保育所児童保育要録とは?小学校へ渡す1枚の書き方
目次
年が明けると、保育要録の時期が来ます。5歳児の担任にとっては、卒園の準備と重なるいちばん忙しい時期です。何をどこまで書けばよいかが決まっていないと、毎年ゼロから悩むことになります。
この記事では、保育所児童保育要録を、何のための書類か・書く中身・書き方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の書き方を決められる状態を目指します。
結論:小学校が、その子を知るための1枚
保育所児童保育要録とは、保育所から小学校へ、子どもの育ちを伝えるために送る書類のことです。保育所保育指針にもとづいて作成し、送付します。
目的は、小学校での指導に生かしてもらうことです。評価のためのものではありません。
ポイントはここです。読むのは、その子を知らない小学校の先生です。園の中では通じる言い方も、初めて読む人には伝わりません。
「元気で明るい子です」だけでは、指導に生かせません。どんな場面で、どんな姿を見せるかを書きます。
書く中身
様式は示されているものがあります。中身は大きく2つに分かれます。
1つ目は、最終年度の重点や、園として力を入れたことです。クラス全体の方針。
2つ目は、その子の育ちに関わる事項です。具体的な姿。
個別の部分では、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を手がかりに書く形が案内されています。健康な心と体、自立心、協同性、道徳性、社会生活との関わり、思考力の芽生え、自然との関わり、数量や図形への関心、言葉による伝え合い、豊かな感性と表現。
全部の項目を埋める必要はありません。その子に当てはまる部分を選んで書きます。
具体的に書く
伝わる要録には、共通の特徴があります。3つです。
1つ目は、場面が書いてあることです。「友達と協力できる」ではなく「砂場でトンネルを作るとき、役割を分けて進めていた」。
2つ目は、変化が書いてあることです。「入園のころは…だったが、いまは…」。育ちの過程が分かります。
3つ目は、関わり方のヒントがあることです。「初めての場面では時間がかかるが、一度やってみると自分から続ける」。小学校で使える情報です。
3つ目がいちばん役に立ちます。小学校の先生が、4月から使える情報だからです。
できないことだけを並べないのも要点です。何ができて、どう支えると力を発揮するか。支援の手がかりとして書きます。
配慮が必要な子について
配慮が必要な子については、書き方に気を配ります。3つの原則があります。
1つ目は、事実を書くことです。診断名がある場合も、園として把握している範囲で書きます。
2つ目は、園でどう関わっていたかを書くことです。うまくいった関わりが、いちばん役に立つ情報です。
3つ目は、保護者と共有することです。書く内容を、あらかじめ保護者に伝えておく形が取られています。
2つ目が中心です。「こういう場面では、先に見通しを伝えると落ち着いて動ける」。この1行が、小学校での対応を変えます。
診断や支援の情報は、保護者の同意の範囲で扱います。園が独自に判断して書く形にはしません。
書く時期と手順
卒園の前に作成し、小学校へ送付します。時期は自治体によって案内があります。
手順は4段にすると進みます。
1つ目は、材料を集めることです。日誌、連絡帳、児童票、指導計画の振り返り。
2つ目は、下書きを作ることです。担任が書きます。
3つ目は、複数の目で見ることです。主任や園長、他の職員。1人で書くと偏ります。
4つ目は、仕上げと送付です。
1つ目に時間をかけると、2つ目が早く終わります。材料が無いまま書き始めると、思い出す作業になります。
年度の途中から少しずつ書き溜める形にしている園もあります。5歳児クラスの担任が、学期ごとに児童票を厚く書いておくと、要録の材料になります。
材料を日常から集める
要録を書くために、日常の記録を変える工夫が3つあります。
1つ目は、5歳児の日誌で個別の記述を増やすことです。クラス全体の記述だけだと、要録の材料になりません。
2つ目は、変化があったときに記録することです。「今日、初めて自分から声をかけていた」。この1行が、後で要録の1文になります。
3つ目は、写真を手がかりにすることです。行事や活動の写真を見返すと、場面を思い出せます。
2つ目がいちばん効きます。育ちは連続しているので、変わった瞬間を書き留めておかないと、後から思い出せません。
材料を集める形にしておくと、要録の時期の負担が大きく減ります。
保護者への説明
要録は、保護者の同意を得て送るものではありませんが、送ることを伝えておく形が一般的です。
伝えるのは3つです。
1つ目は、送る書類があることです。入園のときや、年度の初めに伝えます。
