介護の記録実務2026.09.21 公開KK-71

特定事業所加算|訪問介護で残す記録

目次

会議はやっている。研修もやっている。それなのに実地指導で「全員が出た記録はありますか」と聞かれて、出席した人の名前が書かれていない議事録が出てくる。特定事業所加算で返還になる形の多くが、やっているのに残っていないという形です。

この記事では、特定事業所加算を訪問介護の場合に絞って、会議・研修・記録の3つに分けて整理します。区分の一覧ではなく、毎月の運用で残すものを中心に書きます。

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結論:毎月の記録が要件そのもの

特定事業所加算とは、体制を整えて質の高いサービスを提供している事業所を評価する加算です。訪問介護では区分が(I)から(V)まであり、加算率は所定単位数の3%から20%とされています。

金額が基本報酬の何%という形なので、返還になったときの額が大きくなります。ここが、ほかの加算といちばん違う点です。

ポイントはここです。要件の多くが「毎月やること」です。体制を1回整えれば終わりではありません。会議、研修、健康診断、情報の伝達。どれも記録が残っていないと、やっていないのと同じ扱いになります。

区分ごとの要件と加算率は、所轄の指定権者(都道府県または市町村)の資料で確かめてください。

毎月やることは4つ

区分によって要件は違いますが、実務で毎月発生するのは主に4つです。

1つ目は、サービス提供責任者と訪問介護員の会議です。定期的に開き、利用者の状況を伝えます。

2つ目は、訪問前後の情報の伝達です。サービス提供責任者から訪問介護員へ、利用者の状況や留意点を伝えます。

3つ目は、研修の実施です。個別の研修の計画にもとづいて行います。

4つ目は、健康診断の実施です。定期的に受けられる体制にします。

毎月やること4つやること残すもの会議出席者と内容情報の伝達1か月1枚の用紙研修個別の計画と実績健康診断受診と未受診の対応
会議・情報の伝達・研修・健康診断という4つを並べた表

2つ目がいちばん残しにくいところです。口頭やメッセージアプリで伝えていて、記録が残っていない。伝えた内容を書き留める形を決めておかないと、後から示せません。

会議の記録に残す4つ

会議の記録に残すのは4つです。

1つ目は、開催した日時です。

2つ目は、出席者です。氏名を全員書きます。

3つ目は、伝えた内容です。どの利用者について、何を共有したか。

4つ目は、出席できなかった人への伝え方です。

会議の記録で抜けやすい4項目項目書き方日時年月日と時刻出席者氏名を全員伝えた内容どの利用者の話か欠席者への伝達回覧と確認の印
会議の記録で抜けやすい4項目と、書き方を並べた表

4つ目が要点です。訪問介護では、全員が同じ時間に集まるのがそもそも難しくなっています。出られなかった人にどう伝えたかまで記録があれば、要件を満たしている説明ができます。

伝え方は、記録を回覧して確認の印をもらう、個別に説明した日を書く、といった形です。印や署名が並んでいる用紙が、いちばん説明が早く済みます。

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情報の伝達を、どう残すか

要件の中でいちばん残しにくいのが、訪問の前後の情報の伝達です。毎日、何件も発生します。

残し方は3つあります。

1つ目は、1か月1枚の用紙にまとめる形です。日付、利用者、伝えた内容、伝えた相手。行を足していくだけです。

2つ目は、サービス提供記録の欄を使う形です。利用者ごとに残るので、あとで1人分を追いやすくなります。

3つ目は、メッセージアプリの内容を印刷する形です。すでにやり取りがあるなら、いちばん手間が少なくなります。

情報の伝達の残し方3つ残し方向いている場面1か月1枚加算の説明に使う提供記録の欄1人分を追うアプリを印刷すでにやり取りがある
1か月1枚・提供記録の欄・アプリの印刷という3つの残し方を並べた表

1つ目を勧めます。加算の説明に使うときは、事業所として何をしたかを見せる形のほうが早く済みます。利用者ごとに散らばっていると、1件ずつ開くことになります。

伝える内容が決まっていれば、書く手間はほとんど増えません。利用者の状態の変化、その日の留意点、前回の申し送り。この3つで足ります。

研修は「個別」が求められる

研修の要件は、職員ごとの計画にもとづいて行う形になっています。全員に同じ内容を年2回、という形だけでは足りない場合があります。

そろえるのは3つです。

1つ目は、職員ごとの研修の計画です。その人に何を身につけてほしいか。

2つ目は、実施した記録です。日付、内容、受けた人。

3つ目は、評価です。身についたかどうか。

研修は3段でそろえる1個別の計画1人1枚2実施の記録日付と内容3評価できたことを1行
個別の計画・実施の記録・評価という3段のフロー

1つ目が無い事業所が多くあります。年間の研修の予定表はあっても、職員ごとの計画が無い。1人1枚、1年分で足ります。名前と、今年身につけてほしいことを3つ書くだけです。

