置く体制の作り方
目次
夏のプールや水遊びは、子どもが楽しみにしている時間です。それでいて、重大な事故が起きやすい場面でもあります。人手が足りない中で、どう体制を組むかが毎年の悩みになります。
この記事では、水遊びの安全を、なぜ起きるか・監視の体制・当日の流れの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の体制を組める状態を目指します。
結論:監視に専念する人を別に置く
水遊びの安全とは、プールや水遊びの場面で、溺水などの事故を防ぐための体制と手順のことです。
国や自治体の通知で、監視を行う者と、指導を行う者を分けて配置することが示されている形があります。
ポイントはここです。指導しながら監視することはできません。子どもと関わっている人は、そこに集中します。全体を見る人が別に要ります。
人手が足りないからと兼ねてしまうのが、いちばん多い形です。兼ねられないなら、水遊びの形を変えるという判断もあります。
なぜ起きるのか
溺水は、静かに起きるとされています。知っておくべきことが3つあります。
1つ目は、声を出さないことです。もがいたり叫んだりするとは限りません。静かに沈むことがあります。
2つ目は、短時間で起きることです。深さがなくても起きます。数センチの水でも溺れることがあります。
3つ目は、気づかれにくいことです。周りに子どもが多いほど、1人の変化が見えにくくなります。
「見ていたのに気づかなかった」という形が起きるのは、この3つのためです。監視する人が、水面と子どもの人数だけを見る役割に専念する必要があります。
監視の体制
体制を組むときに決めるのは4つです。
1つ目は、監視の専任を置くことです。指導と兼ねません。
2つ目は、監視の位置です。全体が見える場所。水面と、水から出た子の両方を見ます。
3つ目は、人数の確認の方法です。定期的に数える。
4つ目は、交代です。長時間の監視は集中が続きません。時間を決めて交代します。
3つ目が効きます。「5分ごとに人数を数える」と決めておくと、いなくなったことに早く気づけます。
監視の人が他の作業をしないことも決めます。片付け、写真、着替えの手伝い。どれも監視を中断させます。
当日の流れ
当日の手順を決めておきます。5段です。
1つ目は、健康の確認です。体温、体調、皮膚の状態。前日からの様子も見ます。
2つ目は、水の準備です。水温、深さ、水質。排水口の確認も含みます。
3つ目は、人数と体制の確認です。参加する子の人数、職員の配置、監視の担当。
4つ目は、遊びの実施です。
5つ目は、終わりの確認です。人数、体調、けがの有無。
5つ目で人数を数えるのを忘れないようにします。着替えの場面は混乱しやすく、1人足りないことに気づきにくくなります。
水を抜くまでが手順です。遊びが終わった後も水が残っていると、子どもが戻る可能性があります。
記録に残すこと
その日の実施を記録に残します。書くのは6つです。
日付と時間。
参加した子の人数とクラス。
職員の配置。誰が監視、誰が指導。
水温と気温。
水の深さ。
特記事項。体調の変化、ヒヤリとした場面。
職員の配置を書くのが要点です。事故が起きたときに、どういう体制だったかを示せます。
ヒヤリとした場面は必ず書きます。「浮き輪から落ちた子がいた」「一瞬見失った」。事故になる前の場面が、次の年の体制を決める材料になります。
保護者への確認
水遊びに参加するかどうかを、保護者に確認します。決めるのは3つです。
1つ目は、参加の同意です。入園のときか、シーズンの初めに。
2つ目は、その日の可否です。連絡帳や健康の確認で。
3つ目は、参加しない場合の過ごし方です。別の活動、別の場所。
3つ目を決めていないと、その場で困ります。参加しない子を見る職員が、監視の人数から抜けてしまう形になります。
体調で参加できない子がいることを前提に、人の配置を組んでおきます。
プール以外の水遊び
プールだけでなく、水を使う場面は他にもあります。見落とされやすいものが3つあります。
1つ目は、たらいやビニールプールです。深さが浅いので油断しがちですが、数センチでも溺れます。
2つ目は、水遊びの用具です。バケツ、じょうろ。水を溜めたまま置いておかない。
3つ目は、園庭の水たまりや側溝です。雨の後。
1つ目がいちばん多い形です。「小さいから大丈夫」という前提が、監視を緩めます。深さではなく、水があるかどうかで判断します。
使い終わった水は、その場で抜くことを手順に入れます。後で片付けようとすると、その間が空きます。
研修と振り返り