2つ目は、何のために送るかです。小学校での指導に生かすため。
3つ目は、開示を求められた場合の扱いです。
「知らないうちに送られていた」という形が、いちばん不信を生みます。あらかじめ伝えておけば、質問にも答えられます。
配慮が必要な子については、書く内容を具体的に共有する形が取られています。
保存と送付
作成した要録は、写しを園に残します。送付した記録も残します。
保存の期間は、施設の種類や自治体の基準によります。児童票とあわせて残している園が多くあります。
送付の方法は、自治体によって案内があります。直接持参する、郵送する、教育委員会を経由するなど。確かめておきます。
電子で作成している場合も、送付の形式を確かめます。小学校側が受け取れる形にする必要があります。
小学校がどう使うかを知っておく
要録は、書いて送れば終わりの書類ではありません。小学校がどう使うかを知っていると、書く中身が決まります。
使われ方は3つあります。
1つ目は、学級編成の参考です。入学の前に読まれます。
2つ目は、担任が最初の関わり方を考える材料です。4月のいちばん不安な時期に効きます。
3つ目は、支援が必要な子の引き継ぎです。就学支援の会議で使われることがあります。
3つとも、読むのは会ったことのない大人です。園の中だけで通じる言い方は伝わりません。「〇〇コーナーでよく遊ぶ」ではなく、「ままごとなど、友達と役を決めて遊ぶ場面が多い」と書きます。
できないことをどう書くか
要録でいちばん迷うのが、苦手なことの書き方です。書かなければ引き継げず、書きすぎると先入観になります。
書き方は3つです。
1つ目は、場面を限定することです。「落ち着きがない」ではなく「人数の多い場面では、活動から離れることがある」。
2つ目は、有効だった関わりを添えることです。「先に見通しを伝えると、参加できる」。これがいちばん役に立ちます。
3つ目は、断定しないことです。診断名や、園が判断していないことは書きません。
3つを守ると、苦手なことを書いても先入観になりません。関わり方が一緒に書いてあるからです。書かないことが配慮になるとは限りません。引き継がれないことで、その子が4月に困ります。
材料を集める仕組み
要録を書く時期になってから思い出そうとすると、直近の数か月のことしか出てきません。
集める仕組みは3つです。
1つ目は、児童票に毎月1行足すことです。印象に残った場面を1つ。
2つ目は、写真に一言添えることです。行事の写真だけでなく、普段の場面を残します。
3つ目は、年度の前半で1回、担任どうしで話すことです。「この子のいいところ」を出し合います。
3つのうち1つ目だけでも続けば、要録は書けます。毎月1行なら、1年で12場面。そこから選べば、年間を通した育ちが書けます。
書く時期と分担
要録は、卒園の直前に全員分を書くと間に合いません。時期を前倒しします。
進め方は4段です。
1つ目は、1月までに下書きを作ることです。
2つ目は、主任か園長が目を通すことです。書き方のばらつきをここでそろえます。
3つ目は、2月から3月にかけて仕上げることです。最後の数か月の姿を足します。
4つ目は、決められた時期に送付することです。送付の時期と方法は、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。
担任1人で全員分を抱えないことです。複数担任なら分担し、書いたあとにお互いに読み合います。読み合うと、書き方がそろいます。
個人情報として扱う
要録は、その子の育ちが詳しく書かれた個人情報です。扱いを決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、書く場所です。保育室で書くと、他の保護者の目に入ることがあります。事務室で書きます。
2つ目は、保管の場所です。鍵のかかる場所に置きます。下書きも同じ扱いです。
3つ目は、送る方法です。手渡しか、郵送か。自治体が方法を指定していることがあるので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。
4つ目は、電子で作る場合の扱いです。保存の場所、持ち出しの可否、消す時期。
4つ目がいちばん抜けます。園の共有フォルダに下書きが何年も残っている形は、実際によくあります。年度が終わったら整理する日を決めておいてください。
保護者への伝え方
要録は保護者に見せない前提で書く園が多くありますが、要録があること自体は伝えておきます。
伝えることは3つです。
1つ目は、小学校に引き継ぐ書類があることです。入学の前の時期に、園だよりなどで伝えます。
2つ目は、どんな内容かです。育ちの様子を伝えるもので、評価や成績ではないこと。
3つ目は、心配なことがあれば相談できることです。とくに支援が必要な子の保護者には、面談の機会を作ります。
