口腔連携強化加算|評価と情報提供の記録
目次
訪問に入ったヘルパーが、利用者の口の中の乾きや、残っている食べかすに気づく。気づいてはいるものの、誰にどう伝えればよいか決まっていない。そのまま次の訪問へ移っていく、という形になりがちです。
この記事では、口腔連携強化加算を、誰が評価するか・何を歯科へ伝えるか・記録に何を残すかの3つに分けて整理します。要件の一覧ではなく、現場の職員が動ける形にすることを中心に書きます。
結論:歯科の専門職でなくても評価する
口腔連携強化加算とは、訪問系や短期入所系のサービスで、事業所の職員が利用者の口の中の状態を確かめ、その結果を歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供した場合に算定する加算です。2024年度の介護報酬改定で新しく設けられました。
単位数は50単位で、1か月に1回までとされています。
ここがいちばん誤解されるところです。評価をするのは、歯科衛生士ではなく、その事業所の職員です。訪問介護ならサービス提供責任者やヘルパー、訪問看護なら看護職員が、日ごろの訪問の中で口の中を見ます。
ポイントはここです。専門職でないと評価できない、と思い込むと算定に進めません。求められているのは診断ではなく、気づいたことを決まった形で伝えることです。
算定の前に決めておく3つ
算定を始める前に決めるのは3つです。
1つ目は、相談できる歯科医療機関です。職員が口の中の見方や対応に迷ったときに相談できる先を確保し、その取り決めを文書で残します。口約束では要件を満たしません。
2つ目は、届出です。所轄の指定権者(都道府県または市町村)へ、決められた様式で届け出ます。
3つ目は、評価を誰がするかです。訪問に入る職員のうち、誰が見て誰がまとめるかを決めます。
1つ目でつまずく事業所が多くあります。地域の歯科医師会に相談すると、在宅の診療に対応している歯科医療機関を紹介してもらえることがあります。
取り決めの文書は、何を相談できるかを書いておくと実務で使えます。評価の方法、受診が必要かどうかの判断、緊急時の連絡先の3つが入っていれば足ります。
口の中で見る項目
評価する項目は、国が示している様式に沿って見ます。一般には次のようなところを確かめます。
1つ目は、口の中の汚れです。歯や舌、入れ歯に食べかすや汚れが残っていないか。
2つ目は、歯と入れ歯の状態です。ぐらつき、欠け、合っていない入れ歯。
3つ目は、口の乾きです。唾液が少なく、話しづらそうにしていないか。
4つ目は、飲み込みです。むせる、食事に時間がかかる、飲み込んだ後に声が変わる。
5つ目は、痛みや腫れです。食べるときに顔をしかめる、片側だけで噛む。
4つ目がいちばん重いところです。むせが増えている方は、誤嚥事故につながります。気づいた時点で、歯科だけでなく主治医とケアマネジャーにも伝えます。
見る場面は、歯みがきの介助や食事の介助のときが自然です。口の中を見るためだけの時間を作ると続きません。
実際に使える様式が必要な方へ
介護記録のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。毎日の記録に口の中の欄を足しておくと、月1回の評価がまとめやすくなります。
この様式をひらく情報提供は様式に沿って出す
評価した結果は、歯科医療機関とケアマネジャーに提供します。このとき使う様式は、国が示しているものがあります。
自分たちで作った用紙でも構わない場合がありますが、示されている様式に沿うほうが安全です。項目が抜けると、情報提供をしたと見なされないことがあります。
情報提供で残すのは4つです。
1つ目は、評価した日です。
2つ目は、評価した職員の氏名と職種です。
3つ目は、評価の結果です。項目ごとの状態。
4つ目は、提供した先と提供した日です。歯科医療機関とケアマネジャーの両方。
4つ目が抜けやすいところです。評価の用紙は残っているのに、いつ誰に渡したかが残っていない。これだと、情報提供をした証拠がありません。
渡し方は、手渡し、郵送、ファクス、電子メールのいずれでも構わないのが通常です。渡した記録を残すことが要点で、送信の控えや、記録への一行の記載で足ります。
利用者の同意を先に取る
情報提供は、利用者の同意を得て行います。歯科医療機関とケアマネジャーに口の中の状態を伝えることを、本人か家族に説明して同意をもらいます。
