児童票とは?入園から卒園までを1冊にする
目次
児童票は入園のときに作って、そのままファイルに入っている。年度末に発達の記録を書き足すが、そのとき以外は開かない。せっかくの1冊が、使われないまま卒園を迎えます。
この記事では、児童票を、何を入れる書類か・書く中身・使う場面の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の児童票を使える形にできる状態を目指します。
結論:その子のことが1か所に集まる冊子
児童票とは、入園から卒園までの、その子に関する情報と育ちの記録をまとめた冊子のことです。
法令で様式が定められた書類ではありませんが、必要な帳簿として備えることが求められる形があります。自治体の指導でも確かめられます。
ポイントはここです。その子のことが1か所に集まっているのが、いちばんの値打ちです。担任が代わっても、引き継ぎがこの1冊でできます。
年度末にだけ開く冊子になっていると、引き継ぎのときに使えません。日常から使う形にします。
入れるもの
児童票に入れるのは、大きく5つです。
1つ目は、基本の情報です。氏名、生年月日、住所、保護者、緊急の連絡先、家族の構成。
2つ目は、入園までの情報です。生育歴、既往、予防接種、家庭の様子。
3つ目は、健康に関する情報です。アレルギー、持病、かかりつけ医、身体測定の記録。
4つ目は、発達の記録です。年度ごと、学期ごとの育ちの姿。
5つ目は、保護者との関わりの記録です。面談、相談、伝えたこと。
3つ目と4つ目は、更新が要ります。基本の情報は変わりにくいのに対し、健康と発達は変わります。
5つ目が抜けやすいところです。面談の記録が別のファイルにあると、その子のことを見るときに2か所を開くことになります。
発達の記録の書き方
いちばん手が止まるのが、発達の記録です。書き方の型を決めておきます。
「(場面)で、(何をしていたか)。(そこから見える育ち)。」
例を1つ通します。
「戸外遊びで、年下の子が転んだときに手を差し出していた。友達の様子に気づき、自分から関わろうとする姿が見られる。」
場面から書くのが要点です。「思いやりがある」から書き始めると、根拠が出てきません。
書く時期を決めます。学期ごと、年度末。まとめて書こうとすると思い出せないので、日誌から拾う形にします。
書く量は、1回につき数行で足ります。毎回長く書こうとすると続きません。
使う場面
作るだけでなく、使う場面を決めると生きてきます。5つあります。
1つ目は、担任が代わるときです。引き継ぎの材料になります。
2つ目は、保護者との面談のときです。過去の記録を見ながら話せます。
3つ目は、要録を書くときです。材料がここに集まっています。
4つ目は、けがや体調の対応のときです。アレルギーや持病をすぐ確かめられます。
5つ目は、気になることを相談するときです。外部の機関に相談する材料になります。
4つ目のために、置き場所が大事になります。事務室の奥にあると、急ぐときに使えません。
アレルギーなどすぐ見たい情報は、別に1枚にして掲示する形もあります。児童票は全体、掲示は緊急用、という使い分けです。
更新の仕組み
更新されない児童票は、古い情報のまま使われます。更新の形を決めます。
1つ目は、年度の初めに保護者に確かめることです。住所、連絡先、勤務先、かかりつけ医。変わっていることがあります。
2つ目は、健康の情報を随時直すことです。アレルギーが増えた、持病が分かった。
3つ目は、発達の記録を定期に書くことです。学期ごと、年度末。
4つ目は、面談の記録をその都度足すことです。
1つ目を仕組みにしている園は少なくありません。年度の初めに確認の用紙を配り、変更があれば書いてもらいます。
緊急の連絡先が古いままだと、必要なときにつながりません。年に1回の確認が、いちばん大事な更新になります。
個人情報の扱い
児童票には、機微な情報が入ります。扱いを決めておきます。
1つ目は、置き場所です。鍵のかかる場所。
2つ目は、見られる範囲です。全職員が見てよいのか、担任と主任と園長か。
3つ目は、持ち出しです。園外に持ち出さない、コピーを取らない。
4つ目は、開示の扱いです。保護者から求められた場合。
見られる範囲を絞りすぎると、使われません。その子に関わる職員が、必要なときに見られる形にします。
開示を求められることを前提に書くのが要点です。推測を断定的に書かない、他の子の情報を書かない。
保存と引き継ぎ
卒園や退園の後も、一定期間保存します。期間は施設の種類や自治体の基準によります。
