介護の記録書き方2026.06.10 公開KK-46

口腔ケアの記録|見るところと書き方を決める

目次

口腔ケアは毎食後に行っている。記録には「口腔ケア実施」と書く。それだけだと、口の中がどうなっているかは誰にも伝わりません。次に見た人が、前と比べられない状態が続きます。

この記事では、口腔ケアの記録を、なぜ大事か・見るところ・書き方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の記録の欄を決められる状態を目指します。

食事と水分の記録から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 食事・水分摂取記録の書き方

結論:誤嚥性肺炎と食事につながる記録

口腔ケアの記録とは、口の中の清潔を保つ関わりと、そのときに見えた状態を残す記録のことです。

口腔ケアが大事なのは、清潔のためだけではありません。誤嚥性肺炎の予防と、食べる力を保つことにつながるためです。

3つがつながっている清潔汚れを落とす肺炎の予防飲み込む細菌を減らす食べる力口が動くようになる
清潔・肺炎の予防・食べる力という3つのつながりを示した層の図

ポイントはここです。口の中は、ケアのときにしか見えません。そのときに見たことを書かないと、変化に気づく機会が失われます。

「実施」だけの記録が続くと、口内炎ができていても、義歯が合わなくなっていても、誰も気づかないままになります。

見るところ

ケアのときに見る場所を決めておきます。6つです。

歯と歯ぐき。汚れ、出血、ぐらつき、痛み。

舌。白い苔のような汚れ、乾燥、傷。

頬の内側と上あご。汚れ、できもの、口内炎。

唇。乾燥、ひび割れ。

義歯。合っているか、汚れ、傷、割れ。

口臭。強くなっていないか。

主な見るところ見るところ気づきたい変化歯と歯の間汚れの残り粘膜と舌赤み・白いもの・乾き噛み方片側だけで噛む義歯外れる・当たって痛い
主な見るところと、気づきたい変化を並べた表

舌と上あごが見落とされやすい場所です。歯だけを磨いて終わると、舌の汚れが残ります。とくに経口で食べていない人は、舌に汚れが溜まりやすくなります。

義歯が合わなくなるのは、体重が減ったときに起きやすくなります。食事量の記録とあわせて見ます。

書き方

記録を比べられる形にするには、3つを書きます。

1つ目は、行ったことです。誰が、どのように。自分で磨いたのか、介助したのか、仕上げ磨きをしたのか。

2つ目は、口の中の状態です。見るところ6つのうち、気づいたこと。

3つ目は、本人の様子です。嫌がったか、痛がったか、協力してくれたか。

3つの欄に分ける書き方行ったこと時間帯のマスに印状態週に1回、4項目を確かめる様子気づいたときだけ書く
行ったこと・状態・様子という3つの欄を並べた表

「異常なし」も記録です。何も無かったことが書いてあれば、次に何かが出たときに「いつからか」が分かります。

選択式にすると続きます。「歯ぐきの出血:あり/なし」「舌の汚れ:多い/ふつう/少ない」。書く量を減らすほど、書かれます。

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実際に使える様式が必要な方へ

介護記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は口腔ケアに絞った話です。

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自分で磨ける人の記録

自分で磨ける人は、記録が薄くなりがちです。それでも見るところがあります。

磨けているか。磨き残しが同じ場所に続いていないか。

道具が合っているか。歯ブラシが古くなっていないか、握りやすいか。

時間と回数。食後に磨いているか、忘れていないか。

「自立」と書いて終わりにしないことです。自分で磨いていても、手が届かない場所が出てきます。週に1回は、こちらで確かめる形にします。

道具は消耗します。歯ブラシの交換の時期を決めておくと、古いまま使い続けることを防げます。

経口摂取していない人の口腔ケア

食べていない人の口腔ケアは、見落とされやすいところです。食べていないほうが、口の中は汚れます。

理由は2つです。唾液が減るため、自浄の作用が働きません。また、口を動かさないため、汚れが流れません。

食べているかで汚れ方が違う口から食べている食べ物の残り歯の間の汚れ食後のケアが中心口から食べていない乾き舌の汚れ粘膜の荒れ保湿と粘膜のケアが中心
食べている人と食べていない人で、汚れ方が違うことを並べた比較の図

