特定事業所加算|訪問介護で残す記録
目次
会議はやっている。研修もやっている。それなのに実地指導で「全員が出た記録はありますか」と聞かれて、出席した人の名前が書かれていない議事録が出てくる。特定事業所加算で返還になる形の多くが、やっているのに残っていないという形です。
この記事では、特定事業所加算を訪問介護の場合に絞って、会議・研修・記録の3つに分けて整理します。区分の一覧ではなく、毎月の運用で残すものを中心に書きます。
結論:毎月の記録が要件そのもの
特定事業所加算とは、体制を整えて質の高いサービスを提供している事業所を評価する加算です。訪問介護では区分が(I)から(V)まであり、加算率は所定単位数の3%から20%とされています。
金額が基本報酬の何%という形なので、返還になったときの額が大きくなります。ここが、ほかの加算といちばん違う点です。
ポイントはここです。要件の多くが「毎月やること」です。体制を1回整えれば終わりではありません。会議、研修、健康診断、情報の伝達。どれも記録が残っていないと、やっていないのと同じ扱いになります。
区分ごとの要件と加算率は、所轄の指定権者(都道府県または市町村)の資料で確かめてください。
毎月やることは4つ
区分によって要件は違いますが、実務で毎月発生するのは主に4つです。
1つ目は、サービス提供責任者と訪問介護員の会議です。定期的に開き、利用者の状況を伝えます。
2つ目は、訪問前後の情報の伝達です。サービス提供責任者から訪問介護員へ、利用者の状況や留意点を伝えます。
3つ目は、研修の実施です。個別の研修の計画にもとづいて行います。
4つ目は、健康診断の実施です。定期的に受けられる体制にします。
2つ目がいちばん残しにくいところです。口頭やメッセージアプリで伝えていて、記録が残っていない。伝えた内容を書き留める形を決めておかないと、後から示せません。
会議の記録に残す4つ
会議の記録に残すのは4つです。
1つ目は、開催した日時です。
2つ目は、出席者です。氏名を全員書きます。
3つ目は、伝えた内容です。どの利用者について、何を共有したか。
4つ目は、出席できなかった人への伝え方です。
4つ目が要点です。訪問介護では、全員が同じ時間に集まるのがそもそも難しくなっています。出られなかった人にどう伝えたかまで記録があれば、要件を満たしている説明ができます。
伝え方は、記録を回覧して確認の印をもらう、個別に説明した日を書く、といった形です。印や署名が並んでいる用紙が、いちばん説明が早く済みます。
情報の伝達を、どう残すか
要件の中でいちばん残しにくいのが、訪問の前後の情報の伝達です。毎日、何件も発生します。
残し方は3つあります。
1つ目は、1か月1枚の用紙にまとめる形です。日付、利用者、伝えた内容、伝えた相手。行を足していくだけです。
2つ目は、サービス提供記録の欄を使う形です。利用者ごとに残るので、あとで1人分を追いやすくなります。
3つ目は、メッセージアプリの内容を印刷する形です。すでにやり取りがあるなら、いちばん手間が少なくなります。
1つ目を勧めます。加算の説明に使うときは、事業所として何をしたかを見せる形のほうが早く済みます。利用者ごとに散らばっていると、1件ずつ開くことになります。
伝える内容が決まっていれば、書く手間はほとんど増えません。利用者の状態の変化、その日の留意点、前回の申し送り。この3つで足ります。
研修は「個別」が求められる
研修の要件は、職員ごとの計画にもとづいて行う形になっています。全員に同じ内容を年2回、という形だけでは足りない場合があります。
そろえるのは3つです。
1つ目は、職員ごとの研修の計画です。その人に何を身につけてほしいか。
2つ目は、実施した記録です。日付、内容、受けた人。
3つ目は、評価です。身についたかどうか。
1つ目が無い事業所が多くあります。年間の研修の予定表はあっても、職員ごとの計画が無い。1人1枚、1年分で足ります。名前と、今年身につけてほしいことを3つ書くだけです。
研修は、外部のものを受けた場合も記録に入れて構いません。受講の証明の写しを付けておくと、そのまま実績になります。
健康診断と、資格の管理
健康診断を定期的に受けられる体制も要件に入ります。
残すのは3つです。
