生産性向上推進体制加算|委員会と報告の記録
目次
見守りの機器は入れた。インカムも使っている。それでも加算を取っていない施設があります。理由を聞くと、たいてい「委員会とデータの提出が面倒で止まっている」と返ってきます。
この記事では、生産性向上推進体制加算を、委員会の開き方・記録の残し方・年1回の報告の3つに分けて整理します。機器の選び方ではなく、取り始めたあとに続く形を中心に書きます。
結論:機器より、委員会と記録で決まる
生産性向上推進体制加算とは、見守り機器などのテクノロジーを導入し、委員会を開いて業務の改善を続けている場合に算定する加算です。2024年度の介護報酬改定で新しく設けられました。
区分は2つで、加算(I)は月100単位、加算(II)は月10単位です。(I)は上位の区分で、成果に関するデータの提出が要件に加わります。
ポイントはここです。機器を入れただけでは算定できません。求められているのは、機器を使って業務をどう変えたかを、委員会で話し合い、記録に残していることです。
対象になるサービスの種類は限られています。自分の施設が当てはまるかは、所轄の指定権者(都道府県または市町村)の資料で確かめてください。
委員会は3か月に1回
この加算の中心が、生産性向上委員会です。開催の頻度は3か月に1回以上とされています。
委員会で扱うのは4つです。
1つ目は、導入した機器の使われ方です。実際に使われているか、止まっていないか。
2つ目は、職員の負担の変化です。楽になった業務、かえって手間が増えた業務。
3つ目は、利用者の安全です。機器を入れたことで、見落としが増えていないか。
4つ目は、次に取り組むことです。1つだけ決めます。
2つ目で正直な話が出るかどうかが分かれ目です。「機器のおかげで楽になりました」で終わる委員会は、記録に書くことがありません。かえって増えた手間を1つ挙げてもらうと、話が具体的になります。
委員会は、既にある別の委員会と同じ日に続けて開く形にしている施設が多くあります。事故防止や感染症の委員会のあとに30分。集まる手間が1回で済みます。
どの業務から手をつけるか
改善の対象を広げすぎると、何も終わりません。最初に選ぶのは1つです。
選びやすいのは4つです。
1つ目は、夜間の見回りです。見守りの機器の効果が、いちばん時間に出やすいところです。
2つ目は、記録の書き方です。同じことを紙とソフトに二重に書いていないか。
3つ目は、職員どうしの連絡です。探して呼びに行く時間。インカムで消えます。
4つ目は、物の場所です。備品を探す時間は、どの施設でも積み上がっています。
2つ目から始める施設が多くあります。二重に書いている記録は、機器を買わなくても減らせます。加算のために機器を入れる前に、消せる手間がないかを見てください。
選んだら、その業務にかかっている時間を測ります。1週間、何分かかったかを書き留めるだけです。ここが、あとで効果を示すときの土台になります。
委員会の記録に残す6つ
記録に残すのは6つです。
1つ目は、開催した日時です。
2つ目は、出席者です。氏名と職種。
3つ目は、扱った内容です。上の4つのどれを話したか。
4つ目は、出た意見です。職員から出た声をそのまま書きます。
5つ目は、決めたことです。次に取り組むことと、担当と期限。
6つ目は、前回決めたことの結果です。やったか、やれなかったか。
6つ目が抜けます。毎回その場の話で終わると、改善が積み上がりません。前回の議事録を持ち込んで、1行目に結果を書く形にすると続きます。
4つ目は、後から効きます。職員の生の声は、実績の報告を書くときの材料になります。
出た意見を、次につなぐ
委員会で意見は出る。ところが次の回になると、誰も覚えていない。これが改善の止まる形です。
つなぐ方法は3つです。
1つ目は、決めたことを1つに絞ることです。3つ決めると、3つとも進みません。
2つ目は、担当と期限を書くことです。「みんなで」は誰もやりません。
3つ目は、次の回の1行目に結果を書くことです。やれたか、やれなかったか。やれなかった理由まで書きます。
3つ目がいちばん効きます。結果を書く欄が議事録の先頭にあると、開く前に思い出します。
