麻薬帳簿とは?施設で預かるときの記録と保管
目次
利用者が麻薬の処方を受けている。施設で預かることになったが、普通の薬と同じ扱いでよいのか分からない。帳簿が要ると聞いたものの、どこまでやればよいのかがはっきりしません。
この記事では、麻薬帳簿を、誰に義務があるか・施設で預かるときの記録・保管の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社が何をすべきかを判断できる状態を目指します。
結論:帳簿の義務は免許を持つ者にかかる
麻薬帳簿とは、麻薬の譲受と譲渡、廃棄などを記録する帳簿のことです。麻薬及び向精神薬取締法にもとづくものです。
帳簿の備え付けが義務づけられているのは、麻薬小売業者、麻薬診療施設の開設者など、免許を受けた者です。
ポイントはここです。介護の施設が利用者から麻薬を預かる場合、法律上の「麻薬帳簿」とは扱いが異なります。ただし、施設として記録を残さなくてよいという意味ではありません。
利用者本人に処方された麻薬を、本人に代わって管理する形になります。紛失や誤用が起きたときに説明できる記録が要ります。
施設で預かるときに残す記録
法律上の帳簿と別に、施設として残す記録を決めます。入れるのは6つです。
利用者の氏名。
薬の名前と規格。
預かった日と数量。誰から受け取ったか。
使用した日と数量。誰が、いつ、何錠使ったか。
残数。
廃棄や返却。いつ、誰に、どれだけ返したか。
抜けやすいのは、残数を毎回書くことです。使うたびに残数を書いておくと、数が合わなくなったときにどこからずれたかが分かります。
記録は、使うたびにその場で書きます。後からまとめて書くと、残数が合わなくなります。
保管の仕方
保管には特別の扱いが求められます。確かめるのは3つです。
1つ目は、鍵のかかる場所に保管することです。他の薬と分けて、専用の場所にします。
2つ目は、鍵の管理です。誰が持つか、どこに置くか。誰でも開けられる状態にしないのが要点です。
3つ目は、数量の確認です。交代のときや、日に1回、残数を確かめます。
数が合わないことに気づいたら、すぐに報告します。紛失は届出が求められる場合があります。自分で探して解決しようとせず、管理者と薬局、医療機関に伝えます。
冷所での保管が必要なものもあります。保管の条件を、薬ごとに記録に書いておきます。
使うときの手順
使うときの手順を決めておきます。4段です。
1つ目は、指示の確認です。処方の内容、使う時間、量。
2つ目は、取り出しと記録です。2人で確かめる形が安全です。取り出した時点で記録に書きます。
3つ目は、使用です。誰が、いつ使ったか。
4つ目は、残数の確認です。
介護職が行える範囲には制約があります。医療行為に当たる部分は、看護職や医師が行います。自社の職員が何をできるかは、協力医療機関や所管の自治体に確かめます。
貼付剤の場合は、貼った場所と剥がした時間も記録します。剥がし忘れが起きやすいためです。
残った麻薬の扱い
利用者が亡くなった場合や、処方が変わった場合、麻薬が残ります。扱いを決めておきます。
基本は、交付を受けた薬局や医療機関に返却します。施設で勝手に廃棄することはできません。
返却したことを記録に残します。いつ、誰に、何をどれだけ返したか。受け取った側の確認も残しておくと確実です。
亡くなった直後は、手続きが集中して忘れやすい場面です。看取りの手順の中に、「麻薬の返却」を1行入れておくと抜けません。
貼付剤の使用済みのものも、扱いを確かめます。そのままごみに出せない場合があります。
向精神薬との違い
向精神薬も、取締法の対象ですが、扱いが麻薬とは異なります。
麻薬のほうが、保管と記録の求められ方が厳しくなっています。
施設で預かる場合、どちらも他の薬と分けて保管するのが安全です。区別が付かないと、扱いを間違えます。
自社が預かっている薬に、麻薬や向精神薬が含まれているかを一度確かめます。薬の名前だけでは分からないので、薬局に聞くのが確実です。
職員への周知
扱いを知らない職員が触ると、事故につながります。伝えておくのは3つです。
1つ目は、どれが麻薬かです。保管の場所と、対象の薬。
2つ目は、誰が扱えるかです。看護職のみか、決められた職員か。
3つ目は、数が合わないときの報告先です。
新しく入った職員には、最初に伝えます。知らずに触ってしまう形がいちばん危ないためです。
研修の題材にもなります。服薬の研修の中で、麻薬の扱いを1項目入れておくと、定期的に伝わります。
記録の保存
施設として残した記録の保存の期間は、介護保険の記録に合わせる形が一般的です。完結の日から2年が国の基準で、条例で5年としている自治体があります。
