介護の記録書き方2026.06.03 公開KK-44

向精神薬管理簿とは?施設で預かるときの数え方

目次

睡眠薬や安定剤を預かっている利用者がいる。普通の薬と同じ引き出しに入れているが、これでよいのか分からない。管理簿という言葉は聞くものの、自分たちが作るものなのかもはっきりしません。

この記事では、向精神薬管理簿を、どんな薬が対象か・施設で残す記録・保管の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の扱いを決められる状態を目指します。

服薬の管理の全体から確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 服薬管理表の作り方

結論:法定の帳簿の義務は免許を持つ者にかかる

向精神薬管理簿とは、向精神薬の譲受、譲渡、廃棄などを記録する帳簿のことです。麻薬及び向精神薬取締法にもとづくものです。

記録の義務が定められているのは、向精神薬営業者、病院や診療所の開設者などです。

立場で扱いが違う免許を持つ者譲渡と譲受の記録盗難や紛失の届出法令で定めがある預かる施設数を合わせる記録飲んだ後の様子扱いは事前に確かめる
免許を持つ者と、預かる施設の違いを並べた比較の図

ポイントはここです。介護の施設が利用者から預かる場合、法定の帳簿とは扱いが異なります。ただし、記録を残さなくてよいという意味ではありません。

紛失や誤用が起きたときに、どこでずれたかを説明できる記録が要ります。数が合わないまま気づかない状態が、いちばん避けたい形です。

どんな薬が対象か

向精神薬は、依存性などの程度によって区分されています。介護の現場でよく見るのは、睡眠薬、抗不安薬、一部の鎮痛薬などです。

名前だけでは分かりません。同じような効き方でも、対象のものとそうでないものがあります。

対象かどうかを確かめる3つ方法見るところ薬の添付文書区分の記載薬局に聞く一包化のときに確かめる処方箋を見る薬の名前を一覧と照合
対象かどうかを確かめる3つの方法を並べた表

確かめ方は3つです。薬局に聞く。薬の情報提供の文書を見る。処方箋の内容を医療機関に確かめる。

預かっている薬を一覧にして、対象かどうかの列を作るのがいちばん確実です。一度作れば、変更のときだけ直せば済みます。

施設で残す記録

法定の帳簿と別に、施設として残す記録を決めます。麻薬より簡潔でかまいませんが、数が追える形にします。

入れるのは5つです。

利用者の氏名。薬の名前。預かった日と数量。使用した日と数量。残数。

管理簿の主な項目項目書き方受け入れた日と量誰から受けたか使った日と量飲む前の様子も残っている量毎回書いて締める記入した人確かめた人も
主な項目と、残数の書き方を並べた表

残数を毎回書くのが要点です。使うたびに残数が更新されていれば、合わなくなった時点が分かります。

月に1回、実際の数と記録の数を突き合わせます。合わないときは、その月の記録をさかのぼって見ます。

記録の様式は、服薬管理表と分けるか、同じ様式の中で欄を分けるか。どちらでもかまいませんが、対象の薬だと分かる印を付けておきます。

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実際に使える様式が必要な方へ

服薬の管理や記録の様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は向精神薬の扱いの話です。

商い屋で様式をさがす

保管の仕方

保管についても、他の薬と分けるのが安全です。決めるのは3つです。

1つ目は、場所です。鍵のかかる場所が望ましい形です。少なくとも、職員以外が触れない場所にします。

2つ目は、分け方です。利用者ごと、薬ごと。他の薬と混ぜないのが要点です。

3つ目は、確認の頻度です。月に1回は残数を数えます。

保管の3つの要点場所鍵のかかる場所に分け方人ごとに仕切る確認定期的に数える
場所・分け方・確認という3つの保管の要点を並べた層の図

盗難や紛失には注意が必要です。依存性のある薬は、外部からの持ち出しの対象になることがあります。鍵の管理を決めておきます。

冷所で保管するものは少ないですが、保管の条件を一覧に書いておくと、担当が代わっても守られます。

数が合わないとき

数が合わないことに気づいたら、順番に確かめます。4段です。

1つ目は、記録の確認です。書き忘れ、二重に書いた、計算の誤り。

2つ目は、実際の数の再確認です。別の場所に移っていないか、包の中に残っていないか。

3つ目は、関わった職員への確認です。責める形にせず、事実を集めます。

4つ目は、報告です。管理者、薬局、医療機関。

数が合わないときの4段1記録気づいた時刻と数2実数もう一度数え直す3聞き取り直前に触れた人へ4報告届出の要否を確かめる
記録・実数・聞き取り・報告という4段のフロー

