事故とヒヤリハット解説2026.02.06 公開JK-28

業務継続計画とは?感染症と自然災害で2本いる

目次

業務継続計画を作らないといけない、とは聞いている。ひな形もダウンロードした。ところが項目が多く、どこから手を付ければよいか分からないまま、フォルダに入ったままになっている。よくある状態です。

この記事では、業務継続計画を、2本いる理由・書く中身・回し方の3つに分けて整理します。読み終えたときに、自社の1本目を書き始められる状態を目指します。

感染症の体制のほうから確かめたい方は、こちらを読むと早いです。→ 感染症対策とは

結論:感染症と自然災害で、別々に作る

業務継続計画とは、感染症や自然災害が起きても、サービスを続けるための計画のことです。BCPとも呼ばれます。

介護保険の運営基準では、感染症の業務継続計画自然災害の業務継続計画を策定し、研修と訓練を行うことが求められているとされています。

ポイントはここです。2本要ります。1本にまとめている事業所がありますが、想定する事態も、動き方も違います。

2本要る感染症の計画職員が減ったときの運営応援の要請人が欠ける事態自然災害の計画ライフラインの代替参集と連絡物と場所が欠ける事態
感染症と自然災害の2本が要ることを示した比較の図

避難訓練や感染症対策とは別の仕組みです。避難は逃げること、業務継続は逃げた後もサービスを続けることを決めるものです。

避難と業務継続の違い

混ざりやすいので、分けて押さえます。

避難計画は、その場をどう離れるかです。火災や水害が起きたときに、どこへどう逃げるか。

業務継続計画は、その後どうするかです。建物が使えない、職員が来られない、水や電気が止まった。その状態で、食事、排泄、服薬、見守りをどう続けるか。

避難のあとが業務継続発生火災・地震・水避難その場をどう離れるか直後何を止めて何を続けるか復旧どこで通常に戻すか避難は逃げること、業務継続は逃げた後も続けること
避難と業務継続で、扱う時間が違うことを示した時系列の図

業務継続は、優先順位を決める作業です。全部は続けられません。何を止めて、何を続けるかを先に決めておきます。

止められないのは、生命に関わるものです。食事、水分、排泄、服薬、褥瘡の予防、体温の管理。入浴やレクリエーションは止められます。

感染症の計画に書くこと

感染症の計画では、次の塊を書きます。

平常時の備え。備蓄、体制、研修と訓練。

発生時の対応。発見から報告、隔離、消毒、受診。

職員が減ったときの運営。何人まで減ったら、何を止めるか。

応援の要請。法人内の他の事業所、事業者団体、自治体。

復旧の手順。どういう状態になったら通常に戻すか。

感染症の計画の5つ平常時の備え備蓄・体制・研修発生時の対応報告・隔離・受診縮小の運営何割で何を止めるか応援と復旧要請先と戻す条件
平常時・発生時・縮小・応援・復旧という5つの塊を並べた層の図

いちばん大事なのは、職員が減ったときの運営です。感染症では、利用者だけでなく職員も出勤できなくなります。半分が休んだときに、何をどう回すか。

ここを数字で決めておきます。「職員が7割になったら入浴を中止」「5割になったら◯◯」。数字が入っていないと、その場で迷います。

自然災害の計画に書くこと

自然災害の計画では、想定する災害を先に決めます。地震、水害、土砂災害、台風、大雪。自社の場所で起きうるものを選びます。

書く塊は次のとおりです。

リスクの把握。ハザードマップで、自社の建物がどうなるかを確かめます。

優先する業務。止められない業務と、止められる業務の切り分け。

必要な資源。人、物、ライフライン、情報。

代替の手段。水が止まったら、電気が止まったら、建物が使えなかったら。

連絡と参集。職員をどう集めるか、来られない場合どうするか。

自然災害の計画の組み立て1ハザードマップ自社の建物がどうなる2優先する業止められないものを選3必要な資源人・物・ライフライン4代替の手段止まったらどうするか
ハザードマップから優先業務、代替手段へつなぐ流れの図

