看護記録とは?介護記録との違いと書き分け
目次
看護記録と介護記録を、別々に書いている。同じ利用者のことを2か所に書くので、内容が重なる。かといって1つにすると、どちらの視点も薄くなる。書き分けの線が決まっていない事業所が多くあります。
この記事では、看護記録を、何を書く記録か・介護記録との違い・つなげ方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の書き分けを決められる状態を目指します。
結論:見ている面が違う。両方あって全体が見える
看護記録とは、看護職が行った観察、判断、処置、その結果を残す記録のことです。
介護記録が生活の場面を中心に書くのに対し、看護記録は健康の状態と医療に関わる部分を中心に書きます。
ポイントはここです。どちらかがあればよい、という関係ではありません。生活の場面で気づいたことが健康の変化の手がかりになり、健康の状態が生活の場面に影響します。
両方が読める状態にしておくのが要点です。別々のファイルに入れて、お互いに読まない形だと、つながりません。
看護記録に書くこと
書く内容は、おおむね4つの塊です。
1つ目は、健康の状態です。バイタル、症状、皮膚の状態、排泄の状態、食事の摂取。
2つ目は、判断です。その状態をどう見たか。「なぜそう考えたか」まで書きます。
3つ目は、行ったことです。処置、服薬の管理、医師への報告、指示の受領。
4つ目は、結果です。行った後にどうなったか。
2つ目がいちばん大事で、いちばん抜けます。「体温37.8度」だけだと、それをどう見たかが残りません。「平熱より1度高く、水分摂取も少ないため、脱水も考えて経過を見る」と書くと、次の人が判断を引き継げます。
4つ目も抜けやすいところです。処置をして終わりではなく、その後どうなったかまで書きます。
介護記録との書き分け
線引きの目安を決めておきます。3つの型があります。
1つ目は、場面で分ける形です。生活の場面は介護記録、医療に関わる場面は看護記録。
2つ目は、職種で分ける形です。介護職が書いたものは介護記録、看護職が書いたものは看護記録。
3つ目は、1つにまとめて職種の欄を作る形です。同じ記録に、書いた人の職種を記入します。
3つ目が、小規模な事業所では扱いやすくなります。書く場所が1つなので、両方が自然に読めます。
1つ目と2つ目を混ぜると、迷います。「介護職が気づいた発熱」をどちらに書くか、が決まりません。どれか1つの型に決めるのが要点です。
つなげ方
分けて書く場合も、つながる形にします。工夫が3つあります。
1つ目は、同じつづりに入れることです。別のファイルに分けると、読まれません。
2つ目は、日付でそろえることです。同じ日の記録が隣り合っていると、両方を読めます。
3つ目は、申し送りで行き来させることです。介護職が気づいたことを看護職へ、看護職の判断を介護職へ。
介護職が気づいたことが、看護職に届いていないという形がいちばん多く起きます。「いつもより元気がない」という記録が、看護職の目に入らないまま過ぎます。
気づいたことを伝える経路を決めておきます。記録に書くだけでなく、口頭でも伝える形にすると確実です。
判断を書く練習
「判断を書く」は、慣れないと難しい部分です。型を決めると書けるようになります。
「(見たこと)。(そこから考えたこと)。(だから何をするか)。」
例を1つ通します。
「朝の体温37.8度。平熱は36.2度で、1度以上高い。昨日から水分の摂取が普段の半分。食欲も低下。感染か脱水を考え、水分を勧めながら午後に再検温。変化があれば医師に連絡する。」
この形にすると、次に見た人が続きから動けます。「再検温」と書いてあれば、午後の担当が測ります。
数字を入れると、比べられます。「平熱より1度高い」は、平熱が記録に残っているから書けます。
記録の訂正
看護記録は、後から訂正が必要になることがあります。訂正の仕方を決めておきます。
消さない。修正液で消すと、何が書いてあったか分かりません。
二重線を引いて、訂正する。訂正した人と日付が分かる形にします。
電子の場合は、履歴が残る仕組みにします。
消してしまうと、改ざんを疑われます。間違えたこと自体は問題になりませんが、消した形跡は問題になります。
追記する場合も、いつ追記したかが分かる形にします。後から書き足したことが分かるほうが、記録としては信頼されます。
医師への報告と指示の記録
看護記録の中でも、医師とのやり取りは重要な部分です。書くのは4つです。
報告した日時。
報告した内容。何を伝えたか。