紛失や盗難が疑われる場合、届出が求められることがあります。どこへ届け出るかを、あらかじめ確かめて紙に控えておきます。

隠して探し続けるのがいちばん危ない形です。時間が経つほど、経緯が分からなくなります。

服薬の場面で気をつけること

向精神薬は、効き方が強く出ることがあります。使う場面で見ることが3つあります。

1つ目は、飲んだ後のふらつきです。睡眠薬を飲んだ後にトイレへ行こうとして転倒する、という形が起きます。

2つ目は、日中の眠気です。夜の薬が翌日まで残ることがあります。食事のときの覚醒の状態を見ます。

3つ目は、飲み合わせです。他の薬との組み合わせで、効き方が変わることがあります。

3つの観察点観察点見る場面ふらつき起き上がりと歩行日中の眠気食事と活動の時間飲み合わせ薬が増えたとき
ふらつき・眠気・飲み合わせという3つの観察点を並べた表

気づいたことは記録に書き、看護職や医師に伝えます。「夜の薬を飲んだ後、いつもより足元が不安定だった」という記録が、処方の見直しにつながります。

薬の量や種類の変更は、医師が判断します。介護の側は、変化を伝える役割です。

減らす方向を考える

向精神薬は、長く続くほど見直しの機会が減ります。定期的に考える場を持ちます。

見るのは3つです。

1つ目は、いつから飲んでいるかです。開始の理由が今も当てはまるか。

2つ目は、効いているかです。眠れているか、落ち着いているか。

3つ目は、影響が出ていないかです。転倒、日中の眠気、食欲の低下。

ケアの工夫で代わりになることもあります。日中の活動を増やす、夕方の過ごし方を変える、寝る環境を整える。

記録に残っていれば、医師との相談の材料になります。「この3か月で転倒が2回、どちらも夜間」という事実は、処方を見直す根拠になります。

職員への周知

扱いを知らないと、他の薬と同じように扱ってしまいます。伝えるのは3つです。

1つ目は、どれが対象かです。一覧と保管の場所。

2つ目は、記録の書き方です。残数を毎回書くこと。

3つ目は、数が合わないときの報告先です。

新しく入った職員には、服薬の手順を教えるときに合わせて伝えます。「この引き出しの薬は別扱い」と、場所で覚えてもらう形が分かりやすくなります。

向精神薬が処方される場面

向精神薬は、眠れない、落ち着かない、不安が強いといった場面で処方されます。介護の現場では、この薬をどう扱うかが日常の判断に関わります。

よくある場面は4つです。

1つ目は、夜間に眠れない場合です。睡眠薬が処方されます。転倒の危険が上がるので、飲んだ日の夜間の見守りを厚くします。

2つ目は、不安や興奮が強い場合です。抗不安薬が処方されます。日中の眠気が出ていないかを見ます。

3つ目は、気分の落ち込みがある場合です。抗うつ薬。効き始めるまで時間がかかるものがあります。

4つ目は、以前からの持病で続けている場合です。入所前から飲んでいる薬をそのまま継続することがあります。

4つのどれでも、飲み始めや量が変わったときがいちばん変化の出る時期です。その前後の様子を、いつもより細かく記録に残します。

拘束との境目を意識する

薬で動きを止める形は、身体的拘束と同じ問題として扱われることがあります。ここは現場でいちばん迷うところです。

見分けるところは3つあります。

1つ目は、目的です。本人の症状を和らげるためか、職員の手間を減らすためか。後者なら、拘束と同じ問題になります。

2つ目は、処方の経緯です。医師が診察して判断したか、現場からの要望がそのまま処方になっていないか。

3つ目は、見直しの有無です。始めたまま何年も続いていないか。減らせる可能性を、定期的に医師と確かめているか。

3つを委員会で扱う形にします。身体的拘束等適正化検討委員会の議題に、向精神薬の使用状況を入れている事業所があります。減らせた事例が共有されると、現場の見方が変わります。

