介護の記録解説2026.06.06 公開KK-45

褥瘡対策とは?できる前に見つける記録の作り方

目次

褥瘡は、できてしまうと治るまでに時間がかかります。できる前に気づくのが最も大事だと分かっていても、日々の記録では「皮膚に発赤あり」の一行で終わってしまう。次に見た人が、前回と比べられません。

この記事では、褥瘡対策を、どこにできるか・見つける記録・防ぐ手当ての3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の記録を比べられる形にできる状態を目指します。

入浴のときの観察から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 入浴記録の書き方

結論:できてからでは遅い。比べられる記録にする

褥瘡対策とは、同じ部位への圧迫が続くことでできる皮膚や組織の損傷を、防ぎ、早く見つけ、悪化させないための取り組みのことです。

介護保険では、施設の種類によって、褥瘡の発生を予防するための体制や、計画の作成が求められる形があります。加算の要件になっている場合もあります。

3つの段階予防起きそうな人を先に見つける早期発見毎日見る人が気づく悪化の防止処置と除圧
予防・早期発見・悪化の防止という3つの段階を並べた層の図

ポイントはここです。記録が比べられる形になっていないと、早期発見ができません。「発赤あり」だけでは、前回より広がったのか、薄くなったのかが分かりません。

日々見ている人ほど、変化に気づきにくくなります。数字と場所を書くことで、比べられるようになります。

どこにできるか

圧迫がかかりやすい場所は決まっています。姿勢によって変わります。

仰向けで寝ているとき。仙骨部、かかと、後頭部、肩甲骨、ひじ。

横向きで寝ているとき。大転子(腰の横の出っぱり)、くるぶし、耳、肩。

座っているとき。坐骨、尾骨、背中。

姿勢ごとに圧がかかる場所姿勢圧がかかる場所あお向け仙骨部・かかと・後頭部横向き大転子部・くるぶし・耳うつ伏せ胸部・膝・つま先座位坐骨部・尾骨部
姿勢ごとに圧迫がかかる場所を並べた表

仙骨部とかかとがいちばん多いとされています。おむつの中や、靴下の中は見えにくいため、見る手順に入れておきます。

座っている時間が長い人も対象です。寝たきりの人だけの問題ではありません。車いすで1日中過ごしている人は、坐骨に圧がかかり続けます。

見つける記録

記録を比べられる形にするには、3つを書きます。

1つ目は、場所です。「お尻」ではなく「仙骨部」「右大転子」。言葉をそろえます。

2つ目は、大きさです。「2センチ×3センチ」。定規を当てて測ります。

3つ目は、状態です。赤みだけか、皮がむけているか、深さがあるか。押して白くなるかどうかも手がかりになります。

見つけたら3つを書く項目書き方場所図に印を付ける大きさ測った値を書く状態色と深さ、浸出液
場所・大きさ・状態という3つを書く形の図

押して白くならない赤みは、初期の褥瘡の可能性があるとされています。指で軽く押して、白くなるか戻るかを見ます。

写真を撮る形もあります。同意を得たうえで、同じ角度と距離で撮ると比べられます。定規を一緒に写すと大きさが分かります。

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実際に使える様式が必要な方へ

介護記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は褥瘡に絞った話です。

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見る場面を決める

毎日全身を見るのは難しいので、場面を決めます。

入浴のときが、いちばん見やすい場面です。服を脱いでいるため、全身を確かめられます。

おむつ交換のとき。仙骨部と尾骨を見ます。

体位を変えるとき。その姿勢で圧がかかっていた場所を見ます。

靴下を脱がせるとき。かかとを見ます。

4つの場面で見る場面見る部位入浴と清拭全身をひととおりおむつ交換仙骨部と尾骨部体位変換下になっていた側靴を脱いだときかかととくるぶし
4つの場面と、それぞれで見る部位を並べた表

入浴していない日にどう見るかを決めておきます。清拭のとき、更衣のとき。週に何回かは全身を見る形にします。

見たことを記録に書きます。「異常なし」も記録です。書いていないと、見たのかどうかが分かりません。

防ぐ手当て

できる前の手当てが、いちばん効きます。4つあります。

1つ目は、体位の変換です。同じ姿勢が続かないようにします。時間の目安を決め、記録に残します。

2つ目は、寝具と用具です。エアマット、体圧分散のマットレス、クッション。その人に合うものを選びます。

3つ目は、皮膚を清潔と適度な湿り気に保つことです。汗や排泄物で湿ったままにしない。乾燥しすぎないようにする。

4つ目は、栄養です。低栄養だとできやすく、治りにくくなります。食事量と体重の記録を見ます。

4つの手当てを組み合わせる手当てやること体位間隔を人ごとに決める用具マットレスと設定皮膚清潔と乾いた状態栄養食事量と体重を見る
体位・用具・皮膚・栄養という4つの手当てを並べた表

