介護の記録書き方2026.05.21 公開KK-42

服薬管理表の作り方|誤薬を防ぐ列の決め方

目次

誤薬は、起きると重い結果につながります。それでいて、忙しい時間帯に、似た名前の薬を、複数の人に配る。起きやすい条件がそろっています。表は作ってあるものの、本当にこれで防げるのかが分かりません。

この記事では、服薬管理表を、何のための表か・列の決め方・使い方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の表を見直せる状態を目指します。

介護記録の書き方から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 介護記録の書き方

結論:配る前に確かめる表と、配った後に残す表は別

服薬管理表とは、利用者ごとに、何の薬を、いつ、どれだけ飲むかをまとめた表のことです。

法令で様式が定められた書類ではありません。それでも作るのは、誤薬を防ぐためと、服薬の状況を記録するためです。

2つの表は役割が違う配る前に見る表薬の名前と量飲む時間帯注意すること一覧として持つ配った後に残す記録配った日時飲んだかどうか確かめた人毎日埋めていく
配る前に見る表と、配った後に残す記録を分けた比較の図

ポイントはここです。2つの役割を1枚に混ぜると、どちらも使いにくくなります。配る前に見るのは一覧性が要り、配った後に残すのは日付ごとの欄が要ります。

分けるか、1枚の中で場所を分けるか。どちらかにしておくと、使う場面で迷いません。

一覧の表に入れる列

配る前に見る一覧には、次の列を入れます。

氏名。

薬の名前。略さずに書きます。似た名前の薬があるためです。

1回の量。錠数、包数。

飲む時間。朝、昼、夕、就寝前、食前、食後。

飲み方。そのまま、粉砕、簡易懸濁、とろみと一緒に。

注意すること。むせやすい、飲み込みに時間がかかる、拒否がある。

変更の日付。いつから変わったか。

一覧の主な列書く中身薬の名前処方どおりの表記で量と回数1回量と1日の回数時間帯朝・昼・夕・就寝前注意すること何のための薬か1行
一覧の主な列と、抜けやすいところを並べた表

抜けやすいのは、飲み方と変更の日付です。飲み方が書かれていないと、担当が代わったときに形が変わります。変更の日付が無いと、いつから今の内容かが分かりません。

薬が変わったら、その日のうちに表を直します。古い表が残っていると、そちらを見た人が古い内容で配ります。

配った後の記録

配った後に残すのは、日付ごとの欄です。書くのは3つです。

配ったかどうか。丸を付ける形で足ります。

飲んだかどうか。配っただけで飲んでいないことがあります。

飲まなかった場合の理由と対応。拒否、体調不良、寝ていた。看護職や医師に伝えたかも書きます。

3つの欄を分ける書き方配った時間帯のマスに印飲んだ確かめた人の印飲まなかった理由の記号と一言
配った・飲んだ・飲まなかった場合という3つの欄を並べた表

2つ目が抜けやすいところです。「配薬済」の丸だけだと、口の中に残っていた場合に気づけません。

飲み込みを確かめる手順も決めておきます。口を開けてもらう、水を飲んでもらう。人によって必要な確認が違います。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

服薬管理のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は列の決め方の話です。

この様式をひらく

誤薬が起きる場面

防ぐには、起きる場面を知っておきます。よくあるのは5つです。

1つ目は、人違いです。似た名前、近くの席、認知の状態で自分の分かどうか分からない。

2つ目は、時間の間違いです。朝の薬を昼に配る、就寝前の薬を夕に配る。

3つ目は、量の間違いです。1錠と2錠、半錠。

4つ目は、落薬です。配ったが床に落ちている、服に入っている。

5つ目は、飲み残しです。口の中に残る、あとで飲むと言って置いたまま。

4つの場面と防ぎ方場面防ぎ方名前が似ている写真を一覧に入れる時間帯を間違える袋に時間帯を印字中止の薬が残る変更の日に印を付ける本人が持っている預かる範囲を書面で
4つの場面と、それぞれの防ぎ方を並べた表

1つ目と5つ目がいちばん多い形です。人違いは、名前を声に出して確かめる。飲み残しは、飲み込むまで見る。

忙しい時間帯に集中します。朝食後と夕食後。その時間に他の作業を入れない形にできるかを見ます。

確かめる手順

手順を決めて、全員が同じ形で行います。3回確かめる形が使われています。

1回目は、薬を取り出すときです。名前、日付、時間帯を見ます。

2回目は、本人の前で渡す直前です。名前を声に出し、本人にも確かめます。

3回目は、飲み込んだ後です。口の中を確かめる、水を飲んでもらう。

3回確かめる1取り出す名前と時間帯2渡す本人に名前を確かめる3飲み込む口の中を見る
取り出す・渡す・飲み込むという3回の確かめを並べたフロー

声に出すのが要点です。目で見るだけだと、思い込みで通ります。「○○さん、朝の薬です」と言う形にします。

2人で確かめる形にしている事業所もあります。人手があるならいちばん確実ですが、無理なら3回の確かめを徹底します。

薬が変わったときの流れ

誤薬は、薬が変わったときに起きやすくなります。流れを決めておきます。

1つ目は、変更の情報を受け取ることです。家族から、医療機関から、薬局から。誰が受け取るかを決めておきます。

2つ目は、表を直すことです。その日のうちに。古い表は処分します。

3つ目は、職員に伝えることです。申し送り、掲示。次に配る人が知っている状態にします。

4つ目は、古い薬の扱いです。変更前の薬が残っている場合、どうするか。混ざるのがいちばん危ない形です。

薬が変わったときの4段1受け取る処方箋と現物を照合2直す一覧と袋を入れ替える3伝える全員に変更を共有4古い薬分けて置き、相談する
受け取る・直す・伝える・古い薬という4段のフロー