1つ目は、実施した日です。
2つ目は、受けた職員です。
3つ目は、受けていない職員への対応です。
3つ目を書いておいてください。全員が同じ時期に受けられるとは限りません。未受診の人に、いつ受けてもらう予定かを書いておけば、体制として説明できます。
資格の管理も同じ考え方です。資格証の写しを採用のときに取る手順にしておくと、後からまとめて集める手間が消えます。
加算を取る前に見ておくこと
区分を上げれば収入は増えます。ただし、上げた区分を維持できるかを先に見てください。
見るのは3つです。
1つ目は、毎月の作業がどれだけ増えるかです。会議、伝達の記録、研修。合わせて月に何時間かかるか。
2つ目は、誰がやるかです。多くはサービス提供責任者に寄ります。その人の訪問の時間を削ることになります。
3つ目は、抜けたときに誰が代われるかです。担当が1人だと、休職や退職でそのまま止まります。
3つ目を見ておかないと、翌年に返還の話になります。要件を満たさない月が出たときに、気づく人がいない形がいちばん危ない状態です。
取る前に、1か月だけ記録を試しに作ってみるのもよい方法です。実際にかかる時間が分かり、続けられるかどうかの判断ができます。
引き継ぎで止まらないようにする
サービス提供責任者が交代したときに、毎月の作業がそのまま止まる事業所があります。引き継ぐ相手が、何をやっていたか知らないためです。
引き継ぐのは4つです。
1つ目は、記録の置き場所です。
2つ目は、毎月やることと、その期限です。
3つ目は、窓口に確かめた内容です。過去に聞いた解釈は、その事業所にしか残っていません。
4つ目は、次の届出の時期です。
3つ目がいちばん失われます。「この場合はこう扱ってよいと市に確認済み」という情報は、聞いた人の頭にしかありません。聞いたその日に1行書き残す習慣にしてください。
引き継ぎの用紙は1枚で足ります。加算ごとに、上の4つを書いた紙を作っておけば、交代のたびに使えます。
記録の置き方
書類は種類ごとにつづります。会議、研修、健康診断、情報の伝達。この4つを分けて、年度ごとに1冊にする形が探しやすくなります。
理由は、実地指導で年度を指定して見られることが多いためです。利用者ごとではなく、事業所全体の体制を見る加算なので、年度で区切ると出しやすくなります。
毎月の情報の伝達の記録は、量が多くなります。1か月1枚にまとめる形にすると、つづりが厚くなりすぎません。
返還になりやすい形
特定事業所加算で返還になりやすいのは3つです。
1つ目は、会議の記録に出席者がいないことです。
2つ目は、情報の伝達の記録が無いことです。やっているが残していない。
3つ目は、研修が全員一律で、個別の計画が無いことです。
加算率が高い区分ほど、影響が大きくなります。20%の区分で1年分の返還となると、金額は相当なものになります。月に1回、記録がそろっているかを確かめる時間を取ってください。15分で済みます。
毎月15分の確認を入れる
要件が毎月のものなので、確認も毎月に落とします。まとめて年に1回見ると、抜けた月を戻せません。
見るのは3つだけです。
1つ目は、今月の会議の記録があるかです。出席者の氏名まで入っているか。
2つ目は、情報の伝達の用紙が埋まっているかです。空白の週が無いか。
3つ目は、今月実施した研修が記録に入っているかです。
抜けを見つけたら、その月のうちに埋めます。翌月になると、誰が何を伝えたか思い出せません。
確認する人は、記録を書く人とは別にしてください。書いた本人は、抜けに気づきにくいものです。管理者か、別のサービス提供責任者が見る形にします。
この15分が、返還を防ぐいちばん安い方法です。月に15分、年に3時間で、加算率20%の1年分を守れると考えてください。
まとめ
特定事業所加算は、訪問介護では区分が(I)から(V)まであり、加算率は所定単位数の3%から20%とされています。金額が大きいぶん、返還になったときの影響も大きくなります。
要件の多くは毎月やることです。会議、訪問前後の情報の伝達、研修、健康診断。体制を1回整えれば終わり、という加算ではありません。
会議の記録では、出席できなかった人への伝え方まで書いてください。訪問介護では全員が集まるのが難しいので、ここが説明の要になります。