年に1回、シーズンの前に確かめる場を持ちます。扱うのは3つです。
1つ目は、溺水の特徴です。声を出さない、短時間、浅くても起きる。
2つ目は、その年の体制です。誰が監視するか、交代はどうするか。
3つ目は、前年のヒヤリとした場面です。記録から拾います。
シーズンが終わったら、振り返りを記録に残します。次の年の担当が読める形にしておきます。
毎年同じことを繰り返さないためには、記録が残っていることが条件になります。
監視をする人の動き方
監視に専念する人を置いても、動き方が決まっていないと見落とします。
決めるのは4つです。
1つ目は、立つ位置です。水面全体が見える場所。日の向きも考えます。逆光だと水中が見えません。
2つ目は、動く範囲です。止まって全体を見る時間と、端まで歩いて見る時間を混ぜます。
3つ目は、見る順番です。決めた順番で目を動かすと、見ていない場所が減ります。
4つ目は、他のことをしないことです。着替えの手伝い、写真、片づけ。声をかけられても断ってよいことを、園の中で共有しておきます。
監視の人が他のことをしてしまうのは、本人の問題ではありません。頼まれたら断れない空気があるからです。誰も声をかけないという取り決めのほうが効きます。
時間を区切る
監視は、集中が続く時間に限りがあります。時間を区切って交代します。
区切り方は3つです。
1つ目は、水に入る時間そのものを短くすることです。長くても30分程度に収めている園があります。
2つ目は、監視を交代することです。交代の時刻を決めておきます。
3つ目は、休憩を入れることです。全員を水から上げて、人数を数える時間を作ります。
3つ目が人数確認の機会になります。休憩のたびに数えると、水の中にいる人数が合っているかを何度も確かめられます。
危ない子を先に把握する
水遊びの前に、注意が必要な子を把握しておきます。
見るのは4つです。
1つ目は、水を怖がる子です。無理に入れません。
2つ目は、水が好きすぎる子です。深いところに行きたがります。こちらのほうが危険です。
3つ目は、体調が万全でない子です。朝の受け入れで気になった子。
4つ目は、けいれんの既往やてんかんがある子です。医師の指示を確かめます。
4つに当てはまる子は、当日の朝に名前を出して共有します。紙に書いて、監視の人が持ちます。頭で覚えていると、他のことに気を取られたときに抜けます。
事故が起きたときの動き
起きてしまったときの動きは、その場で考える時間がありません。先に決めて、体で覚えます。
動きは4段です。
1つ目は、水から上げて、他の子を水から出すことです。同時に行います。
2つ目は、大声で人を呼ぶことです。誰か1人ではなく、聞こえる範囲の全員に。
3つ目は、救急と心肺蘇生です。役割を決めておきます。通報する人、蘇生する人、AEDを取りに行く人、他の子を見る人。
4つ目は、保護者と市町村への連絡です。
4段を、年に1回は実際に動いて確かめます。話し合うだけでは足りません。プールのある場所からAEDまで何秒かかるかを、実際に測っておいてください。
記録と振り返り
水遊びの記録は、やったことの証明であると同時に、次の年の材料になります。
残すのは4つです。
1つ目は、実施の日と時間、天候と気温、水温です。
2つ目は、参加した子と参加しなかった子です。
3つ目は、監視についた人と交代の時刻です。
4つ目は、ヒヤリとした場面です。
4つ目がいちばん役に立ちます。事故にならなかった場面を集めておくと、翌年の体制を決めるときの根拠になります。書きやすい形にすることが大事で、1行で足ります。
準備と片づけも計画に入れる
水遊びは、準備と片づけの時間にも事故が起きます。ここまで計画に入れます。
入れるのは3つです。
1つ目は、準備中に子どもを近づけないことです。水を張っている最中が危険です。
2つ目は、片づけの前に全員を室内に戻すことです。戻したことを数えて確かめてから、片づけに入ります。
3つ目は、水を抜く時期を決めることです。遊んだあとに水を残したままにしないことです。残した水で事故が起きた例があります。
準備と片づけの担当も、当日の役割表に書いておきます。書いていないと、手の空いた人がやる形になり、監視が薄くなります。
まとめ
水遊びの安全は、監視に専念する人を別に置くことが中心になります。指導しながら監視することはできません。
溺水は、声を出さず、短時間で、浅い水でも起きます。「見ていたのに気づかなかった」が起きるのは、この3つのためです。
体制で決めるのは4つ。専任・位置・人数の確認・交代。「5分ごとに数える」と決めておくと、早く気づけます。
