通院等乗降介助|身体介護との線引きと記録
目次
病院へ送っていった。車から降ろし、受付まで付き添い、診察が終わるまで待って、また送り届けた。この一連の動きを、乗降介助で取るのか、身体介護で取るのか。ここで毎回迷う事業所が多くあります。
この記事では、通院等乗降介助を、算定の範囲・身体介護との線引き・記録の書き方の3つに分けて整理します。どちらで算定したかを説明できる記録を中心に書きます。
結論:運転している時間は算定に入らない
通院等乗降介助とは、訪問介護員が自分の運転する車に利用者を乗せ降ろしする介助を行い、あわせて受診の手続きなどを助けた場合に算定するものです。
単位数は片道1回につき97単位です。往復すれば2回の算定になります。
ポイントはここです。運転している時間そのものは算定の対象ではありません。遠くの病院まで1時間走っても、近くの診療所まで5分で着いても、算定は同じ97単位です。移動にかかった時間で単位数が変わる仕組みではありません。
ガソリン代や有料道路の料金にあたる運賃は、介護報酬とは別に利用者から受け取る形になります。金額と受け取り方を、契約のときに決めておきます。
何をすれば算定できるか
算定できる形には、乗り降りの介助だけでなく、前後の助けが含まれます。一般には次の流れで考えます。
1つ目は、出かける準備です。着替え、靴を履く、持ち物の確認。
2つ目は、家から車までの移動です。玄関の段差、雨の日の傘。
3つ目は、車への乗り降りです。ここが中心です。
4つ目は、受診の手続きです。受付、診察券の提出、会計。
3つ目が無い場合は算定できません。利用者が自分で乗り降りできて、介助をしていないなら、乗降介助にはあたりません。車に乗せただけの送迎は、この加算の形ではありません。
4つ目をどこまで含めるかは、自治体によって考え方に幅があります。院内の付き添いをどう扱うかは、所轄の指定権者(市町村の介護保険担当課)に確かめてください。
身体介護との線引き
いちばん迷うのが、身体介護中心型との使い分けです。
通院等乗降介助を算定する場合、同じ時間について身体介護中心型は算定できません。どちらか一方です。
分かれ目になるのは2つです。
1つ目は、介助の中身と時間です。乗り降りの前後に、外出の準備や院内での介助を相当の時間行う場合、身体介護として算定する形になることがあります。
2つ目は、ケアプランでの位置づけです。どちらで提供するかが、あらかじめ計画に書かれていることが前提になります。
2つ目が実務では効きます。その場で判断して切り替えると、計画と実績が合わなくなります。迷う利用者については、ケアマネジャーと先に決めておくのが確実です。
院内での待ち時間や介助の扱いは、地域差が大きい部分です。同じ動きでも、自治体によって答えが変わります。過去に確かめた内容を、事業所の手順書に書き残しておいてください。
運賃をどう決めて、どう受け取るか
運賃は介護報酬に含まれません。利用者から別に受け取る形になります。ここを決めずに始めると、あとで説明できなくなります。
決めるのは4つです。
1つ目は、金額の決め方です。距離で決める、1回いくらで決める、実費を受け取る。どの形でも構いませんが、同じ利用者に同じ基準を使います。
2つ目は、駐車場の料金や有料道路の扱いです。かかった分を受け取るなら、そう決めておきます。
3つ目は、受け取り方です。その場で現金を受け取るか、月末にまとめて請求するか。
4つ目は、領収の証明です。受け取ったら控えを残します。
1つ目でつまずきます。「だいたいこのくらい」で受け取っていると、利用者ごとに金額が違う状態になります。表を1枚作って、契約のときに渡すのがいちばん早い解決です。
金額を変えるときは、事前に説明して同意を得ます。重要事項説明書に書いてある場合は、そちらも直します。
記録に残す6つ
通院等乗降介助の記録に残すのは6つです。
1つ目は、日付と行き先です。どこの医療機関へ行ったか。
2つ目は、出発と到着の時刻です。片道ごとに残します。
3つ目は、行った介助の内容です。乗り降りのどの部分を助けたか。
4つ目は、前後に行ったことです。準備、受付、会計。
5つ目は、算定の区分です。乗降介助か、身体介護か。
6つ目は、運賃の受け取りです。金額と受け取った旨。