研修は、外部のものを受けた場合も記録に入れて構いません。受講の証明の写しを付けておくと、そのまま実績になります。

健康診断と、資格の管理

健康診断を定期的に受けられる体制も要件に入ります。

残すのは3つです。

1つ目は、実施した日です。

2つ目は、受けた職員です。

3つ目は、受けていない職員への対応です。

3つ目を書いておいてください。全員が同じ時期に受けられるとは限りません。未受診の人に、いつ受けてもらう予定かを書いておけば、体制として説明できます。

資格の管理も同じ考え方です。資格証の写しを採用のときに取る手順にしておくと、後からまとめて集める手間が消えます。

加算を取る前に見ておくこと

区分を上げれば収入は増えます。ただし、上げた区分を維持できるかを先に見てください。

見るのは3つです。

1つ目は、毎月の作業がどれだけ増えるかです。会議、伝達の記録、研修。合わせて月に何時間かかるか。

2つ目は、誰がやるかです。多くはサービス提供責任者に寄ります。その人の訪問の時間を削ることになります。

3つ目は、抜けたときに誰が代われるかです。担当が1人だと、休職や退職でそのまま止まります。

3つ目を見ておかないと、翌年に返還の話になります。要件を満たさない月が出たときに、気づく人がいない形がいちばん危ない状態です。

取る前に、1か月だけ記録を試しに作ってみるのもよい方法です。実際にかかる時間が分かり、続けられるかどうかの判断ができます。

引き継ぎで止まらないようにする

サービス提供責任者が交代したときに、毎月の作業がそのまま止まる事業所があります。引き継ぐ相手が、何をやっていたか知らないためです。

引き継ぐのは4つです。

1つ目は、記録の置き場所です。

2つ目は、毎月やることと、その期限です。

3つ目は、窓口に確かめた内容です。過去に聞いた解釈は、その事業所にしか残っていません。

4つ目は、次の届出の時期です。

3つ目がいちばん失われます。「この場合はこう扱ってよいと市に確認済み」という情報は、聞いた人の頭にしかありません。聞いたその日に1行書き残す習慣にしてください。

引き継ぎの用紙は1枚で足ります。加算ごとに、上の4つを書いた紙を作っておけば、交代のたびに使えます。

記録の置き方

書類は種類ごとにつづります。会議、研修、健康診断、情報の伝達。この4つを分けて、年度ごとに1冊にする形が探しやすくなります。

理由は、実地指導で年度を指定して見られることが多いためです。利用者ごとではなく、事業所全体の体制を見る加算なので、年度で区切ると出しやすくなります。

毎月の情報の伝達の記録は、量が多くなります。1か月1枚にまとめる形にすると、つづりが厚くなりすぎません。

返還になりやすい形

特定事業所加算で返還になりやすいのは3つです。

1つ目は、会議の記録に出席者がいないことです。

2つ目は、情報の伝達の記録が無いことです。やっているが残していない。

3つ目は、研修が全員一律で、個別の計画が無いことです。

返還になりやすい3点防ぎ方出席者が無い氏名を全員書く伝達の記録が無い用紙を決める研修が一律個別の計画を作る
返還になりやすい3点と、防ぎ方を並べた表

加算率が高い区分ほど、影響が大きくなります。20%の区分で1年分の返還となると、金額は相当なものになります。月に1回、記録がそろっているかを確かめる時間を取ってください。15分で済みます。

毎月15分の確認を入れる

要件が毎月のものなので、確認も毎月に落とします。まとめて年に1回見ると、抜けた月を戻せません。

見るのは3つだけです。

1つ目は、今月の会議の記録があるかです。出席者の氏名まで入っているか。

2つ目は、情報の伝達の用紙が埋まっているかです。空白の週が無いか。

3つ目は、今月実施した研修が記録に入っているかです。

毎月15分で見る3つ見るもの確かめる点会議の記録出席者まで入っているか伝達の用紙空白の週が無いか研修の記録今月の分が入ったか
会議・伝達・研修という3つの月次の確認を並べた表

抜けを見つけたら、その月のうちに埋めます。翌月になると、誰が何を伝えたか思い出せません。

確認する人は、記録を書く人とは別にしてください。書いた本人は、抜けに気づきにくいものです。管理者か、別のサービス提供責任者が見る形にします。

この15分が、返還を防ぐいちばん安い方法です。月に15分、年に3時間で、加算率20%の1年分を守れると考えてください。

まとめ

特定事業所加算は、訪問介護では区分が(I)から(V)まであり、加算率は所定単位数の3%から20%とされています。金額が大きいぶん、返還になったときの影響も大きくなります。

