褥瘡対策とは?できる前に見つける記録の作り方
目次
褥瘡は、できてしまうと治るまでに時間がかかります。できる前に気づくのが最も大事だと分かっていても、日々の記録では「皮膚に発赤あり」の一行で終わってしまう。次に見た人が、前回と比べられません。
この記事では、褥瘡対策を、どこにできるか・見つける記録・防ぐ手当ての3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の記録を比べられる形にできる状態を目指します。
結論:できてからでは遅い。比べられる記録にする
褥瘡対策とは、同じ部位への圧迫が続くことでできる皮膚や組織の損傷を、防ぎ、早く見つけ、悪化させないための取り組みのことです。
介護保険では、施設の種類によって、褥瘡の発生を予防するための体制や、計画の作成が求められる形があります。加算の要件になっている場合もあります。
ポイントはここです。記録が比べられる形になっていないと、早期発見ができません。「発赤あり」だけでは、前回より広がったのか、薄くなったのかが分かりません。
日々見ている人ほど、変化に気づきにくくなります。数字と場所を書くことで、比べられるようになります。
どこにできるか
圧迫がかかりやすい場所は決まっています。姿勢によって変わります。
仰向けで寝ているとき。仙骨部、かかと、後頭部、肩甲骨、ひじ。
横向きで寝ているとき。大転子(腰の横の出っぱり)、くるぶし、耳、肩。
座っているとき。坐骨、尾骨、背中。
仙骨部とかかとがいちばん多いとされています。おむつの中や、靴下の中は見えにくいため、見る手順に入れておきます。
座っている時間が長い人も対象です。寝たきりの人だけの問題ではありません。車いすで1日中過ごしている人は、坐骨に圧がかかり続けます。
見つける記録
記録を比べられる形にするには、3つを書きます。
1つ目は、場所です。「お尻」ではなく「仙骨部」「右大転子」。言葉をそろえます。
2つ目は、大きさです。「2センチ×3センチ」。定規を当てて測ります。
3つ目は、状態です。赤みだけか、皮がむけているか、深さがあるか。押して白くなるかどうかも手がかりになります。
押して白くならない赤みは、初期の褥瘡の可能性があるとされています。指で軽く押して、白くなるか戻るかを見ます。
写真を撮る形もあります。同意を得たうえで、同じ角度と距離で撮ると比べられます。定規を一緒に写すと大きさが分かります。
見る場面を決める
毎日全身を見るのは難しいので、場面を決めます。
入浴のときが、いちばん見やすい場面です。服を脱いでいるため、全身を確かめられます。
おむつ交換のとき。仙骨部と尾骨を見ます。
体位を変えるとき。その姿勢で圧がかかっていた場所を見ます。
靴下を脱がせるとき。かかとを見ます。
入浴していない日にどう見るかを決めておきます。清拭のとき、更衣のとき。週に何回かは全身を見る形にします。
見たことを記録に書きます。「異常なし」も記録です。書いていないと、見たのかどうかが分かりません。
防ぐ手当て
できる前の手当てが、いちばん効きます。4つあります。
1つ目は、体位の変換です。同じ姿勢が続かないようにします。時間の目安を決め、記録に残します。
2つ目は、寝具と用具です。エアマット、体圧分散のマットレス、クッション。その人に合うものを選びます。
3つ目は、皮膚を清潔と適度な湿り気に保つことです。汗や排泄物で湿ったままにしない。乾燥しすぎないようにする。
4つ目は、栄養です。低栄養だとできやすく、治りにくくなります。食事量と体重の記録を見ます。
4つ目が見落とされがちです。褥瘡を皮膚の問題だけとして扱うと、栄養の側が手つかずになります。食事量が減っている人は、危険が上がります。
車いすで過ごす時間が長い人には、座り直しの時間を決めます。自分で動ける人には、動かし方を伝えます。
できてしまったら
できてしまった場合は、看護職や医師につなぎます。介護の側でやることが3つあります。
1つ目は、報告です。気づいた時点ですぐ。様子を見てからではなく、見つけたら伝えます。
2つ目は、圧を取ることです。その部位に圧がかからない姿勢にします。
3つ目は、経過の記録です。大きさ、状態、処置の内容。毎日、同じ形で書きます。
処置そのものは医療行為に当たります。介護職が行える範囲は限られます。何ができるかを、協力医療機関や所管の自治体に確かめておきます。
計画も見直します。体位変換の頻度、用具、栄養。ケアプランと個別の計画の両方に反映します。
記録を計画につなげる
褥瘡の記録は、単独では意味が薄くなります。他の記録とつなげます。
体位変換の記録。いつ、どの姿勢にしたか。
