同一建物減算|訪問介護の数え方と届出
目次
同じ建物に住む利用者が増えてきた。効率はよくなったが、減算の対象になるかどうかが分からない。人数なのか割合なのか、どちらで数えるのかでつまずく事業所が多くあります。
この記事では、訪問介護の同一建物減算を、区分・数え方・届出の3つに分けて整理します。2024年度に割合による区分が新しく入った部分も含めて書きます。
結論:人数と割合の2つの軸がある
同一建物減算とは、同じ建物に住む利用者にサービスを提供している場合に、報酬が減る仕組みです。移動の手間が少なくなることを反映したものです。
区分は大きく分けて次の形です。
10%の減算。事業所と同一の敷地内や隣接する敷地の建物に住む方、または同一の敷地外の建物で1か月あたり20人以上にサービスを提供する場合。
15%の減算。上の建物のうち、その建物に住む利用者が1か月あたり50人以上の場合。
12%の減算。2024年度に新しく設けられた区分で、事業所の利用者のうち一定の割合以上が同一の建物などに住んでいる場合です。
ポイントはここです。2024年度から、人数だけでなく割合でも判定されるようになりました。人数では引っかからないのに、割合で対象になる事業所があります。
12%の区分がいちばん見落とされる
新しく入った12%の区分は、事業所全体に占める割合で判定します。
見落とされる理由は3つです。
1つ目は、建物ごとの人数では引っかからないことです。1つの建物に10人でも、事業所の利用者の大半がそうなら対象になり得ます。
2つ目は、複数の建物に分かれている場合でも合算されることです。
3つ目は、判定の期間が決まっていることです。
1つ目が盲点です。「うちは20人以上いる建物は無いから関係ない」と思っている事業所が、割合では対象になっていることがあります。
自治体が計算書の様式を用意していることが多いので、まずそれを入手して当てはめてください。
数え方の基本
数えるときに必要なのは3つです。
1つ目は、建物ごとの利用者の一覧です。誰が、どの建物に住んでいるか。
2つ目は、その月にサービスを提供した人数です。契約しているだけの方は含めません。
3つ目は、事業所全体の利用者の数です。割合の判定に使います。
1つ目を、利用者台帳に建物の欄を作って管理してください。住所だけだと、同じ建物かどうかが一目で分かりません。建物の名前で並べ替えられる形にしておくのが実務的です。
判定と届出の時期
12%の区分は、判定する期間と、適用する期間が決まっています。届出の期限も自治体が示しています。
流れは4段です。
1つ目は、判定の期間の実績を集めることです。
2つ目は、計算書に当てはめることです。
3つ目は、該当すれば届け出ることです。
4つ目は、適用の期間に減算して請求することです。
2つ目を必ずやってください。該当しない場合でも、計算した結果を残しておくと、後から聞かれたときに説明できます。
期限は年に複数回あることがあります。自分の自治体の期限を、年間の予定表に書き込んでおいてください。
該当したときにやること
該当した場合にやることは3つです。
1つ目は、届け出ることです。
2つ目は、請求を減算の率にすることです。
3つ目は、利用者に説明することです。
3つ目が抜けます。減算されると、利用者の自己負担の額も変わります。説明が無いと、請求書を見て驚かれます。
説明は、変わる前にしてください。「来月から料金が少し下がります」と伝えるだけで、問い合わせが減ります。
減算を避けようとしないこと
減算の対象になりそうなときに、避けるための操作をしないでください。
やってはいけないのは3つです。
1つ目は、提供の実績を実際と違う形にすることです。
2つ目は、事業所を形だけ分けることです。
3つ目は、利用者の住所を実態と違う形にすることです。
どれも実地指導で分かります。建物ごとの人数は、請求のデータから追えます。
減算は、移動の手間が少ないことを反映した仕組みです。同じ建物に多くの利用者がいる事業所は、移動の時間が短いぶん、訪問の件数を増やせます。そちらで成り立たせる形を考えてください。
