個別機能訓練加算|算定と記録の残し方
目次
計画は作ってある。訓練も毎回やっている。それなのに運営指導で「この日に誰が行ったか分かる記録はありますか」と聞かれて、出てこない。実施の記録が「機能訓練 実施」の一行だけ、という事業所は少なくありません。
この記事では、個別機能訓練加算を、算定の区分・毎日残す記録・3か月ごとの見直しの3つに分けて整理します。計画書の書き方そのものは個別機能訓練計画書にまとめているので、ここでは算定を説明できる記録を中心に書きます。
結論:計画と実施の記録が対になっているか
個別機能訓練加算とは、利用者ごとに機能訓練の計画を作り、その計画にもとづいて訓練を行った場合に算定する加算です。
通所介護では区分が分かれています。個別機能訓練加算(I)イは1日56単位、(I)ロは1日76単位です。(I)ロは2024年度の介護報酬改定で単位数と人員の要件が変わりました。このほかに、LIFEへの情報の提出を要件にした(II)があります。
ポイントはここです。計画と実施の記録が、同じ利用者で対になっているかどうか。計画にある訓練の内容と、その日に行った記録が結びつかないと、算定の説明ができません。
サービスの種類によって区分と単位数が違います。自分の事業所にどの区分が当てはまるかは、所轄の指定権者(都道府県または市町村)の資料で確かめてください。
区分の違いはどこに出るか
区分の違いは、主に3つに出ます。
1つ目は、機能訓練指導員の配置です。専従の職員を何人置くか、どの時間帯に置くかで区分が分かれます。
2つ目は、訓練を行う体制です。利用者の人数や、訓練の実施の形。
3つ目は、LIFEへの提出の有無です。(II)は情報の提出とフィードバックの活用が要件に入ります。
1つ目でつまずきます。専従とは、その時間はほかの業務をしないという意味です。送迎に出ている時間や、入浴の介助に入っている時間は含められません。勤務の記録と突き合わせられると、ここで合わなくなります。
区分を上げるかどうかを考えるときは、単位数の差より、配置を続けられるかで見てください。人が欠けた月に区分を下げる手続きが要ります。
毎日の記録に残す5つ
実施の記録に残すのは5つです。
1つ目は、実施した日です。
2つ目は、行った訓練の内容です。計画に書いた項目のどれを行ったか。
3つ目は、実施した時間です。開始と終了、または所要の時間。
4つ目は、誰が行ったかです。機能訓練指導員の氏名。
5つ目は、利用者の様子です。できた、疲れが出た、痛みを訴えた、など。
2つ目と5つ目が抜けやすいところです。「機能訓練 実施」だけの記録では、計画のどの項目を行ったかが分かりません。計画の項目に番号を振って、記録には番号と一言を書く形にすると、手間をかけずに対応が取れます。
5つ目は、次の見直しの材料になります。できなかった日の記録がいちばん役に立ちます。痛みが出た、途中でやめた、という記録が残っていると、目標を見直す根拠になります。
3か月ごとの見直し
個別機能訓練加算では、定期的に進み具合を確かめて、利用者や家族に説明することが求められています。目安は3か月に1回です。
見直しの流れは4段です。
1つ目は、記録を並べることです。この3か月の実施の記録を通して見ます。
2つ目は、達成の度合いを見ることです。目標に近づいたか、変わらないか、下がったか。
3つ目は、説明することです。利用者と家族に、今の状況と今後の方針を伝えます。
4つ目は、記録に残すことです。説明した日、説明した相手、伝えた内容。
3つ目と4つ目が同時に抜けます。口頭で伝えただけで、記録に残っていない形です。説明した日と相手の氏名を書いておけば足ります。署名をもらう事業所もあります。
目標に届いていない場合も、そのまま書いて構いません。下がったことを書いた記録のほうが、見直しの説明がしやすくなります。
居宅への訪問をどう扱うか
区分によっては、利用者の自宅を訪問して生活の状況を確かめることが要件に入っています。
訪問で見るのは3つです。
1つ目は、家の中の動線です。玄関の段差、廊下の幅、手すりの位置。
2つ目は、実際にしている動作です。どこでつかまり、どこで座るか。