3つを伝えておくと、あとから「知らなかった」という話になりません。小学校から連絡が来て初めて知る形は、保護者にとって不安です。
まとめ
保育所児童保育要録は、保育所から小学校へ、子どもの育ちを伝える書類です。小学校での指導に生かしてもらうためのもので、評価のためではありません。
読むのは、その子を知らない先生です。「元気で明るい子です」では指導に生かせません。どんな場面で、どんな姿を見せるかを書きます。
伝わる要録の特徴は3つ。場面が書いてある、変化が書いてある、関わり方のヒントがある。3つ目がいちばん役に立ちます。
配慮が必要な子については、うまくいった関わりを書くのが中心になります。書く内容は保護者と共有します。時期と送付の方法は、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 様式は決まっていますか。 A. 参考となる様式が示されています。自治体が独自の様式を用意している場合もあります。所管の自治体に確かめて、その様式を使います。項目の並びが違うことがあります。
Q. 全部の項目を埋める必要がありますか。 A. 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿は、すべてを埋めるものではありません。その子に当てはまる部分を選んで書きます。無理に全項目を埋めると、当たり障りのない記述になります。
Q. できないことは書きますか。 A. できないことだけを並べるのは避けます。何ができて、どう支えると力を発揮するかを書きます。支援の手がかりとして書くと、小学校で使える情報になります。
Q. 保護者の同意は要りますか。 A. 同意を得て送るものとはされていませんが、送ることを伝えておく形が一般的です。入園のときや年度の初めに説明しておくと、後から質問を受けたときにも答えられます。
Q. 開示を求められたらどうしますか。 A. 開示の扱いは自治体の定めによります。あらかじめ確かめて、求められたときの手順を決めておきます。見せられる書き方をしておくと、そのまま出せます。
Q. 書く時期はいつですか。 A. 卒園の前に作成し、小学校へ送付します。具体的な時期は自治体の案内によります。年度の途中から材料を集めておくと、その時期の負担が減ります。
Q. 誰が書きますか。 A. 担任が下書きを作り、主任や園長が確認する形が一般的です。1人で書くと偏るため、複数の目で見ます。書いた人と確認した人が分かる形にしておきます。
Q. 写しはどれくらい残しますか。 A. 保存の期間は施設の種類や自治体の基準によります。児童票とあわせて残している園が多くあります。所管の自治体に確かめます。
Q. 転園する場合も作りますか。 A. 転園先へ引き継ぐ書類は、要録とは別の扱いになることがあります。どの書類をどう引き継ぐかは、自治体の案内で確かめます。
Q. 材料が無くて書けません。 A. 日誌と連絡帳を読み返します。それでも足りない場合は、5歳児の記録の取り方を見直します。変化があった日に1行書き留めておく形にすると、翌年から材料が集まります。
Q. 要録の様式は決まっていますか。 A. 国が参考となる様式を示しているとされています。自治体が独自の様式を定めている場合もあります。所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。
Q. 保護者に見せる義務はありますか。 A. 開示の扱いは自治体の条例と園の規程によります。求められたときの対応を先に決めておいてください。見せる可能性がある前提で書くと、書き方が慎重になります。
Q. 転園する子の分はどうしますか。 A. 転園先に送る扱いになる場合があります。手続きは自治体によって違うので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。
Q. 要録の写しは園に残しますか。 A. 残します。保存の年数は自治体の指導によって違うので、所轄の市町村の保育担当課に確かめてください。あとから小学校に問い合わせを受けることがあります。
Q. 幼保連携型認定こども園の場合も同じですか。 A. 様式の名称と内容が異なります。園の種別によって使う様式が違うので、所轄の市町村の担当課に確かめてください。
Q. 要録を書く担任が、年度の途中で替わりました。 A. 前の担任の記録と、児童票を材料にして書きます。引き継ぎの時点で、気になる子について口頭で聞いておくことが役に立ちます。書けない部分は、主任や園長と一緒に埋めます。
Q. 支援が必要な子について、別の書類も送りますか。 A. 就学支援に関する書類が別にある自治体があります。要録と重なる部分が出るので、どちらに何を書くかを先に確かめてください。所轄の市町村の保育担当課に確かめます。