4つ目が見落とされがちです。褥瘡を皮膚の問題だけとして扱うと、栄養の側が手つかずになります。食事量が減っている人は、危険が上がります。

車いすで過ごす時間が長い人には、座り直しの時間を決めます。自分で動ける人には、動かし方を伝えます。

できてしまったら

できてしまった場合は、看護職や医師につなぎます。介護の側でやることが3つあります。

1つ目は、報告です。気づいた時点ですぐ。様子を見てからではなく、見つけたら伝えます。

2つ目は、圧を取ることです。その部位に圧がかからない姿勢にします。

3つ目は、経過の記録です。大きさ、状態、処置の内容。毎日、同じ形で書きます。

見つけたときの3段1報告看護職へ。判断はしない2除圧その部位に当てな3記録場所・大きさ・状
報告・除圧・記録という3つの対応を並べたフロー

処置そのものは医療行為に当たります。介護職が行える範囲は限られます。何ができるかを、協力医療機関や所管の自治体に確かめておきます。

計画も見直します。体位変換の頻度、用具、栄養。ケアプランと個別の計画の両方に反映します。

記録を計画につなげる

褥瘡の記録は、単独では意味が薄くなります。他の記録とつなげます。

体位変換の記録。いつ、どの姿勢にしたか。

食事と水分の記録。摂取量の推移。

体重の記録。減っていないか。

入浴と清拭の記録。皮膚の状態。

この4つが同じつづりにあると、危険が見えます。食事量が減り、体重が落ち、体位変換が滞っている。この組み合わせが見えたら、できる前に手が打てます。

月に1回、この4つを並べて見る時間を取ります。1人5分でも、続けていれば変化に気づけます。

体制として求められること

施設の種類によって、褥瘡に関する体制が求められる場合があります。確かめるのは3つです。

1つ目は、計画の作成です。危険のある人について、計画を作ることが求められる形があります。

2つ目は、定期的な評価です。

3つ目は、記録です。

加算を算定している場合、その要件も確かめます。算定しているのに記録が無いと、返還の対象になります。

自社に何が求められるかは、サービスの種類と算定している加算で変わります。所管の自治体に確かめるのが確実です。

危険の高い人を先に見つける

褥瘡は、起きてから対応するより、起きそうな人を先に見つけるほうが手間が少なくて済みます。

見つける手がかりは4つあります。

1つ目は、自分で寝返りを打てるかです。打てない方は、それだけで危険が上がります。

2つ目は、食事の量です。食べられていない状態が続くと、皮膚が弱くなります。体重の変化も見ます。

3つ目は、湿った状態が続いているかです。汗、失禁、おむつの中。ふやけた皮膚は傷つきやすくなります。

4つ目は、以前に褥瘡ができたことがあるかです。同じ場所に繰り返すことがよくあります。

4つを入所時と定期のタイミングで確かめます。危険度を測る指標がいくつか公表されているので、事業所に合うものを1つ選んで使い続けます。毎回同じ指標で測ることが大事です。指標を変えると、前の月と比べられなくなります。

見つけたときの最初の動き

褥瘡らしきものを見つけたとき、その場で判断しないことが原則です。

動きは4段です。

1つ目は、看護職に伝えることです。時間帯によっては電話で構いません。

2つ目は、その場の状態を記録に残すことです。場所、大きさ、色。写真を撮る場合は、本人か家族の同意の扱いを事業所で決めておきます。

3つ目は、圧がかからない体位にすることです。その部位に当たらないように整えます。

4つ目は、医師への報告の要否を確かめることです。看護職が判断します。

介護職が薬や被覆材を選ぶことはしません。よかれと思って市販のものを貼ると、状態が分かりにくくなります。

記録に残す項目

褥瘡の記録は、変化を追える形にします。1回書いて終わりにはしません。

残すのは4つです。

1つ目は、部位です。図に印を付ける形にすると、伝わり方が早くなります。

2つ目は、大きさと深さです。測った値を書きます。目分量だと、良くなっているのか分かりません。

3つ目は、処置の内容です。何を使って、どうしたか。誰が行ったか。

4つ目は、除圧の状況です。体位変換の間隔、用いたクッションやマットレスの種類。

4つを1枚に並べて、週ごとに1行足す形にすると、経過が見えます。別々の紙に分かれていると、良くなっているかの判断に時間がかかります。

体位変換だけに頼らない

褥瘡の対策というと体位変換が先に出ますが、それだけでは足りません。

組み合わせるのは4つです。

1つ目は、寝具です。体圧を分散するマットレスを使うと、間隔を延ばせる場合があります。

2つ目は、栄養です。必要な量が取れているか。管理栄養士がいる事業所なら相談します。

3つ目は、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことです。おむつの交換の間隔、清拭の方法。

4つ目は、座っている時間です。車いすで長時間座っている方は、座面に圧がかかります。ベッドだけを見ていると見落とします。

体位変換の間隔だけを短くしても、他の3つが整っていなければ改善しません。しかも間隔を短くすると、夜間の睡眠が細切れになります。本人の眠りを削らない形を、看護職と一緒に決めます。

