身体拘束と虐待防止解説2026.03.02 公開KS-31

虐待防止委員会とは?議題の型と記録の残し方

目次

虐待防止委員会は開いている。ところが「うちでは虐待は起きていません」で終わり、10分で閉会になる。それが毎回続くと、開く意味が分からなくなります。

この記事では、虐待防止委員会を、求められること・議題の型・続け方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、虐待が起きていない月でも回る形をつくれる状態を目指します。

虐待防止の体制の全体から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 高齢者虐待防止の措置

結論:委員会・指針・研修・担当者の4点で1組

虐待防止委員会とは、虐待の発生とその再発を防止するために、定期的に開く会議のことです。介護保険の運営基準で求められています。

求められているのは委員会だけではありません。指針の整備、研修の実施、担当者の配置とあわせて4点で1組になっています。

4点で1組委員会虐待が無くても開く指針通報の方法まで書く研修年間の計画に入れる担当者相談を受ける窓口
委員会・指針・研修・担当者という4点を並べた層の図

ポイントはここです。虐待が起きていなくても4点は必要です。満たしていないと減算の対象になる場合があります。起きたかどうかではなく、体制があるかどうかが問われます。

事故防止、感染症対策、身体拘束適正化の委員会と同じ作りです。合同で開ける場合があるので、まとめて日を取ると回しやすくなります。

議題の型

「虐待はありません」で終わらせないために、型を決めます。5つです。

1つ目は、気になった場面の共有です。虐待ではなくても、言い方が強かった、待たせてしまった、といった場面を出します。

2つ目は、不適切なケアの検討です。共有された場面のうち1つを選んで、なぜそうなったかを見ます。

3つ目は、前回の決めごとの確認です。前の月に決めたことが動いたか。

4つ目は、職員の負担の状況です。人手、残業、休みが取れているか。虐待の背景に負担があることが多いためです。

5つ目は、研修と指針の確認です。次の研修の予定。

5つの議題議題狙い気になった場面虐待でなくても出す不適切なケアの検討1つ選んで下ろす前回の決めごと動いたかを見る職員の負担背景を数字で見る
5つの議題と、それぞれの狙いを並べた表

4つ目が、他の委員会と違うところです。虐待は、悪意のある人が起こすより、余裕を失った人が起こすほうが多いとされています。負担を見るのが予防になります。

気になった場面を出せるようにする

1つ目の議題がいちばん難しいところです。自分や同僚の言動を出すことになるためです。

出しやすくする工夫が3つあります。

1つ目は、匿名でも出せる形にすることです。紙に書いて箱に入れる、といった形。

2つ目は、個人を特定しない言い方にすることです。「誰が」ではなく「こういう場面があった」と書きます。

3つ目は、出した人が責められないと約束することです。委員会の最初に毎回言葉にします。

出しやすくする3つ匿名で出せる紙に書いて箱へ個人を出さない「こういう場面があった」責めないと約束毎回言葉にする
匿名・個人を出さない・責めないという3つの工夫を並べた層の図

出てこない月が続くなら、拾えていないと考えます。日々の申し送りで「ちょっと言い方がきつかった」といった話が出ているなら、それが委員会に上がっていない状態です。

記録に残すこと

議事録は、開いたことを示す唯一の証拠です。書くのは6つです。

開催の日時と場所。出席者。議題。検討の内容。決めたこと。次回の予定。

議事録の6項目項目注意するところ日時と出席者開いた証拠になる検討の内容個人名の扱いを決める決めたこと主語と期限を入れる次回の予定日付まで入れる
議事録の6項目と、抜けやすいところを並べた表

虐待防止の委員会では、記録の扱いに配慮が要ります。個人が特定される内容を詳しく書くと、後から見た人に影響します。事実は残しつつ、個人名の扱いを決めておきます。

決めたことには、主語と期限を入れます。「意識を高める」では、実行の確かめようがありません。

保存の期間は、介護保険の記録の保存に合わせる形が一般的です。所管の自治体の基準を確かめます。

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実際に使える様式が必要な方へ

委員会の記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は回し方の話です。

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指針に書くこと

指針は、虐待の防止に関する考え方と手順をまとめたものです。書く内容はおおむね決まっています。

基本的な考え方。虐待を許さないという方針。

委員会その他の組織に関すること。

職員研修に関すること。

虐待等が発生した場合の対応。通報の方法、事実確認、報告。

相談・報告の体制。誰に相談するか、外部の窓口。

成年後見制度の利用支援。

苦情解決の方法。

その他。

指針に入れる項目項目中身基本的な考え方虐待を許さない方針発生した場合の対応通報・事実確認・報告相談と報告の体制内部と外部の窓口権利擁護成年後見制度の利用支援
指針に入れる主な項目を並べた表

