身体拘束適正化委員会|開き方と記録の残し方
目次
身体拘束適正化委員会は、開いてはいるが記録が薄い、という形でいちばん指摘を受ける手続きです。月に1度集まってはいるものの、議事録が「身体拘束について話し合った」の1行で終わっている。これだと、開いていないのと同じ扱いになりかねません。
この記事では、委員会に何が求められているのか、誰が出るのか、何を議題にするのか、そして議事録に何を残すのかを整理します。拘束が1件も無い施設でも必要という点から書きます。
結論:拘束が1件も無くても、委員会は開く
身体拘束適正化委員会とは、身体拘束の廃止に向けた取り組みを組織として行うために設けられる場のことです。
一般には、委員会を定期的に開催してその結果を職員に周知徹底すること、指針を整備すること、研修を定期的に実施することが求められているとされています。記録の作成とあわせて、この4つが手続きの柱になります。
ポイントはここです。身体拘束を行っていない施設でも、委員会・指針・研修は必要です。「うちは拘束していないから関係ない」と考えて何もしていないと、身体拘束廃止未実施減算の対象になることがあります。減算は拘束の有無ではなく、手続きの不備にかかります。
ここを誤解している施設が少なくありません。むしろ、拘束を行っていない施設のほうが、必要性を感じないまま年月が過ぎている形になりがちです。
誰が出るのか
構成は、幅広い職種で構成することとされているのが一般的です。特定の職種だけで固めない、という考え方になります。
実務では、施設長または管理者、看護職員、介護職員、生活相談員、ケアマネジャーといった顔ぶれになります。医師が入る施設もあります。現場で実際に介助をしている職員が入っていることが大事で、管理職だけの会議になると、判断が現場の実態から離れます。
小規模な事業所では、人数をそろえるのが難しいことがあります。その場合でも、1人で決める形にはしないのが要点です。複数の職種から最低1名ずつ、といった形で構成します。
事務局の役割も決めます。資料の準備、議事録の作成、周知の確認。ここが決まっていないと、開催のたびに誰かが押し付け合うことになります。
委員長を決めておきます。誰が招集し、誰が議事録に責任を持つのかが決まっていないと、開催そのものが流れます。
どのくらいの頻度で開くのか
頻度は、サービスの種類によって求められる形が異なることがあります。自施設のサービス種別で何が求められているかを確かめるのが先になります。
施設系のサービスでは、定期的な開催として月に1回程度を想定している運用が多く見られます。一方、他の委員会と一体的に開催してよいとされている場合もあります。
他の委員会と一緒に開く形は、実務ではよく使われます。事故防止委員会、感染対策委員会、虐待防止委員会。参加者が重なるので、まとめて開くほうが現実的です。ただし、議題と議事録は分けて残します。まとめて1本の議事録にすると、どの委員会で何を話したかが追えなくなります。
一体的に開いてよいかどうかも、サービスによって扱いが異なることがあります。所在地の市区町村の介護保険担当課にご確認ください。
何を議題にするのか
いちばん困るのがここです。拘束が1件も無い月は、話すことが無いように思えます。
議題は5つの型で回せます。
1つ目が、現在行っている拘束の確認です。件数、対象者、態様、開始からの期間。1件も無い月は「該当なし」で構いませんが、確認した事実を残します。
2つ目が、再検討の時期が来ているものの検討です。解除・継続・方法の変更を決めます。
3つ目が、判断に迷った行為の検討です。現場から上がってきた「これは拘束にあたるか」を扱います。ベッド柵、居室の施錠、言葉による制止。ここが実質的にいちばん価値のある議題になります。
4つ目が、ヒヤリハットや事故からの振り返りです。転倒が増えている時期は、拘束に傾きやすくなります。事故防止委員会と情報を共有します。
5つ目が、研修の計画と実施の確認です。年間の計画に対して、どこまで進んだかを見ます。
拘束が無い月でも、3つ目と5つ目があれば議題は埋まります。むしろ、無い月にこそ「なぜ無い状態を保てているか」を確認する価値があります。
議事録に残すこと
「話し合った」だけでは記録になりません。残すのは6つです。
開催した日時、開催した場所、出席者(氏名と職種)、議題、検討の内容と結論、次回までにやること。
出席者は、氏名と職種の両方を書きます。職種が分からないと、幅広い職種で構成されているかが示せません。欠席者がいた場合は、その人にどう周知したかも残します。