ハザードマップを見たことがない事業所が多くあります。まずそこからです。浸水の深さ、土砂災害の区域。建物の1階が浸かる想定なら、計画の中身が変わります。

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実際に使える様式が必要な方へ

業務継続計画のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。この記事は中身の考え方の話です。

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優先する業務の決め方

いちばん手が止まるところです。決め方の順番を示します。

1つ目は、いまやっている業務を全部書き出すことです。食事、排泄、入浴、服薬、記録、送迎、レクリエーション、清掃、洗濯、請求事務。

2つ目は、止めたときに何が起きるかを考えることです。1日止めたら、3日止めたら、1週間止めたら。

3つ目は、3段階に分けることです。止められない、数日なら止められる、止めてよい。

業務を3つに分ける止められない食事・水分・排泄・服薬・記録数日なら止められる入浴・洗濯・清掃止めてよいレクリエーション・行事
業務を3つの段階に分ける図

服薬は止められません。薬が手元にあるか、誰が管理しているかまで見ます。

記録も、実は止められません。何をしたかが残っていないと、後から状況を説明できません。簡略化した様式を用意しておく形があります。

書き出してみると、止めてよい業務が思ったより多いことに気づきます。そこが計画の値打ちです。

参集と連絡

職員をどう集めるかは、決めておかないと動けません。

連絡の手段。電話がつながらないことを前提に、複数持ちます。メッセージアプリ、災害用の伝言サービス。

参集の基準。震度いくつで、連絡を待たずに来るのか。来なくてよいのか。

来られない場合の連絡。自分や家族が被災した場合、どう伝えるか。

優先順位。近くに住んでいる人、子どもがいない人など、現実的な順番を考えます。

職員の家族の安全が先であることも、あらかじめ伝えておきます。無理に来させる計画は、実際には動きません。

連絡先の一覧は、紙でも持っておきます。携帯電話が使えない状況を想定します。個人情報なので、置き場所と見られる範囲を決めます。

備蓄と代替の手段

必要な資源を洗い出して、足りないものを備えます。

水。飲料と生活用水を分けて考えます。トイレに使う水の量が大きくなります。

食料。やわらかいもの、とろみ剤も含めて考えます。通常の食形態が作れない前提で選びます。

電気。吸引器、エアマット、冷暖房。止まると命に関わる機器を先に挙げます。

衛生用品。おむつ、手袋、消毒液。

情報。ラジオ、充電の手段。

代替の手段も決めます。水が止まったら給水車と備蓄、電気が止まったら発電機かカセットボンベ。近隣の事業所や法人内での助け合いの取り決めも、書いておきます。

研修と訓練

計画を作ったら、研修と訓練が求められます。年に何回かは、事業所の区分によって定められています。

研修は、計画の内容を職員に伝えるものです。全員が計画の存在と、自分の役割を知っている状態にします。

訓練は、動いてみるものです。参集の連絡を実際に回す、優先業務だけで半日回してみる、といった形があります。

研修と訓練を計画に入れるやること中身研修計画の内容と自分の役割訓練参集の連絡を実際に回す訓練優先業務だけで半日回す見直し年に1回。連絡先と備蓄
研修と訓練を年間の計画に組み込む形の図

