緊急時訪問介護加算|算定の条件と記録
目次
夜に家族から電話が入り、予定に無い訪問に走った。結果として利用者は無事だった。ところが請求の段になって、あれは加算を取れたのか、取れないのかが分からない。記録も走り書きしか残っていない、という形になりがちです。
この記事では、緊急時訪問介護加算を、算定できる場面・ケアマネジャーとのやり取り・記録に残すことの3つに分けて整理します。単位数の説明より、あとから説明できる記録の形を中心に書きます。
結論:計画に無い身体介護を、要請を受けて行ったとき
緊急時訪問介護加算とは、ケアプランに位置づけられていない訪問介護を、利用者や家族からの要請を受けて緊急に行った場合に算定する加算です。単位数は1回につき100単位とされています。
条件は4つあります。
1つ目は、要請があることです。事業所の判断だけで訪問した場合は当てはまりません。
2つ目は、ケアマネジャーとの連携です。要請を受けたら、担当の介護支援専門員に連絡し、必要と認められることが要ります。
3つ目は、身体介護が中心であることです。生活援助だけの訪問は対象外とされています。
4つ目は、要請から24時間以内に行うことです。
ポイントはここです。3つ目でつまずきます。「様子を見てきてほしい」という要請で駆けつけ、実際には安否の確認と片づけだけをして戻ると、身体介護が中心とは言えなくなります。
算定できる場面と、できない場面
一般には、次のような場面が算定できる例として挙げられています。
1つ目は、排せつの失敗です。ベッドや衣類が汚れ、そのままでは過ごせない状態。
2つ目は、転倒したあとの対応です。けがの状況を確かめ、起き上がりや移動を介助する。
3つ目は、体調の急な変化です。嘔吐や発熱で、身の回りの世話が必要になった。
一方で、当てはまらないとされる例もあります。
1つ目は、生活援助だけの訪問です。買い物や掃除のみ。
2つ目は、事業所の都合で予定を動かした訪問です。
3つ目は、要請が無い訪問です。定期の見守りの延長で立ち寄った場合。
2つ目は勘違いしやすいところです。予定していた訪問の時間を早めた、遅らせたというのは緊急ではありません。計画に無い訪問を足したかどうかで見ます。
迷う場面では、ケアマネジャーに状況を伝えて判断をそろえます。後から請求で返戻になるより、その場で確かめるほうが早く済みます。
ケアマネジャーへの連絡をどう残すか
この加算でいちばん見られるのが、ケアマネジャーとのやり取りの記録です。
残すのは4つです。
1つ目は、連絡した日時です。要請を受けてから連絡するまでの時間が分かる形にします。
2つ目は、連絡した相手です。担当の介護支援専門員の氏名。
3つ目は、連絡の方法です。電話、メッセージ、留守番電話への録音など。
4つ目は、相手の返答です。訪問が必要と認められた旨。
4つ目が抜けやすいところです。「連絡した」とだけ書かれていて、相手が何と答えたかが残っていない。これだと、連携をして必要と認められたことを説明できません。
夜間や休日で、その場ではつながらないこともあります。その場合は、留守番電話に残した、翌朝あらためて伝えて了解を得たという経過をそのまま書きます。つながらなかった事実も記録です。
記録に残す7つ
緊急の訪問の記録に残すのは7つです。
要請を受けた日時。要請した人と続柄。要請の内容。ケアマネジャーとのやり取り。訪問した時刻と終了した時刻。行った介護の内容。その後の状態。
要請を受けた日時と、訪問した時刻の両方を書きます。24時間以内という条件は、この2つがそろってはじめて説明できます。
行った介護の内容は、身体介護の部分を具体的に書きます。「対応した」ではなく、「汚れた衣類を交換し、清拭を行った」という形です。
その後の状態は、次の定期の訪問につながります。受診につないだ場合は、その結果も追記します。
記録の置き場所は、通常のサービス提供記録と同じつづりにします。緊急の訪問だけを別のファイルに分けると、その利用者に何が起きていたかを時系列で追えなくなります。同じつづりに並べたうえで、緊急の訪問だと一目で分かる印を付けておくと、月末に数えるときも楽になります。
書く人は、訪問した本人です。事務所に戻ってから別の職員がまとめると、聞き取りの分だけ内容が薄くなります。当番の職員が書けるように、短い様式を用意しておきます。
