送迎記録とは?加算と事故の両方に関わる記録
目次
送迎は毎日のことなので、記録が形だけになりがちです。乗車の時刻だけが並んでいて、その日の様子は何も残らない。ところが、事故が起きたときに求められるのは、まさにその残っていない部分です。
この記事では、送迎記録を、何のための記録か・書く項目・事故への備えの3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の様式を見直せる状態を目指します。
結論:報酬の根拠と、事故の備えを兼ねる
送迎記録とは、利用者の送迎について、日時、経路、同乗者、その日の様子を残す記録のことです。
役割は2つあります。1つは、サービスを提供した事実の記録。もう1つは、事故が起きたときの備えです。
ポイントはここです。2つの役割で、必要な項目が違います。報酬の側は時刻と人数、事故の側は経路と様子。両方を満たす様式にします。
送迎に関する減算や加算がある場合、その要件も記録に関わります。自社が何を算定しているかを確かめます。
書く項目
入れる項目は7つです。
日付。
車両。どの車を使ったか。
運転者と同乗者。誰が運転し、誰が付き添ったか。
利用者の氏名と、乗降の時刻。1人ずつ書きます。
経路。どの順に回ったか。
走行の距離。
特記事項。その日の様子、いつもと違ったこと。
抜けやすいのは、乗降の時刻を1人ずつ書くことと、特記事項です。まとめて「8時出発、9時到着」だけだと、誰がいつ乗ったかが分かりません。
特記事項は、書くことが無い日ほど大事です。「変わりなし」と書いてあれば、見ていたことが残ります。
事故に備える
事故が起きたときに、記録が説明の材料になります。備えとして書いておくのは3つです。
1つ目は、乗車の状況です。シートベルトの着用、座席の位置、車いすの固定。
2つ目は、乗降の介助です。誰が、どう介助したか。
3つ目は、その日の本人の状態です。体調、ふらつき、覚醒。
車いすのまま乗る場合、固定の確認は必ず記録に残します。固定が不十分なまま走行すると、急ブレーキで動きます。
乗降のときの転倒が、送迎でいちばん多い事故とされています。段差、傾斜、天候。降車する場所の状況も書いておくと、後から見直せます。
車両の点検
送迎に使う車両の点検も、記録に関わります。決めておくのは3つです。
1つ目は、日常点検です。運行の前に確かめる項目。タイヤ、灯火、ブレーキ、車いす用の設備。
2つ目は、定期点検と車検です。期限の管理。
3つ目は、車内の備品です。消火器、救急セット、毛布、タオル。
車いす用のリフトやスロープは、日常点検の項目に入れておきます。動かなくなると、その日の送迎が止まります。
期限は1枚の表で管理します。車検、保険、定期点検。免許証の更新も同じ表に入れておくと、見に行く先が1つで済みます。
運転する職員の管理
送迎を行う職員についても、確かめることがあります。3つです。
1つ目は、免許証です。有効期限、条件(眼鏡等)。年に1回は現物を確かめます。
2つ目は、運転前の状態です。体調、飲酒。アルコールの確認が求められる場合があります。
3つ目は、事故や違反の有無です。
安全運転管理者の選任が必要になる場合があります。車両の台数によって決まります。該当するかを確かめておきます。
該当する場合、運転前後のアルコールの確認と記録が求められます。送迎記録とは別の記録になります。
家族との受け渡し
送迎は、家族と接する場面でもあります。決めておくのは3つです。
1つ目は、不在だった場合の扱いです。連絡がつかない、鍵が開いている。どこまで待つか、誰に連絡するか。
2つ目は、引き渡しの確認です。家族に直接渡すのか、玄関までか。
3つ目は、伝言の扱いです。家族からの伝言を、誰にどう伝えるか。
1つ目を決めていないと、その場で判断することになります。「10分待って連絡がつかなければ、事業所とケアマネジャーに連絡する」といった形で決めておきます。
伝言は、記録に書いて申し送る形にします。口頭だけだと、伝わらないことがあります。
記録を見直す
送迎記録は、溜まってから見ると分かることがあります。年に1回、並べて見ます。
見るのは3つです。
1つ目は、時間です。乗車から降車までが長くなっていないか。利用者の負担につながります。
2つ目は、経路です。回る順番が効率的か。増えた人、減った人で変わっているか。
3つ目は、事故やヒヤリハットです。同じ場所で起きていないか。
1つ目が見落とされやすいところです。利用者が増えるたびに経路が伸び、最初に乗る人の乗車時間が長くなります。