4つ目を決めていない事業所が多くあります。返す、分けて保管する、家族に渡す。決めておかないと、その場で判断することになります。

保管の仕方

薬の保管も、誤薬の防止に関わります。決めておくのは3つです。

1つ目は、場所です。鍵のかかる場所か、職員以外が触れない場所。

2つ目は、分け方です。利用者ごと、時間帯ごと。同じ引き出しに複数の人の薬を入れない形が安全です。

3つ目は、期限と残数の確認です。月に1回、残数を数えます。数が合わないときは、どこかで飲んでいないか、余分に配っている可能性があります。

麻薬や向精神薬は、別の決まりがあります。該当するものがあるかを確かめ、扱いを分けます。

冷所で保管するものもあります。保管の条件を表に書いておくと、担当が代わっても守られます。

誤薬が起きたときの対応

起きたときの流れも決めておきます。順番は4つです。

1つ目は、状態の確認です。何をどれだけ飲んだか、いま本人はどうか。

2つ目は、報告です。看護職、管理者。隠さないことが最優先です。

3つ目は、医療機関への連絡です。薬の名前と量を伝えられるようにします。

4つ目は、記録と家族への連絡です。

起きたことを責める形にすると、次から報告が上がりません。報告が遅れることのほうが、結果を重くします。

その後、事故の記録を残し、委員会で原因を見ます。どの場面で起きたかを5つの型に当てはめると、手当てが決まります。

薬を預かるときの取り決め

服薬の管理は、預かるかどうかを決めるところから始まります。ここが曖昧なまま始まると、責任の範囲が分からなくなります。

決めることは4つあります。

1つ目は、預かる範囲です。全部を預かるのか、頓服だけ本人が持つのか。書面にして本人と家族の同意を取ります。

2つ目は、預かる場所です。鍵のかかる場所か、居室か。人ごとに違ってよいのですが、どこに置くかは一覧にしておきます。

3つ目は、預かる量です。1週間分か、1か月分か。多く預かるほど、数が合わなくなったときに探す範囲が広がります。

4つ目は、残薬の扱いです。飲まなかった分をどうするか。返すのか、処分するのか、次の受診で医師に見せるのか。多くの場合、次の受診で持参して医師か薬剤師に相談する形が使われています。

4つを決めたら、重要事項説明書か別紙に書きます。口頭の取り決めのままだと、担当者が替わった時点で消えます。

誰が何をしてよいかの線引き

介護の現場でいちばん迷うのが、職種ごとにどこまでできるかです。ここは法令で扱いが決まっている部分があります。

線は3本あります。

1つ目は、医行為にあたるかどうかです。一定の条件を満たす場合に、介護職員が行える範囲が示されているとされています。範囲は限られているので、所轄の保健所や市町村に確かめてください。

2つ目は、医師や看護職の指示があるかどうかです。同じ行為でも、指示の有無で扱いが変わります。指示は口頭ではなく書面で残します。

3つ目は、本人が自分でできるかどうかです。本人が自分で飲めるなら、職員は見守りと確認だけになります。できることを取り上げないことも大事です。

迷ったら、その場で判断しないことです。看護職か管理者に確かめる、という手順を決めておきます。「たぶん大丈夫」で行った行為が、後から問題になります。

記録の様式を1枚にまとめる

服薬の記録は、様式が増えがちです。1人につき1か月分が1枚に収まる形にすると、抜けが見えます。

まとめ方は3つです。

1つ目は、縦に日付、横に時間帯を置くことです。朝、昼、夕、就寝前。マス目にすると、抜けた日が一目で分かります。

2つ目は、確認した人の欄を同じ行に置くことです。別の紙に分けると、突き合わせに時間がかかります。

3つ目は、変更があった日に印を付けることです。薬が変わった日に印があると、その前後の様子を後から見返せます。

マス目が埋まっていない日は、飲んでいないのか記録が無いのかが分かりません。中止した日は斜線、拒否した日は記号を決めておくと、区別がつきます。

実地指導で見られるところ

服薬の管理は、事故につながる部分なので実地指導でも確かめられるところです。

見られるのは4つです。

1つ目は、預かりの同意があるかです。書面と日付。

2つ目は、記録が毎日残っているかです。抜けた日の扱い。

3つ目は、誤薬があったときの記録です。事故の記録につながっているか、市町村への報告が必要な事案だったか。

4つ目は、保管の状態です。鍵、温度、人ごとの区分け。

4つとも、書類の形より運用が見られます。きれいな様式があっても、当日の分が仕分けられていなければ、その場で分かります。報告が必要な事案の範囲は市町村で違うので、所轄の市町村に確かめてください。

