服薬管理表の作り方|誤薬を防ぐ列の決め方
目次
誤薬は、起きると重い結果につながります。それでいて、忙しい時間帯に、似た名前の薬を、複数の人に配る。起きやすい条件がそろっています。表は作ってあるものの、本当にこれで防げるのかが分かりません。
この記事では、服薬管理表を、何のための表か・列の決め方・使い方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の表を見直せる状態を目指します。
結論:配る前に確かめる表と、配った後に残す表は別
服薬管理表とは、利用者ごとに、何の薬を、いつ、どれだけ飲むかをまとめた表のことです。
法令で様式が定められた書類ではありません。それでも作るのは、誤薬を防ぐためと、服薬の状況を記録するためです。
ポイントはここです。2つの役割を1枚に混ぜると、どちらも使いにくくなります。配る前に見るのは一覧性が要り、配った後に残すのは日付ごとの欄が要ります。
分けるか、1枚の中で場所を分けるか。どちらかにしておくと、使う場面で迷いません。
一覧の表に入れる列
配る前に見る一覧には、次の列を入れます。
氏名。
薬の名前。略さずに書きます。似た名前の薬があるためです。
1回の量。錠数、包数。
飲む時間。朝、昼、夕、就寝前、食前、食後。
飲み方。そのまま、粉砕、簡易懸濁、とろみと一緒に。
注意すること。むせやすい、飲み込みに時間がかかる、拒否がある。
変更の日付。いつから変わったか。
抜けやすいのは、飲み方と変更の日付です。飲み方が書かれていないと、担当が代わったときに形が変わります。変更の日付が無いと、いつから今の内容かが分かりません。
薬が変わったら、その日のうちに表を直します。古い表が残っていると、そちらを見た人が古い内容で配ります。
配った後の記録
配った後に残すのは、日付ごとの欄です。書くのは3つです。
配ったかどうか。丸を付ける形で足ります。
飲んだかどうか。配っただけで飲んでいないことがあります。
飲まなかった場合の理由と対応。拒否、体調不良、寝ていた。看護職や医師に伝えたかも書きます。
2つ目が抜けやすいところです。「配薬済」の丸だけだと、口の中に残っていた場合に気づけません。
飲み込みを確かめる手順も決めておきます。口を開けてもらう、水を飲んでもらう。人によって必要な確認が違います。
誤薬が起きる場面
防ぐには、起きる場面を知っておきます。よくあるのは5つです。
1つ目は、人違いです。似た名前、近くの席、認知の状態で自分の分かどうか分からない。
2つ目は、時間の間違いです。朝の薬を昼に配る、就寝前の薬を夕に配る。
3つ目は、量の間違いです。1錠と2錠、半錠。
4つ目は、落薬です。配ったが床に落ちている、服に入っている。
5つ目は、飲み残しです。口の中に残る、あとで飲むと言って置いたまま。
1つ目と5つ目がいちばん多い形です。人違いは、名前を声に出して確かめる。飲み残しは、飲み込むまで見る。
忙しい時間帯に集中します。朝食後と夕食後。その時間に他の作業を入れない形にできるかを見ます。
確かめる手順
手順を決めて、全員が同じ形で行います。3回確かめる形が使われています。
1回目は、薬を取り出すときです。名前、日付、時間帯を見ます。
2回目は、本人の前で渡す直前です。名前を声に出し、本人にも確かめます。
3回目は、飲み込んだ後です。口の中を確かめる、水を飲んでもらう。
声に出すのが要点です。目で見るだけだと、思い込みで通ります。「○○さん、朝の薬です」と言う形にします。
2人で確かめる形にしている事業所もあります。人手があるならいちばん確実ですが、無理なら3回の確かめを徹底します。
薬が変わったときの流れ
誤薬は、薬が変わったときに起きやすくなります。流れを決めておきます。
1つ目は、変更の情報を受け取ることです。家族から、医療機関から、薬局から。誰が受け取るかを決めておきます。
2つ目は、表を直すことです。その日のうちに。古い表は処分します。
3つ目は、職員に伝えることです。申し送り、掲示。次に配る人が知っている状態にします。
4つ目は、古い薬の扱いです。変更前の薬が残っている場合、どうするか。混ざるのがいちばん危ない形です。
4つ目を決めていない事業所が多くあります。返す、分けて保管する、家族に渡す。決めておかないと、その場で判断することになります。
保管の仕方
薬の保管も、誤薬の防止に関わります。決めておくのは3つです。
1つ目は、場所です。鍵のかかる場所か、職員以外が触れない場所。