事業所の収支への影響
減算は、収入に直接効きます。該当したときに慌てないよう、先に影響を見ておきます。
見るのは3つです。
1つ目は、減算の対象になる利用者の売上です。
2つ目は、率をかけた減少の額です。
3つ目は、移動の時間が短いことで得ている分です。
3つ目を数えてください。同じ建物に10人いれば、移動の時間は1件あたり数分です。離れた家を回る場合と比べて、1日に何件多く回れているか。そこが減算の前提になっている部分です。
数えてみて、それでも割に合わないと感じるなら、訪問の組み方に無駄がある可能性があります。移動が短いのに件数が増えていないなら、時間がどこかで消えています。
同じ建物での訪問の組み方
同じ建物の利用者が多い場合、訪問の順番で1日の件数が変わります。
工夫は3つです。
1つ目は、階ごとにまとめることです。上下の移動が意外と時間を使います。
2つ目は、時間帯の希望を調整することです。全員が朝を希望すると回りません。
3つ目は、記録を建物の中で書ける場所を作ることです。
2つ目が難しいところです。契約のときに、同じ建物では時間帯が重なると調整が要ることを伝えておくと、後の交渉が楽になります。
3つ目は見落とされがちです。車に戻って書く時間が、1日に何度も発生します。共用の場所を使わせてもらえないか、管理者に相談してみてください。
記録で気をつけること
減算の判定に使う記録は、普段の記録がそのまま材料になります。
確かめるのは3つです。
1つ目は、提供した日と人が正しく残っているかです。
2つ目は、建物の情報が利用者台帳にあるかです。
3つ目は、月ごとに集計できる形かです。
3つ目が大事です。紙の記録だけだと、毎回数え直すことになります。表計算で1か月分を並べる形にしておけば、判定が数分で終わります。
建物が変わったとき
利用者が引っ越すことがあります。建物の情報を更新しないと、判定が狂います。
やることは3つです。
1つ目は、引っ越した日を記録することです。
2つ目は、利用者台帳の建物の欄を直すことです。
3つ目は、その月の判定に反映することです。
2つ目が抜けます。住所は直したが、建物の欄はそのまま。判定に使う欄を、住所と別に持っている事業所ほど起こります。
引っ越しの連絡を受けたときの手順に、台帳の更新を1行入れておいてください。
併設の住宅がある場合
事業所と住宅を同じ法人が運営している形は多くあります。ここは減算の対象になりやすい位置です。
確かめるのは3つです。
1つ目は、敷地の関係です。同一の敷地か、隣接するか、離れているか。
2つ目は、その住宅に住む利用者の人数です。
3つ目は、事業所全体に占める割合です。
1つ目は図面で確かめてください。「隣接」の判断は、感覚ではなく位置関係で決まります。迷う場合は窓口に図面を持って相談するのが早道です。
併設の住宅がある事業所は、開設のときに一度判定して、その後も毎月見る形にしてください。入居者が増えるにつれて、静かに線を越えます。
ほかのサービスとの違い
同一建物減算は、サービスの種類によって仕組みが違います。
訪問介護の形をそのまま、訪問看護や通所のサービスに当てはめないでください。率も、判定の方法も違います。
複数のサービスを運営している事業所は、サービスごとに判定の表を分けて管理してください。1つの表で管理しようとすると、必ずどこかが合わなくなります。
判定を毎月見る形にする
年に数回の判定だけでは、気づいたときには該当していたという状態になります。
やることは3つです。
1つ目は、毎月、建物ごとの人数を数えることです。
2つ目は、割合を計算しておくことです。
3つ目は、線に近づいたら知らせることです。
3つ目を仕組みにしてください。「割合が線の5%手前に来たら管理者に伝える」と決めておけば、慌てずに準備できます。
数えるのは、慣れれば月に10分です。判定の時期に1年分をさかのぼるより、はるかに楽です。
まとめ
訪問介護の同一建物減算は、人数で見る区分と、割合で見る区分の2つの軸があります。10%、15%に加えて、2024年度から割合による12%の区分が入りました。
