訪問看護計画書|指示書から目標に落とす
目次
主治医の指示書は届いている。訪問もしている。それなのに訪問看護計画書の目標の欄が「病状の安定」で毎月同じ。評価のしようがない目標が続いている事業所は多くあります。
この記事では、訪問看護計画書を、指示書との関係・目標の立て方・見直しの3つに分けて整理します。様式の説明ではなく、指示書の内容を、看護の目標に落とす手順を中心に書きます。
結論:指示書と計画書は別のもの
訪問看護計画書とは、主治医の指示書と、実際に訪問して見た療養の状況をもとに、看護の目標と内容を書いた計画です。
指示書を書くのは主治医、計画書を作るのは訪問看護事業所です。指示書の内容をそのまま写すものではありません。
ポイントはここです。指示書は医療の方針、計画書は看護として何をするかです。指示書に「血糖のコントロール」とあれば、計画書には「毎回の訪問で血糖値を測り、食事の内容を聞き取る」まで書きます。
厚生労働省が記載の要領を示しています。様式に迷ったときは、そちらを確かめてください。
計画書に書く6つ
書くのは6つです。
1つ目は、利用者の基本の情報です。氏名、生年月日、要介護度、主たる傷病。
2つ目は、今の状態です。訪問して見た療養の状況。
3つ目は、看護の目標です。指示書と状態を踏まえて設定します。
4つ目は、問題点と解決の方法です。何が起きていて、どう関わるか。
5つ目は、評価の時期です。
6つ目は、リハビリテーションを行う場合はその内容です。
3つ目と4つ目が、いちばん手が止まるところです。ここを埋める手順を次に書きます。
目標は3段で作る
目標の作り方は3段です。
1つ目は、指示書を読むことです。医師が何を目指しているかを押さえます。
2つ目は、訪問して見た状態と突き合わせることです。指示書に書かれた状態と、実際が違うことはよくあります。
3つ目は、看護として関われる部分に絞ることです。医療そのものではなく、訪問看護の時間で何ができるかを書きます。
2つ目を飛ばさないでください。指示書は前回の受診のときの状態で書かれています。訪問したら変わっていることがあります。違いに気づいたら、その時点で主治医に伝えます。
目標は「病状の安定」ではなく、確かめられる形にします。「褥瘡の大きさが縮小する」「服薬の飲み忘れが週1回以下になる」。
問題点の書き方
問題点は、優先順位を付けて3つまでにします。
書き方の決まりは3つです。
1つ目は、観察した事実から書くことです。「食事量が半分以下の日が週3日ある」。
2つ目は、原因の見立てを分けて書くことです。「入れ歯が合っていない可能性」。
3つ目は、関わる内容を書くことです。「歯科の受診を勧め、食事の形を家族と相談する」。
3つまでに絞るのは、全部に手を出すと記録が薄くなるからです。優先度の高いものから書いて、解決したら次を足します。
誰が作り、誰が見るか
計画書を作るのは、訪問看護の看護師です。事業所の管理者が確認する形が一般的です。
渡す先は3つあります。
1つ目は、主治医です。計画書を提出します。
2つ目は、利用者と家族です。説明して同意を得ます。
3つ目は、ケアマネジャーです。介護保険のサービスと合わせるために共有します。
3つ目が抜けやすいところです。医師には出しているが、ケアマネジャーには渡していない。サービス担当者会議で内容が食い違う原因になります。
渡した日を記録に残してください。誰に、いつ、どの方法で渡したか。1行で足ります。
見直しの時期
見直すのは4つの場面です。
1つ目は、指示書が新しくなったときです。
2つ目は、状態が変わったときです。
3つ目は、目標の期間が終わったときです。
4つ目は、サービスの内容を変えたときです。
1つ目が基本の周期になります。指示書には有効の期間があるので、更新のたびに計画書も見直す流れにしておくと抜けません。
見直したら、変えた部分が分かるようにします。前の計画書を捨てないでください。経過が追えなくなります。
報告書との関係
訪問看護には、計画書と別に訪問看護報告書があります。計画が先、報告が後という関係です。
分け方は単純です。
計画書には、これから何をするかを書きます。