見直した結果は、経路の変更や、便を分けることにつながります。記録が無いと、感覚での判断になります。
送迎の時間をどう記録するか
送迎の記録でいちばん問われるのが、時間の書き方です。ここが揃っていないと、提供時間の根拠が崩れます。
書くのは4つです。
1つ目は、出発の時刻です。事業所を出た時刻。
2つ目は、乗車と降車の時刻です。人ごとに書きます。
3つ目は、到着の時刻です。事業所に着いた時刻。
4つ目は、運転した人と同乗者です。名前で書きます。
4つのうち、乗車と降車の時刻がいちばん抜けます。全員分を1枚に並べた様式にして、名前の横に時刻を書く形にすると埋まります。あとから思い出して書くことはできません。
事故が起きたときの流れ
送迎は、道路で起きる事故という点が他の記録と違います。流れを決めておきます。
流れは4段です。
1つ目は、けがの確認と安全の確保です。利用者を優先します。
2つ目は、警察への連絡です。人身でも物損でも、届け出が求められているとされています。
3つ目は、事業所への連絡です。残りの利用者の送迎をどうするかを決めます。代わりの車と運転者を出せるかどうか。
4つ目は、家族と市町村への報告です。利用者にけががあった場合は、市町村への報告が必要になることがあります。報告の対象となる範囲は市町村で違うので、所轄の市町村に確かめてください。
4段を1枚にして、全部の車に載せておきます。運転している人が、その場で見られる形にします。
車両と運転者の管理
送迎記録とセットで、車と運転する人の管理が要ります。ここが抜けている事業所が多くあります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、運転する人の免許です。有効期限を一覧にして、切れる前に確かめます。
2つ目は、車検と保険です。期限を一覧にします。
3つ目は、日常点検です。運転する前に確かめる項目を決めて、記録に残します。
4つ目は、飲酒の確認です。事業所の形態によっては、確認と記録が求められる場合があります。該当するかどうかは所轄の警察署に確かめてください。
4つは送迎の記録とは別の紙にします。混ぜると、どちらも探しにくくなります。ただし保管する場所は同じにしておきます。
送迎中の様子も記録に残す
送迎の時間は、利用者の様子が分かる時間でもあります。時刻だけの記録にしないことです。
残すと役に立つのは3つです。
1つ目は、乗り降りの様子です。段差を越えられたか、手すりを使ったか。自宅での動きは、事業所の中では見られません。
2つ目は、自宅の様子です。玄関の状態、家族の様子。ケアマネジャーに伝える材料になります。
3つ目は、車内での様子です。酔う、眠る、話す。体調の変化に気づけることがあります。
3つは毎回書く必要はありません。気づいたときだけ書く欄を1つ置いておけば足ります。送迎の担当者しか知らない情報が、記録に残らないまま消えていることが多くあります。
経路と時間の見直し
送迎の記録は、次の経路を決める材料になります。溜めるだけにしないことです。
見るのは3つです。
1つ目は、乗っている時間の長さです。最初に乗る方が、いちばん長く乗ることになります。同じ人が毎回最初にならない形にできないかを見ます。
2つ目は、遅れが出る区間です。同じ時間帯の同じ道で遅れているなら、経路か出発時刻を変えます。
3つ目は、1台あたりの人数です。多すぎると、乗り降りの介助に手が回りません。
3つを3か月に1回見直します。利用者の増減があると、前の経路が合わなくなります。見直した内容は、送迎の担当者だけでなく相談員にも共有します。家族への説明が要る場合があるからです。
悪天候のときの決め方
雪や大雨のとき、送迎をどうするかの判断は先に決めておきます。その日に決めると、判断が人によって変わります。
決めるのは3つです。
1つ目は、中止の基準です。警報の種類、積雪の量。数字か公的な情報で線を引きます。
2つ目は、決める人と時刻です。「朝6時に管理者が決める」という形にします。
3つ目は、伝える順番です。利用者と家族、職員、ケアマネジャー。連絡網を1枚にしておきます。
中止したときも記録を残します。その日のサービスを提供していないことになるので、扱いが変わります。請求に関わるので、所轄の市町村に取り扱いを確かめておいてください。
まとめ
送迎記録は、サービスを提供した事実の記録と、事故が起きたときの備えの2つの役割を持ちます。
書く項目は7つ。抜けやすいのは、乗降の時刻を1人ずつ書くことと、特記事項です。「変わりなし」と書いてあれば、見ていたことが残ります。