乾燥がいちばんの問題になります。口の中が乾くと、汚れが張り付き、剥がすときに出血します。保湿の方法を決めておきます。

記録には、乾燥の程度を書きます。「乾燥あり」「湿っている」。保湿剤を使ったかも書きます。

再び食べられるようになったときのために、口の中を保つ意味もあります。

義歯の扱い

義歯についても、記録の欄を作ります。決めるのは4つです。

外す時間。夜間に外すか、つけたままか。本人の希望と、医師や歯科医師の指示。

洗い方。流水で洗う、洗浄剤を使う。

保管の仕方。乾燥させない、専用の容器に。

合っているか。外れやすい、痛い、噛みにくい。

義歯で決める4つ決めること記録に残すこと外す時間夜間に外したか洗い方洗った人と時刻置き場所名前を書いた容器合っているか痛みと外れやすさ
義歯で決める4つと、記録に残すことを並べた表

義歯が合わなくなると、食べる量が減ります。「最近食べない」の背景に、義歯が合っていないことがあります。

紛失も起きやすいところです。外した義歯をどこに置くかを決め、名前を書いておきます。ティッシュに包んで置くと、捨てられます。

歯科との連携

口の中の問題は、介護の側だけでは解決しません。つなぐ形を決めておきます。

1つ目は、気づいたことを伝える相手です。看護職、ケアマネジャー、家族。

2つ目は、訪問歯科を使うかです。定期的に来てもらう形があります。

3つ目は、伝える内容です。いつから、どこが、どんな状態か。記録が残っていれば、そのまま伝えられます。

気づいたあとの3段1気づく4項目のどれかに2伝える看護職か管理者へ3つなぐ歯科の受診へ
気づく・伝える・つなぐという3段のフロー

記録が「実施」だけだと、伝える材料がありません。「2週間前から右上の歯ぐきに出血がある」と言えると、歯科の側も判断しやすくなります。

歯科の指示を受けたら、それを記録と計画に反映します。「歯科から○○と言われた」で終わらせないことです。

加算との関係

口腔に関する加算を算定している場合、要件として記録が求められます。

評価の記録、計画、実施の記録が必要になる形があります。算定している加算ごとに、何が要るかを確かめます。

算定しているのに記録が無いと、返還の対象になります。日々の口腔ケアの記録と、加算のための記録がつながっているかを確かめます。

自社が算定している加算の要件は、改定で変わることがあります。改定のたびに確かめる形にしておきます。

誰が行うかで記録が変わる

口腔ケアの記録は、行った人の職種で書く中身が変わります。ここを混ぜると、加算の要件を満たしているかが分からなくなります。

分けるのは3つです。

1つ目は、毎日のケアです。介護職が行います。磨いた、義歯を洗った、うがいをした。事実だけを書きます。

2つ目は、専門的な口腔ケアです。歯科衛生士などが行うもので、加算の対象になることがあります。行った人の職種と名前が必ず要ります。

3つ目は、歯科医師や歯科衛生士の指導です。事業所の職員への指導の記録は、別に残します。

3つが1つの様式に混ざっていると、実地指導で確かめられません。日々のケアの記録と、加算の根拠になる記録は分けます。

見て気づくところ

口腔の中は、毎日見ている人がいちばん先に変化に気づける場所です。気づく項目を決めておきます。

見るのは4つです。