報告書には、実際に何をして、どうだったかを書きます。
2つがつながっていないと、主治医が状況を追えません。計画に書いた目標に対して、報告でどうだったかを書く。この対応が取れていれば、医師の判断が早くなります。
医師とのやり取りを残す
訪問看護では、医師への連絡が頻繁に発生します。ここの記録が抜けると、後から経過を説明できません。
残すのは4つです。
1つ目は、連絡した日時です。
2つ目は、伝えた内容です。観察した事実。
3つ目は、医師の指示です。返ってきた内容。
4つ目は、その後の対応です。
3つ目を、言われたとおりに書いてください。要約すると、後から解釈が変わります。「様子を見る」と言われたなら、そのまま書きます。
口頭の指示で処置を変えた場合は、次の指示書に反映されているかを確かめます。反映されていないと、記録と指示が食い違ったままになります。
家族の介護力も書いておく
在宅の看護は、家族が担う部分を抜きにしては組めません。ここを計画書に書いておくと、目標の大きさが現実に合います。
見るのは4つです。
1つ目は、同居しているかです。日中だけ不在、週末だけ来る、といった形も書きます。
2つ目は、できる処置の範囲です。吸引、インスリンの注射、褥瘡の処置。教えれば行える範囲は人によって違います。
3つ目は、家族自身の体調です。高齢の配偶者が介護している場合、そちらも見ます。
4つ目は、いざというときの連絡先です。
2つ目を書いておくと、訪問の回数が決まります。家族ができる処置は家族に任せ、看護師は確認と手技の見直しに回る。この組み立てができると、限られた訪問の回数で回ります。
家族に手技を教えたら、教えた日と、できるようになった範囲を記録に残してください。後から誰が教えたかを聞かれます。
状態が急に変わったとき
訪問看護では、計画の想定から外れる日が必ず出ます。熱が出た、転んだ、食べられなくなった。
その場でやることは4つです。
1つ目は、観察した事実を書き留めることです。数値と、見たままの様子。
2つ目は、主治医に連絡することです。判断を仰ぐ前に、状況を短く伝えます。
3つ目は、家族に伝えることです。不在の家族にも、その日のうちに。
4つ目は、ケアマネジャーに連絡することです。ほかのサービスの調整が要ることがあります。
4つ目が抜けます。医療の側だけで完結させてしまい、翌日の訪問介護やデイの送迎が止められない。同じ日に動く人が全員いることを思い出してください。
落ち着いたら、計画書に反映します。その出来事があった前提で、次の1か月をどう関わるか。書き換えずに元の計画のまま進めると、記録と実際がずれていきます。
記録を短くする工夫
計画書も報告書も、毎月作ります。負担を減らす工夫が要ります。
方法は3つです。
1つ目は、前月分を写して、変わった部分だけ直すことです。
2つ目は、訪問のたびの記録から拾える形にすることです。
3つ目は、書く日を決めることです。月末にまとめると、月初が詰まります。
1つ目には注意が要ります。写したまま状態の欄が去年のまま、という計画書が実際にあります。写したら、必ず今月の状態に直すところまでを手順にしてください。
実地指導で見られるところ
見られるのは4つです。
1つ目は、指示書と計画書の対応です。指示に無い処置をしていないか。
2つ目は、同意の記録です。
3つ目は、主治医への提出です。
4つ目は、記録との一致です。計画にある内容が、訪問の記録から追えるか。
1つ目がいちばん重い指摘になります。指示書の範囲を超えた処置は、記録に残っている時点で問題になります。迷ったら、その場で医師に確かめてください。
まとめ
訪問看護計画書は、指示書の写しではありません。指示書は医療の方針、計画書は看護として何をするかです。
目標は3段で作ります。指示書を読み、訪問して見た状態と突き合わせ、看護として関われる部分に絞る。2つ目を飛ばすと、実際と合わない計画になります。
問題点は優先順位を付けて3つまで。観察した事実から書き、原因の見立てと関わる内容を分けて書きます。
渡す先は主治医、利用者と家族、ケアマネジャーの3つです。3つ目が抜けやすいところです。様式と記載の要領は厚生労働省が示しているので、迷ったらそちらを確かめてください。