2つ目は、分け方です。利用者ごと、時間帯ごと。同じ引き出しに複数の人の薬を入れない形が安全です。
3つ目は、期限と残数の確認です。月に1回、残数を数えます。数が合わないときは、どこかで飲んでいないか、余分に配っている可能性があります。
麻薬や向精神薬は、別の決まりがあります。該当するものがあるかを確かめ、扱いを分けます。
冷所で保管するものもあります。保管の条件を表に書いておくと、担当が代わっても守られます。
誤薬が起きたときの対応
起きたときの流れも決めておきます。順番は4つです。
1つ目は、状態の確認です。何をどれだけ飲んだか、いま本人はどうか。
2つ目は、報告です。看護職、管理者。隠さないことが最優先です。
3つ目は、医療機関への連絡です。薬の名前と量を伝えられるようにします。
4つ目は、記録と家族への連絡です。
起きたことを責める形にすると、次から報告が上がりません。報告が遅れることのほうが、結果を重くします。
その後、事故の記録を残し、委員会で原因を見ます。どの場面で起きたかを5つの型に当てはめると、手当てが決まります。
薬を預かるときの取り決め
服薬の管理は、預かるかどうかを決めるところから始まります。ここが曖昧なまま始まると、責任の範囲が分からなくなります。
決めることは4つあります。
1つ目は、預かる範囲です。全部を預かるのか、頓服だけ本人が持つのか。書面にして本人と家族の同意を取ります。
2つ目は、預かる場所です。鍵のかかる場所か、居室か。人ごとに違ってよいのですが、どこに置くかは一覧にしておきます。
3つ目は、預かる量です。1週間分か、1か月分か。多く預かるほど、数が合わなくなったときに探す範囲が広がります。
4つ目は、残薬の扱いです。飲まなかった分をどうするか。返すのか、処分するのか、次の受診で医師に見せるのか。多くの場合、次の受診で持参して医師か薬剤師に相談する形が使われています。
4つを決めたら、重要事項説明書か別紙に書きます。口頭の取り決めのままだと、担当者が替わった時点で消えます。
誰が何をしてよいかの線引き
介護の現場でいちばん迷うのが、職種ごとにどこまでできるかです。ここは法令で扱いが決まっている部分があります。
線は3本あります。
1つ目は、医行為にあたるかどうかです。一定の条件を満たす場合に、介護職員が行える範囲が示されているとされています。範囲は限られているので、所轄の保健所や市町村に確かめてください。
2つ目は、医師や看護職の指示があるかどうかです。同じ行為でも、指示の有無で扱いが変わります。指示は口頭ではなく書面で残します。
3つ目は、本人が自分でできるかどうかです。本人が自分で飲めるなら、職員は見守りと確認だけになります。できることを取り上げないことも大事です。
迷ったら、その場で判断しないことです。看護職か管理者に確かめる、という手順を決めておきます。「たぶん大丈夫」で行った行為が、後から問題になります。
記録の様式を1枚にまとめる
服薬の記録は、様式が増えがちです。1人につき1か月分が1枚に収まる形にすると、抜けが見えます。
まとめ方は3つです。
1つ目は、縦に日付、横に時間帯を置くことです。朝、昼、夕、就寝前。マス目にすると、抜けた日が一目で分かります。
2つ目は、確認した人の欄を同じ行に置くことです。別の紙に分けると、突き合わせに時間がかかります。
3つ目は、変更があった日に印を付けることです。薬が変わった日に印があると、その前後の様子を後から見返せます。
マス目が埋まっていない日は、飲んでいないのか記録が無いのかが分かりません。中止した日は斜線、拒否した日は記号を決めておくと、区別がつきます。
実地指導で見られるところ
服薬の管理は、事故につながる部分なので実地指導でも確かめられるところです。
見られるのは4つです。
1つ目は、預かりの同意があるかです。書面と日付。
2つ目は、記録が毎日残っているかです。抜けた日の扱い。
3つ目は、誤薬があったときの記録です。事故の記録につながっているか、市町村への報告が必要な事案だったか。
4つ目は、保管の状態です。鍵、温度、人ごとの区分け。
4つとも、書類の形より運用が見られます。きれいな様式があっても、当日の分が仕分けられていなければ、その場で分かります。報告が必要な事案の範囲は市町村で違うので、所轄の市町村に確かめてください。
まとめ
服薬管理表は、配る前に見る一覧と、配った後に残す記録の2つの役割を持ちます。混ぜると、どちらも使いにくくなります。