受けた指示。そのまま書きます。復唱して確かめたことも書いておくと確実です。
指示を受けて行ったことと、その結果。
電話での指示は、食い違いが起きやすい場面です。記録に残しておくと、後から確かめられます。
指示の内容が不明確な場合は、その場で確かめます。「様子を見る」だけでは、どうなったら再度連絡するかが分かりません。基準まで聞いておきます。
保存と開示
看護記録も、介護保険の記録として保存します。完結の日から2年が国の基準で、条例で5年としている自治体があります。
医療に関する記録は、別の法令で保存の期間が定められている場合があります。自社がどの区分に当たるかを確かめます。
開示を求められることもあります。見せられる書き方にしておきます。推測を断定的に書かない、他の利用者の情報を書かない。
電子で記録している場合は、印刷して出せる状態かを確かめます。システムを変えるときのデータの移行も考えておきます。
介護記録と何が違うか
同じ人について書いていても、看護記録と介護記録は目的が違います。分けて考えると、書く内容が決まります。
違いは3つです。
1つ目は、見ている対象です。看護記録は体の状態と医療的な処置、介護記録は生活の様子です。
2つ目は、根拠になるものです。看護記録は医師の指示や看護の判断、介護記録はケアプランです。
3つ目は、使われる場面です。看護記録は受診や入院のときに医療者が読み、介護記録は担当者会議や実地指導で読まれます。
両方を1つにまとめている事業所もあります。まとめること自体は問題になりませんが、医師の指示に基づく処置がどれかが分かる形にしてください。混ざると、指示の範囲を確かめられません。
看護職がいない時間帯をどうするか
小規模な事業所では、看護職が常にいるとは限りません。いない時間帯の記録の形を決めておきます。
決めるのは3つです。
1つ目は、介護職が書ける範囲です。見た様子、測った値、本人が言ったこと。判断は書きません。
2つ目は、連絡の基準です。体温、血圧、脈、呼吸。数字で線を引きます。「様子がおかしいとき」では人によって違ってしまいます。
3つ目は、看護職が戻ってから確かめる形です。不在の時間帯の記録に目を通し、必要なら追記します。追記したことが分かるように、日付と名前を入れます。
3つを決めておくと、介護職が迷わなくなります。判断を求められる形にすると、報告そのものが減ります。
バイタルの記録で気をつけること
体温や血圧の記録は、数字を並べるだけでは使えません。
気をつけるのは4つです。
1つ目は、測った条件をそろえることです。時間帯、姿勢、直前の活動。条件が違うと比べられません。
2つ目は、測り直した値を残すことです。1回目が高くて測り直したなら、両方書きます。低いほうだけ残すと、あとで経過が分かりません。
3つ目は、測れなかった理由を書くことです。拒否、外出、入浴中。空欄にしません。
4つ目は、いつもと違う値の扱いを決めることです。その人の普段の値が分かっていないと、高いか低いかを判断できません。人ごとの平常値を1行書いておくと、判断が早くなります。
医療機関に渡す形を作っておく
入院や受診のときに、記録をそのまま渡すことはできません。渡す形を先に作っておきます。
作るのは3つです。
1つ目は、1枚のサマリーです。普段の状態、薬、アレルギー、直近の変化。
2つ目は、直近の記録の写しです。変化が始まった日から今日まで。
3つ目は、連絡先です。事業所、家族、ケアマネジャー。
3つを封筒にまとめて、すぐ出せる場所に置いておきます。救急のときは時間がありません。その場で作ると、大事なことが抜けます。サマリーの様式を1つ決めて、月に1回か状態が変わったときに更新する形にしてください。
書く時間を勤務の中に置く
看護記録が溜まるのは、書く時間が勤務の中に無いからです。空いた時間に書く形にすると、必ず後ろにずれます。
置き方は3つあります。
1つ目は、時間を決めることです。申し送りの前の15分を記録の時間にする、という形です。
2つ目は、その場で書ける道具を置くことです。フロアに1台端末を置く、記録用紙をワゴンに載せる。戻らないと書けない状態をなくします。
3つ目は、書く量を決めることです。変化が無い日は1行で構わない、と明示します。全員に毎日詳しく書かせると、続きません。
3つのうち効くのは2つ目です。書く場所までの距離が、そのまま記録の遅れになります。
まとめ
看護記録は、看護職が行った観察、判断、処置、その結果を残す記録です。介護記録が生活の場面を中心に書くのに対し、健康の状態と医療に関わる部分を中心に書きます。