委員会と研修につなげる

褥瘡の対策は、個人の技術ではなく事業所の仕組みで決まります。委員会と研修につなげておきます。

つなげ方は3つあります。

1つ目は、発生の件数を毎月出すことです。人数と、新しく発生した数。数字が出ると、増えた月の背景を探せます。

2つ目は、事例を1件ずつ見ることです。責める場にしないことを最初に言います。気づいた人が報告しやすい場にしないと、件数そのものが出てこなくなります。

3つ目は、研修で実物を扱うことです。マットレスの選び方、体位の整え方。話だけの研修より、実際に触る時間を取ったほうが残ります。

3つを回すと、事業所の中の見方がそろいます。同じ状態を見て、危ないと思う人と思わない人がいる状態が、いちばん危険です。

まとめ

褥瘡対策は、予防・早期発見・悪化の防止の3段階です。できてからでは時間がかかるため、できる前に見つけるのがいちばん大事になります。

記録は、場所・大きさ・状態の3つを書きます。「発赤あり」だけでは前回と比べられません。定規で測り、部位の言葉をそろえます。

見る場面を決めます。入浴のときがいちばん見やすい場面です。入浴していない日にどう見るかも決めておきます。

防ぐ手当ては、体位の変換、寝具と用具、皮膚の清潔と湿り気、栄養の4つ。4つ目が見落とされがちです。体制として何が求められるかは、所管の自治体に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

介護記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。皮膚の観察の欄を足せば、そのまま使えます。

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よくある質問

Q. 発赤を見つけたら、すぐ報告しますか。 A. すぐ報告します。押して白くならない赤みは、初期の褥瘡の可能性があるとされています。様子を見てからでは、その間に進みます。報告したことと、そのときの状態を記録に残します。

Q. 大きさはどう測りますか。 A. 定規を当てて、縦と横をセンチで測ります。同じ人が同じ向きで測ると、比べやすくなります。測りにくい場所は、写真に定規を写し込む形もあります。撮影は同意を得てから行います。

Q. 体位変換の頻度に決まりはありますか。 A. 一律の決まりがあるわけではありません。その人の状態や、使っている用具によって変わります。決めた頻度を計画に書き、実施を記録に残します。用具を入れたら頻度を見直します。

Q. エアマットを使えば体位変換は要りませんか。 A. 用具は圧を分散しますが、全く不要になるわけではありません。使っている用具に応じた頻度を、看護職や医師と相談して決めます。用具の設定が体重に合っているかも確かめます。

Q. 介護職が処置をしてもよいですか。 A. 処置は医療行為に当たります。介護職が行える範囲は限られています。何ができるかを、協力医療機関や所管の自治体に確かめておきます。判断に迷う行為は看護職に依頼します。

Q. 栄養の側は、誰が見ますか。 A. 管理栄養士がいれば中心になります。いない場合も、食事量と体重の記録から気づけます。減っていることを看護職や医師、ケアマネジャーに伝えると、対応につながります。

Q. 車いすの人も対象ですか。 A. 対象です。座っている時間が長いと、坐骨や尾骨に圧がかかり続けます。座り直しの時間を決め、クッションが合っているかを確かめます。寝たきりの人だけの問題ではありません。

Q. 写真を撮るとき、気をつけることは。 A. 同意を得てから撮ります。使い道と保存の範囲を決めておきます。同じ角度と距離で撮ると比べられます。撮ったものの管理も、他の個人情報と同じ扱いにします。

Q. 記録の様式はどうしますか。 A. 介護記録の中に皮膚の観察の欄を作る形と、褥瘡の経過だけの用紙を別に作る形があります。できている人については、別の用紙のほうが経過を追いやすくなります。

Q. 加算を取っている場合、何が要りますか。 A. 加算の区分によって、計画の作成、評価、記録の要件が定められています。算定しているのに記録が無いと返還の対象になります。自社が算定している加算の要件を一覧にして確かめます。

Q. 褥瘡対策の計画書は、全員に作りますか。 A. 危険性が高いと判断された方に作る扱いが基本とされています。対象の考え方は施設の種類によって違うので、所轄の市町村や指定権者に確かめてください。作った計画は本人か家族に説明します。

Q. 体位変換は何時間おきが目安ですか。 A. 2時間を目安とする説明が広く使われていますが、寝具や状態によって変わります。マットレスの種類によっては間隔を延ばせる場合があります。看護職と相談して、人ごとに決めてください。

Q. できてしまった場合、家族に伝えますか。 A. 伝えます。隠すと、あとで分かったときの不信が大きくなります。見つけた時点の状態、今の処置、これからの見通しの3つを伝えます。

Q. 褥瘡の記録は、事故の記録として扱いますか。 A. 扱いは事業所と保険者の考え方によります。市町村への報告の対象となる事案の範囲は市町村ごとに違うので、所轄の市町村に確かめてください。

Q. 訪問介護で見つけた場合はどうしますか。 A. サービス提供責任者に伝え、ケアマネジャーと訪問看護、主治医につなぎます。ヘルパーが処置をすることはありません。見た状態を記録に残すところまでが役割です。

Q. マットレスは誰が選びますか。 A. 看護職と、可能なら福祉用具の担当者が一緒に選びます。体重と状態で適したものが変わります。使い始めたら、設定が合っているかを定期的に確かめてください。設定が合っていないマットレスは、普通の寝具と変わりません。