よくある質問
Q. 訪問看護計画書は誰が作りますか。 A. 訪問看護の看護師です。管理者が確認する形が一般的です。
Q. 指示書と何が違いますか。 A. 指示書を書くのは主治医で、医療の方針が書かれています。計画書は事業所が作り、看護として何をするかを書きます。
Q. 指示書の内容を写してもよいですか。 A. 写すだけでは計画になりません。訪問して見た状態と突き合わせて、看護の目標に落としてください。
Q. 目標が毎月同じになります。 A. 「病状の安定」のような書き方だと評価できません。確かめられる形にしてください。「褥瘡の大きさが縮小する」といった書き方です。
Q. 問題点はいくつ書きますか。 A. 優先順位を付けて3つまでにしてください。全部に手を出すと、記録が薄くなります。
Q. 誰に渡しますか。 A. 主治医、利用者と家族、ケアマネジャーの3つです。ケアマネジャーが抜けやすいので注意してください。
Q. 主治医への提出に期限はありますか。 A. 明確な期限は定められていないのが通常です。指示書の更新に合わせる形にしておくと、流れが決まります。
Q. 同意は書面で取りますか。 A. 説明して同意を得た記録を残します。署名をもらう形が確実です。
Q. 見直しはどのくらいの頻度ですか。 A. 指示書が新しくなったとき、状態が変わったとき、目標の期間が終わったとき、内容を変えたときです。
Q. 前月分を写してもよいですか。 A. 写して構いませんが、今月の状態に直すところまでを手順にしてください。去年の状態のまま、という計画書が実際にあります。
Q. 報告書との違いは何ですか。 A. 計画書はこれから何をするか、報告書は実際に何をしてどうだったかです。計画が先、報告が後という関係です。
Q. リハビリテーションを行う場合は。 A. 計画書にその内容を書きます。誰が、どの頻度で、何を行うかを明確にしてください。
Q. 医師の口頭の指示で処置を変えました。 A. 連絡した日時、伝えた内容、医師の指示、その後の対応を記録に残します。次の指示書に反映されているかも確かめてください。
Q. 指示書の範囲を超えていないか不安です。 A. 迷ったらその場で医師に確かめてください。記録に残った時点で問題になります。
Q. 利用者が計画の内容を望みません。 A. 本人の希望を記録に残し、主治医とケアマネジャーに伝えます。計画は変えられます。
Q. 複数の看護師が訪問します。 A. 1つの計画書で構いません。誰が入っても同じ関わりができるよう、問題点と対応を具体的に書いてください。
Q. 計画書はいつ作りますか。 A. サービスを始める前に作ります。以降は指示書の更新に合わせるのが基本の形です。
Q. 家族ができる処置はどこに書きますか。 A. 計画書に書いておきます。家族ができる範囲が決まると、訪問の回数と内容が決まります。教えた日と、できるようになった範囲も記録に残してください。
Q. 家族の負担が大きそうです。 A. 家族自身の体調も含めて記録に残し、主治医とケアマネジャーに伝えてください。サービスの組み替えが要る合図です。
Q. 評価の時期はどう決めますか。 A. 目標の内容によります。1か月で見るもの、3か月で見るものがあります。計画書に評価の月を書いておくと、見直しが流れません。
Q. 介護保険と医療保険で計画書は変わりますか。 A. 制度によって様式や扱いが違う部分があります。どちらの保険で入っているかを利用者ごとにはっきりさせて、迷ったら窓口に確かめてください。
Q. 急な変化があったとき、誰に連絡しますか。 A. 主治医、家族、ケアマネジャーの3つです。ケアマネジャーが抜けやすいところで、翌日のほかのサービスが止められません。
Q. 落ち着いたあとに計画書を直しますか。 A. 直してください。その出来事があった前提で次の1か月をどう関わるかを書き換えます。元のままだと記録と実際がずれます。
Q. 保存期間はどのくらいですか。 A. 介護保険や医療の記録と同じ扱いです。自治体の条例や制度によって違うので、確かめてください。