書くのは4つの塊。状態・判断・行ったこと・結果。2つ目がいちばん大事で、いちばん抜けます。
書き分けは、場面で分ける・職種で分ける・1つにまとめて職種の欄を作る、の3つの型があります。どれか1つに決めるのが要点です。
分けて書く場合も、同じつづりに入れ、日付でそろえ、申し送りで行き来させます。医師への報告と指示は、受けた内容をそのまま残します。保存の年数は、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 看護職がいない事業所でも看護記録は要りますか。 A. 看護職がいなければ、看護記録は作れません。ただし、健康の状態に関する記録は介護記録の中に残します。協力医療機関への報告や、受けた指示も記録に残します。何をどこに書くかを決めておきます。
Q. 介護職が体温を測った場合、どちらに書きますか。 A. 書き分けの型によります。1つにまとめる型なら、同じ記録に職種を書いて残します。分ける型なら、あらかじめ「バイタルは介護記録」と決めておきます。決めていないと、その場で迷います。
Q. 判断を書くのが難しいです。 A. 「見たこと・考えたこと・すること」の3段で書く型を使います。最初は「経過を見る」だけでもかまいません。なぜそう考えたかを1行足すだけで、次の人が引き継げる記録になります。
Q. 同じことを2か所に書くのが負担です。 A. 書き分けの型を見直します。1つにまとめて職種の欄を作る形にすると、重複が消えます。小規模な事業所では、この形が扱いやすくなります。
Q. 医師の指示が口頭だけの場合は。 A. 受けた内容を記録に残し、復唱して確かめたことも書きます。後から書面でもらえる場合は、そちらも綴じます。指示の内容が不明確なときは、その場で基準まで確かめます。
Q. 記録を間違えたら、どう直しますか。 A. 二重線を引いて訂正し、訂正した人と日付が分かる形にします。修正液で消すと、改ざんを疑われます。電子の場合は、履歴が残る仕組みにしておきます。
Q. 訪問看護の記録とは違いますか。 A. 訪問看護には、別に定められた記録の様式や要件があります。施設の看護記録とは求められるものが異なります。自社のサービスの種類で、何が求められるかを確かめます。
Q. 介護職が看護記録を読んでもよいですか。 A. 読める形にしておくほうが、ケアがつながります。同じ利用者に関わる職員が、必要な範囲で読めるようにします。見られる範囲は、事業所として決めておきます。
Q. 保存の年数が書類によって違います。 A. 介護保険の記録と、医療に関する記録で年数が異なる場合があります。つづりの表紙に年数と処分の予定年を書いておくと、短いほうに合わせて捨てる事故を防げます。
Q. 電子カルテと介護のシステムが別です。 A. 両方を見ないと全体が分からない状態になります。どちらかに寄せるか、申し送りで行き来させる形を決めます。少なくとも、どちらに何が書いてあるかを全員が知っている状態にします。
Q. 看護記録の保存期間は何年ですか。 A. 事業所の種類と根拠になる法令で扱いが違います。医療機関の看護記録とは別の扱いになることがあるので、所轄の市町村や保健所に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせます。
Q. 介護職が血圧を測ってもよいですか。 A. 一定の条件のもとで介護職員が行える範囲が示されているとされています。範囲と条件は限られているので、所轄の保健所や市町村に確かめてください。測った値の判断は看護職が行います。
Q. 電子カルテと紙の記録が混ざっています。 A. 混ざったまま運用すると、探す時間が増えます。切り替えるなら日を決めて全部を移します。移す前の分は、そのまま綴じて保存します。さかのぼって入力し直さないことです。
Q. 看護職が1人しかいません。確かめる人を置けません。 A. 管理者が確かめる形でも構いません。確かめる人の職種より、確かめたことが記録に残っていることが大事です。人数が足りない時間帯の手順を書面にしておいてください。
Q. 記録に医師の指示を書き写してよいですか。 A. 書き写すことはできますが、指示書の原本も残します。写しだけだと、内容が変わったときにどちらが正しいか分かりません。指示書は日付順に綴じておきます。
Q. 記録が終わらず残業になっています。 A. 様式の項目を減らせないかを先に見てください。使われていない欄が残っていることがよくあります。減らす前に、加算の要件で必要な欄かどうかを所轄の市町村に確かめてから外します。