アセスメントシートとは?課題にたどり着く使い方
目次
アセスメントシートは埋めている。項目が多く、時間もかかる。けれど、埋めた後にそれがどう使われているかというと、ファイルに綴じられているだけ。時間をかけた割に、何も生んでいない感じが残ります。
この記事では、アセスメントシートを、何のために取るか・項目の見方・課題につなげる方法の3つに分けて整理します。読み終えたときに、埋めた情報を計画に結びつけられる状態を目指します。
結論:情報を集める作業ではなく、課題を見つける作業
アセスメントシートとは、利用者の状態や環境、意向を把握するための用紙のことです。
介護保険では、居宅サービス計画を作るときに、課題分析標準項目に沿ってアセスメントを行うことが求められているとされています。事業所の個別計画でも、同様の把握が求められます。
ポイントはここです。埋めることが目的ではありません。集めた情報から課題を見つけるところまでが1つの作業です。
項目を埋めただけで止まると、計画の目標が抽象的になります。「安全に生活できる」といった目標は、課題が具体的でないときに出てきます。
何を集めるか
課題分析標準項目には、多くの項目が挙げられています。大きく分けると5つの塊になります。
1つ目は、基本の情報です。氏名、年齢、住所、家族の構成、これまでの経過。
2つ目は、心身の状態です。健康の状態、認知の状態、コミュニケーション、麻痺や拘縮、動作の状況。
3つ目は、生活の状況です。食事、排泄、入浴、更衣、移動、睡眠、服薬。
4つ目は、環境です。住まいの構造、段差、手すり、福祉用具、周囲の環境。
5つ目は、意向と社会との関わりです。本人と家族の意向、趣味、これまでの役割、人との関わり。
5つ目がいちばん薄くなりがちです。心身や生活の状況は聞きやすいのに対し、意向や過去の暮らし方は、時間をかけないと出てきません。
課題にたどり着く
集めた情報から課題を見つける手順を、3段で示します。
1つ目は、できていることとできていないことを分けることです。「1人でできる」「見守りが要る」「一部介助」「全介助」。
2つ目は、なぜできていないかを見ることです。身体の問題か、環境の問題か、情報や動機の問題か。同じ「1人でトイレに行けない」でも、原因が違えば手当ても違います。
3つ目は、本人が望むかを確かめることです。本人が望んでいないことは課題になりません。「歩けるようになりたい」と思っていない人に歩行訓練を入れても続きません。
3つ目が抜けると、計画が続きません。事業所が良かれと思って立てた目標に、本人が乗ってこない形になります。
課題は、本人の言葉で書けると強くなります。「トイレに自分で行きたい」「畑をまた見に行きたい」。
意向を引き出す
5つ目の塊を厚くするのが、いちばん効きます。聞き方の工夫が3つあります。
1つ目は、過去を聞くことです。「どんなお仕事をされていましたか」「休みの日は何をされていましたか」。今できないことより、昔できたことから入ると話が出ます。
2つ目は、具体的に聞くことです。「どう過ごしたいですか」は答えにくい質問です。「朝は何時ごろ起きたいですか」「お風呂は何曜日がよいですか」。
3つ目は、家族からも聞くことです。本人が言わないことを、家族が知っていることがあります。
1回で全部を聞こうとしないことです。初回のアセスメントで埋まらない欄があっても、関わる中で埋めていきます。
日々の記録から出てくることも多くあります。「昔は釣りをしていた」と本人が話したなら、その日の記録に書いておき、次の見直しでシートに移します。
いつ取り直すか
一度取ったら終わりではありません。取り直す時期は4つです。
1つ目は、利用の開始のときです。
2つ目は、定期的にです。計画の見直しに合わせます。
3つ目は、状態が変わったときです。入院から戻った、認知の状態が変わった、家族の状況が変わった。
4つ目は、サービスが変わったときです。新しいサービスが入る、通う回数が変わる。
3つ目がいちばん抜けます。定期の時期は管理表で回りますが、変化は誰かが気づかないと拾えません。
入院から戻ったときは、必ず取り直します。筋力が落ち、薬が変わり、できることが変わっています。前のシートのままだと、計画が実態と合いません。
様式の選び方
課題分析標準項目を満たしていれば、様式は自由です。よく使われている方式がいくつかあります。
自治体や事業者団体が様式を公開しています。事業所の個別計画のためのアセスメントは、サービスの種類に合わせた項目を足すと使いやすくなります。
見直すところは3つです。
1つ目は、意向を書く欄の広さです。狭いと1行しか書けません。