3つ目は、本人と家族の希望です。何ができるようになりたいか。
3つ目を聞き取った言葉のまま残します。「トイレに一人で行きたい」という言葉が、そのまま目標の文言になります。事業所の言葉に置き換えると、本人に説明したときに伝わりません。
訪問の記録には、訪問した日、行った職員、見たこと、聞き取ったことを書きます。写真を撮る場合は、本人の同意を得てからにします。
目標の書き方でつまずく
計画の目標が「機能の維持」「現状維持」になっている事業所が多くあります。書けてはいますが、3か月後に達成したかどうかを判断できません。
書き直すときの決まりは3つです。
1つ目は、動作で書くことです。「歩行の改善」ではなく「手すりを使って10メートル歩く」。
2つ目は、場面を入れることです。どこで、何のためにできるようになりたいか。トイレへ行く、台所に立つ、玄関の段差を越える。
3つ目は、測れる形にすることです。距離、回数、時間、介助の有無。数字が1つ入っていれば、達成したかどうかが判断できます。
2つ目がいちばん効きます。場面が入っていると、本人が目標を自分の言葉で説明できます。説明できる目標は、訓練を続ける理由になります。
長期と短期に分ける場合は、短期の目標を3か月で届く大きさにします。届かない目標を置くと、見直しのたびに「変わらず」と書くことになります。
運営指導で見られるところ
運営指導で聞かれやすいのは4つです。
1つ目は、計画と実施の対応です。計画にある項目が、記録から追えるか。
2つ目は、機能訓練指導員の勤務の実態です。専従の時間に、ほかの業務が入っていないか。
3つ目は、見直しと説明の記録です。3か月ごとに行われ、記録があるか。
4つ目は、同意の記録です。計画について、利用者の同意を得た記録があるか。
2つ目がいちばん厳しく見られます。勤務の表と実施の記録を並べて、同じ時間に別のことをしていないかを確かめられます。シフトを作る段階で、訓練の時間を先に押さえる形にしておくと防げます。
訓練を止めた日をどう書くか
体調が悪い、本人が乗り気でない、時間が取れなかった。訓練ができない日は必ず出ます。ここの書き方で、記録の使い方が変わります。
書き方は3つに分かれます。
1つ目は、行わなかったと書くことです。理由も短く添えます。「発熱のため中止」。
2つ目は、途中でやめたと書くことです。どこまでやって、なぜやめたか。
3つ目は、内容を変えたと書くことです。予定していた訓練の代わりに何をしたか。
空欄にしないでください。記録が飛んでいると、実施したのか、し忘れたのかが分かりません。行わなかった日の記録があるほうが、全体の説明がしやすくなります。
行わなかった日が続く場合は、計画の見直しの合図です。3か月を待たずに、内容が本人に合っているかを確かめてください。算定できるのは訓練を行った日なので、実施のない日を算定に乗せないことも大事です。
計画書と記録の置き方
書類は3つに分かれます。計画書、実施の記録、見直しと説明の記録です。
利用者ごとに1つのつづりにまとめます。書類の種類ごとに分けると、1人分の流れが追えません。
毎日の記録は、ほかのサービスの記録と同じ用紙に書いて構いません。機能訓練の欄を1つ作っておけば、書く人の負担が増えません。
保存の期間は、介護保険のほかの記録と同じ扱いです。自治体の条例で年数が違うので、条例を確かめて決めてください。
まとめ
個別機能訓練加算は、計画と実施の記録が対になっているかで説明が決まります。通所介護では(I)イが1日56単位、(I)ロが1日76単位、このほかLIFEへの提出を要件にした(II)があります。
毎日の記録に残すのは、実施した日・行った内容・時間・実施した人・利用者の様子です。計画の項目に番号を振って、記録には番号と一言という形にすると続きます。
3か月ごとの見直しでは、説明した記録が抜けます。説明した日と相手の氏名を書いておいてください。
運営指導でいちばん厳しく見られるのは、機能訓練指導員が専従の時間にほかの業務をしていないかです。シフトを作る段階で訓練の時間を押さえます。区分と単位数は、所轄の指定権者の資料で確かめてください。
よくある質問