同意の取り方は2つあります。契約のときにまとめて取る形と、評価をする前に個別に取る形です。
どちらの形でも、同意を取った日付を残します。口頭で同意を得た場合も、記録にその旨と日付を書いておきます。
説明のときは、何のために見るのかを伝えると受け入れられやすくなります。「口の中を確かめて、必要なら歯科につなぎます」という言い方です。
職員によって結果が変わらないようにする
口腔連携強化加算でいちばん難しいのは、見る人によって結果が変わってしまうことです。同じ利用者でも、担当したヘルパーによって「汚れあり」と「問題なし」に分かれます。
そろえる方法は3つあります。
1つ目は、言葉を決めることです。「汚れている」ではなく、「食べかすが残っている」「舌に白い苔のようなものがある」といった、見たままの言い方にそろえます。
2つ目は、写真を1枚だけ共有することです。相談先の歯科医療機関に、判断に迷う状態の例を見せてもらい、事業所の中で共有します。
3つ目は、迷ったら「気になる」に倒すことです。評価は診断ではありません。気になると書いて歯科に渡せば、判断はあちらがします。
3つ目がいちばん効きます。「これは書いてよいのだろうか」と迷った時間が、そのまま実施しない理由になります。迷いを持ち込んでよい先があるのが、この加算の仕組みです。
年に1回、相談先の歯科医療機関に来てもらって、職員向けに短い勉強会を開いている事業所もあります。研修の記録としても残せます。
続けるための段取り
加算は、1回算定して終わりではありません。月に1回の評価と情報提供を続ける形を作ります。
決めるのは3つです。
1つ目は、いつ評価するかです。月の初めの訪問、あるいは担当者が決まった曜日。月末にまとめてやろうとすると、訪問の予定が合わずに流れます。
2つ目は、誰がまとめるかです。訪問した職員が書いた気づきを、サービス提供責任者が月に1回まとめる形が多くあります。
3つ目は、請求までの確認です。評価と情報提供が済んでいる利用者を、請求の前に一覧で確かめます。
3つ目を入れておくと、返戻が減ります。情報提供が済んでいない方を算定してしまうのが、いちばん多い間違いです。
利用者が増えてきたら、一覧の表を1枚作ります。利用者の名前、評価した日、歯科へ渡した日、ケアマネジャーへ渡した日の4列で足ります。月ごとに1枚ずつ残しておくと、実地指導でそのまま見せられます。
重ねて算定できない場合がある
口腔連携強化加算は、ほかの口腔や栄養に関する取り組みと重なる場合に、算定できないことがあります。
よくあるのは次の2つです。
1つ目は、歯科の居宅療養管理指導を受けている場合です。すでに歯科の専門職が定期的に関わっている状態にあたります。
2つ目は、ほかの事業所が同じ月に同じ加算を算定している場合です。複数のサービスを使っている方では起こり得ます。
2つ目は、自分の事業所だけでは分かりません。ケアマネジャーに、ほかのサービスでの算定の状況を確かめます。サービス担当者会議の場で聞いておくのが確実です。
ここは返戻につながりやすいところです。算定を始める月に一度、利用者ごとに重複が無いかを確かめる手順を入れてください。
記録の置き場所と残し方
記録は3つに分かれます。評価の用紙、情報提供の控え、同意の記録です。
利用者ごとにまとめて置きます。加算ごとにつづりを分けると、実地指導のときに1人分を追えません。
毎日の記録との関係も決めておきます。日々の記録には気づいたことを短く書き、月に1回の評価でまとめる形が続けやすくなります。気づきが記録に残っていると、評価の用紙を書くときに思い出す手間がありません。
保存する期間は、介護保険のほかの記録と同じ扱いです。自治体の条例で年数が違うので、条例を確かめて決めてください。
紙で残すか、記録のソフトに入れるかは、どちらでも構いません。ソフトに入れる場合は、情報提供の控えをどこに保存するかを決めておきます。評価の入力欄はあっても、歯科へ送った用紙の控えを置く場所が無い、ということが起こります。置き場所が無いと、担当者の手元のフォルダに残り、退職とともに見えなくなります。
まとめ
口腔連携強化加算は、事業所の職員が口の中を評価し、歯科医療機関とケアマネジャーに情報提供した場合に算定します。単位数は50単位で、1か月に1回までとされています。