「通報の方法」がいちばん大事な部分です。職員が虐待に気づいたときに、誰にどう伝えるか。市町村への通報が法律上の義務であることも書いておきます。

指針は、職員がいつでも見られる場所に置きます。通報の連絡先を、指針とは別に1枚にして貼っておくと、いざというときに使えます。

研修をどう組むか

研修は年に何回かが定められています。回数は事業所の区分によります。

内容に迷うなら、次の3つを軸にします。

1つ目は、虐待の5つの類型です。身体的、介護放棄、心理的、性的、経済的。どれも身近な場面で起きうることを、事例で伝えます。

2つ目は、不適切なケアとの連続性です。虐待は突然起きるのではなく、気になる言い方から連続していることを扱います。

3つ目は、通報の義務と方法です。気づいたら通報すること、通報した人は保護されることを伝えます。

新しく入った職員には、採用時に行う形が求められる場合があります。年間の計画に、採用時の分も入れておきます。

記録には、実施した日、内容、参加者を残します。参加できなかった人へのフォローも書いておきます。

担当者の役割

4点目が、虐待の防止のための担当者です。誰が担うかを決めて、記録に残します。

役割は3つです。

委員会の準備と記録の取りまとめ。

相談を受ける窓口。職員が気づいたことを言える相手になります。

通報の判断と手続き。管理者と相談して進めます。

担当者の3つの役割委員会の準備議題と記録相談の窓口職員が言える相手通報の判断管理者と相談して
担当者の3つの役割を並べた層の図

管理者が兼ねると、相談しにくくなることがあります。管理者自身の言動が気になる場合、相談できる相手がいなくなります。可能なら、管理者以外にも相談できる経路を用意します。

外部の窓口(市町村、地域包括支援センター)も、あわせて知らせておきます。

職員の負担を議題にする

虐待の背景には、職員の負担があることが多いとされています。委員会で数字を見ます。

見るのは4つです。

人員の充足。シフトが埋まっているか、欠員が続いていないか。

時間外労働。特定の人に集まっていないか。

有給休暇の取得。取れていない人がいないか。

離職と入職。人が入れ替わり続けていないか。

この4つが悪化しているとき、虐待の危険が上がります。数字で見えていれば、虐待が起きる前に手を打てます。

労務の担当が数字を持っているので、委員会に月1回持ち込んでもらう形にします。

職員の負担を数字で見る

議題の4つ目です。数字を持ち込む形にすると、話が具体的になります。

見るのは4つです。

1つ目は、人員の充足です。シフトの穴、欠員の期間。

2つ目は、時間外労働です。総時間と、特定の人への集中。

3つ目は、有給休暇の取得です。取れていない人がいないか。

4つ目は、離職と入職です。入れ替わりが続いていないか。

労務の担当が毎月持ち込む形にすると、委員会で確かめられます。悪化しているものがあれば、次の議題にします。

数字だけを見て、その場で解決しようとしないことです。傾向が見えれば足ります。対応は別の場で決めます。

指針と委員会をつなげる

虐待防止の指針と委員会は、別々に動きがちです。つなげておかないと、指針が読まれません。

つなげ方は4つあります。

1つ目は、委員会の議題に指針の項目を順に入れることです。年間で一巡する形にします。

2つ目は、事例が出たときに指針の該当部分を見ることです。書いてある手順と実際の動きが合っているかを確かめます。

3つ目は、改訂を委員会で決めることです。担当者が1人で書き換えないことです。

4つ目は、研修で指針を使うことです。指針の1章を読み合わせる回を作ります。

指針を作ったきり開いていない事業所が多くあります。開く場面を年間の予定に入れておくと、中身が現場と合っているかを確かめられます。改訂した版は、日付と版数を表紙に入れて配り直してください。