食事と水分の記録。摂取量の推移。
体重の記録。減っていないか。
入浴と清拭の記録。皮膚の状態。
この4つが同じつづりにあると、危険が見えます。食事量が減り、体重が落ち、体位変換が滞っている。この組み合わせが見えたら、できる前に手が打てます。
月に1回、この4つを並べて見る時間を取ります。1人5分でも、続けていれば変化に気づけます。
体制として求められること
施設の種類によって、褥瘡に関する体制が求められる場合があります。確かめるのは3つです。
1つ目は、計画の作成です。危険のある人について、計画を作ることが求められる形があります。
2つ目は、定期的な評価です。
3つ目は、記録です。
加算を算定している場合、その要件も確かめます。算定しているのに記録が無いと、返還の対象になります。
自社に何が求められるかは、サービスの種類と算定している加算で変わります。所管の自治体に確かめるのが確実です。
危険の高い人を先に見つける
褥瘡は、起きてから対応するより、起きそうな人を先に見つけるほうが手間が少なくて済みます。
見つける手がかりは4つあります。
1つ目は、自分で寝返りを打てるかです。打てない方は、それだけで危険が上がります。
2つ目は、食事の量です。食べられていない状態が続くと、皮膚が弱くなります。体重の変化も見ます。
3つ目は、湿った状態が続いているかです。汗、失禁、おむつの中。ふやけた皮膚は傷つきやすくなります。
4つ目は、以前に褥瘡ができたことがあるかです。同じ場所に繰り返すことがよくあります。
4つを入所時と定期のタイミングで確かめます。危険度を測る指標がいくつか公表されているので、事業所に合うものを1つ選んで使い続けます。毎回同じ指標で測ることが大事です。指標を変えると、前の月と比べられなくなります。
見つけたときの最初の動き
褥瘡らしきものを見つけたとき、その場で判断しないことが原則です。
動きは4段です。
1つ目は、看護職に伝えることです。時間帯によっては電話で構いません。
2つ目は、その場の状態を記録に残すことです。場所、大きさ、色。写真を撮る場合は、本人か家族の同意の扱いを事業所で決めておきます。
3つ目は、圧がかからない体位にすることです。その部位に当たらないように整えます。
4つ目は、医師への報告の要否を確かめることです。看護職が判断します。
介護職が薬や被覆材を選ぶことはしません。よかれと思って市販のものを貼ると、状態が分かりにくくなります。
記録に残す項目
褥瘡の記録は、変化を追える形にします。1回書いて終わりにはしません。
残すのは4つです。
1つ目は、部位です。図に印を付ける形にすると、伝わり方が早くなります。
2つ目は、大きさと深さです。測った値を書きます。目分量だと、良くなっているのか分かりません。
3つ目は、処置の内容です。何を使って、どうしたか。誰が行ったか。
4つ目は、除圧の状況です。体位変換の間隔、用いたクッションやマットレスの種類。
4つを1枚に並べて、週ごとに1行足す形にすると、経過が見えます。別々の紙に分かれていると、良くなっているかの判断に時間がかかります。
体位変換だけに頼らない
褥瘡の対策というと体位変換が先に出ますが、それだけでは足りません。
組み合わせるのは4つです。
1つ目は、寝具です。体圧を分散するマットレスを使うと、間隔を延ばせる場合があります。
2つ目は、栄養です。必要な量が取れているか。管理栄養士がいる事業所なら相談します。
3つ目は、皮膚を清潔で乾いた状態に保つことです。おむつの交換の間隔、清拭の方法。
4つ目は、座っている時間です。車いすで長時間座っている方は、座面に圧がかかります。ベッドだけを見ていると見落とします。
体位変換の間隔だけを短くしても、他の3つが整っていなければ改善しません。しかも間隔を短くすると、夜間の睡眠が細切れになります。本人の眠りを削らない形を、看護職と一緒に決めます。
委員会と研修につなげる
褥瘡の対策は、個人の技術ではなく事業所の仕組みで決まります。委員会と研修につなげておきます。
つなげ方は3つあります。
1つ目は、発生の件数を毎月出すことです。人数と、新しく発生した数。数字が出ると、増えた月の背景を探せます。
2つ目は、事例を1件ずつ見ることです。責める場にしないことを最初に言います。気づいた人が報告しやすい場にしないと、件数そのものが出てこなくなります。
3つ目は、研修で実物を扱うことです。マットレスの選び方、体位の整え方。話だけの研修より、実際に触る時間を取ったほうが残ります。
3つを回すと、事業所の中の見方がそろいます。同じ状態を見て、危ないと思う人と思わない人がいる状態が、いちばん危険です。
まとめ