3つ目と5つ目が抜けます。「通院介助」とだけ書かれた記録では、乗り降りの介助をしたかどうかが分かりません。「車いすからの移乗を介助」といった、実際の動きの言葉で書いてください。
5つ目は、請求と突き合わせられます。記録では身体介護のように読めるのに、請求は乗降介助になっている、という食い違いがいちばん指摘されます。
1日に複数の医療機関へ行くとき
同じ日に2か所の病院を回ることがあります。数え方は行き先の数ではなく、乗り降りの回数で考えます。
家から1か所目、1か所目から2か所目、2か所目から家。この形なら、乗り降りは3回になります。
ただし、続けて回る場合の扱いは自治体によって違うことがあります。初めてその形が出たときに、窓口に確かめて手順書に残すのが安全です。
買い物や役所の用事を途中に挟む場合は、通院等の範囲に入るかどうかが別の論点になります。範囲は市町村が決めている部分があるので、こちらも確かめてください。
乗り降りでけがをさせないために
乗降の介助は、転倒と挟み込みが起きやすい場面です。事故が起きると、加算の話どころではなくなります。
確かめるのは4つです。
1つ目は、停める位置です。段差、傾き、車の通る場所。歩道側から乗り降りできる位置に停めます。
2つ目は、足元です。雨の日の濡れたステップ、足を置く場所。
3つ目は、手を置く場所です。ドアの枠を持たせると、閉めるときに挟みます。どこを持つかを先に伝えます。
4つ目は、シートベルトです。座ってから締めるまでが、いちばん姿勢が崩れやすいところです。
3つ目は、言葉で先に伝えるだけで防げます。「ここを持ってください」と手を添えて示します。
ひやりとした場面があったら、記録に残してください。同じ車、同じ病院で繰り返し起きていることが見えます。
定期の受診を、月の予定に落とす
通院の予定は、月ごとにまとめて組むと事故が減ります。その都度の連絡で動くと、人の手配が間に合わない日が出ます。
組むときに押さえるのは4つです。
1つ目は、受診の曜日と時間です。予約制か、順番待ちか。待ち時間の読みが変わります。
2つ目は、担当する職員です。運転と介助を同じ人が行うので、その時間はほかの訪問に入れられません。
3つ目は、戻りの時間の幅です。診察が長引く前提で、後ろに余裕を取ります。
4つ目は、連絡の取り方です。遅れるときに誰へ連絡するか。家族にも伝えておきます。
3つ目を取らないと、次の訪問に遅れます。遅れた先の利用者にも影響が出るので、通院の日はその職員の訪問を少なめに組むのが現実的です。
予定を組んだら、利用者と家族にも紙で渡します。受診の日を忘れてしまう方もいます。渡した控えが、あとで行き違いを防ぎます。
ケアプランへの書き方
通院等乗降介助は、ケアプランと訪問介護計画の両方に書かれている必要があります。
書いておくのは3つです。
1つ目は、行き先と頻度です。どの医療機関へ、月に何回。
2つ目は、算定する区分です。乗降介助か、身体介護か。
3つ目は、運賃の扱いです。利用者が負担すること。
2つ目を書いておくと、現場が迷いません。その場で判断すると、職員によって扱いが変わります。
定期の受診が増えたり減ったりしたときは、計画を直します。計画に無い回数を算定した状態が、返戻の原因になります。
通院の記録が、次のケアプランを変える
通院に同行すると、事業所の中では見えないことが分かります。ここを記録に残すと、次のケアプランの材料になります。
拾えるのは3つです。
1つ目は、外での動きです。家の中では歩けている方が、外では足が出ないことがあります。
2つ目は、医師に伝えられていないことです。本人が遠慮して言わない症状を、待合で聞くことがあります。
3つ目は、家族の負担です。ふだんの送迎を誰がしているか、どのくらい大変か。
2つ目を聞いたら、ケアマネジャーに伝えます。診察の場で本人が言えなかったことは、次の受診まで誰にも届きません。
これらは加算の要件ではありません。ただ、通院に同行する事業所にしか拾えない情報です。記録の余白に一言書いておくだけで、担当者会議で使えます。
まとめ
通院等乗降介助は、片道1回につき97単位です。運転している時間そのものは算定の対象ではありません。
算定には、乗り降りの介助を実際に行っていることが要ります。自分で乗り降りできる方を車に乗せただけでは、この形にあたりません。
身体介護中心型とは、どちらか一方です。その場で切り替えず、迷う利用者はケアマネジャーと先に決めておきます。
