看取りの記録|説明・同意から経過までの残し方
目次
看取りの場面は、記録を書く余裕がいちばん少ない場面です。それでいて、後から求められる記録はいちばん多くなります。その場で何を書き、後から何をまとめるのかを決めていないと、大事なことが残りません。
この記事では、看取りの記録を、始まる前・経過・その後の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の手順を組める状態を目指します。
結論:説明と同意から始まり、経過で続く
看取りの記録とは、人生の最終段階におけるケアについて、方針の確認から日々の経過までを残す記録のことです。
看取りに関する加算を算定する場合、指針の整備、説明と同意、経過の記録などが要件として定められている形があります。
ポイントはここです。記録は、亡くなる直前から始まるのではありません。方針を確認した時点から始まります。
「いつから看取りか」が曖昧なまま経過すると、どこから記録を厚くすればよいかが分かりません。開始の時点を決めるのが最初の作業になります。
始まる前に決めること
方針の確認から始まります。決めるのは4つです。
1つ目は、本人と家族の意向です。どこで過ごしたいか、何を望むか、望まないこと。
2つ目は、医師の判断です。医学的な見通しと、医療の方針。
3つ目は、事業所でできることです。体制、夜間の対応、急変時の動き。
4つ目は、急変したときの連絡と搬送の扱いです。
この4つを、説明して同意を得た記録が要ります。誰に、いつ、誰が説明し、何に同意を得たか。
意向は変わります。一度決めたら終わりではなく、変わったときに記録を更新します。「前は病院を望まないと言っていたが、いまは違う」という変化も残します。
経過の記録
看取りの期間の記録は、日々の記録より厚くなります。書くのは5つです。
バイタル。体温、脈拍、血圧、呼吸、酸素飽和度。頻度を決めます。
食事と水分。摂取量、飲み込みの状態。
排泄。量、回数。
意識と表情。声かけへの反応、苦痛の様子。
ケアの内容。体位、清拭、口腔ケア、保湿。
苦痛の様子は、言葉にしにくい部分です。表情、呼吸の様子、体の動き。見たことをそのまま書きます。「苦しそう」ではなく「眉間にしわを寄せ、呼吸が速い」。
家族が付き添っている場合、家族の様子と、かけた言葉も残します。後から振り返るときの材料になります。
医師・看護職との連携
看取りは、介護だけでは完結しません。連携の形を決めておきます。
1つ目は、連絡の基準です。どういう状態になったら連絡するか。数字で決めておくと迷いません。
2つ目は、連絡の手段と時間帯です。夜間の連絡先。
3つ目は、指示の記録です。受けた指示を、誰が、いつ、どう受けたか。
夜間の連絡でいちばん迷うのが「呼ぶかどうか」です。基準が決まっていないと、その場で判断することになります。「呼吸が○回以下になったら」といった形で決めておきます。
受けた指示は、必ず記録に残します。電話で受けた内容を復唱し、記録に書きます。後から食い違いが出たときに、記録だけが手がかりになります。
亡くなった後にやること
亡くなった後にも、記録に関わる作業があります。順番を決めておきます。
1つ目は、医師への連絡です。死亡の確認は医師が行います。
2つ目は、家族への連絡です。すでにいる場合は、そのまま。
3つ目は、そのときの記録です。いつ、誰が、どういう状態を確認したか。
4つ目は、退居や契約に関する手続きです。
5つ目は、預かっているものの返却です。薬、貴重品、私物。麻薬があれば返却の手続きが要ります。
5つ目が抜けやすいところです。手続きが集中する中で、預かっていた薬の返却を忘れる形が起きます。手順の紙に1行入れておきます。
家族への説明も残します。経過と、事業所が行ったこと。後から問われたときに、記録が説明の材料になります。
振り返りの記録
亡くなった後、事業所として振り返る場を持つことが求められる形があります。デスカンファレンスと呼ばれることがあります。
扱うのは3つです。
1つ目は、本人と家族の意向に沿えたかです。望んだ形に近づけたか。
2つ目は、ケアの内容です。苦痛への対応、体位、清潔。
3つ目は、職員の気持ちです。看取りに関わった職員が抱えたものを話せる場にします。
3つ目を扱う場が無いと、職員が疲れます。「もっとできたのでは」という気持ちを抱えたままになります。
振り返りの記録は、次の看取りに生かします。同じことで迷わないよう、決めたことを指針に反映します。
指針に書くこと
看取りに関する指針が求められる場合があります。書く内容は次のとおりです。