褥瘡対策は、予防・早期発見・悪化の防止の3段階です。できてからでは時間がかかるため、できる前に見つけるのがいちばん大事になります。
記録は、場所・大きさ・状態の3つを書きます。「発赤あり」だけでは前回と比べられません。定規で測り、部位の言葉をそろえます。
見る場面を決めます。入浴のときがいちばん見やすい場面です。入浴していない日にどう見るかも決めておきます。
防ぐ手当ては、体位の変換、寝具と用具、皮膚の清潔と湿り気、栄養の4つ。4つ目が見落とされがちです。体制として何が求められるかは、所管の自治体に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 発赤を見つけたら、すぐ報告しますか。 A. すぐ報告します。押して白くならない赤みは、初期の褥瘡の可能性があるとされています。様子を見てからでは、その間に進みます。報告したことと、そのときの状態を記録に残します。
Q. 大きさはどう測りますか。 A. 定規を当てて、縦と横をセンチで測ります。同じ人が同じ向きで測ると、比べやすくなります。測りにくい場所は、写真に定規を写し込む形もあります。撮影は同意を得てから行います。
Q. 体位変換の頻度に決まりはありますか。 A. 一律の決まりがあるわけではありません。その人の状態や、使っている用具によって変わります。決めた頻度を計画に書き、実施を記録に残します。用具を入れたら頻度を見直します。
Q. エアマットを使えば体位変換は要りませんか。 A. 用具は圧を分散しますが、全く不要になるわけではありません。使っている用具に応じた頻度を、看護職や医師と相談して決めます。用具の設定が体重に合っているかも確かめます。
Q. 介護職が処置をしてもよいですか。 A. 処置は医療行為に当たります。介護職が行える範囲は限られています。何ができるかを、協力医療機関や所管の自治体に確かめておきます。判断に迷う行為は看護職に依頼します。
Q. 栄養の側は、誰が見ますか。 A. 管理栄養士がいれば中心になります。いない場合も、食事量と体重の記録から気づけます。減っていることを看護職や医師、ケアマネジャーに伝えると、対応につながります。
Q. 車いすの人も対象ですか。 A. 対象です。座っている時間が長いと、坐骨や尾骨に圧がかかり続けます。座り直しの時間を決め、クッションが合っているかを確かめます。寝たきりの人だけの問題ではありません。
Q. 写真を撮るとき、気をつけることは。 A. 同意を得てから撮ります。使い道と保存の範囲を決めておきます。同じ角度と距離で撮ると比べられます。撮ったものの管理も、他の個人情報と同じ扱いにします。
Q. 記録の様式はどうしますか。 A. 介護記録の中に皮膚の観察の欄を作る形と、褥瘡の経過だけの用紙を別に作る形があります。できている人については、別の用紙のほうが経過を追いやすくなります。
Q. 加算を取っている場合、何が要りますか。 A. 加算の区分によって、計画の作成、評価、記録の要件が定められています。算定しているのに記録が無いと返還の対象になります。自社が算定している加算の要件を一覧にして確かめます。
Q. 褥瘡対策の計画書は、全員に作りますか。 A. 危険性が高いと判断された方に作る扱いが基本とされています。対象の考え方は施設の種類によって違うので、所轄の市町村や指定権者に確かめてください。作った計画は本人か家族に説明します。
Q. 体位変換は何時間おきが目安ですか。 A. 2時間を目安とする説明が広く使われていますが、寝具や状態によって変わります。マットレスの種類によっては間隔を延ばせる場合があります。看護職と相談して、人ごとに決めてください。
Q. できてしまった場合、家族に伝えますか。 A. 伝えます。隠すと、あとで分かったときの不信が大きくなります。見つけた時点の状態、今の処置、これからの見通しの3つを伝えます。
Q. 褥瘡の記録は、事故の記録として扱いますか。 A. 扱いは事業所と保険者の考え方によります。市町村への報告の対象となる事案の範囲は市町村ごとに違うので、所轄の市町村に確かめてください。
Q. 訪問介護で見つけた場合はどうしますか。 A. サービス提供責任者に伝え、ケアマネジャーと訪問看護、主治医につなぎます。ヘルパーが処置をすることはありません。見た状態を記録に残すところまでが役割です。
Q. マットレスは誰が選びますか。 A. 看護職と、可能なら福祉用具の担当者が一緒に選びます。体重と状態で適したものが変わります。使い始めたら、設定が合っているかを定期的に確かめてください。設定が合っていないマットレスは、普通の寝具と変わりません。