2つ目は、できる・できないを段階で書けるかです。丸を付ける形だと早く終わります。
3つ目は、課題を書く欄があるかです。情報を書く欄しか無い様式だと、課題を見つける作業が飛ばされます。
3つ目がいちばん大事です。シートの最後に「見えてきた課題」の欄を作るだけで、埋める作業が課題を探す作業に変わります。
計画とモニタリングにつなげる
アセスメント、計画、記録、モニタリング。この4つが1周する形にします。
アセスメントで課題を見つけ、計画で目標と支援を決め、日々の記録で経過を残し、モニタリングで確かめて、またアセスメントに戻る。
モニタリングで「状態が変わった」と分かったら、アセスメントに戻ります。戻らずに計画だけを変えると、変えた根拠が残りません。
利用者ごとのつづりに、この4つをまとめておきます。時系列で並べると、その人の経過が見えます。
聞き取りの場面をどう作るか
アセスメントは、様式の項目を順番に聞いていく作業ではありません。相手が話せる場面を作るところから始まります。
作り方は4つあります。
1つ目は、場所を選ぶことです。居室のベッドの横か、静かな相談室か。他の利用者の声が聞こえる場所だと、答えが短くなります。
2つ目は、時間を区切って伝えることです。「30分ほどお話を伺います」と先に言います。終わりが見えないと、相手が身構えます。
3つ目は、様式を見ながら書かないことです。手元の紙ばかり見ていると、表情の変化を拾えません。キーワードだけメモして、あとで様式に落とします。
4つ目は、1回で終わらせないことです。初回で全部を聞き出そうとすると、尋問のようになります。関わりの中で足していく前提にします。
話が出ないときは、順番を変えます。今の困りごとから聞くより、昔の仕事や家族の話から入ったほうが言葉が出る方は多くいます。出てきた話の中に、いまの意向の手がかりが混ざっています。
本人が話せないときに集めるもの
言葉で意向を出せない方の場合、集める材料が変わります。推測で埋めないことが原則です。
集めるのは4つです。
1つ目は、生活歴です。どこで生まれ、何の仕事をし、何を大事にしてきたか。家族から聞きます。
2つ目は、日々の様子です。いつ落ち着いていて、いつそわそわするか。時間帯と場面をセットで記録から拾います。
3つ目は、反応の出る刺激です。特定の音楽、食べ物、人。反応が出るものは、ケアの手がかりになります。
4つ目は、以前の記録です。前の事業所や病院からの情報提供書、サマリー。本人が話せた時期の言葉が残っていることがあります。
4つを集めたうえで、事業所としての見立てを書きます。見立てであることが分かる書き方にします。「本人の希望」欄に、推測を本人の言葉のように書かないことです。
取り直す時期の決め方
アセスメントは、取ったまま何年も同じ、という状態になりやすい書類です。取り直す場面を決めておきます。
決めておく場面は4つです。
1つ目は、認定の更新や区分変更があったときです。
2つ目は、入院や大きなけがのあとです。戻ってきたときは、別の人の情報だと思って取り直します。
3つ目は、家族の状況が変わったときです。介護していた人が働き始めた、同居していた人が離れた。本人の状態が同じでも、必要な支援は変わります。
4つ目は、モニタリングで目標に届かない状態が続いたときです。課題の取り方が合っていない可能性があります。
4つのどれでもなくても、年に1回は見直します。変わっていなければ「変更なし」と日付を入れるだけで足ります。日付が何年も前のままの様式は、実地指導で必ず見られます。
課題の書き方をそろえる
同じ事業所の中でも、課題の書き方は人によってばらつきます。書き方の型を1つ決めておきます。
型は3つの部分でできています。
1つ目は、いま起きていることです。「浴槽をまたぐときにふらつく」。事実だけを書きます。
2つ目は、そのままだとどうなるかです。「転倒して入浴を続けられなくなるおそれがある」。
3つ目は、本人がどうしたいかです。「自分で入りたいと話している」。
3つを並べると、計画の目標が自然に決まります。逆に、事実だけを並べた課題からは目標が出てきません。「できないこと」の一覧になってしまうからです。
書き方の型は、A4で1枚の記入例にして新しく入った人に渡します。口で説明するより早く揃います。
まとめ
アセスメントシートは、利用者の状態や環境、意向を把握するための用紙です。埋めることが目的ではなく、課題を見つけるところまでが1つの作業です。
集めるのは5つの塊。基本の情報、心身の状態、生活の状況、環境、意向と社会との関わり。5つ目がいちばん薄くなりがちで、いちばん効きます。