転園する場合の引き継ぎは、自治体の案内を確かめます。どの書類をどう渡すか、同意が要るかが決まっています。
処分するときは、個人情報として復元できない形で行います。処分した日と対象を記録に残します。
電子で管理している場合も、保存の期間と、退園後の扱いを決めます。システムを変えるときのデータの移行も確かめておきます。
入園のときに集める情報
児童票は、入園のときに集めた情報が土台になります。ここで抜けたものは、あとから集めにくくなります。
集めるのは5つです。
1つ目は、家庭の状況です。同居する家族、きょうだい、送り迎えをする人。
2つ目は、生育歴です。出生の状況、これまでの病気やけが、発達の様子。
3つ目は、健康に関することです。アレルギー、持病、飲んでいる薬、かかりつけ医。
4つ目は、生活のリズムです。起きる時間、寝る時間、食事、排せつ。
5つ目は、緊急の連絡先です。優先順位をつけて複数。
5つのうち、変わりやすいのは4つ目と5つ目です。年度ごとに確かめ直す形にします。入園のときの紙が何年もそのままになっている園が多くあります。
発達の記録で気をつけること
児童票の発達の記録は、できたかできないかの一覧にしないことです。
気をつけるのは4つです。
1つ目は、できた時期を競わせないことです。発達には幅があります。一覧に印が少ない子の保護者が見たときに、どう映るかを考えます。
2つ目は、場面を書くことです。「スプーンを使える」ではなく「好きな献立のときは自分でスプーンを持つ」。
3つ目は、その子の変化で見ることです。他の子と比べません。半年前のその子と比べます。
4つ目は、書いた日を入れることです。いつの様子かが分からないと、変化を追えません。
4つを守ると、要録を書くときの材料になります。チェックだけの一覧からは、要録の文章は出てきません。
誰が書き、誰が読むか
児童票は、複数の人が長く使う冊子です。書く人と読む人を決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、書く人です。担任が書きます。複数担任なら、月ごとに分担します。
2つ目は、確かめる人です。主任か園長が定期的に目を通します。書き方のばらつきをここで直します。
3つ目は、読める人の範囲です。担任、主任、園長、看護師。全職員が自由に読める状態にはしません。
4つ目は、持ち出しの可否です。原則として園の外に出しません。研修などで事例として使う場合は、個人が特定されない形に直します。
4つを手順書に書いておきます。書いていないと、担当が替わったときに運用が変わります。
進級のときにすること
児童票は、進級のときが手を入れる時期です。ここを飛ばすと、内容が前の年のままになります。
することは4つです。
1つ目は、次の担任に引き継ぐことです。紙を渡すだけでなく、気になる子について口頭で伝えます。
2つ目は、家庭の状況を確かめ直すことです。住所、勤務先、連絡先、きょうだいの数。
3つ目は、健康の情報を更新することです。アレルギーの状況は変わります。医師の指示書がある子は、新しいものをもらいます。
4つ目は、冊子の状態を確かめることです。綴じが外れていないか、紙が抜けていないか。
2つ目と3つ目は、保護者に書いてもらう紙を配る形にすると確実です。年度の初めの提出物にまとめます。
監査で見られるところ
児童票は、指導監査で確かめられる書類の1つです。
見られるのは4つです。
1つ目は、在籍している全員分があるかです。
2つ目は、内容が更新されているかです。日付が入園のときのままになっていないか。
3つ目は、保管の状態です。鍵のかかる場所にあるか。
4つ目は、退園した子の分の扱いです。保存されているか、期間が過ぎたものが適切に処分されているか。
保存の年数は自治体の指導によって違います。所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。要録とは別の年数になることがあります。
他の記録と重ならないようにする
園の記録は種類が多く、同じことを何度も書いている状態になりがちです。児童票は、その中心にある冊子です。
整理の仕方は3つあります。
1つ目は、児童票にしか無いものを決めることです。生育歴、家庭の状況、年ごとの育ちのまとめ。ここは他の記録には入りません。
2つ目は、日々の記録は転記しないことです。日誌や連絡帳の内容を写す必要はありません。必要なときに日誌を見ればよい形にします。
3つ目は、要録に使う項目に印を付けておくことです。卒園のときに拾いやすくなります。
転記をやめるだけで、書く時間が大きく減ります。同じ内容が2か所にあると、片方だけ直したときに食い違いが出ます。