検討の内容は、結論だけでなく過程を残します。「◯◯様の柵について、解除の方向で検討。日中は2点に減らして2週間様子を見ることとした」。どういう議論を経てそうなったかが1行あると、後から読んだ人が判断の理由を追えます。
次回までにやることには、担当者と期限を付けます。前回分の確認を議事録の冒頭に置く形にしておくと、決めっぱなしが減ります。ここが空だと、翌月も同じ話になります。
30分で終わらせる進め方
委員会が続かない理由は、時間が読めないことにあります。1時間半かかる会議は、忙しい月に流れます。
進め方を固定すると30分で終わります。確認10分、検討15分、決定5分の3段です。
確認の10分では、現在行っている拘束の一覧と、再検討の時期が来ているものを読み上げます。ここは議論しません。状態を共有するだけにします。
検討の15分では、扱う議題を1つか2つに絞ります。全部を扱おうとすると時間が足りません。優先順位は、再検討の期限が来ているもの、次に現場から上がってきた判断の相談です。
決定の5分では、決めたことと、担当者と期限を確認します。議事録の「次回までにやること」の欄を、この場で埋めてしまいます。あとで書こうとすると、内容が薄くなります。
時間内に終わらなかった議題は、次回に回します。無理に結論を出そうとすると、中身の無い結論になります。持ち越すこと自体は問題ではなく、持ち越した記録が残っていれば足ります。
資料は事前に配ります。当日に読み始めると、それだけで10分が消えます。
結果を職員に周知する
委員会を開いただけでは終わりません。結果を職員に周知徹底することが求められています。
周知の方法は、朝礼での共有、議事録の回覧、掲示板への掲示など。周知した事実を記録に残すのが要点です。「◯月◯日、朝礼にて全職員へ共有。欠席者には個別に伝達し、回覧にて確認印を得た」。
周知は「伝えた」ではなく「届いた」で見ます。掲示しただけでは、読んだかどうかが分かりません。
回覧に確認印の欄を作っておくと、誰が読んだかが残ります。夜勤専従の職員やパート職員は朝礼に出られないことが多いので、そこをどう届けるかを決めておきます。
周知の記録が無いと、開いた意味が示せません。議事録はあるが周知の記録が無い、という形は指導でよく指摘される部分になります。
現場から議題を上げる仕組み
委員会がいちばん機能するのは、現場からの相談が上がってくるときです。上がってこない委員会は、確認だけの場になります。
上げてもらう形は3つあります。1つ目が、申し送りノートに相談欄を作ること。「これは拘束にあたるか」と書ける場所を作っておきます。2つ目が、ヒヤリハットの様式に1行足すこと。行動制限に関する気づきを書ける欄を置きます。
3つ目が、委員が現場に聞きに行くことです。月に1度、各フロアで「困っていることはないか」を聞きます。書いてもらうより、聞いたほうが出てくることがあります。
上がってきた相談は、必ず議題にします。上げたのに扱われなかったという経験が一度あると、次から上がってきません。扱った結果は、上げた本人に返します。
よく上がるのは、ベッド柵の点数、車いすのベルト、居室の扉の扱い、そして言葉による制止です。どれも「これまでやってきたから」で続いているものが多く、一度議題にすると見直せることがあります。
小規模な事業所でどう回すか
通所や訪問、小規模多機能では、職員の数も時間も限られます。施設系と同じ形では回りません。
現実的な形は3つです。1つ目が、他の委員会と一体的に開くこと。事故防止、感染対策、虐待防止とまとめて1回にします。議題と議事録は分けますが、集まるのは1回で済みます。
2つ目が、申し送りの時間に組み込むことです。全員が集まる時間が別に取れないなら、既にある集まりの後半15分を使います。新しい時間を作ろうとすると、それだけで開催が流れます。
3つ目が、書面での持ち回りです。集まれないときは、議題と資料を回覧し、意見を書いてもらう形にします。ただし、これを常態にすると議論が起きないので、年に何回かは顔を合わせる形と組み合わせます。
どの形でも、記録の中身は同じものが求められます。出席者、議題、検討の内容と結論、次回までにやること。集まり方が簡素でも、記録が薄くてよいことにはなりません。
法人で複数の事業所を持っている場合、事業所ごとに開くのか、法人でまとめるのかも確かめておきます。事業所単位で求められることが多いので、まとめて1回にしてよいかは保険者に確認します。
指針と研修も同じ枠で管理する