事故への備えとして、乗車の状況・乗降の介助・その日の状態を書きます。車いすのまま乗る場合、固定の確認は必ず残します。
車両の点検と、運転する職員の管理も記録に関わります。安全運転管理者の選任が必要になる場合があるので、車両の台数で確かめます。要件は、所轄の警察署と所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 乗降の時刻は、分単位で書きますか。 A. 分まで書いておくと、乗車時間の長さを後から確かめられます。分単位が負担なら5分刻みでもかまいませんが、まとめて1つの時刻にすると、誰がいつ乗ったかが分からなくなります。
Q. 送迎中の事故は、市町村に報告しますか。 A. 報告の基準は市町村によって異なります。受診した場合や、けがが生じた場合は対象になることが多くあります。基準を確かめて紙に控えておきます。交通事故としての手続きも別に必要です。
Q. 車いすの固定は、どこまで記録しますか。 A. 固定したことを確認した旨を残します。誰が確認したかも書いておくと確実です。固定の方法が車両によって違う場合は、手順を紙にして車内に置いておきます。
Q. 利用者が不在だった場合は。 A. 待つ時間と、連絡する先をあらかじめ決めておきます。玄関が開いている、応答がないといった場合の扱いも決めます。実際にあったことは記録に残し、ケアマネジャーにも伝えます。
Q. 安全運転管理者は必要ですか。 A. 使用する自動車の台数によって決まります。乗車定員11人以上を1台、またはその他の自動車を5台以上使用している事業所が該当するとされています。原動機付自転車の数え方もあるため、所轄の警察署に確かめます。
Q. アルコールの確認は必要ですか。 A. 安全運転管理者を選任する事業所では、運転前後の確認と記録が求められます。該当するかを確かめ、該当する場合は送迎記録とは別に記録簿を用意します。
Q. 送迎の記録は何年残しますか。 A. 介護保険の記録として、完結の日から2年が国の基準です。条例で5年としている自治体があります。事故に関わる記録は長めに残している事業所もあります。
Q. 経路を毎回書くのが負担です。 A. いつもの経路を印刷しておき、変更があった日だけ書き足す形にすると軽くなります。回る順番が変わった日、別の道を通った日。変更が無い日は丸を付けるだけで足ります。
Q. 同乗する職員がいない便もあります。 A. 運転者1人で行う場合、乗降の介助と運転を1人で担うことになります。その体制で安全かを確かめ、難しい場合は便を分けるか人を付けます。体制を記録に残しておくと、後から見直せます。
Q. 送迎の時間が長くなってきました。 A. 記録を並べて、最初に乗る人の乗車時間を見ます。長くなっているなら、便を分けるか経路を見直します。利用者の負担になっているかどうかは、送迎後の様子の記録からも分かります。
Q. 送迎の記録は何年残しますか。 A. サービス提供の記録と同じ扱いになります。年数は市町村の条例で違うので、所轄の市町村に確かめてください。提供時間の根拠になるので、揃えて残します。
Q. 家族の希望で送迎の場所を変えられますか。 A. 変えられる場合がありますが、扱いはサービスの区分と保険者の運用によります。所轄の市町村に確かめてください。変えた場合は、変えた理由と同意を記録に残します。
Q. 送迎の時間は、サービスの提供時間に含みますか。 A. 原則として含まない扱いとされていますが、区分や状況によって考え方が違います。所轄の市町村に確かめてください。記録には、送迎とサービスの時間を分けて書いておきます。
Q. 自家用車で送迎してもよいですか。 A. 職員の自家用車を使う場合、保険の範囲と事業所の規程を確かめる必要があります。事故が起きたときの責任の所在が変わります。使うなら書面で取り決めてください。
Q. 乗車を拒まれたときはどうしますか。 A. 無理に乗せません。理由を聞き、時間を置いて改めて誘います。それでも難しい場合は、事業所に連絡して判断を仰ぎます。その日の記録に、拒否の事実と対応を残します。
Q. 送迎の記録は、運転者が書きますか。 A. 運転者が書く形が基本です。ただし運転しながらは書けないので、同乗者がいる場合は同乗者が書きます。いない場合は、1人ずつ降ろしたあとにその場で書く形にします。
Q. 車内での見守りは誰が行いますか。 A. 同乗者がいればその人が行います。1人で運転する場合は、乗車位置と座席のベルトで安全を確保します。車内で介助が必要な方は、同乗者のいる便に回す形にしてください。