やれなかったことを責める場にしないでください。やれなかった理由のほうが、次の改善の材料になります。人手が足りない、手順が合っていない、機器が使いにくい。どれも記録に残す価値があります。
データの提出と実績の報告
この加算には、業務改善の効果を示すデータを提出する要件があります。
提出するのは、一般に次のようなものです。
1つ目は、職員の業務の時間です。記録に使っている時間、見回りにかかる時間など。
2つ目は、職員の負担感です。アンケートで取る形が多くあります。
3つ目は、利用者の状態に関する情報です。
1つ目は、導入の前に測っておかないと比べられません。これが後から効いてきます。機器を入れる前に、その業務に何分かかっているかを1回測る。この5分の作業を飛ばすと、あとで効果を示せません。
実績の報告は、事業年度ごとに1回行う形になっています。締め切りが決まっているので、年度の終わりに慌てないよう、委員会の記録から拾える形にしておいてください。
提出の方法と様式は変わることがあります。最新の案内を、所轄の指定権者のホームページで確かめてください。
導入した機器をどう扱うか
要件にあたる機器は、種類が決まっています。入れたい機器が該当するかを、買う前に確かめてください。
確かめるのは3つです。
1つ目は、要件の区分に当てはまるかです。見守りの機器、インカム、記録のソフトなど。
2つ目は、どれだけの利用者に使うかです。一部の居室だけでよいのか、全体に入れるのか。
3つ目は、使い続けられるかです。通信の費用、更新の費用、壊れたときの対応。
3つ目を見落とすと、2年目に止まります。加算で入る額と、維持にかかる額を並べて見てください。月10単位の区分だと、通信費で消えることもあります。
機器が止まっている期間があれば、その期間は算定しない判断になります。故障の記録と、復旧した日を残しておいてください。
職員に説明しておくこと
導入のときに、職員へ説明しておくことが3つあります。
1つ目は、見張るための機器ではないことです。利用者にも職員にも、監視だと受け取られると使われません。
2つ目は、何が楽になる見込みかです。夜間の見回りの回数、記録を書く時間。
3つ目は、うまくいかなければ変えることです。委員会で話して戻せる、と伝えます。
3つ目を伝えておくと、意見が出るようになります。「入れたからには使わないといけない」という空気になると、委員会で本当のことが出てきません。
つまずきやすい4つ
実際に止まりやすいのは4つです。
1つ目は、委員会が開かれなくなることです。忙しい時期に飛ばして、そのまま戻らない。
2つ目は、記録が「実施した」だけになることです。内容が無いと、説明に使えません。
3つ目は、導入前のデータが無いことです。効果を比べられません。
4つ目は、報告の締め切りを過ぎることです。年度の終わりに気づく形。
1つ目は、予定表に先に入れるだけで防げます。年度の初めに、4回分の日付を決めて入れておきます。
利用者と家族への説明
居室に見守りの機器を置く場合は、利用者と家族への説明が要ります。ここを飛ばすと、後から苦情になります。
伝えるのは3つです。
1つ目は、何を見る機器かです。呼吸や体の動き、ベッドから離れたこと。映像を撮るものかどうかは必ず伝えます。
2つ目は、誰が見るかです。職員だけが見ること、外に出さないこと。
3つ目は、断れることです。置かない選択ができると伝えます。
1つ目でつまずきます。「カメラですか」と聞かれて答えられないと、そこで不信が残ります。導入の前に、職員全員が同じ説明をできる状態にしておいてください。
説明した記録は、利用者ごとに残します。説明した日、説明した相手、同意の有無。断られた場合も、その旨を書いておきます。
まとめ
生産性向上推進体制加算は、加算(I)が月100単位、加算(II)が月10単位です。機器を入れただけでは算定できません。
中心にあるのは生産性向上委員会で、3か月に1回以上開きます。記録には、出席者・扱った内容・出た意見・決めたこと、そして前回決めたことの結果を書きます。
導入する前に、その業務にかかっている時間を1回測ってください。測っていないと、効果を示すデータが作れません。5分の作業です。