基本的な考え方。人生の最終段階における方針の確認の手順。医師や看護職との連携。職員の研修。家族への支援。振り返りの実施。
ひな形から作るときは、自社の体制に合わせて削ります。夜間に看護職がいない、医師の訪問が週1回、といった実情を書いておくと、使える指針になります。
家族への支援の部分は、抜けやすいところです。付き添いの場所、宿泊の可否、食事の扱い。決めておくと、その場で慌てません。
記録の保存
看取りに関する記録は、他の記録と同じ扱いで保存します。完結の日から2年が国の基準で、条例で5年としている自治体があります。
亡くなった方の記録は、サービスの終了の日から起算します。継続中ではなくなるため、期限が動き始めます。
加算を算定していた場合、その要件を満たしていたことを示す記録も残します。説明と同意の記録、経過の記録、指針。
家族から記録の開示を求められることがあります。見せられる書き方にしておくと、そのまま出せます。
家族の希望をどう聞き取るか
看取りの記録でいちばん難しいのが、家族の希望を聞き取る場面です。時期によって聞ける内容が変わります。
聞く時期は3つに分かれます。
1つ目は、入所や利用が始まるときです。まだ元気なうちに、万一のときの考え方を聞いておきます。踏み込まず、「今のお考えで構いません」と前置きします。
2つ目は、状態が変わり始めたときです。食事が入らなくなった、眠っている時間が増えた。医師から説明があったあとに、改めて聞きます。
3つ目は、最期が近いときです。この時期の希望は、具体的になります。誰に立ち会ってほしいか、連絡してほしい時間帯。
3つとも、聞いた内容を日付つきで残します。気持ちは変わります。変わったことも記録に残すことが大事です。前の記録と違っていても、それが自然です。
職員の気持ちをどう扱うか
看取りは、関わった職員に残るものがあります。ここを事業所として扱わないと、離職につながります。
できることは3つあります。
1つ目は、終わったあとに話す時間を作ることです。15分で構いません。何を感じたかを言える場にします。
2つ目は、責める場にしないことです。「もっとこうできた」という話は必ず出ます。出た内容は改善の材料として受け取り、個人の責任にしません。
3つ目は、新しく入った人を1人にしないことです。初めての看取りは、経験のある職員と組みます。
3つは記録に残す種類のものではありませんが、事業所の手順書には書いておきます。書いていないと、忙しい時期に飛ばされます。
医療との連絡の形を決めておく
看取りの場面では、夜間や休日に連絡が必要になることがあります。形を先に決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、連絡先です。主治医、訪問看護、家族。時間帯ごとに、かける順番を決めます。
2つ目は、どの状態で連絡するかです。呼吸の変化、意識の変化。看護職と一緒に基準を書きます。
3つ目は、記録の残し方です。かけた時刻、話した相手、指示の内容。
4つ目は、亡くなったことが確認されたあとの流れです。誰が来るか、その間に何をするか。
4つを1枚にまとめて、夜勤者が見られる場所に置きます。その場で探すことになると、いちばん落ち着いていてほしい時間に慌てます。
加算を取る場合に揃えるもの
看取りに関する加算を算定する場合、揃える書類が決まっています。
揃えるのは4つです。
1つ目は、指針です。看取りに関する方針を書いたもの。
2つ目は、説明と同意の記録です。本人か家族に説明した日、内容、同意。
3つ目は、医師の判断です。回復の見込みがないことについての医学的な判断。
4つ目は、日々の記録です。状態の変化と、行ったケア。
要件は加算の種類とサービスの区分で違います。算定を始める前に所轄の市町村に確かめてください。始めてから様式を作ると、最初の数か月が要件を満たさない形になります。
亡くなったあとに残す記録
看取りは、亡くなった時点で記録が終わるわけではありません。あとから残すものがあります。
残すのは3つです。
1つ目は、経過のまとめです。いつからどう変化し、何をしたか。1枚にまとめておくと、振り返りの材料になります。
2つ目は、家族とのやり取りです。説明した内容、伝えられた希望、その場での反応。
3つ目は、振り返りの記録です。職員で話した内容のうち、次に活かせることだけを書きます。個人を責める内容は残しません。
3つは、次の看取りのときに読まれます。読まれる前提で書くと、書く内容が変わります。感想ではなく、次の人が使える形にします。
まとめ