12%の区分がいちばん見落とされます。「20人以上いる建物は無いから関係ない」と思っている事業所が、割合では対象になっていることがあります。
数えるために必要なのは、建物ごとの利用者の一覧、その月に提供した人数、事業所全体の利用者の数です。利用者台帳に建物の欄を作って管理してください。
該当したら、届出、請求、利用者への説明の3つです。3つ目が抜けると、請求書を見て驚かれます。判定の期間と届出の期限は自治体が示しているので、年間の予定表に書き込んでおいてください。
よくある質問
Q. 同一建物減算とは何ですか。 A. 同じ建物に住む利用者にサービスを提供している場合に、報酬が減る仕組みです。移動の手間が少ないことを反映しています。
Q. 減算の率はどれくらいですか。 A. 10%、15%、そして2024年度に入った12%の区分があります。人数で見る区分と割合で見る区分があります。
Q. 12%の区分は何が違いますか。 A. 事業所の利用者のうち一定の割合以上が同一の建物などに住んでいる場合に適用されます。建物ごとの人数では引っかからなくても対象になり得ます。
Q. うちは20人以上の建物がありません。 A. それでも割合で対象になることがあります。計算書に当てはめて確かめてください。
Q. 計算書はどこにありますか。 A. 自治体が様式を用意していることが多くあります。ホームページか窓口で確かめてください。
Q. 何を数えますか。 A. 建物ごとの利用者の一覧、その月に提供した人数、事業所全体の利用者の数の3つです。
Q. 契約しているだけの方も数えますか。 A. その月にサービスを提供した人数で数えるのが基本です。細かい扱いは窓口に確かめてください。
Q. 建物の管理はどうしますか。 A. 利用者台帳に建物の欄を作ってください。住所だけだと、同じ建物かどうかが一目で分かりません。
Q. 届出の期限はいつですか。 A. 自治体が示しています。年に複数回あることがあるので、年間の予定表に書き込んでおいてください。
Q. 該当しなかった場合も記録を残しますか。 A. 残してください。計算した結果があると、後から聞かれたときに説明できます。
Q. 利用者への説明は必要ですか。 A. 減算されると自己負担の額も変わります。変わる前に伝えてください。説明が無いと請求書を見て驚かれます。
Q. 減算を避ける方法はありますか。 A. 実態と違う形にすることはできません。建物ごとの人数は請求のデータから追えます。移動の時間が短いぶん、訪問の件数を増やす形で考えてください。
Q. 利用者が引っ越しました。 A. 引っ越した日を記録し、台帳の建物の欄を直してください。住所だけ直して建物の欄が残っている形が起こります。
Q. 訪問看護や通所でも同じですか。 A. サービスの種類によって仕組みが違います。率も判定の方法も違うので、そのまま当てはめないでください。
Q. 複数のサービスを運営しています。 A. サービスごとに判定の表を分けて管理してください。1つの表だと、どこかが合わなくなります。
Q. 毎月数えるのは大変ではありませんか。 A. 慣れれば月に10分です。判定の時期に1年分をさかのぼるより、はるかに楽です。
Q. 線に近づいたらどうしますか。 A. 「5%手前で管理者に伝える」と決めておいてください。慌てずに準備できます。
Q. 併設の住宅があります。 A. 減算の対象になりやすい位置です。敷地の関係、住む利用者の人数、全体に占める割合の3つを確かめてください。「隣接」の判断は図面で決まります。
Q. 減算されると採算が合いません。 A. 移動の時間が短いことで得ている分を数えてください。1日に何件多く回れているか。数えても割に合わないなら、訪問の組み方に無駄がある可能性があります。
Q. 同じ建物での訪問はどう組みますか。 A. 階ごとにまとめ、時間帯の希望を調整し、建物の中で記録を書ける場所を作ります。車に戻って書く時間が1日に何度も発生します。
Q. 実地指導では何を見られますか。 A. 判定の計算、届出の控え、請求の内容です。計算の過程が残っていることがいちばん大事です。