1つ目は、汚れの残りです。歯の間、義歯の裏、舌の上。

2つ目は、粘膜の状態です。赤み、白いもの、出血、乾き。

3つ目は、痛がる様子です。特定の側で噛まない、熱いものを避ける。

4つ目は、義歯が合っているかです。外れる、当たって痛い、入れたがらない。

4つのどれかに気づいたら、看護職か管理者に伝えます。伝えた内容と日付を残しておくと、歯科の受診につなげるときの材料になります。

誤嚥性肺炎とのつながり

口腔ケアは、誤嚥性肺炎を減らす取り組みの一部として扱われています。ここを職員が知っているかで、ケアの丁寧さが変わります。

つながりは3つあります。

1つ目は、口の中の細菌の量です。汚れたまま唾液を飲み込むと、細菌も一緒に入ります。

2つ目は、食後の残りです。食べ物が口の中に残ったまま横になると、危険が上がります。食後のケアがとくに大事とされている理由です。

3つ目は、口の動きです。ケアで口の周りを触ることが、飲み込みの準備にもなります。

食前に口を動かす取り組みを入れている事業所があります。食事の直前に数分、口と舌を動かす。記録に残しておくと、続けられているかが分かります。

様式を短くする

口腔ケアは1日に複数回行うので、書く量が多くなりがちです。短くしないと続きません。

短くする工夫は3つあります。

1つ目は、行ったことを記号で残すことです。朝昼夕のマス目に印を入れる形。

2つ目は、気づいたときだけ書く欄を別に作ることです。毎回文章を書かせない形にします。

3つ目は、週に1回だけ観察の欄を設けることです。毎日詳しく見るのは続きません。曜日を決めて、その日だけ4項目を確かめます。

毎日全項目を書く様式は、2か月で空欄が増えます。空欄だらけの詳しい様式より、印だけでも毎日埋まっている様式のほうが、記録として役に立ちます。

道具の使い分けと管理

口腔ケアの道具は、人ごとに分けて管理することが前提です。感染対策としてもここは外せません。

決めることは4つあります。

1つ目は、道具を人ごとに分けることです。歯ブラシ、スポンジ、義歯ブラシ。名前を書いて、置き場所を分けます。

2つ目は、乾かす場所です。濡れたまま重ねて置くと、細菌が増えます。立てて乾かせる形にします。

3つ目は、交換の時期です。歯ブラシは毛先が開いたら替えます。月を決めて一斉に替える形にすると、忘れません。

4つ目は、使い捨てにするものです。スポンジブラシは使い捨てが基本です。洗って使い回すと、感染の経路になります。

4つは、口腔ケアの手順書に入れておきます。ケアのやり方だけを書いて、道具の管理が書かれていない手順書が多くあります。

まとめ

口腔ケアの記録は、清潔のためだけでなく、誤嚥性肺炎の予防と、食べる力を保つことにつながります。口の中はケアのときにしか見えないため、そのとき見たことを書きます。

見るところは6つ。歯と歯ぐき、舌、頬の内側と上あご、唇、義歯、口臭。舌と上あごが見落とされやすい場所です。

書くのは、行ったこと・口の中の状態・本人の様子の3つ。選択式にすると続きます。「異常なし」も記録です。

経口摂取していない人ほど、口の中は汚れます。唾液が減り、口を動かさないためです。乾燥の程度を記録します。加算を算定している場合は、要件を所管の自治体に確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