訪問介護計画をどうするか
緊急の訪問が続く場合、訪問介護計画の見直しが要ります。
同じ理由の緊急の訪問が毎月のように起きているなら、それはもう緊急ではなく、必要なサービスが計画に足りていない状態です。
見直しの流れは3段です。
1つ目は、記録を並べることです。いつ、どんな理由の要請があったかを時系列に並べます。
2つ目は、ケアマネジャーに伝えることです。回数と理由を示して、ケアプランの検討を依頼します。
3つ目は、計画を直すことです。必要な内容が計画に入れば、緊急ではなく通常の訪問になります。
同じ月に同じ理由で繰り返し算定している状態は、確認の対象になりやすいとされています。回数が増えてきたら、算定を続ける前に計画の見直しを進めるほうが安全です。
回数の数え方
回数の数え方でよく迷うのは3つです。
1つ目は、1回の要請で何回算定できるかです。原則として1回とされています。
2つ目は、同じ日に別の要請があった場合です。別の事由であれば、それぞれで判断することになります。ここは指定権者の考え方に幅があるので、確かめてください。
3つ目は、通常の訪問の前後に緊急の訪問をした場合です。通常の訪問とは別に、緊急の訪問として算定する形になります。
2つ目は自己判断しないでください。同じ日に2回算定した請求は目につきます。事前に窓口の考え方を聞いておくと、迷わずに済みます。
要請を受けた電話で何を聞くか
緊急の要請は、電話を受けた数分で算定できるかどうかが決まります。あとから聞き直せないことを、その場で聞いておきます。
聞くのは5つです。
1つ目は、誰が電話をしているかです。本人か、家族か、近隣の方か。続柄まで聞きます。
2つ目は、今どうなっているかです。転んだ、汚れた、熱がある。状況をそのままの言葉で聞き取ります。
3つ目は、けがや体調の程度です。受診が要る状態なら、訪問より先に救急への連絡を勧める場面もあります。
4つ目は、今すぐ来てほしいかです。時間の希望を聞きます。
5つ目は、本人の様子です。電話をしている人が家族の場合、本人が今どうしているかを確かめます。
3つ目を最初に置いてください。加算の判断より、利用者の安全が先です。訪問より救急が先の場面があります。ここを飛ばして訪問の段取りに入ると、到着までの時間が無駄になります。
聞いたことは、その場でメモに残します。電話のそばに、この5つを印刷して貼っておく形にしている事業所もあります。当番が交代しても、聞く内容が変わりません。
夜間の体制を先に決めておく
緊急の要請は、日中の事務所が開いている時間には来ません。夜間と休日の受け方を先に決めておきます。
決めるのは4つです。
1つ目は、電話を受ける人です。当番を決め、利用者と家族に番号を伝えておきます。
2つ目は、判断する人です。訪問するかどうかを決める人。当番が判断に迷ったときの相談先も決めます。
3つ目は、記録の付け方です。その場で書けるように、短い様式を用意します。走り書きでよいので、要請の時刻だけは必ず残します。
4つ目は、翌営業日の引き継ぎです。誰が記録をまとめ、誰がケアマネジャーに連絡するか。
当番の負担が特定の職員に寄らないようにします。月の初めに当番表を作り、利用者にも今月の連絡先を伝えておく形にすると、電話を受ける人が毎回変わっても混乱しません。当番表は勤務の記録としても残ります。
3つ目が、後から効いてきます。時刻をその場で残していないと、24時間以内かどうかを思い出しで書くことになります。思い出しで書いた記録は、説明の場で弱くなります。
まとめ
緊急時訪問介護加算は、計画に無い訪問介護を、要請を受けて緊急に行った場合に算定します。1回につき100単位とされています。
条件は4つ。要請があること、ケアマネジャーと連携して必要と認められること、身体介護が中心であること、要請から24時間以内であること。身体介護が中心という部分でつまずきます。
記録で抜けやすいのは、ケアマネジャーの返答と要請を受けた時刻です。連絡したことだけでは、必要と認められた説明になりません。
同じ理由の緊急の訪問が続くなら、計画の見直しに進みます。算定を重ねるより、必要なサービスを計画に入れるほうが利用者のためになります。回数の数え方と同じ日の扱いは、所轄の指定権者に確かめてください。
よくある質問