評価するのは歯科の専門職ではなく、訪問に入っている職員です。歯みがきや食事の介助の場面で見ます。
始める前に決めるのは3つ。相談できる歯科医療機関との文書での取り決め、届出、評価する人。1つ目は地域の歯科医師会に相談すると進みます。
記録で抜けやすいのは、いつ誰に情報提供をしたかです。評価の用紙だけでは、提供した証拠になりません。重ねて算定できない場合があるので、ケアマネジャーにほかのサービスでの状況を確かめてから始めてください。要件と様式は所轄の指定権者の案内で確かめます。
よくある質問
Q. 口腔連携強化加算は、どのサービスで算定できますか。 A. 訪問系と短期入所系のサービスが対象とされています。自分の事業所の種類が当てはまるかは、所轄の指定権者の資料で確かめてください。
Q. 単位数はいくらですか。 A. 50単位で、1か月に1回までとされています。訪問した回数だけ算定できるものではありません。
Q. 評価は誰がしますか。 A. その事業所の職員です。訪問介護ならサービス提供責任者やヘルパー、訪問看護なら看護職員が行います。歯科の専門職でなくて構いません。
Q. 評価に資格は要りますか。 A. 特別な資格は求められていません。ただし、見方をそろえておかないと職員ごとに結果が変わります。相談先の歯科医療機関に一度教えてもらうとよいです。
Q. 情報提供の様式は決まっていますか。 A. 国が示している様式があります。自分たちの用紙を使う場合も、示されている項目が入っているかを確かめてください。
Q. ケアマネジャーだけに渡せばよいですか。 A. 歯科医療機関とケアマネジャーの両方に提供するのが要件とされています。片方だけでは足りません。
Q. 歯科医療機関とのつながりがありません。 A. 地域の歯科医師会に相談すると、在宅に対応している歯科医療機関を紹介してもらえることがあります。市町村の高齢者の担当課が窓口を持っている地域もあります。
Q. 取り決めは口約束でもよいですか。 A. 文書で残す必要があるとされています。相談できる内容と連絡先を書いた簡単なもので構いません。
Q. 同意は書面で取りますか。 A. 書面が確実です。口頭で得た場合も、記録に同意を得た旨と日付を残します。
Q. 居宅療養管理指導を受けている方は算定できませんか。 A. 歯科の居宅療養管理指導を受けている場合は、重なる扱いになることがあります。ケアマネジャーに状況を確かめてください。
Q. ほかの事業所と重なっていないか、どう調べますか。 A. ケアマネジャーに聞くのが早いです。サービス担当者会議の場で、口腔に関する加算の状況を確かめる形にしておくと漏れません。
Q. 評価をしたが、歯科への受診が必要なさそうでした。算定できますか。 A. 受診の必要が無くても、評価と情報提供を行っていれば算定できるのが通常です。結果が「問題なし」でも、その内容を伝えます。
Q. 毎月同じ内容になります。それでも出しますか。 A. 変化が無いことも情報です。前回と比べて変わった点が無いと書けば足ります。状態が動いた月に気づけるのが、続けることの価値です。
Q. 届出を出す前に評価を始めてもよいですか。 A. 算定できるのは届出をした後です。評価そのものは先に始めて構いませんが、算定の開始月と届出の関係を窓口に確かめてください。
Q. 記録はどこに置きますか。 A. 利用者ごとにまとめます。評価の用紙、情報提供の控え、同意の記録の3つを同じ場所に置くと、1人分を追えます。
Q. 情報提供の控えは、どんな形で残しますか。 A. 渡した用紙の写しと、渡した日・渡した相手を書いた一行があれば足ります。ファクスなら送信の控え、電子メールなら送信済みの記録を残しておくと確実です。
Q. 利用者が歯科の受診を断りました。算定に影響しますか。 A. 評価と情報提供を行っていれば、受診するかどうかは本人の選択です。断られた経過を記録に残しておくと、後から状態が悪くなったときに説明できます。
Q. 家族と同居していない方でも同意は取れますか。 A. 本人に判断する力があれば本人から取ります。難しい場合は家族などに説明し、誰に説明して同意を得たかを記録に残してください。
Q. 短期入所でも同じ流れですか。 A. 基本の流れは同じです。滞在の日数が短いので、入所中のいつ評価するかを手順に決めておくと実施が漏れません。