他の委員会と役割を分ける

事業所には委員会がいくつもあります。役割を分けておかないと、同じ話を何度もすることになります。

分け方は4つです。

1つ目は、虐待防止委員会が扱うものです。不適切なケア、権利擁護、職員の負担、通報の手順。

2つ目は、事故防止の委員会が扱うものです。転倒、誤嚥、誤薬、ヒヤリハット。

3つ目は、身体的拘束等適正化検討委員会が扱うものです。拘束の有無、代替の方法、指針の見直し。

4つ目は、重なる部分です。不適切なケアと拘束は地続きです。重なる議題は、どちらで扱うかを先に決めておきます。

同じ日に続けて開く形は使われています。ただし議事録は分けます。要件は種別によって違うので、所轄の市町村や指定権者に確かめてください。

1年の予定を先に組む

虐待防止の取り組みは、年間の予定に落としていないと後回しになります。

組むのは4つです。

1つ目は、委員会の開催日です。年度の初めに全部決めます。

2つ目は、研修の実施月です。定期と採用時。

3つ目は、指針の見直しの月です。

4つ目は、チェックリストや調査の実施月です。

4つを1枚の年間予定表にして、年度の初めに配ります。この1枚があるだけで、実施率が変わります。日を決めていない取り組みは、忙しい月に消えます。

まとめ

虐待防止委員会は、指針・研修・担当者とあわせて4点で1組です。虐待が起きていなくても必要で、満たしていないと減算の対象になる場合があります。

議題の型は5つ。気になった場面の共有、不適切なケアの検討、前回の決めごとの確認、職員の負担の状況、研修と指針。4つ目が、他の委員会と違うところです。

気になった場面を出しやすくするには、匿名で出せる形、個人を特定しない言い方、責めないという約束の3つです。出てこない月が続くなら、拾えていないと考えます。

指針では「通報の方法」がいちばん大事な部分です。通報の連絡先は別に1枚にして貼っておきます。開催の頻度と保存の期間は、所管の自治体に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

委員会の記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。議題の型と決めたことの欄が入っています。

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よくある質問

Q. 開催の頻度はどれくらいですか。 A. 事業所の区分とサービスの種類によって定められています。おおむね3か月に1回以上、あるいは毎月とされている形があります。所管の自治体の案内で確かめます。間隔が空きすぎると、議事録の日付から分かります。

Q. 他の委員会と合同で開いてもよいですか。 A. 合同での開催が認められている場合があります。身体拘束適正化、事故防止、感染症対策と同じ日に続けて開く形が取られています。議事録は分けて残し、それぞれの議題を扱ったことが分かる形にします。

Q. 虐待が起きていない月は何を話しますか。 A. 気になった場面の共有、職員の負担の状況、前回の決めごとの確認、研修の予定。この4つで30分は埋まります。「ありません」で終わらせないために、議題の型を紙にしておきます。

Q. 委員会のメンバーは誰にしますか。 A. 管理者、現場の職員、看護職、相談員など、立場の違う人を入れます。現場の職員が入っていないと、実際の場面が上がってきません。持ち回りにすると、全員が一度は参加します。

Q. 職員から「同僚の言動が気になる」と相談されたら。 A. まず事実を確かめます。いつ、どこで、何があったか。個人を責める前に、その人が余裕を失っていないかを見ます。虐待に当たると考えられる場合は、市町村への通報の判断に進みます。

Q. 通報すると、事業所が不利になりませんか。 A. 通報は法律上の義務とされており、通報した人は保護される仕組みがあります。通報しなかったことのほうが、後から問題になります。判断に迷う場合は、市町村や地域包括支援センターに相談できます。

Q. 指針はどこで手に入りますか。 A. 自治体や事業者団体がひな形を公開しています。そのまま使うと自社に無い体制が残るので、削る作業が要ります。通報の連絡先だけは、自社が使うものを正確に書きます。

Q. 担当者に資格は要りますか。 A. 資格の要件が定められているわけではありません。ただし、相談を受けられる立場であることが大事です。管理者が兼ねると相談しにくい場面があるため、別の経路も用意します。

Q. 職員の負担を議題にすると、話が広がりすぎませんか。 A. 数字だけを見る形にすると収まります。人員の充足、時間外、有給の取得、離職。4つの数字を見て、悪化しているものがあれば次の議題にします。その場で解決しようとしないことです。

Q. 記録を市町村に見せることはありますか。 A. 実地指導や監査で確かめられます。個人が特定される内容の扱いは、あらかじめ決めておきます。事実は残しつつ、必要以上に詳しく書かないという線引きが実務的です。

Q. 職員の負担を議題にすると、労務の話になりませんか。 A. なります。ただし、虐待の背景に負担があることは知られています。委員会では傾向を見るだけにして、対応は経営の側で決める形にすると、話が散りません。

Q. 委員会の記録に、職員の個人名を書きますか。 A. 書かない形が安全です。「特定の職員に時間外が集中している」という書き方で足ります。個人名を残すと、記録の扱いが難しくなります。

Q. 委員会の参加者に、現場の職員を入れるべきですか。 A. 入れてください。役職者だけだと、出てくる場面が限られます。順番に回す形にすると、多くの職員が委員会の中身を知ることになります。

Q. 事例が出てこない月はどうしますか。 A. 他の事業所の事例や、公表された事例を扱います。出てこない状態を「無い」と読まないことです。出せる場になっているかを、そのつど確かめてください。

Q. 担当者は誰が適任ですか。 A. 現場を見ていて、相談されやすい人が向いています。役職で決めると、相談が来ない形になることがあります。掲示して名前を知らせるところまでが役割の始まりです。

Q. 委員会の記録を実地指導で見せますか。 A. 見せることがあります。開催の日付と出席者、扱った内容が分かる形にしてください。毎回同じ内容が並んでいる議事録は、形だけと見られます。

Q. 委員会の開催頻度はどれくらいですか。 A. 種別によって求められる頻度が違います。所轄の市町村や指定権者に確かめてください。頻度を満たしたうえで、毎回同じ型で回すことが続けるこつです。