事故とヒヤリハット解説2025.12.05 公開JK-22

転倒転落アセスメントとは?点数の使い方と見直し

目次

転倒転落アセスメントの用紙は使っている。入所のときに点数を付けて、ファイルに綴じる。ところが、その点数がその後の介護に使われているかというと、あまり自信がない。よくある状態です。

この記事では、転倒転落アセスメントを、何のために取るか・項目の見方・見直しの時期の3つに分けて整理します。読み終えたときに、点数を実際の配置や環境に結びつけられる状態を目指します。

事故が起きたときの記録から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 介護事故報告書の書き方

結論:点数を出すためではなく、対策を決めるために取る

転倒転落アセスメントとは、転倒や転落の危険がどれくらいあるかを、決められた項目で確かめる作業のことです。医療から広まり、介護の現場でも使われています。

法令で様式が定められた書類ではありません。それでも取るのは、誰に何の対策が要るかを決めるためです。

ポイントはここです。点数を出すこと自体が目的ではありません。高い点数が出たら、その人にどんな手当てをするかまで決めて、初めて意味が出ます。

点数は出発点点数を出す項目に当てはめる対策を決める項目ごとに手を打つ記録に残す計画と日々の記録へ
点数を出す作業と、対策に結びつける作業を並べた層の図

点数だけがファイルに残っていて、ケアの内容が変わっていない。この状態だと、事故が起きたときに「危険を把握していたのに何もしていなかった」と読まれます。

よく使われる項目

様式によって違いますが、挙げられている項目はおおむね共通しています。

年齢。高齢になるほど点数が上がる形が多くあります。

転倒の既往。過去に転んだことがあるかどうか。いちばん強い手がかりとされています。

移動の状態。歩行が自立か、見守りが要るか、車いすか。ふらつきがあるかも見ます。

認知の状態。判断力、見当識、危険の理解。

排泄。夜間にトイレへ行くか、間に合わないことがあるか。

薬。睡眠薬、降圧剤、下剤など、ふらつきや頻尿につながるもの。

6つの項目項目見るところ転倒の既往いちばん強い手がかり移動の状態自立か見守りか、ふらつき排泄夜間にトイレへ行くか睡眠薬・降圧剤・下剤
6つの項目と、見るところを並べた表

排泄と薬の2つが、実務ではいちばん効きます。夜間にトイレへ行く人が睡眠薬を飲んでいる。この組み合わせが分かれば、打てる手ははっきりします。

点数を対策に変える

点数が出たら、そこから対策に落とします。落とし方は、点数の高さではなく、点数を上げている項目から決めます。

転倒の既往が高い人には、いつ・どこで・どんな状況で転んだかを聞き取ります。同じ状況をつくらないのが最初の手当てです。

夜間のトイレが高い人には、居室からトイレまでの動線を見ます。照明、段差、手すり、履物。夜に実際に歩いてみると、昼には見えないものが出てきます。

薬が高い人には、看護職や医師に相談します。減らせるか、時間をずらせるか。介護の側だけでは動かせないので、つなぐことが対策になります。

項目ごとに打てる手が違う高い項目打てる手転倒の既往状況を聞き取る夜間のトイレ動線・照明・履物を見る看護職や医師につなぐ共通合計点だけでは手が出ない
点数を上げている項目ごとに、打てる手が違うことを並べた表

合計点だけを見ると、何をすればよいか出てきません。項目ごとに見るから、手が決まります。

対策は記録に残します。誰が、いつ、何を決めたか。決めたことがケアプランやサービス提供記録に反映されているかまで見ると、つながります。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

アセスメントシートのExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は使い方の側の話です。

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いつ見直すか

一度取ったら終わりではありません。状態は変わります。見直す時期を決めておきます。

入所や利用の開始のとき。最初の1回。

定期的に。3か月ごと、6か月ごとなど、事業所で決めた周期。

状態が変わったとき。入院から戻った、薬が変わった、歩けなくなった、認知の状態が変わった。

事故が起きたとき。転倒があったら、その時点で取り直します。

見直す4つの時期開始のとき最初の1回定期3か月か6か月ごと状態が変わったときいちばん抜ける事故のあとその時点で取り直す
4つの見直しの時期を並べた層の図

いちばん抜けるのが「状態が変わったとき」です。定期の周期は表に入れておけば回りますが、変化は誰かが気づかないと拾えません。

入院から戻ったときは、特に危険が上がります。筋力が落ちて、薬も変わっていることが多いためです。戻った日に取り直す形にしておくと、抜けません。

環境の側も見る

アセスメントは人を見るものですが、転倒は環境でも起きます。人と環境の両方を見ると、対策の幅が広がります。

見るのは4つです。

1つ目は、床です。濡れていないか、滑りやすくないか、マットがめくれていないか。

2つ目は、照明です。夜間の明るさ、スイッチの位置、足元灯の有無。

3つ目は、物の配置です。ベッドの高さ、手すりの位置、歩行器の置き場所、ナースコールが届くか。

4つ目は、履物です。かかとが踏まれていないか、サイズが合っているか。

環境の4つ見るもの確かめること濡れ・滑り・マットのめくれ照明夜間の明るさ・足元灯物の配置ベッドの高さ・手すり・コール履物かかと・サイズ
床・照明・配置・履物という4つの環境の要素を並べた表