研修は職員ごとの計画が要ります。1人1枚、身につけてほしいことを3つ書くだけで足ります。区分ごとの要件と加算率は、所轄の指定権者の資料で確かめてください。
よくある質問
Q. 特定事業所加算の加算率はどのくらいですか。 A. 訪問介護では区分により所定単位数の3%から20%とされています。自分の事業所の区分は、指定権者の資料で確かめてください。
Q. 区分はどう決まりますか。 A. 介護福祉士の割合、勤続年数、会議や研修の体制など、複数の要件の組み合わせで決まります。
Q. 会議はどのくらいの頻度で開きますか。 A. 定期的にとされています。頻度の目安は区分と自治体の説明によるので、確かめてください。
Q. 全員が集まれません。 A. 訪問介護では普通のことです。出られなかった人にどう伝えたかを記録に残してください。回覧して確認の印をもらう形が一般的です。
Q. 会議の記録には何を書きますか。 A. 日時、出席者の氏名、伝えた内容、出席できなかった人への伝え方の4つです。
Q. 情報の伝達はメッセージアプリでもよいですか。 A. 伝える手段の定めはありません。ただし残す形を決めてください。画面だけだと、後から示せないことがあります。
Q. 情報の伝達の記録が多すぎます。 A. 1か月1枚にまとめる形にしてください。日付ごとに行を作れば、つづりが厚くなりすぎません。
Q. 研修は全員同じ内容ではだめですか。 A. 職員ごとの計画にもとづく形が求められます。共通の研修に加えて、1人1枚の計画を作ってください。
Q. 個別の研修計画には何を書きますか。 A. 名前と、今年身につけてほしいことを3つ書けば足ります。年度の初めに作り、実施したら記録を足します。
Q. 外部の研修は記録に入れられますか。 A. 入れて構いません。受講の証明の写しを付けておくと、そのまま実績になります。
Q. 健康診断を受けていない職員がいます。 A. いつ受けてもらう予定かを記録に書いてください。未受診の人への対応まで書いてあれば、体制として説明できます。
Q. 書類はどう分けますか。 A. 会議、研修、健康診断、情報の伝達の4つに分けて、年度ごとに1冊にします。実地指導は年度を指定して見られることが多くあります。
Q. サービス提供責任者が交代しました。 A. 要件に関わる場合は届出が要ります。引き継ぎのときに、記録の置き場所と毎月の作業を必ず伝えてください。
Q. 要件を満たさなくなったら。 A. 区分の変更か、算定をやめる届出が要ります。加算率が高いぶん、放置したときの返還が大きくなります。
Q. 毎月の確認はどうすればよいですか。 A. 月に1回、記録がそろっているかを15分で見てください。会議、伝達、研修の3つを確かめるだけで、ほとんどの穴は塞がります。
Q. サービス提供体制強化加算と両方取れますか。 A. 別の加算なので、それぞれの要件を満たせば算定します。割合の計算は共通で使えるので、一覧を1つ作っておくと楽です。
Q. 研修の評価はどう書きますか。 A. 難しく考えなくて構いません。できるようになったことを1行書けば足ります。次の年の計画にそのままつながります。
Q. 窓口に確かめた内容はどこに残しますか。 A. 聞いたその日に1行書き残してください。過去に確かめた解釈は、聞いた人の頭にしか残りません。加算ごとに1枚の引き継ぎの用紙を作っておくと、担当が替わっても続きます。
Q. 毎月の確認は誰がやりますか。 A. 記録を書く人とは別の人にしてください。書いた本人は抜けに気づきにくいものです。管理者か、別のサービス提供責任者が見る形にします。
Q. 加算を取るか迷っています。 A. 1か月だけ記録を試しに作ってみてください。実際にかかる時間が分かります。続けられないと分かったら、取らない判断も正しい選択です。
Q. 月の途中で要件が崩れました。 A. その月の扱いを窓口に確かめてください。自分で判断して遡らないことです。崩れた日と、気づいた日を記録に残しておきます。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 会議の記録、情報の伝達の記録、研修の計画と実績、健康診断の記録です。年度ごとに分けておくと、説明が早く終わります。