課題にたどり着く手順は、できているかを分ける・なぜできていないかを見る・本人が望むかを確かめるの3段です。3つ目が抜けると、計画が続きません。
取り直す時期は4つ。抜けやすいのは「状態が変わったとき」です。入院から戻ったときは必ず取り直します。様式は、課題を書く欄があるかを確かめます。
よくある質問
Q. 課題分析標準項目とは何ですか。 A. 居宅サービス計画を作るときに把握すべき項目として示されているものです。基本の情報から心身の状態、生活の状況、環境、意向まで幅広く含まれます。様式は自由ですが、この項目を満たしている必要があります。
Q. 事業所の個別計画でも、同じ項目が必要ですか。 A. サービスの種類によって求められる内容が変わります。居宅サービス計画のアセスメントと同じ項目をすべて取る必要はありませんが、自社の支援に関わる部分は把握します。所管の自治体に確かめます。
Q. 本人から話が聞けない場合は。 A. 家族、以前に関わっていた事業所、医療機関から情報を集めます。日々の関わりの中で見えてくることもあります。初回で埋まらない欄は、空欄のままにせず「現時点では確認できていない」と書いておきます。
Q. 意向と家族の意向が違う場合は。 A. 両方を書きます。どちらか一方だけを書くと、後から食い違いが表面化します。違いがあることを記録に残し、サービス担当者会議で調整します。本人の意向を軸に置くのが基本です。
Q. 時間がかかりすぎます。 A. 1回で全部を埋めようとしないことです。初回は基本の情報と、支援に直接関わる部分を優先します。意向や過去の暮らし方は、関わる中で埋めていきます。日々の記録から移す形にすると負担が分かれます。
Q. 課題はいくつくらい挙げますか。 A. 多すぎると計画が散ります。3つから5つに絞る事業所が多くあります。優先順位を付けて、本人が望んでいて、変えられる見込みのあるものから挙げます。
Q. 「できない」ことばかりが並びます。 A. できることも書きます。残っている力が分かると、支援の組み立てが変わります。「全介助」と書かれた欄ばかりだと、できることを探す視点が失われます。
Q. 入院から戻ったとき、どこまで取り直しますか。 A. 心身の状態と生活の状況は必ず取り直します。環境や意向も、入院中に変わっていることがあります。退院の前後に、医療機関からの情報も集めておくと、戻った日から支援を組めます。
Q. アセスメントの記録は何年残しますか。 A. 介護保険の記録として、完結の日から2年が国の基準です。条例で5年としている自治体があります。計画やモニタリングと同じつづりに、時系列で並べておくと経過が見えます。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. アセスメントを行っているか、課題分析の項目を満たしているか、課題が計画につながっているか。とくに3つ目で、シートに書かれた課題と計画の目標が対応しているかが見られます。
Q. 様式は、公表されている課題分析標準項目に沿っていれば何でもよいですか。 A. 標準項目を満たしていることが前提とされています。市販の様式や団体の様式は満たしているものが多くありますが、自作する場合は項目の抜けを確かめてください。判断に迷うものは所轄の市町村に確かめます。
Q. アセスメントは訪問して行う必要がありますか。 A. サービスの種類によって扱いが違います。居宅介護支援では居宅を訪問して面接することが求められているとされています。所轄の市町村に確かめてください。
Q. 家族から聞いた内容は、どこに書きますか。 A. 本人の欄とは分けて書きます。誰から聞いたかと、聞いた日も入れます。分けておかないと、あとで意向が食い違ったときに、どちらの話だったのかをたどれません。
Q. 取り直したとき、前の様式は捨ててよいですか。 A. 捨てません。前の内容と比べることで変化が分かります。保存期間は運営の記録に合わせます。年数は市町村の条例で違うので、所轄の市町村に確かめてください。
Q. 項目が多すぎて、全部埋まりません。 A. 埋めることが目的ではありません。分からない項目は「未確認」と書いて、いつ確かめるかを決めます。空欄と未確認は別の意味になるので、書き分けてください。
Q. 前の事業所の様式をそのまま引き継いでよいですか。 A. 情報提供として受け取ったものは資料として綴じ、自分の事業所の様式では取り直します。様式の項目が違うと、抜けた項目に気づけません。引き継いだ資料は日付と出どころを書いて残します。