やってみると、計画の穴が出ます。連絡先が古い、備蓄の場所を知らない、誰が指示を出すか決まっていない。それを直すのが訓練の目的です。

計画は作って終わりではなく、年に1回見直します。職員が入れ替わり、建物が変わり、地域の状況も変わります。

小規模な事業所での作り方

人数が少ない事業所ほど、負担が大きく感じられます。軽く作る方法があります。

1つ目は、ひな形の項目を削ることです。自社に無い設備や職種は消します。残す項目が少ないほど、見直しも楽になります。

2つ目は、優先業務を3つに絞ることです。食事、排泄、服薬。まずこの3つだけ決めれば、計画の骨格ができます。

3つ目は、法人内でそろえることです。複数の事業所がある法人なら、共通の部分を1つ作り、事業所ごとの部分だけを足します。

4つ目は、他の書類と共通にすることです。備蓄の一覧、連絡先の一覧、ハザードマップの写し。感染症の計画と自然災害の計画で同じものを使えます。

完璧な計画を目指すより、使える計画を1本作るほうが早く形になります。

1本目をどう書き始めるか

ひな形を開いても手が止まる、という段階から抜けるには、順番を決めます。

1日目は、優先する業務を決めることです。食事、排泄、服薬。まずこの3つだけ書きます。

2日目は、いま止まると困るものを洗い出すことです。水、電気、職員。

3日目は、代わりの手を1つずつ考えることです。水が止まったら、電気が止まったら。

4日目は、連絡先を集めることです。職員、家族、自治体、協力機関。

5日目は、ひな形に写すことです。

ひな形から始めると項目の多さで止まります。中身を先に決めてから、ひな形に写すほうが早く終わります。

1本目ができたら、訓練で使ってみます。使ってみて出てきた穴を直すのが、2本目の作業になります。

計画を実際に使える形にする

業務継続計画は、分厚く作るほど使われなくなります。使える形にする工夫があります。

工夫は4つです。

1つ目は、最初の24時間だけを1枚に抜くことです。発生直後にやることだけを、時系列で並べます。

2つ目は、連絡先を1か所にまとめることです。職員、利用者の家族、市町村、取引先、設備の業者。紙で持ちます。

3つ目は、役割を名前で書くことです。「管理者」ではなく、その人がいないときの次の人まで書きます。

4つ目は、置き場所を決めることです。事務室の棚の奥ではなく、持ち出せる場所に置きます。

4つのうち1つ目がいちばん効きます。本体の計画は残したまま、表紙の次のページに1枚の行動表を入れるだけで、使われ方が変わります。

まとめ

業務継続計画は、感染症と自然災害で2本要ります。避難計画とは別で、避難は逃げること、業務継続はその後もサービスを続けることを決めるものです。

中心になるのは、優先する業務を決める作業です。止められないもの(食事、水分、排泄、服薬、記録)と、止めてよいもの(入浴、レクリエーション)を分けます。

感染症では、職員が減ったときの運営を数字で決めておきます。「7割になったら入浴を中止」のように書いておかないと、その場で迷います。

自然災害では、ハザードマップから始めます。自社の建物が浸かるのかどうかで、計画の中身が変わります。回数や様式は、所管の自治体の案内で確かめるのが確実です。

点検表テンプレート
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実際に使える様式が必要な方へ

業務継続計画のExcelの様式が、商い屋の介護向けのページにあります。感染症と自然災害の2本をそろえられます。

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よくある質問

Q. 感染症と自然災害で、1本にまとめてもよいですか。 A. それぞれ策定することが求められているため、分けて作る形が基本になります。ただし、備蓄の一覧や連絡先の一覧など、共通する部分は同じものを添付できます。表紙と本文を分けて、共通の資料を後ろにまとめる作り方があります。

Q. ひな形はどこにありますか。 A. 厚生労働省や自治体が公開しています。サービスの種類ごとに用意されていることがあるので、自社に近いものを選びます。ひな形は項目が多いため、自社に無いものを削る作業が最初の仕事になります。

Q. 研修と訓練は年に何回ですか。 A. 事業所の区分とサービスの種類によって定められています。年に複数回とされている形が一般的です。所管の自治体の案内で確かめます。感染症対策の研修や訓練と分けて記録します。

Q. 訓練はどんな形でやりますか。 A. 参集の連絡を実際に回す、優先業務だけで半日回してみる、机上で状況を読み上げて動きを確かめる、といった形があります。実際に動くほど穴が見つかります。やってみて出てきたことを、計画に反映します。

Q. 計画は誰が作りますか。 A. 管理者が中心になることが多くありますが、現場の職員の意見を入れないと使えない計画になります。優先業務の切り分けは、実際にやっている人でないと決められません。作る段階で1回、現場の意見を聞く時間を取ります。

Q. ハザードマップはどこで見られますか。 A. 市町村が公開しています。国土交通省のポータルでも見られます。浸水の深さ、土砂災害の区域、避難所の位置を確かめます。写しを計画に添付しておくと、職員が見られます。

Q. 建物が使えなくなった場合はどうしますか。 A. 代替の場所をあらかじめ考えておきます。法人内の他の施設、近隣との協定、自治体の福祉避難所。決まっていなくても、候補を挙げて連絡先を書いておくだけで、動き出しが早くなります。

Q. 職員が来られない場合、どこまで想定しますか。 A. 半分、3割といった段階で考えます。何割になったら何を止めるかを決めておけば、その場の判断が要りません。実際には想定どおりにならないので、細かく作りすぎないほうが使えます。

Q. 計画を作ったことを、どこかに届け出ますか。 A. 届出の仕組みは一般にありませんが、実地指導で確かめられます。策定していること、研修と訓練を行っていることが記録で示せる形にしておきます。

Q. 作っていないと、どうなりますか。 A. 運営基準の違反として指摘され、減算の対象になる場合があります。まず1本作り、使いながら直していく形が現実的です。完成度より、あることのほうが先になります。

Q. 訓練は、どんな形でやればよいですか。 A. 参集の連絡を実際に回す、優先業務だけで半日回してみる、机上で状況を読み上げて動きを確かめる。実際に動くほど穴が見つかります。やってみて出てきたことを計画に反映します。

Q. 法人内の他の事業所と共通にできますか。 A. 共通の部分(方針、連絡先、備蓄の考え方)は1つにまとめられます。事業所ごとに違う部分(建物、優先業務、職員の体制)は別に作ります。共通部分を1つにすると、見直しも楽になります。

Q. 計画を作ったあと、どれくらいで見直しますか。 A. 年に1回が目安です。職員が入れ替わり、連絡先が変わり、建物や設備も変わります。訓練で出てきた穴も反映します。見直した日を計画に書いておきます。

Q. 計画は誰が作りますか。 A. 管理者が中心になりますが、1人で作ると現場と合いません。各部門から1人ずつ出して作る形にしてください。作る過程そのものが訓練になります。

Q. 訓練はどうやって行いますか。 A. 机上で構いません。想定を1つ決めて、手順を追います。途中で「この連絡先は今も正しいか」を確かめるだけでも、価値があります。

Q. 感染症と自然災害で、同じ部分はまとめられますか。 A. 連絡先や体制など、共通する部分はまとめられます。ただし優先する業務と、人が減ったときの動き方は別になります。分けて書いてください。

Q. 計画の見直しはいつ行いますか。 A. 年に1回と、訓練のあと、大きな変更があったときです。職員が入れ替わったら連絡網は必ず直します。古い連絡網は、無いのと同じです。

Q. 要件を満たしているか不安です。 A. 求められる内容は種別によって違います。所轄の市町村や指定権者に確かめてください。自治体がひな形を出していることがあるので、あわせて確かめると早く整います。

Q. ひな形をそのまま使ってもよいですか。 A. 土台に使うのは構いません。ただし建物の造り、人員、地域の危険は事業所ごとに違います。そこだけは自分で書き換えてください。ひな形のままだと、訓練で必ず行き詰まります。