感染症対策とは?指針・委員会・研修・訓練の4点
目次
感染症の対策は、日々の手洗いや消毒としては回っている。ところが「体制として何を整えるのか」と聞かれると、指針があるのか、委員会を開いているのか、すぐには出てきません。実地指導の直前に慌てる項目です。
この記事では、感染症対策を、求められる4点・指針に書くこと・回し方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社に足りないものが分かる状態を目指します。
結論:求められるのは4点セット
感染症対策とは、感染症の発生とまん延を防ぐために、事業所として整える体制のことです。介護保険の運営基準で求められています。
求められているのは4つです。委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練の実施。
ポイントはここです。感染症が発生していなくても、4点は必要です。「うちは出ていないから」は理由になりません。身体拘束や虐待防止の体制と同じ作りになっています。
この4つは、記録が残る形で回すことになります。やっているのに記録が無い状態が、いちばん多い形です。
委員会をどう回すか
委員会は、定期的に開催し、その結果を職員に周知徹底することが求められています。開催の頻度は事業所の区分によって異なるため、所管の自治体の案内で確かめます。
議題に迷う事業所が多いところです。感染症が出ていない月の議題を決めておくと回ります。
今月の発生の状況。利用者と職員の体調、欠勤の状況。
手指衛生や環境整備の状況。消毒液の設置、交換の頻度。
備蓄の確認。手袋、マスク、ガウン、消毒液の残量。
外部の情報。地域での流行の状況、自治体からの通知。
委員会は、他の委員会と合同で開ける場合があります。事故防止や虐待防止の委員会と同じ日に、続けて開く形です。議事録は分けて残します。
議事録には、開催の日、出席者、議題、決めたこと、次回の予定を書きます。開いたことが分かる形で3年程度残す事業所が多くあります。
指針に書くこと
指針は、感染症の発生を防ぐための考え方と手順をまとめたものです。書く内容はおおむね決まっています。
平常時の対策。手指衛生、環境の整備、健康管理、職員の健康管理。
発生時の対応。発見したときの報告、初動、隔離の考え方、受診、消毒。
報告の体制。誰から誰へ、どこへ報告するか。
関係機関との連携。保健所、市町村、協力医療機関。
研修と訓練。実施の方針。
ひな形をそのまま使うと、自社に無い設備や職種が残ります。削る作業が要ります。逆に、自社の建物の構造(居室の配置、トイレの数、隔離できる部屋があるか)に触れておくと、実際に使える指針になります。
指針は、作って終わりではなく、発生したときに開くものです。開いたときに使えるかどうかで、書き方を見直します。
研修と訓練は別のもの
研修と訓練は、求められているものが違います。混ぜて記録すると、片方が抜けます。
研修は、知識を伝えるものです。感染症の基礎、標準予防策、手指衛生の方法、嘔吐物の処理。
訓練は、動いてみるものです。発生したという想定で、報告、隔離、消毒、連絡を実際に行います。
回数は、事業所の区分によって定められています。研修は年に複数回、訓練も年に複数回という形が一般的です。所管の自治体の案内で確かめます。
訓練のほうが抜けます。研修は資料を配れば形になりますが、訓練は時間を取って実際に動く必要があるためです。
新しく入った職員には、採用時に行うことが求められる場合があります。年間の計画に、採用時の分も入れておくと抜けません。
嘔吐物の処理は実際にやってみる
訓練でいちばん効くのが、嘔吐物の処理です。手順を知っていても、実際にやると手が止まります。
確かめるのは5つです。
1つ目は、道具がどこにあるかです。処理のセットを、フロアのどこに置いているか。夜勤者が知っているか。
2つ目は、人を呼ぶ手順です。1人では処理できません。誰をどう呼ぶか。
3つ目は、手順の順番です。人を遠ざける、換気、防護具の着用、覆って拭き取る、消毒、廃棄。
4つ目は、防護具の着け外しです。外すときに汚染を広げないこと。着けるより外すほうが難しいとされています。
5つ目は、その後の消毒と報告です。
実際にやってみると、処理のセットが足りない、消毒液の濃度が分からない、といったことが出ます。訓練の成果はそこにあります。
発生したときの流れ
発生したときは、決めておいた流れに沿って動きます。決めておくのは5段です。
1つ目は、発見と報告です。気づいた職員が、誰に報告するか。
2つ目は、初動です。その人をどうするか、他の人とどう分けるか。