この4つは、点数が低い人にも効きます。個人の対策は個人にしか効きませんが、環境の対策はその場所を通る全員に効きます。

月に1回、居室とフロアを見て回る日を決めておくと、気づいたときに直せます。

記録のどこに残すか

アセスメントの用紙だけがファイルに残っていると、日々のケアとつながりません。3か所に残すと回ります。

1つ目は、アセスメントの用紙です。点数と、項目ごとの内容。

2つ目は、ケアプランです。アセスメントで見つかった課題が、計画に入っているか。

3つ目は、日々の記録です。決めた対策が実際に行われているか。

3つがつながって初めて説明できるケアプラン課題が入っているか日々の記録対策が行われているかアセスメント
用紙・計画・日々の記録という3つのつながりを示した図

この3つがつながっていないと、事故のときに説明ができません。危険を把握していたことは用紙で示せますが、何をしたかは計画と日々の記録にしかありません。

実地指導でも、この3つのつながりが見られます。用紙だけがあって計画に反映されていない状態は、指摘の対象になりやすいところです。

点数に出てこない手がかり

様式の項目にはないが、現場では効く手がかりがあります。3つ挙げます。

1つ目は、その人の生活の習慣です。夜中に必ず起きる、新聞を取りに行く、物を取りに立つ。いつ動くかが分かれば、そのときに人がいる形をつくれます。

2つ目は、体調の波です。朝は動けるが夕方はふらつく、食後に眠くなる、雨の日は膝が痛む。時間帯や天候で変わる人がいます。

3つ目は、本人の受け止め方です。「まだ大丈夫」と思っている人ほど、呼ばずに動きます。危険の理解と、本人の気持ちは別です。

これらは、様式の空欄か、備考の欄に書きます。点数には出てきませんが、対策にはいちばん効きます。

日々の記録に書かれている内容を、アセスメントの見直しのときに読み返すと、この手がかりが集まります。

事故が起きた後の扱い

転倒が起きたら、アセスメントを取り直します。ただし、点数を上げて終わりにしないことです。

やることは3つあります。

1つ目は、その転倒の状況を項目に落とすことです。いつ、どこで、何をしようとして転んだか。既往の欄に、状況まで書きます。

2つ目は、前回のアセスメントで拾えていたかを見ることです。拾えていたのに対策が無かったのか、そもそも拾えていなかったのか。拾えていなかったなら、項目か見方を直します。

3つ目は、対策を入れ替えることです。同じ対策のままだと、同じことが起きます。

この3つを、事故報告書の「再発防止」の欄と揃えておくと、書類が二重になりません。アセスメントと事故報告書は、同じ出来事を別の角度から見たものです。

一覧にして配置に使う

個人ごとの用紙だけだと、全体が見えません。一覧を作ると、配置に使えます。

作るのは、人ごとに1行の表です。列は、氏名、点数、いちばん高い項目、取っている対策、次の見直しの日。

この一覧があると、3つのことが分かります。

1つ目は、危険の高い人が誰かです。夜勤の職員が、誰を重点的に見るかを決められます。

2つ目は、対策が入っているかです。点数が高いのに対策の欄が空いている人が見つかります。

3つ目は、見直しの時期です。期限が近い人を並べ替えられます。

夜勤に入る職員が見られる場所に置くのが要点です。個人のファイルの中にあると、その場では使えません。

使う人が分かる形にする

転倒転落アセスメントは、点数を出した人以外が使えるかで価値が決まります。

分かる形にする工夫は4つあります。

1つ目は、点数の意味を1行書くことです。「この点数は、夜間に1人で起き上がる可能性が高いという意味」。数字だけでは伝わりません。

2つ目は、対策を場面で書くことです。「見守り強化」ではなく「夕食後から就寝までのあいだ、30分おきに居室を見る」。

3つ目は、掲示するかを決めることです。居室の入口に印を貼る運用をしている事業所があります。他の利用者や家族の目に触れるので、本人と家族の同意を含めて決めます。

4つ目は、変わったときに差し替えることです。古い情報が残っていると、かえって危険です。

アセスメントの紙が事務室の棚だけにある状態では、現場は使えません。現場が見る場所に、必要な部分だけを出す形にしてください。

まとめ

転倒転落アセスメントは、誰に何の対策が要るかを決めるために取るものです。点数を出すこと自体が目的ではありません。

項目は、年齢、転倒の既往、移動の状態、認知の状態、排泄、薬などです。排泄と薬の2つが実務ではいちばん効きます。

対策は、合計点ではなく点数を上げている項目から決めます。転倒の既往なら状況の聞き取り、夜間のトイレなら動線、薬なら看護職や医師につなぐ。

見直しは、開始のとき、定期、状態が変わったとき、事故が起きたとき。抜けやすいのは「状態が変わったとき」です。人の側だけでなく、床・照明・配置・履物という環境も見ます。自社の様式や周期は、所管の自治体の案内も確かめます。