薬局や医療機関の側でも記録が残ります。数が合わないときは、両方を突き合わせられます。
紛失や盗難があった場合、届出が求められることがあります。どこへ届け出るかを、あらかじめ確かめて紙に控えておきます。
誰が記入できるか
麻薬の帳簿は、記入できる人を決めておく必要があります。誰でも書ける状態にはしません。
決めることは3つあります。
1つ目は、記入する人です。看護職か、麻薬管理者として届け出ている人が中心になります。事業所の種類によって必要な体制が違うので、所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。
2つ目は、確かめる人です。記入した人とは別の人が確かめる形にします。1人で完結させない形が基本です。
3つ目は、鍵を持つ人です。保管場所の鍵を誰が持つか。持つ人の人数は少ないほうが管理しやすくなります。ただし夜間に開けられない状態にはしないことです。
3つを名前で決めて、掲示はせずに手順書に書きます。誰が鍵を持っているかを誰でも見られる場所に貼るのは、管理の面から避けられています。
数が合わないときの動き
帳簿と現物の数が合わないことは、起きてはいけないが起きることです。起きたときの動きを先に決めておきます。
動きは4段です。
1つ目は、その場で探すことです。直前の記録を見て、時間をさかのぼります。記入漏れであることが最も多くあります。
2つ目は、責任者に伝えることです。自分で解決しようとして時間を置かないことです。
3つ目は、記録に残すことです。気づいた時刻、そのときの数、確かめた範囲。
4つ目は、届け出が必要かを確かめることです。麻薬の事故や紛失については、都道府県知事への届出が求められているとされています。該当するかどうかは所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。
隠さないことがいちばん大事です。数が合わない状態を黙って埋めると、次に合わなくなったときに原因をたどれなくなります。
保管の設備と条件
麻薬の保管は、他の薬と同じ場所に置かないことが基本です。
確かめるのは4つです。
1つ目は、鍵のかかる堅固な設備であることです。簡単に持ち出せる引き出しではありません。
2つ目は、他の医薬品と区別されていることです。同じ金庫の中でも、仕切って分けます。
3つ目は、温度と湿度です。薬によって条件が違うので、添付文書を確かめます。
4つ目は、開ける記録が残ることです。いつ誰が開けたか。帳簿と合わせて見られる形にします。
要件は法令で定められている部分があります。設備の条件や届出の要否は所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。事業所の種類によって、そもそも取り扱えるかどうかが変わります。
看取りの場面での扱い
麻薬が現場で出てくるのは、痛みの緩和が必要な場面が多くあります。看取りの記録と重なります。
気をつけるのは3つです。
1つ目は、指示の範囲です。医師の指示書に、使う量と間隔が書かれています。範囲を超える判断を現場でしないことです。
2つ目は、使ったあとの様子の記録です。痛みが和らいだか、呼吸の様子、眠気。麻薬の帳簿とは別に、看護の記録として残します。
3つ目は、亡くなったあとの残薬です。返却か廃棄か、手続きが定められています。家族に渡すことはできないとされています。手順は所轄の都道府県の薬務主管課と、処方した医療機関に確かめてください。
この場面では、家族への説明も要ります。麻薬という言葉に強い抵抗を持つ家族は少なくありません。痛みを取るための薬であることを、医師か看護職から伝える場を作ります。
記録が二重になる理由
麻薬の場面では、書く紙が増えます。帳簿、看護記録、介護記録、事故の記録。同じことを何度も書いている感覚になります。
分け方は3つです。
1つ目は、帳簿は数を追うものだということです。入った量、使った量、残った量。ここに様子は書きません。
2つ目は、看護記録は状態を追うものだということです。痛みの強さ、効き目、副作用らしい様子。
3つ目は、介護記録は生活を追うものだということです。食事が取れたか、眠れたか、表情。
3つは目的が違うので、まとめられません。まとめようとすると、どれかが薄くなります。分けたうえで、日付と時刻でつながる形にしておけば足ります。
まとめ
麻薬帳簿の備え付けが義務づけられているのは、免許を受けた者です。介護の施設が利用者から預かる場合は、法律上の帳簿とは扱いが異なります。
ただし、施設として記録を残さなくてよいわけではありません。氏名、薬の名前、預かった日と数量、使用、残数、返却の6つを残します。