3つ目は、受診と検査です。協力医療機関への連絡。
4つ目は、外部への報告です。一定の人数や状況では、市町村や保健所への報告が求められる場合があります。基準を確かめておきます。
5つ目は、家族や関係者への連絡です。
4つ目の基準を知らない事業所が多くあります。何人以上で報告が要るのか、どの感染症が対象か。所管の市町村と保健所に確かめて、紙に控えておきます。
備蓄をどれくらい持つか
発生してから買いに行くのでは間に合いません。備蓄の量と、置き場所を決めておきます。
何を持つか。手袋、マスク、ガウン、フェイスシールド、消毒液、次亜塩素酸ナトリウム、ペーパータオル、ごみ袋。
どれくらい持つか。利用者と職員の人数から、1週間分などの目安を決めます。
どこに置くか。すぐ取り出せる場所と、まとまった量を置く場所を分けます。
いつ確かめるか。委員会の議題に入れて、月に1回見ます。
使用期限のあるものは、期限の管理表に入れておきます。消毒液は期限が切れていることが多いので、確かめます。
備蓄は、業務継続計画の側でも必要になります。2つの計画で同じものを数えていることになるので、一覧を1つにまとめておくと手間が減ります。
職員の健康管理
利用者だけでなく、職員の側も対策のうちです。決めておくのは3つです。
1つ目は、出勤前の確認です。体温、症状。記録に残すかどうかも決めます。
2つ目は、体調不良のときの扱いです。どういう症状のときに休むか。休みにくい雰囲気があると、無理して出てきます。
3つ目は、家族の体調です。同居の家族に症状がある場合の扱い。
この3つは、決めていないと職員が判断に迷います。基準を紙にして渡しておくと、その場で迷いません。
職員が感染した場合の就業の再開の目安も決めておきます。症状が消えてから何日かといった形で、自治体や保健所の案内に沿って決めます。
職員が感染したときの流れ
利用者だけでなく、職員が感染する場面もあります。流れを決めておきます。
1つ目は、報告です。誰に、いつまでに。症状が出た時点で報告する形にしておきます。
2つ目は、就業の可否です。どういう症状のときに休むか。基準を紙にします。
3つ目は、シフトの手当てです。休んだ分をどう埋めるか。
4つ目は、就業の再開です。症状が消えてから何日か。自治体や保健所の案内に沿って決めます。
2つ目と4つ目を決めていないと、その場で判断することになります。判断が人によって変わると、公平さの面でも問題になります。
休みにくい雰囲気があると、無理して出てきます。人手が足りないときほど、そうなります。休んだときの手当てを先に決めておくのが、実際の予防になります。
平時と発生時で手順を分ける
感染症対策の書類は、平時にやることと、発生してからやることが混ざると使えません。
分けるのは4つです。
1つ目は、平時の予防です。手洗い、環境の清掃、健康観察、備蓄の管理。
2つ目は、疑いが出たときです。誰に伝え、どこに移すか。
3つ目は、発生が確定したときです。報告、区域の分け方、人の動線、面会の制限。
4つ目は、収まったあとです。消毒、記録の整理、振り返り。
4つを別の紙にして、発生時の分だけを1枚に抜いておきます。平時の手順と一緒に綴じたままだと、いちばん慌てている時間に探すことになります。
報告が必要になる基準は、事業所の種別と自治体で違います。所轄の市町村と保健所に確かめて、連絡先を手順書の1ページ目に書いておいてください。
まとめ
感染症対策として求められるのは、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練の実施の4点です。感染症が発生していなくても必要になります。
委員会は、発生が無い月でも回る議題を決めておきます。発生の状況、手指衛生と環境整備、備蓄の確認、外部の情報。他の委員会と合同で開ける場合があります。
研修と訓練は別のものです。研修は知識、訓練は動いてみるもの。抜けやすいのは訓練で、とくに嘔吐物の処理は実際にやってみると手が止まります。
発生したときの流れと、外部への報告の基準を紙に控えておきます。備蓄は委員会で月に1回確かめます。回数や報告の基準は、所管の市町村と保健所に確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 委員会は何か月に1回開きますか。 A. 事業所の区分によって定められています。おおむね3か月に1回以上とされている形が多くありますが、サービスの種類で変わります。所管の自治体の案内で確かめます。開催の間隔が空きすぎると、記録から分かってしまいます。