記録では、行った介助の内容と算定の区分が抜けます。「通院介助」だけでは説明できません。院内の付き添いの扱いと、通院等の範囲は自治体によって違うので、所轄の市町村の介護保険担当課に確かめて手順書に残してください。
よくある質問
Q. 通院等乗降介助の単位数はいくらですか。 A. 片道1回につき97単位です。往復すれば2回の算定になります。
Q. 運転の時間は算定に入りますか。 A. 入りません。遠い病院でも近い診療所でも、片道の単位数は同じです。
Q. 運賃は誰が払いますか。 A. 介護報酬とは別に、利用者から受け取る形になります。金額と受け取り方を契約のときに決めておきます。
Q. 自分で乗り降りできる方でも算定できますか。 A. 乗り降りの介助を行っていない場合は算定できません。車に乗せただけの送迎はこの形にあたりません。
Q. 身体介護と両方は取れますか。 A. 同じ時間について両方は算定できません。どちらか一方です。
Q. 院内の付き添いはどちらになりますか。 A. 自治体によって考え方に幅があります。所轄の市町村の介護保険担当課に確かめて、手順書に書き残してください。
Q. 待ち時間は算定できますか。 A. 待っている時間そのものは算定の対象になりません。待ち時間に介助を行った場合の扱いは、窓口に確かめてください。
Q. 同じ日に2か所回った場合は何回ですか。 A. 乗り降りの回数で数えます。家から1か所目、1か所目から2か所目、2か所目から家なら3回です。扱いは自治体に確かめてください。
Q. 途中で買い物に寄れますか。 A. 通院等の範囲に入るかどうかが論点になります。市町村が範囲を決めている部分があるので、確かめてから計画に入れてください。
Q. 家族の車に同乗する場合は。 A. 訪問介護員が自分で運転する車であることが前提です。家族の車に同乗する形は当てはまりません。
Q. 記録には何を書きますか。 A. 日付と行き先、出発と到着の時刻、行った介助の内容、前後に行ったこと、算定の区分、運賃の受け取りです。
Q. 「通院介助」とだけ書いてはだめですか。 A. 乗り降りの介助をしたかどうかが分かりません。移乗を介助したなど、実際の動きの言葉で書いてください。
Q. ケアプランに書いていない受診に同行しました。 A. 計画に無い形なので、そのままでは算定しづらくなります。ケアマネジャーに連絡して、計画の変更を進めてください。
Q. 要支援の方でも使えますか。 A. 総合事業の扱いになる場合があり、市町村によって仕組みが違います。所轄の窓口で確かめてください。
Q. 介護タクシーとの違いは何ですか。 A. 訪問介護として行う介助と、運送の事業として行うものは仕組みが違います。両方の資格を持つ事業所もあるので、どちらで提供しているかを契約で明確にしてください。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. ケアプランの位置づけ、記録の内容、請求の区分の3つです。記録は身体介護のように読めるのに請求は乗降介助という食い違いが、いちばん指摘されます。
Q. 車は事業所のものでないとだめですか。 A. 訪問介護員が自分で運転する車であることが前提です。誰の名義の車かではなく、保険の対象になっているかを先に確かめてください。
Q. 車いすのまま乗れる車が必要ですか。 A. 利用者の状態によります。移乗の介助で乗れる方もいます。移乗が難しくなってきたら、車の形を見直す合図です。
Q. 通院の付き添いを家族から頼まれました。 A. ケアプランに位置づけられていない形では算定できません。ケアマネジャーに連絡して、計画に入れるかどうかを決めてもらいます。
Q. 記録はヘルパーが書きますか。 A. 訪問した本人が書きます。乗り降りのどこを介助したかは、行った人しか書けません。
Q. 受診が長引いて、次の訪問に遅れそうです。 A. 先に次の利用者へ連絡します。通院の日は、その職員の訪問を少なめに組んでおくのが現実的です。遅れた事実と連絡した時刻を記録に残してください。
Q. 職員によって判断が変わってしまいます。 A. 手順書を1枚作ってください。どの利用者をどちらで算定するか、院内の付き添いをどう扱うかを書いておけば、その場で迷いません。