保管は、鍵のかかる場所に、他の薬と分けて行います。鍵の管理と、日々の残数の確認を決めておきます。
残った麻薬は、交付を受けた薬局や医療機関に返却します。施設で廃棄することはできません。自社が何をできるかは、協力医療機関や所管の自治体、薬局に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 介護職が麻薬を扱ってもよいですか。 A. 医療行為に当たる部分は行えません。保管や記録の補助がどこまでできるかは、状況によって分かれます。協力医療機関や所管の自治体に、自社の体制で確かめます。判断に迷う行為は看護職に依頼します。
Q. 在宅のサービスでも預かることがありますか。 A. 訪問系では、預かるより本人や家族が管理する形が一般的です。ただし、服薬の確認や、残数の把握を依頼されることがあります。どこまで関わるかを、契約や計画で明らかにしておきます。
Q. 数が合わないときは、どう報告しますか。 A. すぐに管理者に伝え、薬局や医療機関に連絡します。紛失の届出が求められる場合があります。自分で探して解決しようとせず、経過を記録に残します。隠すことが、いちばん重い結果につながります。
Q. 貼付剤はどう記録しますか。 A. 貼った日時と場所、剥がした日時を記録します。剥がし忘れが起きやすいため、次に貼る人が前の状態を確かめられる形にします。使用済みのものの扱いも、薬局に確かめて決めておきます。
Q. 保管の場所はどこがよいですか。 A. 鍵のかかる場所で、他の薬と分けます。金庫や専用の引き出しを使っている事業所があります。鍵を誰が持つか、夜間にどうするかも決めておきます。
Q. 利用者が亡くなった場合、残った薬はどうしますか。 A. 交付を受けた薬局や医療機関に返却します。看取りの手順の中に返却の項目を入れておくと、手続きが集中する中でも抜けません。返却の記録を残します。
Q. 向精神薬も同じ扱いですか。 A. 取締法の対象ですが、麻薬より扱いが緩やかな部分があります。ただし、施設としては他の薬と分けて保管するほうが安全です。どれが対象かは、薬局に確かめます。
Q. 記録の様式はありますか。 A. 施設として残す記録の様式は定められていません。6つの項目が入っていれば、自社で作れます。使うたびに残数を書ける形にしておくのが要点です。
Q. 職員にどう伝えればよいですか。 A. どれが麻薬か、誰が扱えるか、数が合わないときの報告先。この3つを最初に伝えます。新しく入った職員には、初日に伝えておきます。服薬の研修の中に組み込む形もあります。
Q. 預かること自体を断れますか。 A. 施設の体制によっては、預からない選択もあります。ただし、本人が管理できない場合、他に方法がないこともあります。何ができて何ができないかを、契約のときに家族と確かめておきます。
Q. 麻薬の帳簿は、電子で管理できますか。 A. 電子での管理が認められる場合がありますが、条件があるとされています。改ざんできない仕組みや、印刷して出せることが求められることがあります。所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。
Q. 帳簿は何年保存しますか。 A. 法令で保存年数が定められているとされています。介護の記録の保存年数とは別の扱いになるので、混同しないでください。年数は所轄の都道府県の薬務主管課に確かめます。
Q. 訪問介護のヘルパーが、麻薬に触れることはありますか。 A. 基本的に管理には関わりません。利用者宅にある場合も、ヘルパーが数えたり保管したりする立場にはならないのが一般的です。気づいたことは事業所とケアマネジャー、訪問看護に伝えます。
Q. 事業所の廃止や移転のときはどうしますか。 A. 届出と、在庫の処理の手続きが要るとされています。移す前に所轄の都道府県の薬務主管課に相談してください。先に運んでしまうと、手続きのやり直しになります。
Q. 帳簿の書き損じは、どう直しますか。 A. 二重線を引いて、訂正した人が分かる形にします。修正液や塗りつぶしは使いません。元の記載が読める状態で残すことが求められます。
Q. 帳簿と看護記録で、使った時刻が1分ずれていても問題になりますか。 A. 時計の違いで数分ずれることはあります。大きくずれていなければ問題にはなりません。ただし日付をまたぐずれは避けてください。夜勤帯は、どちらの日付で書くかを決めておきます。
Q. 事業所として麻薬を取り扱わない方針にできますか。 A. できます。取り扱わない場合は、訪問看護や医療機関が管理する形になります。方針を決めたら、契約のときに家族へ伝えておきます。あとから必要になってから決めると、対応が遅れます。