処方を変えることは事業所ではできません。できるのは、様子を伝えることと、相談の場を作ることです。

記録に残す4つ

向精神薬の管理簿には、数のほかに様子を残します。

残すのは4つです。

1つ目は、飲んだ日時と量です。頓服の場合は、飲む前の様子も書きます。

2つ目は、飲む前に何をしたかです。声をかけた、場所を変えた、付き添った。薬の前に試したことが書いてあると、頓服の回数が減っていく流れを作れます。

3つ目は、飲んだあとの様子です。落ち着いたか、眠ったか、ふらつきが出たか。時間を入れて書きます。

4つ目は、次の受診で伝えることです。医師に渡す材料になります。1か月分をまとめた紙を1枚作ると、診察が短くても伝わります。

4つが残っていると、薬を減らす相談ができます。記録が無いと、医師も減らす判断ができません。

転倒との関係を見る

向精神薬を飲んでいる方は、転倒の記録と重なることがあります。両方の記録を並べて見ます。

見方は3つです。

1つ目は、転倒した時刻です。夜間の起き上がりに集中していないか。

2つ目は、飲み始めや量の変更との前後関係です。変更の1週間以内に集中していないか。

3つ目は、同じ人に繰り返していないかです。繰り返しているなら、環境か薬のどちらかに原因がある可能性があります。

並べて見た結果は、事故防止の委員会と医師の両方に伝えます。転倒の記録だけを見ていると、薬が関わっている可能性に気づけません。

職員に知識を渡しておく

向精神薬は、名前を見ても何の薬か分からないことが多くあります。一覧を1枚作って渡しておきます。

書くのは3つです。

1つ目は、薬の名前と何のための薬かです。「眠るための薬」「不安をやわらげる薬」。1行で足ります。

2つ目は、出やすい様子です。ふらつき、日中の眠気、口の渇き。気づいたら伝える、という形にします。判断はしません。

3つ目は、伝える先です。看護職の名前、いない時間帯の連絡先。

一覧は看護職に作ってもらいます。介護職が調べて作ると、どこまで書くかで迷います。作る人を決めておけば、毎年の更新も続きます。

まとめ

向精神薬管理簿の記録の義務が定められているのは、免許を持つ者です。介護の施設が利用者から預かる場合は、法定の帳簿とは扱いが異なります。

ただし、施設としての記録は残します。氏名、薬の名前、預かった日と数量、使用、残数の5つ。残数を毎回書くのが要点です。

保管は、他の薬と分けて、鍵のかかる場所が望ましい形です。月に1回、実際の数と記録を突き合わせます。

数が合わないときは、記録・実数・聞き取り・報告の順に確かめます。隠して探し続けないことです。対象の薬かどうかは、薬局に確かめるのが確実です。

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実際に使える様式が必要な方へ

服薬の管理や記録の様式が、商い屋の介護向けのページにあります。預かる薬の一覧としても使えます。

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よくある質問

Q. どの薬が向精神薬か、どう調べますか。 A. 薬局に聞くのがいちばん確実です。薬の情報提供の文書にも記載があります。預かっている薬を一覧にして、対象かどうかの列を作っておくと、次からは変更のときだけ確かめれば済みます。

Q. 鍵のかかる場所が用意できません。 A. 少なくとも、職員以外が触れない場所にします。事務室の中、引き出しに施錠できるものを使うなど、できる範囲で分けます。できていないことを記録に残し、改善の予定を立てておくと、指摘されたときに説明できます。

Q. 月に1回の確認は、誰が行いますか。 A. 担当を決めます。1人で行うより、2人で確かめる形のほうが確実です。確認した日と、確認した人を記録に残します。数が合ったことも記録しておくと、次に合わなくなったときに範囲が絞れます。

Q. 数が合わないとき、警察に届けますか。 A. 紛失や盗難が疑われる場合、届出が求められることがあります。まず管理者と薬局、医療機関に伝え、指示を受けます。どこへ届け出るかを、あらかじめ確かめて紙に控えておきます。

Q. 向精神薬を減らしたいと家族から相談されたら。 A. 減らすかどうかは医師が判断します。事業所は、日々の記録から見えることを伝えます。眠れているか、日中の様子、転倒の有無。事実を集めて、医師との相談につなげます。

Q. 服薬の後の転倒が心配です。 A. 飲む時間と、その後の動きを見ます。トイレの時間と重なっているなら、先に誘導する。ベッドの高さや足元の環境も見直します。記録に残っていれば、処方の見直しの材料にもなります。

Q. 麻薬と向精神薬は、同じ場所に保管してよいですか。 A. 麻薬のほうが厳しい扱いが求められます。分けて保管するほうが、扱いを間違えません。どちらも他の薬とは分けます。

Q. 記録は何年残しますか。 A. 介護保険の記録として、完結の日から2年が国の基準です。条例で5年としている自治体があります。服薬の記録と同じつづりにまとめておくと管理できます。

Q. 一包化されている場合、数え方はどうしますか。 A. 包の数で数えます。ただし、包の中に何が入っているかは見えません。処方の内容と突き合わせ、変更があったときに包の中身が変わったことを記録に残します。

Q. 訪問系のサービスでも記録が要りますか。 A. 預かる形になっていなければ、本人や家族の管理になります。ただし、服薬の確認や残数の把握を依頼されている場合は、何をどこまで行うかを計画に書き、記録に残します。

Q. 向精神薬の管理簿は、法令で様式が決まっていますか。 A. 向精神薬の取扱いには法令上の定めがあるとされていますが、事業所の種類や薬の区分によって求められる管理が違います。所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。様式そのものは事業所で作れることが多くあります。

Q. 頓服を使う判断は、誰がしますか。 A. 医師の指示の範囲の中で判断します。範囲は指示書に書かれているので、書かれていなければ確かめます。「必要時」だけの指示は、判断の幅が広すぎるので、量と間隔を具体的に書いてもらいます。

Q. 家族から薬を減らしてほしいと言われました。 A. 事業所では決められません。主治医に伝えて、診察の場で相談してもらいます。事業所からは、日々の様子の記録を材料として提供します。

Q. 眠れないという訴えが続く場合、まず何をしますか。 A. 生活のほうを先に見ます。日中の活動量、夕方以降の飲み物、室温、明るさ、音。薬の前に変えられるものが残っていないかを確かめてから相談します。

Q. 管理簿は何年残しますか。 A. 薬の区分によって扱いが違います。介護の記録とは別の年数になることがあるので、所轄の都道府県の薬務主管課に確かめてください。迷ったら長いほうに合わせます。

Q. 薬の情報を職員が調べて記録に書いてもよいですか。 A. 調べること自体は構いませんが、記録に書くのは見た様子だけにします。薬の効果や副作用の判断を介護職が記録に書くと、判断したことになります。気づいたことは事実として書き、伝えた相手を残します。