Q. 緊急時訪問介護加算は1回いくらですか。 A. 100単位とされています。訪問した時間の長さによって変わるものではありません。
Q. 誰からの要請なら算定できますか。 A. 利用者本人か、その家族などからの要請とされています。事業所の判断だけで訪問した場合は当てはまりません。
Q. ケアマネジャーからの依頼で訪問した場合は。 A. もともとの要請が利用者や家族から出ていることが前提です。ケアマネジャーを経由して連絡が来た場合は、その経過を記録に書いておきます。
Q. 生活援助だけでも算定できますか。 A. 身体介護が中心の訪問であることが条件とされています。生活援助だけの訪問は対象外です。
Q. 24時間以内とは、いつから数えますか。 A. 要請を受けた時点からです。要請の時刻を記録に残していないと、この条件を説明できません。
Q. 夜中にケアマネジャーに連絡がつきませんでした。 A. つながらなかった経過と、その後いつ連絡して了解を得たかを書きます。つながらなかったことも記録です。
Q. 留守番電話に入れただけでもよいですか。 A. その後に本人と連絡が取れ、必要と認められたことを残してください。入れた時刻と、折り返しがあった時刻の両方を書きます。
Q. 同じ日に2回訪問しました。2回算定できますか。 A. 1回の要請につき原則1回とされています。別の事由であれば扱いが変わることがあるので、所轄の指定権者に確かめてください。
Q. 通常の訪問の直後に呼ばれました。 A. 計画に無い訪問を追加した形であれば、緊急の訪問として扱います。通常の訪問の記録と分けて残してください。
Q. 毎月のように緊急の訪問があります。 A. 必要なサービスが計画に足りていない可能性があります。回数と理由をまとめてケアマネジャーに伝え、ケアプランの見直しを進めてください。
Q. 訪問介護計画は直す必要がありますか。 A. 緊急の訪問を受けて内容が変わるなら、必要な修正を行うこととされています。計画と実際の提供内容がずれたままにしません。
Q. 記録の様式は決まっていますか。 A. 決まった様式はありません。サービス提供記録に、要請の日時とやり取りの欄を足す形で足ります。
Q. 要請の内容は、どこまで書きますか。 A. 誰が、何を求めてきたかを、言われたとおりに書きます。「転んだので来てほしい」といった、そのままの言葉が残っていると状況が伝わります。
Q. 届出は必要ですか。 A. 体制に関する届出が必要とされる場合があります。算定を始める前に、所轄の指定権者の案内を確かめてください。
Q. 訪問したが、結果として何もしませんでした。 A. 身体介護を行っていない場合は、算定の条件から外れます。行ったことをそのまま書いて、算定しない判断も残します。
Q. 家族から「来なくてよい」と言われて途中で戻りました。 A. 訪問して介護を行っていない形になります。経過を記録に残し、請求には乗せません。
Q. 要請から24時間を過ぎてしまいました。 A. 条件から外れるので算定できません。ただし訪問した事実と行った内容は記録に残します。算定しない判断も、記録として意味があります。
Q. 加算を算定した月は、ケアマネジャーに報告しますか。 A. 決まりはありませんが、緊急の訪問があったこと自体はその都度伝えているはずです。月末に回数をまとめて伝えておくと、ケアプランの見直しの話につなげやすくなります。
Q. 夜間対応型訪問介護や定期巡回のサービスでも算定できますか。 A. サービスの種類ごとに扱いが違います。夜間や随時の訪問を前提にしたサービスでは、加算の考え方そのものが変わるので、所轄の指定権者に確かめてください。
Q. 訪問したヘルパーが、その場で記録を書けませんでした。 A. 戻ってから書いて構いません。ただし要請の時刻と到着の時刻だけは、その場でメモに残します。この2つは後から正確に思い出せません。
Q. 家族が「加算がつくなら呼ばなかった」と言っています。 A. 費用が発生することを、契約のときに説明しておきます。重要事項説明書に緊急時の扱いを書いておくと、その場での説明が短く済みます。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 要請の記録、ケアマネジャーとのやり取り、提供した内容の3つです。この3つが同じ記録から読めると、説明が早く終わります。