口腔機能向上加算|計画と回数の数え方
目次
体操は毎回やっている。記録も付けている。それなのに「計画書はありますか」「3か月ごとの評価は」と聞かれて詰まる。口腔機能向上加算でいちばん多いのが、実施はしているのに書類が追いついていない形です。
この記事では、口腔機能向上加算を、計画の作り方・回数の数え方・3か月ごとの評価の3つに分けて整理します。続けて算定できる形を作ることを中心に書きます。
結論:計画と評価がそろって、はじめて算定できる
口腔機能向上加算とは、口の機能が低下している方、またはそのおそれのある方に、計画を立てて口腔機能の向上に取り組んだ場合に算定する加算です。
単位数は加算(I)が1回150単位、加算(II)が1回160単位です。加算(II)はLIFEへの情報の提出とフィードバックの活用が要件に加わります。加算(II)を算定している場合、加算(I)は算定しません。
ポイントはここです。体操や訓練をしただけでは算定できません。対象かどうかの確認、計画、実施、評価。この4つがそろって、はじめて算定の説明ができます。
回数の数え方
回数は、要介護度によって上限が違います。
要介護1から5の方は、1か月に2回までです。
要支援と総合事業の対象の方は、1か月に1回までとされています。
ここを取り違えると返戻になります。要支援の方に月2回算定してしまう形が、いちばん多い間違いです。
算定できる期間は、原則として3か月以内とされています。3か月を過ぎたら、再び評価をして、必要と判断され、同意を得られた場合に続けられる形です。
期間の管理を表にしておいてください。利用者の名前、開始した月、次に評価する月。この3列があれば、切れ目が見えます。
対象になる方をどう選ぶか
対象は、口の機能が低下している方、またはそのおそれのある方です。
確かめるのは3つです。
1つ目は、食べることに関する様子です。むせる、食べ残しが増えた、固いものを避けるようになった。
2つ目は、話すことに関する様子です。声が小さくなった、聞き返されることが増えた。
3つ目は、口の中の状態です。乾き、汚れ、入れ歯の具合。
1つ目から入るのがいちばん自然です。食事の場面は毎回あるので、変化に気づきやすい場面です。
選んだ理由は、記録に残します。「むせが週に2回以上見られる」といった、具体的な言葉で書いてください。「口腔機能の低下が見られるため」だけでは、後から説明できません。
計画に書く5つ
口腔機能向上の計画に書くのは5つです。
1つ目は、今の状態です。評価した結果。
2つ目は、目標です。3か月で届く大きさにします。
3つ目は、取り組む内容です。体操、清掃の方法、食事の形。
4つ目は、実施する頻度と担当です。
5つ目は、次に評価する時期です。
2つ目でつまずきます。「口腔機能の維持」と書くと、3か月後に達成したかどうかを判断できません。「むせる回数が週2回から1回に減る」のように、数えられる形にします。
計画は、利用者と家族に説明して同意を得ます。同意の日付を残してください。
現場で続く取り組みの形
計画に書く内容は、現場で続けられる形にします。毎回15分の個別の訓練は、人手の面で続きません。
続きやすいのは4つです。
1つ目は、食事の前の体操です。数分で終わり、全員で行えます。個別の目標は、そのあとの声かけで足します。
2つ目は、食後の口腔の清掃です。すでにやっている介助に、確かめる目を足すだけです。
3つ目は、食事の形の調整です。刻みの大きさ、とろみの濃さ。厨房との相談が要ります。
4つ目は、声を出す機会です。歌、しりとり、あいさつ。口を動かす時間を増やすのが目的です。
2つ目から始めてください。すでに毎日やっていることなので、新しい時間を作らずに済みます。
大事なのは、利用者ごとに何を重点に見るかを決めておくことです。同じ体操をしていても、Aさんはむせ、Bさんは入れ歯、と見る点が違えば個別の取り組みになります。
実施の記録は3行で足りる
毎回の記録は、長く書く必要はありません。3つが入っていれば足ります。
1つ目は、実施した日です。
2つ目は、行った内容です。計画のどれを行ったか。
3つ目は、そのときの様子です。できた、途中でやめた、嫌がった。