要件の多くは毎月やることです。会議、訪問前後の情報の伝達、研修、健康診断。体制を1回整えれば終わり、という加算ではありません。

会議の記録では、出席できなかった人への伝え方まで書いてください。訪問介護では全員が集まるのが難しいので、ここが説明の要になります。

研修は職員ごとの計画が要ります。1人1枚、身につけてほしいことを3つ書くだけで足ります。区分ごとの要件と加算率は、所轄の指定権者の資料で確かめてください。

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よくある質問

Q. 特定事業所加算の加算率はどのくらいですか。 A. 訪問介護では区分により所定単位数の3%から20%とされています。自分の事業所の区分は、指定権者の資料で確かめてください。

Q. 区分はどう決まりますか。 A. 介護福祉士の割合、勤続年数、会議や研修の体制など、複数の要件の組み合わせで決まります。

Q. 会議はどのくらいの頻度で開きますか。 A. 定期的にとされています。頻度の目安は区分と自治体の説明によるので、確かめてください。

Q. 全員が集まれません。 A. 訪問介護では普通のことです。出られなかった人にどう伝えたかを記録に残してください。回覧して確認の印をもらう形が一般的です。

Q. 会議の記録には何を書きますか。 A. 日時、出席者の氏名、伝えた内容、出席できなかった人への伝え方の4つです。

Q. 情報の伝達はメッセージアプリでもよいですか。 A. 伝える手段の定めはありません。ただし残す形を決めてください。画面だけだと、後から示せないことがあります。

Q. 情報の伝達の記録が多すぎます。 A. 1か月1枚にまとめる形にしてください。日付ごとに行を作れば、つづりが厚くなりすぎません。

Q. 研修は全員同じ内容ではだめですか。 A. 職員ごとの計画にもとづく形が求められます。共通の研修に加えて、1人1枚の計画を作ってください。

Q. 個別の研修計画には何を書きますか。 A. 名前と、今年身につけてほしいことを3つ書けば足ります。年度の初めに作り、実施したら記録を足します。

Q. 外部の研修は記録に入れられますか。 A. 入れて構いません。受講の証明の写しを付けておくと、そのまま実績になります。

Q. 健康診断を受けていない職員がいます。 A. いつ受けてもらう予定かを記録に書いてください。未受診の人への対応まで書いてあれば、体制として説明できます。

Q. 書類はどう分けますか。 A. 会議、研修、健康診断、情報の伝達の4つに分けて、年度ごとに1冊にします。実地指導は年度を指定して見られることが多くあります。

Q. サービス提供責任者が交代しました。 A. 要件に関わる場合は届出が要ります。引き継ぎのときに、記録の置き場所と毎月の作業を必ず伝えてください。

Q. 要件を満たさなくなったら。 A. 区分の変更か、算定をやめる届出が要ります。加算率が高いぶん、放置したときの返還が大きくなります。

Q. 毎月の確認はどうすればよいですか。 A. 月に1回、記録がそろっているかを15分で見てください。会議、伝達、研修の3つを確かめるだけで、ほとんどの穴は塞がります。

Q. サービス提供体制強化加算と両方取れますか。 A. 別の加算なので、それぞれの要件を満たせば算定します。割合の計算は共通で使えるので、一覧を1つ作っておくと楽です。

Q. 研修の評価はどう書きますか。 A. 難しく考えなくて構いません。できるようになったことを1行書けば足ります。次の年の計画にそのままつながります。

Q. 窓口に確かめた内容はどこに残しますか。 A. 聞いたその日に1行書き残してください。過去に確かめた解釈は、聞いた人の頭にしか残りません。加算ごとに1枚の引き継ぎの用紙を作っておくと、担当が替わっても続きます。

Q. 毎月の確認は誰がやりますか。 A. 記録を書く人とは別の人にしてください。書いた本人は抜けに気づきにくいものです。管理者か、別のサービス提供責任者が見る形にします。

Q. 加算を取るか迷っています。 A. 1か月だけ記録を試しに作ってみてください。実際にかかる時間が分かります。続けられないと分かったら、取らない判断も正しい選択です。

Q. 月の途中で要件が崩れました。 A. その月の扱いを窓口に確かめてください。自分で判断して遡らないことです。崩れた日と、気づいた日を記録に残しておきます。

Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 会議の記録、情報の伝達の記録、研修の計画と実績、健康診断の記録です。年度ごとに分けておくと、説明が早く終わります。