Q. 他の委員会と一緒に開いてもよいですか。 A. 合同での開催が認められている場合があります。事故防止、虐待防止、身体拘束適正化の委員会と同じ日に続けて開く形が取られています。ただし、議事録は分けて残し、それぞれの議題を扱ったことが分かる形にします。
Q. 指針はどこで手に入りますか。 A. 自治体や事業者団体がひな形を公開しています。そのまま使うと自社に無い設備や職種が残るので、削る作業が要ります。自社の建物の構造に触れておくと、発生したときに実際に使える指針になります。
Q. 訓練はどんな形でもよいですか。 A. 実際に動く形が基本ですが、机上での訓練を組み合わせることもできます。大事なのは、手順を口に出し、道具の場所を確かめ、動いてみることです。資料を配って終わりでは、訓練にはなりません。
Q. 感染症が発生したら、必ず報告しますか。 A. 一定の人数や状況で報告が求められる場合があります。基準は感染症の種類と自治体によって異なります。所管の市町村と保健所に確かめて、連絡先とあわせて紙に控えておきます。迷うときは相談すると教えてもらえます。
Q. 備蓄はどれくらい持てばよいですか。 A. 明確な数量が示されていないことが多いため、利用者と職員の人数から自社で決めます。1週間分を目安にしている事業所があります。業務継続計画の側でも必要になるので、一覧を1つにまとめておくと数えやすくなります。
Q. 職員の検温の記録は残しますか。 A. 残している事業所が多くあります。健康情報にあたるため、見られる範囲を絞ります。残す期間も決めておきます。記録が残っていると、発生したときに経過を追えます。
Q. 標準予防策とは何ですか。 A. すべての人の血液や体液などを、感染の可能性があるものとして扱う考え方です。特定の感染症が分かっている人だけに対応するのではなく、日常のすべての場面で手指衛生や防護具を使います。研修で最初に伝える内容になります。
Q. 面会をどう扱いますか。 A. 地域の流行の状況や、自治体の方針によって変わります。制限する場合も、代わりの手段(オンライン、窓越し、手紙)を用意しておくと、家族の理解が得られやすくなります。方針を決めた日と内容を記録に残します。
Q. 小規模な事業所でも4点すべて必要ですか。 A. 事業所の区分によって求められる内容が変わります。人数が少ないほど、1人あたりの負担は大きくなりますが、体制として求められているものは同じことが多くあります。所管の自治体に、自社の区分で確かめます。
Q. 感染症対策の委員会は、感染症が出ていない月も開きますか。 A. 開きます。定期的な開催が求められているためです。発生の状況、備蓄、手指衛生、外部の情報。4つの議題があれば30分は埋まります。開催の記録が残っていないと、体制が無いものとして扱われます。
Q. 面会を制限するかどうか、誰が決めますか。 A. 地域の流行の状況と、自治体の方針をもとに、管理者が決めます。決めた日と理由を記録に残します。制限する場合も、代わりの手段を用意すると家族の理解が得られやすくなります。
Q. 備蓄の置き場所が分かれてしまいます。 A. すぐ取り出す分と、まとまった量を置く分に分けます。それぞれの場所を一覧に書いて、全員が知っている状態にします。委員会で月に1回確かめるときに、両方を見ます。
Q. 感染症の委員会は、他の委員会と一緒にできますか。 A. 同じ日に続けて開く形は使われています。ただし議事録は分けてください。要件は種別によって違うので、所轄の市町村や指定権者に確かめてください。
Q. 訓練は何をすればよいですか。 A. 嘔吐物の処理、防護具の着脱、区域の分け方。実際に体を動かすものを選びます。手順を読み合わせるだけでは、当日に動けません。
Q. 備蓄はどれくらい持てばよいですか。 A. 目安を自治体が示していることがあります。所轄の市町村に確かめてください。使用期限のあるものは、日常で使って入れ替える形にすると無駄が出ません。
Q. 面会の制限はどこまでできますか。 A. 一律に止める形は避け、状況に応じた判断が求められています。制限する場合は理由と期間を伝え、代わりの方法を用意してください。判断の基準は所轄の市町村に確かめます。
Q. 職員が感染した場合、いつから復帰できますか。 A. 感染症の種類によって考え方が違います。所轄の保健所に確かめてください。復帰の基準を先に決めて掲示しておくと、その都度もめません。
Q. 手洗いの方法は、どうやって揃えますか。 A. 洗い残しが見える道具を使って、1回体験してもらう形が効きます。研修で1回やると、その後の洗い方が変わります。年に1回は繰り返してください。