看取りの記録は、方針の確認から始まります。亡くなる直前からではありません。開始の時点を決めるのが最初の作業です。
始まる前に決めるのは4つ。本人と家族の意向、医師の判断、事業所でできること、急変時の扱い。説明と同意の記録を残します。
経過の記録は、バイタル、食事と水分、排泄、意識と表情、ケアの内容。苦痛の様子は、見たことをそのまま書きます。
亡くなった後は、連絡・記録・手続き・預かっているものの返却まで。5つ目が抜けやすいところです。振り返りでは、職員の気持ちも扱います。要件は、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 看取りはいつから始まりますか。 A. 医師の判断と、本人や家族との話し合いで決まります。事業所としては、方針を確認して同意を得た時点から記録を厚くします。開始の時点が曖昧だと、どこから記録を変えるかが分かりません。
Q. バイタルはどれくらいの頻度で測りますか。 A. 状態によって変わります。医師や看護職と相談して決めます。頻繁に測ることが本人の負担になる場合もあるため、何のために測るかを確かめてから頻度を決めます。決めた頻度を記録に書いておきます。
Q. 夜間に医師を呼ぶ基準は、どう決めますか。 A. 数字で決めておくと迷いません。呼吸の回数、意識の状態、苦痛の様子。医師や看護職と相談して、あらかじめ決めます。基準を紙にして、夜勤者が見られる場所に置きます。
Q. 家族が付き添えない場合は。 A. 事業所として何ができるかを伝えておきます。連絡の頻度、様子の伝え方。付き添えないことへの気持ちを受け止めることも支援のうちです。伝えた内容を記録に残します。
Q. 職員が辛いと言っています。 A. 振り返りの場で話せるようにします。1人で抱えると続きません。話す場が持てない場合も、管理者が個別に聞く時間を取ります。職員の気持ちを扱うことも、看取りの体制の一部です。
Q. 意向が変わった場合、どうしますか。 A. 変わったことを記録に残し、方針を確認し直します。同意も取り直します。一度決めたら変えられないものではありません。変わることを前提に、確認の機会を持ちます。
Q. 急変して搬送した場合、看取りではなくなりますか。 A. 方針と実際が違った場合も、その経過を記録に残します。なぜ搬送したのか、誰が判断したのか。加算の算定への影響は、所管の自治体に確かめます。
Q. 預かっていた薬は、どうしますか。 A. 交付を受けた薬局や医療機関に返却します。麻薬がある場合は、返却の手続きが定められています。手続きが集中する中で忘れやすいため、手順の紙に1行入れておきます。
Q. 記録の開示を家族から求められたら。 A. 本人に関する部分を示します。見せられる書き方をしておくと、そのまま出せます。手順と費用をあらかじめ決めて、重要事項説明書に書いておくと慌てません。
Q. 指針はどこで手に入りますか。 A. 自治体や事業者団体がひな形を公開しています。そのまま使うと自社に無い体制が残るため、削る作業が要ります。夜間の体制や医師の訪問の頻度など、実情を書き込むと使える指針になります。
Q. 看取りの指針は、拘束の指針と一緒にできますか。 A. 別にしたほうが使われます。目的も、読む場面も違います。ただし両方を同じファイルに綴じておくと、実地指導のときに出しやすくなります。
Q. 家族が「まだ考えられない」と言う場合はどうしますか。 A. 無理に決めさせません。「今は決めなくて構いません」と伝えたことを記録に残します。時期を置いて改めて聞きます。決まっていないことも情報です。
Q. 看取りの記録は、亡くなったあと何年残しますか。 A. サービス提供の記録と同じ扱いになります。年数は市町村の条例で違うので、所轄の市町村に確かめてください。加算を算定した分は、とくに揃えて残します。
Q. 救急車を呼ぶかどうかは、誰が決めますか。 A. 事前に話し合った内容と、そのときの状況によります。現場の職員が1人で決める形にはしないことです。連絡の順番を決めた1枚を置いておき、そこに沿って動きます。
Q. 他の利用者への影響はどう考えますか。 A. 同じフロアの方が気づくことがあります。隠すより、落ち着いた形で伝えたほうが動揺が少ないという考え方があります。事業所としてどうするかを決めて、手順書に書いておいてください。
Q. 振り返りは、どのくらいあとに行いますか。 A. 1週間から2週間のあいだが多く使われています。直後は気持ちが整理できていません。時間を置きすぎると、細かいところを忘れます。日にちを決めて予定に入れておいてください。