まとめ
児童票は、入園から卒園までの、その子に関する情報と育ちの記録をまとめた冊子です。その子のことが1か所に集まっているのが、いちばんの値打ちです。
入れるのは5つ。基本の情報、入園までの情報、健康、発達の記録、保護者との関わりの記録。5つ目が抜けやすいところです。
発達の記録は、場面から書きます。「思いやりがある」から始めると根拠が出てきません。場面、行動、そこから見える育ちの順です。
更新の機会は4つ。年度の初めに保護者に確かめるのが、いちばん大事な更新です。緊急の連絡先が古いままだと、必要なときにつながりません。保存の期間は、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 様式は決まっていますか。 A. 法令で定められた様式はありません。自治体が参考の様式を示していることがあります。自社の実情に合わせて項目を決められますが、必要な情報が入っているかを確かめます。
Q. 発達の記録は、どれくらいの頻度で書きますか。 A. 学期ごと、年度末という形が一般的です。まとめて書くと思い出せないため、日誌から拾う形にします。数行で足ります。長く書こうとすると続きません。
Q. 保護者に見せますか。 A. 開示を求められた場合の扱いを決めておきます。求められることを前提に書くと、書き方も整います。推測を断定的に書かない、他の子の情報を書かないのが原則です。
Q. アレルギーの情報はここだけで足りますか。 A. すぐ見たい情報は、別に1枚にして掲示する形が併用されています。児童票は全体、掲示は緊急用という使い分けです。両方の内容が食い違わないよう、更新のときに両方を直します。
Q. 担任が代わるとき、どう引き継ぎますか。 A. 児童票を一緒に見ながら引き継ぐ形が早く済みます。書かれていないことは、口頭で補って、その内容も書き足します。引き継ぎのときが、児童票を厚くする機会にもなります。
Q. 更新されていない項目が多くあります。 A. 年度の初めに確認の用紙を配り、保護者に変更を書いてもらう形が続きます。とくに緊急の連絡先と勤務先は変わりやすいので、必ず確かめます。
Q. 電子で管理してもよいですか。 A. 管理できます。検索でき、更新も楽になります。ただし、緊急時にすぐ見られるかを確かめます。端末が使えない場面もあるため、重要な情報は紙でも持つ形が取られています。
Q. 保存の期間はどれくらいですか。 A. 施設の種類や自治体の基準によります。要録や他の記録とあわせて残している園が多くあります。所管の自治体に確かめて、つづりの表紙に年数を書いておきます。
Q. 転園する子の児童票はどうしますか。 A. 引き継ぎの方法は自治体の案内によります。同意が必要な場合もあります。園に残す分と、渡す分を確かめてから進めます。
Q. 見られる範囲を、どこまで広げますか。 A. その子に関わる職員が、必要なときに見られる形にします。絞りすぎると使われず、広げすぎると管理が緩みます。担任、主任、園長、看護職といった範囲を決めて周知します。
Q. 児童票の様式は決まっていますか。 A. 全国共通の様式はありません。自治体が例を示していることがあります。所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。要録に必要な項目が拾える形にしておくと、あとが楽になります。
Q. 保護者に見せることはありますか。 A. 開示の扱いは自治体の条例と園の規程によります。求められたときの対応を先に決めておいてください。見せる可能性がある前提で書くと、表現が整います。
Q. 電子で管理してもよいですか。 A. 構いません。ただし見られる人の範囲を設定で絞れることと、印刷して出せることが前提です。共有フォルダにそのまま置く形は避けてください。
Q. 退園した子の児童票は、いつ処分しますか。 A. 保存の期間が過ぎてからです。年数は自治体の指導によって違うので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。処分するときは、復元できない形にします。
Q. 毎月書く時間が取れません。 A. 毎月1行で構いません。印象に残った場面を1つだけ書きます。詳しく書こうとするから書けなくなります。1行でも続いていれば、1年で12場面が残ります。
Q. 児童票と指導計画の個別の記録は、同じものですか。 A. 別のものです。児童票はその子の情報と育ちの記録、個別の計画はねらいと手立てを書くものです。同じ冊子に綴じておくのは構いませんが、欄は分けてください。