記録には、職員の配置とヒヤリとした場面を必ず書きます。次の年の体制を決める材料になります。プール以外の水遊びも同じ扱いです。自治体の通知や基準は、所管の窓口に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 監視の専任を置けないときは、どうしますか。 A. 水遊びの形を変えます。人数を減らす、時間を短くする、水を使わない遊びにする。兼ねて行うより安全です。できない体制で実施して事故が起きると、体制そのものが問われます。
Q. 監視の人は何を見ますか。 A. 水面と、水から出た子の両方です。人数を定期的に数えます。動きが止まっている子、うつ伏せになっている子、静かになった子。声を出さないことを前提に見ます。
Q. 交代はどれくらいの間隔ですか。 A. 集中が続く時間を考えて決めます。15分から20分で交代している園があります。交代のときに、人数と体制を引き継ぐ形にしておきます。
Q. 水深はどれくらいまでにしますか。 A. 年齢や発達によって変わります。自治体の基準が示されている場合もあります。ただし、深さが浅くても溺水は起きます。深さを浅くしたから監視を緩めてよい、とはなりません。
Q. 排水口の確認は何を見ますか。 A. ふたが外れていないか、固定されているかを見ます。吸い込みによる事故が起きています。使う前に必ず確かめ、確かめたことを記録に残します。
Q. 参加しない子はどうしますか。 A. 別の活動と、見る職員をあらかじめ決めておきます。決めていないと、監視の人数から抜けることになります。体調で参加できない子が出ることを前提に配置を組みます。
Q. ビニールプールでも同じ体制が必要ですか。 A. 水がある以上、同じ考え方です。数センチでも溺れます。「小さいから大丈夫」という前提が、いちばん危険です。使い終わったらその場で水を抜きます。
Q. 事故が起きたら、どこに報告しますか。 A. 園内の記録に残し、一定の事故は自治体への報告が求められます。基準を確かめて紙に控えておきます。溺水は重大な事故につながるため、軽く見えても記録に残します。
Q. 写真を撮ってもよいですか。 A. 撮る場合は、監視以外の職員が行います。監視の人がカメラを持つと、その間の水面が見られません。同意の範囲も確かめておきます。
Q. ヒヤリとした場面は、どこまで書きますか。 A. 「一瞬見失った」「浮き輪から落ちた」といった場面をそのまま書きます。事故に至らなかったことが大事なのではなく、その場面が起きたことが次の年の材料になります。
Q. 監視の人は、保育士でなければいけませんか。 A. 資格そのものより、監視に専念できることと、訓練を受けていることが求められます。体制の考え方は自治体の指導で示されていることがあるので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。
Q. 水深はどのくらいまでにしますか。 A. 年齢によって考え方が違います。浅ければ安全とは限らず、転んで顔がつかる深さでも事故は起きます。深さより監視の体制が先です。自治体が目安を示している場合は、それに従ってください。
Q. ビニールプールでも同じ体制が要りますか。 A. 必要です。浅い水でも事故は起きています。水がある場所には監視をつけるという考え方にしてください。たらいやバケツも同じです。
Q. 保護者への確認は毎回取りますか。 A. 年度の初めに同意を取り、当日は体調の確認を取る形が多く使われています。当日の朝に、水遊びの可否を確かめる欄を受け入れの記録に置いておくと確実です。
Q. 水温や気温の基準はありますか。 A. 園で基準を決めておきます。自治体が目安を示していることがあるので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。決めた基準は保護者にも伝えておきます。
Q. 水遊びの計画書は作りますか。 A. 作っておくと、役割と流れが毎回そろいます。実施の日、参加する子、役割、時間、緊急時の動き。1枚で足ります。所轄の市町村の保育担当課が様式を示していることもあるので確かめてください。
Q. 監視の訓練は、どこで受けられますか。 A. 消防が行う救命講習のほか、自治体や職能団体が水の事故に関する研修を行っていることがあります。所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。受けた記録は研修の記録として残します。