Q. 個別機能訓練加算の単位数はいくらですか。 A. 通所介護では(I)イが1日56単位、(I)ロが1日76単位です。(II)はLIFEへの提出を要件にした加算です。サービスの種類で違うので、指定権者の資料で確かめてください。
Q. (I)イと(I)ロの違いは何ですか。 A. 主に機能訓練指導員の配置の要件が違います。(I)ロは2024年度の改定で単位数と要件が変わりました。
Q. 機能訓練指導員になれるのは誰ですか。 A. 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などとされています。資格の範囲は指定権者に確かめてください。
Q. 専従とはどういう意味ですか。 A. その時間はほかの業務をしないという意味です。送迎や入浴の介助に入っている時間は含められません。
Q. 集団の体操でも算定できますか。 A. 利用者ごとの計画にもとづいて行う訓練であることが前提です。全員同じ内容の体操だけでは、個別の訓練と説明しづらくなります。
Q. 毎日の記録には何を書きますか。 A. 実施した日、行った内容、時間、実施した人、利用者の様子です。計画の項目の番号と一言でも足ります。
Q. 「機能訓練 実施」だけでは足りませんか。 A. 計画のどの項目を行ったかが分かりません。番号か項目名を書いてください。
Q. 見直しはどのくらいの頻度ですか。 A. 3か月に1回が目安とされています。状態が変わったときは、その時点で見直します。
Q. 見直しの説明は誰にしますか。 A. 利用者本人と家族です。説明した日と相手の氏名を記録に残してください。署名をもらう事業所もあります。
Q. 目標に届いていない場合はどう書きますか。 A. そのまま書きます。下がったことを書いた記録のほうが、次の見直しの根拠になります。
Q. 居宅への訪問は毎回必要ですか。 A. 区分によって要件が違います。訪問が要る区分では、訪問した日と見たことを記録に残してください。
Q. 本人の希望はどう書きますか。 A. 聞き取った言葉のまま残します。事業所の言葉に置き換えると、本人に説明したときに伝わりません。
Q. 科学的介護推進体制加算と一緒に取れますか。 A. 併せて算定できる場合があります。入力する項目が重なるので、どの加算でどの項目が要るかを一覧にしておくと楽です。
Q. 機能訓練指導員が退職しました。 A. 配置の要件を満たさなくなる場合は、区分の変更を届け出ます。要件を満たさない月に算定したままにしないでください。
Q. 運営指導では何を見られますか。 A. 計画と実施の対応、勤務の実態、見直しと説明の記録、同意の記録の4つです。
Q. 計画の同意はいつ取りますか。 A. 計画を作ったとき、そして見直して内容が変わったときです。同意を得た日付を残してください。
Q. 訓練ができなかった日はどう書きますか。 A. 行わなかったと書き、理由を短く添えます。空欄にしないでください。実施したのか、し忘れたのかが分からなくなります。算定するのは行った日だけです。
Q. 目標が「現状維持」になっています。 A. 3か月後に達成したかどうかを判断できません。動作と場面で書き、数字を1つ入れてください。「手すりを使ってトイレまで10メートル歩く」といった形です。
Q. 利用者が訓練を嫌がります。 A. 無理に続けません。断られた日はその旨を記録し、内容が合っているかを確かめます。本人の希望から離れた目標になっていることが多くあります。
Q. 訓練の時間は何分必要ですか。 A. 一律の定めはありません。計画に書いた内容を行えているかで見ます。短くても、計画の項目に沿っていれば説明できます。
Q. 計画書は誰が作りますか。 A. 機能訓練指導員を含む多職種で作ることとされています。誰が関わったかを計画書に書いておくと、後から説明できます。
Q. 送迎の時間は専従の時間に含められますか。 A. 含められません。送迎に出ている時間はほかの業務にあたります。シフトの表と実施の記録を並べて見られるので、重ならない形にしてください。
Q. 書類はどこに置きますか。 A. 利用者ごとに1つのつづりにまとめます。計画書、実施の記録、見直しと説明の記録の3つが同じ場所にあると、1人分の流れが追えます。