介護記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。口腔の欄を足せば、そのまま使えます。

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よくある質問

Q. 毎食後に記録が必要ですか。 A. 毎回、口の中の状態まで書くのは負担が大きくなります。実施の有無は毎回、状態の観察は1日1回、といった形にしている事業所があります。決めた頻度を計画に書いておくと、統一されます。

Q. 嫌がる人には、どうしますか。 A. 嫌がる理由を見ます。痛い、冷たい、口を触られるのが嫌、何をされるか分からない。理由によって手当てが違います。試したことと結果を記録に残すと、次の人が続きから試せます。

Q. 口腔ケアはどこまでが医療行為ですか。 A. 通常の口腔ケアは介護職が行える範囲とされていますが、出血しやすい方や、重度の歯周病がある方については扱いが分かれます。判断に迷う場合は、看護職や歯科医師に確かめます。

Q. 義歯の洗浄剤は毎日使いますか。 A. 製品によって使い方が異なります。流水での洗浄と組み合わせる形が一般的です。本人や家族の希望、歯科の指示があればそれに従います。決めた方法を記録に書いておきます。

Q. 舌の汚れは取ったほうがよいですか。 A. 舌の汚れは口臭や誤嚥性肺炎に関わるとされています。ただし、強くこすると傷つきます。専用のブラシを使う、力を入れすぎない、といった方法を看護職や歯科に確かめてから行います。

Q. 口腔ケアの用具は誰が用意しますか。 A. 施設によって、事業所が用意する場合と、本人や家族が用意する場合があります。契約のときに決めておきます。交換の時期も決めておくと、古いまま使い続けることを防げます。

Q. 経口摂取していない人にも毎日行いますか。 A. 行います。食べていないほうが唾液が減り、汚れが溜まります。乾燥もしやすくなります。保湿の方法と頻度を決めて、記録に残します。

Q. 訪問歯科はどう頼みますか。 A. ケアマネジャーや家族と相談して進めます。地域の歯科医師会が窓口になっていることもあります。定期的に来てもらう形にすると、変化に早く気づけます。

Q. 記録に写真を使ってもよいですか。 A. 同意を得たうえで使えます。口の中は言葉で伝えにくいため、写真があると歯科への相談が早く進みます。保存の範囲と見られる人を決めておきます。

Q. 口臭が強くなってきました。 A. 汚れ、乾燥、歯周病、消化器の問題など、原因がいくつか考えられます。いつから、どんなときに強いかを記録に残し、看護職や歯科に伝えます。口臭は本人が気づきにくいため、周囲が伝える役割になります。

Q. 口腔衛生管理加算を取るには、何が要りますか。 A. 歯科専門職の関与や計画、記録が求められているとされています。加算の区分によって要件が違うので、算定の前に所轄の市町村に確かめてください。要件を確かめてから様式を作ります。

Q. 本人が口を開けてくれません。 A. 無理に開けません。時間帯を変える、姿勢を変える、道具を変える。3つを試して記録に残します。拒否が続く場合は、痛みや不快が原因のことがあるので、歯科の受診につなげます。

Q. 義歯は毎日外しますか。 A. 夜間に外して洗う形が一般的です。ただし本人の状態によって扱いが違うので、歯科医師や歯科衛生士の指導に従ってください。外した義歯の置き場所は、人ごとに決めて名前を書きます。

Q. 口腔ケアの記録は何年残しますか。 A. サービス提供の記録と同じ扱いになります。年数は市町村の条例で違うので、所轄の市町村に確かめてください。加算の根拠になる記録は、とくに揃えて残します。

Q. 訪問歯科を頼むかどうかは、誰が決めますか。 A. 本人と家族が決めます。事業所は、口の中の状態を伝えて選択肢を示すところまでです。伝えた内容と日付を記録に残しておくと、あとで経緯をたどれます。

Q. 口腔ケアの手順書は、事業所で作るものですか。 A. 作っておくと、職員による差が減ります。歯科衛生士に見てもらった形にすると、根拠のある手順になります。作ったら研修で1回配り、その後は更衣室や洗面所に貼っておきます。

Q. うがいができない方には、何をしますか。 A. 拭き取る形のケアになります。水を使う量と姿勢を、看護職と一緒に決めてください。顔を上向きにしたまま水を入れると危険なので、姿勢は必ず手順書に書きます。

Q. 口の中を見る時間が取れません。 A. 全員を毎日見る必要はありません。曜日を決めて、その日の担当の方だけ見る形にします。1人あたり30秒で足ります。見た結果を残す欄を、既にある記録に1列足すところから始めてください。