まとめ

服薬管理表は、配る前に見る一覧と、配った後に残す記録の2つの役割を持ちます。混ぜると、どちらも使いにくくなります。

一覧に入れる列は7つ。抜けやすいのは、飲み方と変更の日付です。飲み方が無いと、担当が代わったときに形が変わります。

配った後の記録では、「配った」と「飲んだ」を分けます。配っただけで口の中に残っていることがあります。

確かめるのは3回。取り出すとき、渡す直前、飲み込んだ後。声に出すのが要点です。麻薬や向精神薬は別の決まりがあるため、該当するものがあれば扱いを分けます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

服薬管理のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。一覧と日々の記録を分けた形です。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 服薬の介助は、どこまでできますか。 A. 医療行為に当たるかどうかで扱いが変わります。一定の条件のもとで介護職が行える範囲が示されています。自社の職員が何をできるかは、所管の自治体や協力医療機関に確かめます。判断に迷う行為は、看護職に依頼します。

Q. 薬の名前を略して書いてもよいですか。 A. 略さないほうが安全です。似た名前の薬があり、略すと区別が付かなくなります。表の幅が足りない場合は、行を増やすか、用紙の向きを変えます。読みにくさより、間違いのほうが重い結果につながります。

Q. 飲み忘れが続く人には、どうしますか。 A. なぜ飲まないかを見ます。飲みにくい、味が嫌、必要性を感じていない、忘れている。原因によって手当てが違います。剤形や時間の変更ができるか、看護職や医師、薬剤師に相談します。

Q. 残数が合わない場合は。 A. 落薬、飲み残し、配り忘れ、二重に配った、のどれかが起きています。すぐに報告し、期間中の記録を確かめます。原因が分からない場合も、記録に残して看護職に伝えます。放置がいちばん危ない形です。

Q. 一包化してもらうと安全ですか。 A. 取り違えは減ります。ただし、包の中身が変わったときに気づきにくくなります。変更の日付と内容を表に書き、古い包が残っていないかを確かめます。一包化できるかは、薬局に相談します。

Q. 家族が薬を持ってくる場合の扱いは。 A. 受け取る人と、受け取ったときの確認の手順を決めます。処方の内容と表を突き合わせ、変更があれば表を直します。受け取った記録を残しておくと、後から確かめられます。

Q. 麻薬や向精神薬の扱いは違いますか。 A. 保管や記録について別の決まりがあります。該当するものを預かる場合は、扱いを分け、専用の記録を用意します。詳しくは薬局や所管の保健所に確かめます。

Q. 誤薬が起きたとき、必ず市町村に報告しますか。 A. 報告の基準は市町村によって異なります。受診した場合や、健康に影響が出た場合は対象になることが多くあります。基準を紙に控えておき、迷うときは電話で相談します。

Q. 表を電子にしたほうがよいですか。 A. 人数が多い事業所では、変更の反映が早くなります。ただし、配る場面で端末を見られるかが条件になります。紙のほうが見やすい場面もあるので、印刷して掲示する形と併用している事業所もあります。

Q. 確かめる回数を3回にすると、時間がかかります。 A. 3回といっても、それぞれは数秒です。時間がかかるのは、薬を探す、表を探すといった別の作業です。保管の分け方と表の置き場所を見直すと、全体の時間はむしろ短くなります。

Q. 服薬の確認は、何人で行いますか。 A. 2人で確かめる形を取っている事業所が多くあります。人員の都合で1人になる時間帯があるなら、その時間帯だけ手順を変えます。人数より、確かめる項目が決まっていることのほうが効きます。

Q. 一包化してもらうと管理は楽になりますか。 A. 楽になります。ただし一包化の可否は薬によります。主治医と薬局に相談してください。一包化した袋に、日付と時間帯が印字されているかも確かめます。

Q. 本人が薬を拒んだときはどうしますか。 A. 無理に飲ませません。拒んだ事実と時間を記録に残し、看護職に伝えます。拒否が続く場合は、主治医に相談して形を変えられるかを確かめます。

Q. 残薬が多く出ています。誰に相談しますか。 A. 主治医と薬局です。飲めていない理由が分かると、処方そのものが変わることがあります。残薬を事業所で判断して減らすことはしません。

Q. 薬の内容を職員が把握しておく必要がありますか。 A. 全部を覚える必要はありません。ただしその薬が何のためのものかは、一覧に1行で書いておきます。効き目が出たとき、副作用らしい様子が出たときに、気づける人が増えます。

Q. 目薬や湿布も服薬管理表に書きますか。 A. 書いておくほうが安全です。飲み薬だけを表にしていると、外用薬の使い忘れや重ねづけに気づけません。欄を分けて、1日の回数と使う場所まで書きます。