点検表テンプレート
様式をさがす

実際に使える様式が必要な方へ

アセスメントシートのExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。項目ごとに対策を書く欄と合わせて使えます。

この様式をひらく

よくある質問

Q. 点数が高い人には、必ず何かしなければなりませんか。 A. 点数が高いこと自体が問題ではなく、把握したうえで何もしていないことが問題になります。「見守りを増やす」でも対策です。決めたことを記録に残します。

Q. 様式はどこで手に入りますか。 A. 医療機関や自治体が公開しているものがあります。事業所の形に合わせて項目を足したり減らしたりできます。自社で使わない項目を残しておくと、記入が形だけになります。

Q. 点数の基準はどう決めますか。 A. 様式ごとに区分が示されていることが多くあります。自社で決める場合は、区分ごとに何をするかを先に決めてから点数の線を引くと、使える基準になります。

Q. 家族に説明しますか。 A. 危険があることと、事業所が取る対策を伝えておくと、事故が起きたときの受け止めが変わります。「絶対に転ばせない」とは言えないことも、あわせて伝えます。

Q. 身体拘束につながりませんか。 A. 危険が高いからといって、拘束が認められるわけではありません。3つの要件を満たす必要があります。アセスメントは、拘束以外の手を先に試すための道具です。

Q. 誰が取りますか。 A. 介護職、看護職、相談員など、その人をよく見ている人が取ります。1人で決めず、複数の目で見ると偏りが減ります。取った人の名前を残します。

Q. 転倒が起きたら、点数を上げますか。 A. 転倒の既往の項目が変わるため、結果として点数は上がります。大事なのは点数ではなく、その転倒の状況から何を変えるかです。

Q. 在宅のサービスでも取りますか。 A. 取っている事業所があります。自宅の環境は事業所と違うため、床・段差・手すり・照明を見る意味がより大きくなります。訪問のときに見られる範囲で記録します。

Q. 点数が低い人は見なくてよいですか。 A. 点数が低い人も転びます。低い人ほど、自分で動く範囲が広いためです。環境の対策は全員に効くので、そちらで手当てします。

Q. 点数を家族に伝えますか。 A. 点数そのものより、どんな危険があり、事業所が何をしているかを伝えるほうが伝わります。点数だけを伝えると、数字の意味が分からず不安だけが残ります。

Q. 様式の項目を減らしてもよいですか。 A. 減らせます。使っていない項目が多いと、記入が形だけになります。自社で対策に結びつく項目だけを残すほうが、実際に使われます。減らした理由を記録に残しておきます。

Q. 夜勤者が一覧を見る時間がありません。 A. 全員分を見る必要はありません。その日に重点的に見る人を、申し送りで数人に絞って伝えます。一覧は、その数人を選ぶために使います。

Q. 点数の高い人が多くて、対策が回りません。 A. 全員に個別の対策を立てるのは無理です。環境の対策(床・照明・配置・履物)は全員に効くので、そちらを先にやります。個別の対策は、いちばん危険の高い数人に絞ります。

Q. アセスメントの結果を、他のサービスと共有しますか。 A. サービス担当者会議で共有すると、在宅と施設で対策がそろいます。共有する範囲は、本人や家族の同意の範囲で決めます。共有した内容を記録に残します。

Q. 点数が低いのに転んだ場合は。 A. アセスメントで拾えていなかったことになります。項目か、見方を見直します。点数に出てこない手がかり(生活の習慣、体調の波、本人の受け止め方)が背景にあることがあります。

Q. 点数が高い人が多すぎて、対策が回りません。 A. 全員に同じ対策を当てないことです。点数の中身を見て、危険の出る時間帯と場面で分けます。夜間だけの人、入浴のときだけの人。場面で分けると、対応できる形になります。

Q. 家族から「縛ってでも転ばせないでほしい」と言われました。 A. 身体的拘束は原則として行えないとされています。家族の不安は受け止めたうえで、代わりに何をするかを具体的に伝えます。環境の工夫、見守りの回数、履き物。話す材料をアセスメントから出します。

Q. アセスメントの様式は、どれを使えばよいですか。 A. 公表されているものがいくつかあります。事業所に合うものを1つ選んで、変えずに使い続けることが大事です。途中で変えると、前の点数と比べられなくなります。

Q. 入所したばかりで、その人のことが分かりません。 A. 分からない項目は「未確認」として、いつ確かめるかを決めます。空欄のままにしないことです。入所して最初の1週間は、点数にかかわらず見守りを厚くする運用にしている事業所があります。

Q. 点数が下がったら、対策を外してよいですか。 A. すぐには外しません。下がった理由が、対策が効いているからという場合があります。外すなら段階的にし、外したあとの1か月は記録を厚くしてください。