一覧に入れる列は7つ。抜けやすいのは、飲み方と変更の日付です。飲み方が無いと、担当が代わったときに形が変わります。
配った後の記録では、「配った」と「飲んだ」を分けます。配っただけで口の中に残っていることがあります。
確かめるのは3回。取り出すとき、渡す直前、飲み込んだ後。声に出すのが要点です。麻薬や向精神薬は別の決まりがあるため、該当するものがあれば扱いを分けます。
よくある質問
Q. 服薬の介助は、どこまでできますか。 A. 医療行為に当たるかどうかで扱いが変わります。一定の条件のもとで介護職が行える範囲が示されています。自社の職員が何をできるかは、所管の自治体や協力医療機関に確かめます。判断に迷う行為は、看護職に依頼します。
Q. 薬の名前を略して書いてもよいですか。 A. 略さないほうが安全です。似た名前の薬があり、略すと区別が付かなくなります。表の幅が足りない場合は、行を増やすか、用紙の向きを変えます。読みにくさより、間違いのほうが重い結果につながります。
Q. 飲み忘れが続く人には、どうしますか。 A. なぜ飲まないかを見ます。飲みにくい、味が嫌、必要性を感じていない、忘れている。原因によって手当てが違います。剤形や時間の変更ができるか、看護職や医師、薬剤師に相談します。
Q. 残数が合わない場合は。 A. 落薬、飲み残し、配り忘れ、二重に配った、のどれかが起きています。すぐに報告し、期間中の記録を確かめます。原因が分からない場合も、記録に残して看護職に伝えます。放置がいちばん危ない形です。
Q. 一包化してもらうと安全ですか。 A. 取り違えは減ります。ただし、包の中身が変わったときに気づきにくくなります。変更の日付と内容を表に書き、古い包が残っていないかを確かめます。一包化できるかは、薬局に相談します。
Q. 家族が薬を持ってくる場合の扱いは。 A. 受け取る人と、受け取ったときの確認の手順を決めます。処方の内容と表を突き合わせ、変更があれば表を直します。受け取った記録を残しておくと、後から確かめられます。
Q. 麻薬や向精神薬の扱いは違いますか。 A. 保管や記録について別の決まりがあります。該当するものを預かる場合は、扱いを分け、専用の記録を用意します。詳しくは薬局や所管の保健所に確かめます。
Q. 誤薬が起きたとき、必ず市町村に報告しますか。 A. 報告の基準は市町村によって異なります。受診した場合や、健康に影響が出た場合は対象になることが多くあります。基準を紙に控えておき、迷うときは電話で相談します。
Q. 表を電子にしたほうがよいですか。 A. 人数が多い事業所では、変更の反映が早くなります。ただし、配る場面で端末を見られるかが条件になります。紙のほうが見やすい場面もあるので、印刷して掲示する形と併用している事業所もあります。
Q. 確かめる回数を3回にすると、時間がかかります。 A. 3回といっても、それぞれは数秒です。時間がかかるのは、薬を探す、表を探すといった別の作業です。保管の分け方と表の置き場所を見直すと、全体の時間はむしろ短くなります。
Q. 服薬の確認は、何人で行いますか。 A. 2人で確かめる形を取っている事業所が多くあります。人員の都合で1人になる時間帯があるなら、その時間帯だけ手順を変えます。人数より、確かめる項目が決まっていることのほうが効きます。
Q. 一包化してもらうと管理は楽になりますか。 A. 楽になります。ただし一包化の可否は薬によります。主治医と薬局に相談してください。一包化した袋に、日付と時間帯が印字されているかも確かめます。
Q. 本人が薬を拒んだときはどうしますか。 A. 無理に飲ませません。拒んだ事実と時間を記録に残し、看護職に伝えます。拒否が続く場合は、主治医に相談して形を変えられるかを確かめます。
Q. 残薬が多く出ています。誰に相談しますか。 A. 主治医と薬局です。飲めていない理由が分かると、処方そのものが変わることがあります。残薬を事業所で判断して減らすことはしません。
Q. 薬の内容を職員が把握しておく必要がありますか。 A. 全部を覚える必要はありません。ただしその薬が何のためのものかは、一覧に1行で書いておきます。効き目が出たとき、副作用らしい様子が出たときに、気づける人が増えます。
Q. 目薬や湿布も服薬管理表に書きますか。 A. 書いておくほうが安全です。飲み薬だけを表にしていると、外用薬の使い忘れや重ねづけに気づけません。欄を分けて、1日の回数と使う場所まで書きます。