3つ目を1行だけ書いてください。ここが、3か月後の評価の材料になります。毎回「実施」だけだと、評価のときに何も思い出せません。
記録は、ふだんの介護記録の中に欄を1つ作る形で構いません。別の用紙を増やすと、書く人の負担が増えて続きません。
3か月ごとの評価と、続けるかどうか
3か月たったら、評価して、続けるかどうかを決めます。
流れは4段です。
1つ目は、評価することです。始めたときと同じ項目で見ます。
2つ目は、比べることです。目標に届いたか。
3つ目は、説明することです。利用者と家族に、結果と今後を伝えます。
4つ目は、決めることです。続けるか、終えるか。続けるなら、同意を取り直します。
4つ目の同意が抜けます。続けると決めたのに、新しい同意が無い状態。ここは実地指導で見られます。
届かなかった場合も、そのまま書いて構いません。目標が大きすぎたのかもしれませんし、取り組む内容が合っていなかったのかもしれません。どちらも次の計画の材料になります。
ケアマネジャーとの関わり
この加算は、ケアプランに位置づけられていることが前提になります。事業所の判断だけで始めないでください。
伝えるのは3つです。
1つ目は、対象と判断した理由です。
2つ目は、取り組む内容と期間です。
3つ目は、3か月後の結果です。
3つ目を伝えている事業所は多くありません。始めたことは連絡しても、終わったあとの結果が届いていない。次のケアプランに反映されないので、もったいない形です。
サービス担当者会議の場で、結果を1分で伝えるだけで足ります。むせが減った、変わらなかった、食事の形を変えた。どれも本人の生活に関わる情報です。
評価の項目をそろえる
始めたときと3か月後で、違う見方をすると比べられません。評価の項目は固定します。
そろえるのは3つです。
1つ目は、見る項目です。むせの回数、食べ残しの量、口の汚れ。3つか4つに絞ります。
2つ目は、数え方です。週に何回、食事の何割、といった単位を決めます。
3つ目は、誰が見るかです。人が替わると基準が動くので、できるだけ同じ職員が見ます。
2つ目が抜けると、比べられなくなります。「むせが減った」という書き方では、次の職員が同じ判断をできません。週2回から週1回と書けば、誰が見ても同じです。
項目を決めた用紙を1枚作って、始めたときと3か月後で同じ用紙を使ってください。それだけで、評価のばらつきがほとんど消えます。
歯科との関わり方
口腔機能向上加算は、事業所の職員が行う取り組みです。歯科の治療とは別のものです。
ただし、次の場合は歯科につなぎます。
1つ目は、痛みや腫れがある場合です。
2つ目は、入れ歯が合っていない場合です。
3つ目は、飲み込みに大きな問題がありそうな場合です。
3つ目は、急ぐ場面があります。むせが急に増えた方は、誤嚥事故につながります。事業所の取り組みで様子を見る前に、医師や歯科医師に相談してください。
歯科の専門職との連携を評価する加算は、口腔連携強化加算という別の形があります。目的が違うので、混ぜないでください。
期間の管理を1枚で持つ
この加算で事務が止まるのは、期間の管理です。利用者ごとに開始の時期がずれるので、頭の中では追えません。
1枚の表を作ります。列は5つです。
利用者の名前。開始した月。今月が何か月目か。次に評価する月。今月の算定した回数。
3列目と5列目を毎月書き換えます。この2つがあれば、切れ目と回数の取り違えの両方を防げます。
月の終わりに、この表と請求を突き合わせてください。要支援の方に2回入っていないかを見るのは、この場面が最後の機会です。
新しく始める方が出たら、その場で行を足します。表を作り直すのは年に1回で足ります。
まとめ
口腔機能向上加算は、加算(I)が1回150単位、加算(II)が1回160単位です。(II)はLIFEへの提出が要件に加わり、(II)を算定する場合(I)は算定しません。
回数は、要介護の方は月2回まで、要支援と総合事業の対象の方は月1回までです。ここの取り違えが、いちばん多い返戻の原因です。
算定できるのは原則3か月以内。3か月ごとに評価して、続けるなら同意を取り直します。この同意が抜けやすいところです。