実績の報告は事業年度ごとに1回です。年度の終わりに慌てないよう、委員会の記録から拾える形にしておきます。対象のサービス・機器の範囲・提出の様式は、所轄の指定権者の案内で確かめてください。
よくある質問
Q. 生産性向上推進体制加算の単位数はいくらですか。 A. 加算(I)が月100単位、加算(II)が月10単位です。(I)は成果に関するデータの提出が要件に加わります。
Q. どのサービスが対象ですか。 A. 施設系のサービスなどに限られています。自分の施設が当てはまるかは、所轄の指定権者の資料で確かめてください。
Q. どんな機器を入れればよいですか。 A. 見守りの機器、インカム、記録のソフトなどが挙げられています。買う前に、要件の区分に当てはまるかを確かめてください。
Q. 委員会はどのくらいの頻度ですか。 A. 3か月に1回以上とされています。年度の初めに4回分の日付を決めて、予定表に入れておくと飛びません。
Q. 委員会は単独で開かないといけませんか。 A. 別の委員会と同じ日に続けて開いている施設が多くあります。記録は分けて残してください。
Q. 委員会の記録には何を書きますか。 A. 日時、出席者、扱った内容、出た意見、決めたこと、前回決めたことの結果の6つです。
Q. 出席者は誰ですか。 A. 施設の職員のうち、実際に機器を使っている人を入れてください。管理する立場の人だけで開くと、現場の話が出ません。
Q. データの提出は何を出しますか。 A. 業務にかかっている時間、職員の負担感、利用者の状態に関する情報などです。様式は指定権者の案内で確かめてください。
Q. 導入前のデータを取っていませんでした。 A. 今からでも測ってください。今の時間を測っておけば、次の改善と比べられます。過去にさかのぼって作らないことが大事です。
Q. 実績の報告はいつまでですか。 A. 事業年度ごとに1回、決められた期日までです。年度の終わりが締め切りになるので、委員会の記録から拾える形にしておきます。
Q. 機器が壊れて使えない期間がありました。 A. その期間は算定しない判断になります。故障した日と復旧した日を記録に残してください。
Q. 加算(II)から(I)に上げられますか。 A. 上位の区分は要件が増えます。体制の変更として届け出る形になるので、窓口に手順を確かめてください。
Q. 職員が機器を使ってくれません。 A. 委員会でその話を出してください。使われない理由は、たいてい手順が現場に合っていないことです。使わせる前に、手順を変えるほうが早く済みます。
Q. 利用者や家族への説明は必要ですか。 A. 居室に機器を置く場合は説明します。見張るためではないことを伝え、説明した記録を残してください。
Q. 通信の費用が加算より高くつきます。 A. 実際に起こります。加算で入る額と維持にかかる額を並べて見てください。月10単位の区分では、費用のほうが上回ることがあります。
Q. 委員会を開けなかった月があります。 A. 3か月に1回の間隔が空いた場合、要件を満たさない期間が出ます。開けなかった事実と理由を残し、次回を早めに設定してください。
Q. 小規模な施設でも取れますか。 A. 規模の条件はありません。ただし委員会と報告の手間は規模にかかわらず同じだけかかります。その手間を誰が持つかを先に決めてから始めてください。
Q. 委員会の名前は「生産性向上委員会」でないとだめですか。 A. 名前そのものより、扱っている内容と記録が要件に合っているかです。既存の委員会の中に位置づける場合は、その部分だけ記録を分けて残してください。
Q. 職員アンケートはどう取りますか。 A. 設問を多くしないことです。負担が減ったか、増えたか、変わらないかの3択に、自由に書ける欄を1つ付ければ足ります。毎回同じ設問にすると、変化が見えます。
Q. 効果が出ませんでした。報告に書けません。 A. 出なかったことをそのまま書いて構いません。効果が出なかった理由と、次にどうするかが書いてあるほうが、取り組みとして説明できます。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 委員会の記録、データの提出の控え、機器の稼働の状況です。この3つが同じ場所から出てくると説明が早く終わります。