委員会と並んで求められるのが、指針の整備と研修の実施です。3つをまとめて1つのファイルで管理すると、抜けが分かります。
指針は、施設としての考え方と手続きを文書にしたものです。一度作れば毎年書き直す必要はありませんが、制度が変わったときや、運用を変えたときには見直します。
研修は、定期的に実施することと、新規採用時に実施することが求められるのが一般的です。年間の計画を立て、実施したら参加者の名簿と内容を残します。参加できなかった職員へのフォローまで記録します。
ファイルの作り方は、年度ごとに1冊が扱いやすくなります。表紙に年間の計画を貼り、その後ろに議事録、指針、研修の記録を順に綴じます。実地指導のときに、この1冊を出せば済む形にしておきます。
3つを別々のファイルに入れていると、どれかが抜けていることに気づけません。1つのファイルに年間の流れとしてまとめておくと、四半期ごとに見るだけで状態が分かります。虐待防止の取り組みも似た構造なので、高齢者虐待防止措置とあわせて管理すると効率が良くなります。
1年の流れを先に決めておく
月ごとに何をするかを年初に決めておくと、毎月の議題選びに悩まなくなります。
4月に年間の計画を立てます。研修をいつ行うか、指針を見直すか、拘束の状況をいつ棚卸しするか。年に1回でよいものを、月に割り振ります。
たとえば、研修を年2回とするなら6月と11月。指針の見直しを年1回とするなら3月。全利用者の拘束の状況の棚卸しを半年に1回とするなら4月と10月。こうして置いておくと、残りの月は現在の確認と現場からの相談だけで足ります。
新しく入った職員への研修は、この年間計画とは別に発生します。入職のたびに行う形なので、採用の予定と合わせて動きます。採用が決まった時点で研修の日程も決めてしまうと、後回しになりません。
年度末には、1年の振り返りをします。拘束の件数が減ったか、解除できたものがあるか、現場からの相談が何件あったか。数字で追えるようにしておくと、翌年の計画が立てやすくなります。
まとめ
身体拘束適正化委員会は、拘束が1件も無い施設でも開く必要があります。委員会・指針・研修・記録の4つがそろっていないと、減算の対象になることがあります。
まず手を付けるなら、議事録に出席者の職種と、次回までにやることの担当者と期限を入れるところからです。次に、周知した事実を記録に残す形にすると、開いた意味が示せます。
形だけの委員会と、機能している委員会の違いは、現場から相談が上がってくるかどうかに出ます。そこが動き始めると、議題に困ることはなくなります。
なお、開催の頻度や、他の委員会と一体的に開催してよいかは、サービスの種類や保険者によって運用が異なります。最終的な判断は、所在地の市区町村の介護保険担当課や都道府県の指導監査部門にご確認ください。
委員会は、開くこと自体が目的ではありません。現場が迷っている行為を、組織として判断する場があることに意味があります。そこが動いていれば、記録は自然に中身のあるものになります。
よくある質問
身体拘束をしていなくても委員会は必要ですか。
必要とされています。減算は拘束の有無ではなく、委員会・指針・研修・記録といった手続きの不備にかかる仕組みになっています。
どのくらいの頻度で開くのですか。
サービスの種類によって求められる形が異なります。施設系では月1回程度を想定している運用が多く見られますが、自施設の種別で確かめるのが確実です。
他の委員会と一緒に開いてよいですか。
一体的に開催してよいとされている場合があります。ただし議題と議事録は分けて残します。扱いはサービスによって異なるため、保険者に確かめます。
議事録には何を書けばよいですか。
日時、場所、出席者(氏名と職種)、議題、検討の内容と結論、次回までにやることの6つです。「話し合った」だけでは記録になりません。
委員会にはどれくらい時間をかけますか。
確認10分、検討15分、決定5分の30分で回せます。長い会議は忙しい月に流れるので、扱う議題を1つか2つに絞るほうが続きます。
拘束が1件も無い月は何を議題にしますか。
判断に迷う行為の検討と、研修の計画の確認があれば埋まります。なぜ無い状態を保てているかを確認する価値もあります。
小規模な事業所ではどう回せばよいですか。
他の委員会と一体的に開く、既にある集まりの後半を使う、書面で持ち回るといった形があります。ただし記録に求められる中身は同じです。
周知はどうやって記録しますか。
朝礼での共有や回覧など、方法と日付、そして誰に伝わったかを残します。回覧に確認印の欄を作っておくと、読んだ人が分かります。