毎回の記録は3行で足ります。実施した日、行った内容、そのときの様子。3つ目の一言が、3か月後の評価を支えます。単位数と要件は、所轄の指定権者の資料で確かめてください。
よくある質問
Q. 口腔機能向上加算の単位数はいくらですか。 A. 加算(I)が1回150単位、加算(II)が1回160単位です。(II)はLIFEへの提出が要件に加わります。
Q. (I)と(II)は両方取れますか。 A. (II)を算定している場合、(I)は算定しません。どちらか一方です。
Q. 月に何回まで算定できますか。 A. 要介護1から5の方は月2回まで、要支援と総合事業の対象の方は月1回までです。
Q. 要支援の方に月2回算定してしまいました。 A. 返戻の対象になります。利用者ごとに上限回数を一覧に書いておくと防げます。
Q. 3か月を過ぎたら算定できませんか。 A. 再び評価をして、必要と判断され、同意を得られた場合は続けられる形です。評価と同意の記録を残してください。
Q. 誰が実施しますか。 A. 事業所の職員です。実施できる職種の範囲は、サービスの種類によって違うので確かめてください。
Q. 集団の体操でも算定できますか。 A. 利用者ごとの計画にもとづいて行うことが前提です。全員同じ内容だけでは、個別の取り組みと説明しづらくなります。
Q. 計画には何を書きますか。 A. 今の状態、目標、取り組む内容、頻度と担当、次に評価する時期の5つです。
Q. 目標はどう書きますか。 A. 数えられる形にします。「口腔機能の維持」ではなく、「むせる回数が週2回から1回に減る」といった書き方です。
Q. 毎回の記録はどのくらい書きますか。 A. 3行で足ります。実施した日、行った内容、そのときの様子。3つ目の一言が評価の材料になります。
Q. 同意はいつ取りますか。 A. 計画を作ったときと、3か月ごとに続けると決めたときです。続けるときの同意が抜けやすいので注意してください。
Q. 目標に届きませんでした。 A. そのまま書いて構いません。目標が大きすぎたのか、内容が合っていなかったのかを書いておくと、次の計画の材料になります。
Q. 利用者が体操を嫌がります。 A. 無理に続けません。断られた日はその旨を記録し、内容が本人に合っているかを見直してください。
Q. 歯科の治療との違いは何ですか。 A. この加算は事業所の職員が行う取り組みです。痛みや腫れ、入れ歯が合わない場合は歯科につないでください。
Q. 口腔連携強化加算とは違うのですか。 A. 別の加算です。あちらは歯科医療機関とケアマネジャーへの情報提供を評価するものです。目的が違うので混ぜないでください。
Q. むせが急に増えました。 A. 事業所の取り組みで様子を見る前に、医師や歯科医師に相談してください。誤嚥につながる場面です。
Q. LIFEへの提出が難しいのですが。 A. (II)を算定しない選択もあります。提出の体制が整ってから上げる形で構いません。
Q. 評価する人が毎回違います。 A. 項目と数え方を決めた用紙を1枚作って、始めたときと3か月後で同じ用紙を使ってください。人が替わってもばらつきが減ります。
Q. むせの回数はどう数えますか。 A. 食事のたびに数えるのは負担です。週に何回あったかを記録から拾う形で足ります。数え方を決めて、毎回同じ方法にしてください。
Q. 食事の形を変えるのは誰が決めますか。 A. 事業所だけでは決めません。医師や歯科医師、管理栄養士と相談して決める形です。変えた日と理由を記録に残してください。
Q. 期間の管理はどうしていますか。 A. 1枚の表を作ってください。利用者の名前、開始した月、今月が何か月目か、次に評価する月、今月の回数の5列です。月末に請求と突き合わせます。
Q. ケアマネジャーに結果を伝えていますか。 A. 始めたことは伝えても、3か月後の結果が届いていない事業所が多くあります。担当者会議で1分伝えるだけで、次のケアプランに反映されます。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 計画書、同意の記録、実施の記録、3か月ごとの評価の4つです。利用者ごとに1つのつづりにまとめておくと、説明が早く終わります。